Space早稲田演劇フェスティバル2011 -3ページ目

小劇場と小劇団のこれからを考える・・・「公」と「大」の狭間で トーク録①

2011年5月20日(金)19:00開演

Space早稲田で行われたシンポジウムの内容をお伝えいたします!



シンポジウム


小劇場と小劇団のこれからを考える・・「公」と「大」の狭間で”

(仮称)劇場法が取りざたされる一方、大阪からは劇場が消えつつあるなど、いま日本の演劇環境は大きな曲がり角に差し掛かっている。

そうした中で、小劇場・小劇団はどうこれに対応すればよいのか。また、未来を切り開く道はあるのか。

劇作家・演出家として活躍する永井愛、座・高円寺の支配人として劇場の公共性を模索する桑谷哲男。演劇評論家の村井健をお招きしての刺激的なシンポジウム。

パネリスト 永井愛(劇作家・演出家)

桑谷哲男(座・高円寺支配人)

村井健(演劇評論家)

川口典成(ピーチャム・カンパニー演出)

麻生studio salt

龍昇(龍昇企画・フェスティバルディレクター)

こういった稽古場をもう少し活性化したいということでフェステイバルを今おこなってる最中です。その一環として、このシンポジウムを企画させていただいております。

今まで2劇団が終わりまして、このシンポジウムが終わったあと、4劇団がここでこんな小さな劇場ですけども、いれれば70人位はいりますで、色んな作品をこれからまたどんどんやっていきたいと思っています。

僕は、今回のこのフェステイバルの責任者でもあります龍と申します。よろしくお願いします。

この劇場は本来は、これ流山児★事務所の稽古場で、流山児★事務所の流山児さんが芸術監督なんですが、本来は今日こちらにいる予定だったんですけども、たまたま北村想さんとの二人芝居が、今どこだっけ?

名古屋。

今は名古屋で、ちょうどこれが決まった後に、その公演入っちゃったみたいなんで、申し訳ないですけどもいられないのでよろしくお願いしますというメッセージが資料の中に入っていますのでご一読していただければと思います。

まず、色んな意見がざっくばらんに気楽に話せるといいなと思ってまして、演劇評論家の村井健さんをお招きしました。

村井 よろしくお願いします。

村井さんは「劇場法」とか、これからの小劇場をどういう風にやっていくかという事を色々、日々考えてアドバイスをしていただける方です。村井さんを中心に司会をしていただいて進めていきたいと思います。

その隣が高円寺の支配人をやっています桑谷哲男さんです。

劇場運営をずっとやっていまして劇場側からの色んな見方・意見などを沢山もらえるんじゃないかと思います。で、永井愛さん、劇作家で二兎社です。

それと次がピーチャム・カンパニーの川口さんです。演出のほうですね?

川口 そうです。よろしくお願いします。

公演は次の次ですね?

川口 そうですね。

次の次にここでやられますんで、そちらもよろしくお願いします。

Stadio Saltの麻生さんです。

麻生 よろしくお願いします。

来週からですね。

麻生 はい。来週の水曜日。

それではとりあえず村井さん、よろしくお願いします。

村井 よろしくお願いします。

今日のタイトルは、流山児さんとそれから龍さんと相談しまして、小劇場・小劇団これからどうやっていけば生きていかれるのか、という事で設問を立てたんです。

というのは日本の演劇、特に1960年代後半以降は、皆さんもご存じのように戦後日本の演劇界を支えた新劇団もそうですが、天井桟敷の寺山修司、紅テントの唐十郎、早稲田小劇場の鈴木忠志、黒テントの佐藤信などの小劇場運動というものが起きてきて。それ以降さらに小劇場第2世代、第3世代が出てきて活況を呈した。第2世代とは、例えば、流山児祥、竹内銃一郎、つかこうへい、岸田理生、東由多加などですね。

山崎哲さんとか。

村井 そうですね。その次に、第3世代として野田秀樹はじめ、鴻上尚史、渡辺えり、如月小春もそうですし、いろんな才能が出てくるわけですね。そういう風にして、60年代後半から始まった小劇場運動が70年代80年になって大きな広がりを見せ、演劇界活性化の大きな原動力となってくる。これはひとえに小劇場・小劇団の人たちの頑張りだったんですね。その後、バブル期に大型の劇場が次々に造られ、今日に至っているわけです。

ところがですね、最近、新しい動きが出てきまして、それは、皆さんにお配りした資料の中にありますが、去年から日本にも「劇場法」があった方がいいのではという新しい動きが出てきた。「博物館法」とか「図書館法」はあるけれども、日本にこれだけ劇場があるにもかかわらず「劇場法」がないというのはやっぱりおかしいのではないかと。この問題については、皆さんにお配りした資料の中に「著作権・契約書」というものが入っていますけども、これにこの問題の流れが大体要約されていますので、後でお目を通してください。

簡単に説明しますと、2001年に文化芸術振興基本法というのができて、その後で、芸団協が中心になって、「社会の活力と創造的な発展をつくりだす劇場法」があった方がいいのではないか。劇場にセーフティー・ネットを作る必要があるし、ちゃんと専属のスタッフや芸術監督が配置されたほうがいい。演劇人の雇用も増大する、という提案がなされたんですね。

じつは、こういう動きが出てくるバックには、演劇関係の助成金が減額されて、近いうちに現在の3分の1くらいになってしまうかもしれないという危機感もあったわけです。というのは、舞台芸術関係の助成は、団体助成ではなく、事業助成なんですね。それも、赤字助成です。「足りない分を補助する」システムですね。正直に数字を出しちゃったら、助成金もらっても実際の事業ができないっていうこともあるわけです。だから、皆さん、いけないことだけれども2倍・3倍の形で数字を膨らませて予算を申請してきたわけです。そうすると助成金が多少削られても、やれると。このことは文化庁も劇団側もわかった上でやっていた。一種の出来レース。

ところが会計検査院が調査したら領収書もちゃんと揃えていない杜撰な劇団がぞろぞろ出てきた。で、検査院から文化庁がお叱りを受け、さらに演劇界が文化庁からお叱りを受けた。これ、おかしいですよね。自分たちが作った実態に即さない制度が導き出した悪矛盾なのに、そのツケを演劇界にだけ押し付ける。共同正犯でしょう、本当は。ともあれ、これがきっかけになって余分な金を払っているんだったら予算は減らせということで、事業助成の総額が減額されることになった。3年後にはおそらく今の3分の1位の予算規模になるだろうということですね。それは困る。じゃあ、どうすればいいのか。

そこで出てきたのが、新しい事業枠を立ち上げればいいじゃないか、という平田式発想です。新しく「劇場法」をつくれば、別枠で大きい予算が演劇界に入る。雇用も生まれる。素晴らしいではないか、ということです。この流れがいまや、総論賛成という形になっている。

もう1つ。日本にもやっぱり海外のようなリージョナル・シアター、つまり地域劇場ですね。地域劇場と日本でいうとアマチュアの劇場のようですけども、そうじゃないんです。アメリカにもロシアにもリージョナル・シアターは一杯ありますが、それは全部プロの劇場・劇団ですね。そういったものを日本にも作っていく必要があるのではないか、ということで、そのためにいま日本全国にある2000いくつかの公共文化ホールを3つに分けて、1つは創造する劇場、1つは創ったものを見る劇場、そして残りは従来の集会・交流の場にしてゆく。3つに分けて再編成しようと。見方を変えれば差別化ですね。

中でも、創造拠点劇場に予算を投入して、そこに専門家を配置する。そうすることで日本の演劇環境を変えていこうではないか。という趣旨を盛り込んだのが仮称「劇場法」。これが、表に出てきたのは去年ですね。去年の前半までは公共ホールを3つに差別化して「劇場法」を適用するという流れになっていた。

表向きは、なかなかいいこと尽くめなんですね。ところが、この「劇場法」の中身がいまもってはっきりしない。平田さんとか東京芸術劇場の高萩さんとか芸団協はじめいろんなところや、人たちが宣伝していますが「劇場法」という名称だけが勝手に一人歩きしていて、その実体がいまだに見えない。雇用が促進される、予算が増える、セーフティー・ネットが確立される、それはいいことだ。だけど、じゃあその法案の骨子はどうなっているのか、あるいは、その要になるアーツ・カウンシルの中身や仕組みはどうなっているのか、いまだに見えてこないわけです。法案のサンプルが出てこない。

福井建策さんが私的に作った「モデル法案」はあります。お手元にお配りしていますので、あとでご覧ください。見てもらえば分かるように、こういうものが出されていれば議論しやすいんですね。ところが、いまだそれがない。文化庁とか平田オリザさんの方からはまったく出されない。その気配もない。出てれば、どこが問題なのか、あるいはここをもっとこういうふうにした方がいいのでは、という具体的な問題提起ができるんですが。それから、その法律の芯になる「アーツ・カウンシル」がどういう位置づけで、どんな組織、どんなメンバー構成で、どんな権限を持つのかも見えてこない。

じつはこのアーツ・カウンシルはすでにあるんですね。芸術文化振興        基金がそれです。それをどうするのか。なくするのか。その上にさらにつくる  のか、これも分からない。ここで、ちょっと海外の例に触れて見ますと、デンマークの劇場法では、アーツ・カウンシルに相当する「劇場審議会」のメンバーに選ばれた人は、4年の任期でその在任中「いかなる劇場にも属さず、また職業劇的演劇団体のいかなる役職にも就いてはいけない」ことになっているんです。つまり日本みたいに兼業でやるわけじゃなくてそれに完全にシフトして、そして専念してもらう。

アメリカの場合は、ニューヨーク市は、ダブルチェックになっています。市のアーツ・カウンシルが助成金の配分先を決めたら、オンブズマンやNPOの組織に依頼して、その決定をもう一度チェックする。はたして、この助成金の配分決定が適切なものかどうかを。それでOKが出れば、今年はこういう所に助成しますと発表する。それに対して、「落とされた」人は、落とされた理由を聞くことができる。日本はできません。「本年度不採用決定」という一行だけしかこないです。紙一枚で。電話してもとりあいません。「そういうふうに決まったものですから悪しからず」で終わり。しかし、アメリカだと、ちゃんと説明してくれる。「こことここが引っかかりました。だからこれを改善してくれれば来年、もらえる可能性があります」と、説明責任を果たしてくれるわけですね。

とにかく、いまのところ、仮称「劇場法」の中枢を占めるアーツ・カウンシルの中身と仕組みがいまだに見えない。しかも、今年になってから、これまでは「公共劇場」を対象にしたものだっていわれていたのに、どうも民間の劇場も含めての劇場法に変わりつつあるんじゃないか、という噂も聞こえてくる。更にはですね、すでにアーツ・カウンシルのメンバーがすでに内定しているっていう話も聞こえてきている。これがまったく根のない噂ならいいんですが、そうでないとすると、文化庁が一見、公聴会じみたものを繰り返しているのは単なるアリバイ作り、ということになる。で、突然国会に提出されてしまうということもありえるわけです。

そうなってしまうと、「内容がこれじゃあまずいじゃん」となっても後の祭りですね。だから、劇場法の推進者である平田オリザ参与、文化庁はちゃんと「法案のサンプル」を公開し、アーツ・カウンシルにしてもモデルをちゃんと提示して、「こういう方向で考えているけど、どうでしょうか」と問うべきなんですね。モデルを示さないで意見を求めるというのは、じつは一番、ごまかしの利くアリバイ工作になりやすい。

いま、私は「アリバイ工作」といいましたが、先ほど皆さんに渡しました資料にありますけど、「重点支援劇場」ですね、これを見ると、もう「創る劇場」に内定しているかに見える劇場に、すでに5年シフトで大きな予算が下りている。これ、おそらく「劇場法」ができた時に、実際の拠点になっていく劇場だと思われます。つまり、法案は示さないまま、既成事実が積み重ねられているということです。もう進行しているんです。

次に、僕が懸念していることは、事業助成が減るとすると、既成の劇団が拠点劇場と仲良くしていかないといけなくなるということです。しかし、劇場と仲良くできる劇団は数が限られますよね。そうするとこれから、そういうところとの協力関係のない劇団の活動はますます経済的にはきつくなる。切り捨てられてくる可能性もある。あるいは、創造する劇場が、既成劇団とのマッチングをせず、プロデュース制作にシフトすればどうなるか。そうすれば、これは間接的な劇団の解体促進法ともなりかねない。そういうこともありえる。そう僕は予測しています。そうならないためにも、この深く静かに潜行している劇場法やアーツ・カウンシルについてのチェックを僕たちはちゃんとする必要がある。

もう1つは、少なくなる(と思われる)事業助成金を得るために「文化庁の施策や方針にそった申請をすればいいじゃないか」「拠点劇場と仲良くしよう」という劇団が増えてくる可能性もあるということです。これはちょっと怖い。もともと芸術活動は文化庁や助成金のためにあるわけではないのに、いつのまにか助成金をもらうことが目的化してしまう。そうすると、知らず知らずのうちに「管理された表現」に近づいてしまう危険性が出てくる。芸術表現は本来自由であるべきで、助成金はそれを助けるべきもので、規制するものであってはならないわけです。本末転倒にならないようにしなければならない、ということです。

問題はまだまだあります。たとえば、創造拠点となる劇場が地域のニーズを勘案しなくてもいいのか。地方条例等との整合性は取れるのか。創造拠点以外の差別化された劇場・ホールはどうするのか。国立劇場は公共ホールではないのか。これは例外なのかなどなど、です。

最後に、ひとこと。もし「劇場法」ができれば、小劇場・小劇団はかなり生きづらくなる。その中で、どう活動を展開してゆくのか。僕としては、まず全国各地の小劇場・小ホールと小劇団のネットワークをつくり、情報を交換し、交流する中で協力し合って上演活動の機会とその輪を広げてゆく必要がある。「劇場法なんて俺たちに関係ないよ」ではすまなくなる。そう思うわけです。

ちょっと長くなりましたが、今、僕がいったことは、あくまでも村井はこう思っているという話ですけれども、ここまでを踏まえて、これからパネラーの皆さん方からいろんな意見を頂いていければと思っています。まず、トップバッターで、実際の劇場運営に関わっていらっしゃる桑谷さんからいかがですか。

ありがとうございました!!!

Space早稲田演劇フェスティバル、第一回目が無事に終了いたしました。

今後もニ回目、三回目と続けていけますようフェスティバル委員、及び流山児★事務所メンバー全員尽力してまいります。


ご希望、ご要望、その他なんでもありましたら、是非流山児★事務所にご連絡くださいませ。




ご観劇くださった皆様、ご参加くださった各劇団の皆様、ブログを見てくださった皆様、本当にありがとうございました。

studio salt 「ビタースイート」上演中!

ただいまSpace早稲田にて

studio salt 「ビタースイート」

上演中です!





29日まで!ぜひぜひお越し下さい。