第2話 欠落メルヘン 1/16
美咲
...あなたは....誰ですか?
宗助
........!
私の言葉に彼は、ひどいショッ
クを受けているように見える。
美咲
(なんて声を掛けようかな....?)
どうしたの?
大丈夫?
ごめんね
美咲
(私と知り合いなんだろうし、
忘れられてるって知ったら)
美咲
(驚くに決まってるよね....)
美咲
ごめんなさい。全然、思い出せ
なくて。
宗助
....そうか。
すると彼は、気持ちを落ち着け
るように息を吐く。
宗助
俺のことがまったく分からない
ってことは....、
宗助
俺に出会った時のことも、覚え
てないってことか?
美咲
そうですね....。
私の返答に、彼は動揺した様子
で目を泳がせたあと、私を見つ
める。
宗助
戸惑うかもしれねえが、ちゃん
と話した方がいいかもしれねえ
な。
宗助
美咲、お前は....かなりの間の
記憶を、失くしちまったらし
い。
美咲
え....。
そして彼は席を立つ。
宗助
今、医者を呼んでくる。記憶が
戻る良い方法が、あるかもしれ
ねえからな。
すると次の瞬間、ドアをノック
することもせずに、
急に病室のドアが開け放たれ、
ある男性が入ってきた。
第2話 欠落メルヘン 2/16
ルーク
【階段から落ちるなんて災難だ
ったな。俺の通訳はやれそう
か?】
美咲
........。
美咲
(この人ってまさか....キングラ
ンドの王子、ルークさん!?)
唖然としていると、彼が慌てた
様子でルークさんに近寄り、
ルークさんに耳打ちする。
宗助
【ちょっと来てくれ。話がある
んだ】
ルーク
【どうした、宗助。顔が真っ青
だぞ】
そして二人は、病室を出て行っ
た。
シーンと静まり返った中、私の
頭の中はパニックになってい
る。
美咲
(どうしてここに、キングラン
ドの王子がいるの?)
美咲
(....もしかして、ここは日本じ
ゃないの?)
気になった私は、病室にあるテ
レビのスイッチを入れる。
どの番組にチャンネルを変えて
も、テレビからは、
キングランドなまりのある英語
が聞こえてくる。
美咲
やっぱりここはキングラン
ド....。どうして私が....。
その時、私はルークさんの言葉
を思い出す。
美咲
(「俺の通訳はやれそうか?」
って言ってたよね....)
美咲
(私が王子の通訳? ありえな
いよ....)
理解に苦しんでいると、彼が病
室に戻ってきた。
第2話 欠落メルヘン 3/16
宗助
今、看護師に伝えてきたから、
もうすぐ医者が来てくれるぞ。
彼は優しげに微笑み、椅子に座
る。
宗助
色々、驚かせちまったな。
宗助
俺は....モディアル本社で通訳
をしてる、赤松宗助だ。
美咲
赤松さん....。
宗助
キングランドには別の仕事で来
てて....そしたら会社から、
宗助
美咲が事故に遭ったって連絡が
あって、
宗助
お前のサポートに付くように言
われたんだ。
美咲
そうだったんですか....。すみ
ません。
宗助
気にすんな。なんでも言ってく
れ。
美咲
....じゃあ、一つ聞いてもいい
ですか?
美咲
どうしてキングランドの王子
が、私なんかのお見舞いに来た
んでしょうか?
美咲
お会いするのはもちろん初めて
ですし....、
美咲
まさか私が、王子の通訳を担当
するなんてことは、ないですよ
ね?
不安げな私に、赤松さんは穏や
かに微笑む。
宗助
お前は忘れちまったのかもしれ
ねえが、
宗助
今のお前は、ルークから依頼を
受けるような通訳なんだぜ。
美咲
え....! じゃあ、本当にルー
クさんから依頼をもらって、
美咲
私はキングランドに来ていたん
ですか?
宗助
そうだ。
美咲
ウソみたい....。でも本当なら
すごく嬉しいです。
少しずつ状況が分かってきた私
は、ふと病室を見回す。
美咲
........。
第2話 欠落メルヘン 4/16
宗助
どうした?
美咲
この個室....一般向けじゃない
ですよね。
美咲
すごく広いし、ソファーとかテ
ーブルとか、高そう....。
美咲
もしかして私....かなり出世し
て、
美咲
こんな病室を借りられるような
感じになってるんでしょうか?
私の言葉に、赤松さんは豪快に
笑いだす。
宗助
はははっ。そいつは残念だが、
違うな。
宗助
キングランド王室のせいで、事
故に遭ったわけじぇねえが、
宗助
王室からの依頼で訪れた先で、
美咲がケガしちまったから、
宗助
王室が気を使って、VIP対応に
したんじゃねえか。
美咲
なるほど....。
美咲
(赤松さんと話してたら、なん
だか落ち着いてきたな....。不
思議)
そんなことを思っていると、そ
こへ医者がやってきたのだっ
た。
--それから私は精密検査を
し、記憶喪失と診断された。
医師
【記憶はいつ、どんなタイミン
グで戻るかわからないもので
す】
医師
【無理に思い出そうとせずに、
時間をかけて治療をしていきま
しょう】
医師
【日本の病院宛に、診断書を作
っておきますね】
美咲
【お願いします....】
記憶喪失以外に問題のなかった
私は、翌日退院することになっ
た。
--コンコン
身支度をしていると、ドアをノ
ックして看護師が病室に入って
くる。
看護師
【美咲さん、ご主人がお迎えに
来ていますよ】
第2話 欠落メルヘン 5/16
看護師
【美咲さん、ご主人がお迎えに
来ていますよ】
美咲
....え?
美咲
(ご主人って....何をいってるの
かな? まさか私....結婚して
るの?)
私は不安に襲われ、キャリーカ
ートを引いて病室をあとにし、
病院のロビーに向かう。
美咲
(まさかとは思うけど....もし結
婚してるなら、どんな人なんだ
ろう)
胸が高鳴っていることに気づ
き、私は自分に苦笑いしなが
ら、
ロビーに着き、あたりを見回す。
????
美咲
その時、前方から声がし、視線
を移すと--、
宗助
病院から連絡をもらて、迎え
に来た。
赤松さんが笑顔で駆け寄ってき
た。
私は一気に力が抜け、思わず微
笑む。
美咲
びっくりした....。
宗助
どうかしたのか?
美咲
実は看護師さんに、あなたのご
主人が迎えに来てるって言われ
たんです。
美咲
だからすっごくドキドキし
て....そしたら赤松さんがいた
から。
宗助
........。
美咲
看護師さんの勘違いですね。
美咲
夫だと思われてしまってたみた
いで、ごめんなさい。
宗助
....いや、いいんだ。荷物、貸
せ。
赤松さんは切なげな表情を見せ
ると、私からキャリーカートを
取り、
先に歩いて行ってしまう。
■■■■■■■■■■■■■■■
美咲
...あなたは....誰ですか?
宗助
........!
私の言葉に彼は、ひどいショッ
クを受けているように見える。
美咲
(なんて声を掛けようかな....?)
どうしたの?
大丈夫?
ごめんね
美咲
(私と知り合いなんだろうし、
忘れられてるって知ったら)
美咲
(驚くに決まってるよね....)
美咲
ごめんなさい。全然、思い出せ
なくて。
宗助
....そうか。
すると彼は、気持ちを落ち着け
るように息を吐く。
宗助
俺のことがまったく分からない
ってことは....、
宗助
俺に出会った時のことも、覚え
てないってことか?
美咲
そうですね....。
私の返答に、彼は動揺した様子
で目を泳がせたあと、私を見つ
める。
宗助
戸惑うかもしれねえが、ちゃん
と話した方がいいかもしれねえ
な。
宗助
美咲、お前は....かなりの間の
記憶を、失くしちまったらし
い。
美咲
え....。
そして彼は席を立つ。
宗助
今、医者を呼んでくる。記憶が
戻る良い方法が、あるかもしれ
ねえからな。
すると次の瞬間、ドアをノック
することもせずに、
急に病室のドアが開け放たれ、
ある男性が入ってきた。
第2話 欠落メルヘン 2/16
ルーク
【階段から落ちるなんて災難だ
ったな。俺の通訳はやれそう
か?】
美咲
........。
美咲
(この人ってまさか....キングラ
ンドの王子、ルークさん!?)
唖然としていると、彼が慌てた
様子でルークさんに近寄り、
ルークさんに耳打ちする。
宗助
【ちょっと来てくれ。話がある
んだ】
ルーク
【どうした、宗助。顔が真っ青
だぞ】
そして二人は、病室を出て行っ
た。
シーンと静まり返った中、私の
頭の中はパニックになってい
る。
美咲
(どうしてここに、キングラン
ドの王子がいるの?)
美咲
(....もしかして、ここは日本じ
ゃないの?)
気になった私は、病室にあるテ
レビのスイッチを入れる。
どの番組にチャンネルを変えて
も、テレビからは、
キングランドなまりのある英語
が聞こえてくる。
美咲
やっぱりここはキングラン
ド....。どうして私が....。
その時、私はルークさんの言葉
を思い出す。
美咲
(「俺の通訳はやれそうか?」
って言ってたよね....)
美咲
(私が王子の通訳? ありえな
いよ....)
理解に苦しんでいると、彼が病
室に戻ってきた。
第2話 欠落メルヘン 3/16
宗助
今、看護師に伝えてきたから、
もうすぐ医者が来てくれるぞ。
彼は優しげに微笑み、椅子に座
る。
宗助
色々、驚かせちまったな。
宗助
俺は....モディアル本社で通訳
をしてる、赤松宗助だ。
美咲
赤松さん....。
宗助
キングランドには別の仕事で来
てて....そしたら会社から、
宗助
美咲が事故に遭ったって連絡が
あって、
宗助
お前のサポートに付くように言
われたんだ。
美咲
そうだったんですか....。すみ
ません。
宗助
気にすんな。なんでも言ってく
れ。
美咲
....じゃあ、一つ聞いてもいい
ですか?
美咲
どうしてキングランドの王子
が、私なんかのお見舞いに来た
んでしょうか?
美咲
お会いするのはもちろん初めて
ですし....、
美咲
まさか私が、王子の通訳を担当
するなんてことは、ないですよ
ね?
不安げな私に、赤松さんは穏や
かに微笑む。
宗助
お前は忘れちまったのかもしれ
ねえが、
宗助
今のお前は、ルークから依頼を
受けるような通訳なんだぜ。
美咲
え....! じゃあ、本当にルー
クさんから依頼をもらって、
美咲
私はキングランドに来ていたん
ですか?
宗助
そうだ。
美咲
ウソみたい....。でも本当なら
すごく嬉しいです。
少しずつ状況が分かってきた私
は、ふと病室を見回す。
美咲
........。
第2話 欠落メルヘン 4/16
宗助
どうした?
美咲
この個室....一般向けじゃない
ですよね。
美咲
すごく広いし、ソファーとかテ
ーブルとか、高そう....。
美咲
もしかして私....かなり出世し
て、
美咲
こんな病室を借りられるような
感じになってるんでしょうか?
私の言葉に、赤松さんは豪快に
笑いだす。
宗助
はははっ。そいつは残念だが、
違うな。
宗助
キングランド王室のせいで、事
故に遭ったわけじぇねえが、
宗助
王室からの依頼で訪れた先で、
美咲がケガしちまったから、
宗助
王室が気を使って、VIP対応に
したんじゃねえか。
美咲
なるほど....。
美咲
(赤松さんと話してたら、なん
だか落ち着いてきたな....。不
思議)
そんなことを思っていると、そ
こへ医者がやってきたのだっ
た。
--それから私は精密検査を
し、記憶喪失と診断された。
医師
【記憶はいつ、どんなタイミン
グで戻るかわからないもので
す】
医師
【無理に思い出そうとせずに、
時間をかけて治療をしていきま
しょう】
医師
【日本の病院宛に、診断書を作
っておきますね】
美咲
【お願いします....】
記憶喪失以外に問題のなかった
私は、翌日退院することになっ
た。
--コンコン
身支度をしていると、ドアをノ
ックして看護師が病室に入って
くる。
看護師
【美咲さん、ご主人がお迎えに
来ていますよ】
第2話 欠落メルヘン 5/16
看護師
【美咲さん、ご主人がお迎えに
来ていますよ】
美咲
....え?
美咲
(ご主人って....何をいってるの
かな? まさか私....結婚して
るの?)
私は不安に襲われ、キャリーカ
ートを引いて病室をあとにし、
病院のロビーに向かう。
美咲
(まさかとは思うけど....もし結
婚してるなら、どんな人なんだ
ろう)
胸が高鳴っていることに気づ
き、私は自分に苦笑いしなが
ら、
ロビーに着き、あたりを見回す。
????
美咲
その時、前方から声がし、視線
を移すと--、
宗助
病院から連絡をもらて、迎え
に来た。
赤松さんが笑顔で駆け寄ってき
た。
私は一気に力が抜け、思わず微
笑む。
美咲
びっくりした....。
宗助
どうかしたのか?
美咲
実は看護師さんに、あなたのご
主人が迎えに来てるって言われ
たんです。
美咲
だからすっごくドキドキし
て....そしたら赤松さんがいた
から。
宗助
........。
美咲
看護師さんの勘違いですね。
美咲
夫だと思われてしまってたみた
いで、ごめんなさい。
宗助
....いや、いいんだ。荷物、貸
せ。
赤松さんは切なげな表情を見せ
ると、私からキャリーカートを
取り、
先に歩いて行ってしまう。
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