家に帰っても大介は考えていた。監督の言葉の意味を。しかし、練習から外されたことにイライラしていたため、冷静には考えていなかった。サッカー部の顧問の先生に抗議してやる。友達に話して、一緒に監督に抗議してもらおう。部屋で一人で考えを巡らせる。電話が鳴った。そして部屋のドアが開く。『大介、崇君から電話よ』『母さん、部屋を開けるときはノックぐらいしてくれよ!』 大介は文句を言いつつ受話器を取った。『もしもし?』『大介!お前なんで練習サボったんだよ!先輩が怒ってたぞ!』 大介は監督とのやりとりを全て崇に話した。崇とは中学生からの親友だった。何でも話せる仲だ。監督に対する不満を愚痴っても、崇なら誰かに漏らすことはない。『一緒に抗議してくれないか?』 崇は賛同しなかった。『でもさ、あの監督が何の意味もないこと言うかな。あの監督は名将だぜ』 そうだ、たしかに浦和東の監督は、サッカー界ではかなり有名な監督だった。浦和東に来る前まではJリーグで監督をしていた。Jリーグでの監督経験がある人間が
、高校の監督になるのは珍しかった。 『でもよ、右でシュートをするなって、めちゃくちゃだろ』『確かに言葉だけ聞いたら訳わかんないよな。でもさ、それは…お前のための言葉なんだよ。監督はお前一人だけに言ったんだぞ。絶対になんか意味あることなんだよ。監督が意地悪で言ったと思ってるのか?あの監督はそんな人じゃない。お前が1番よくわかってることじゃないか』 確かに監督は、意地悪を言うような人じゃない。監督は、サッカーの監督としてはもちろん、一人の人間としても素晴らしい人なのだ。サッカー部員達からも、学校の職員達からも評判は良い。冷静に考えてみると、顧問の先生に抗議したとしても、まともに取り合ってはくれないだろう。 大介は監督を尊敬していた。高校1年生の時からレギュラーになれたのは監督のおかげだった。3年生と2年生の中でレギュラーを決めていくのが基本。どんなに実力があろうと1年生が使われることは滅多にない。1年生はボール拾いが多く、練習でアピールする機会が少ない。試合形式
の練習は、11人対11人でやるため、この22人のメンバーに入らなければ、試合での実力もアピールできない。もちろん試合形式だけでなく色々な練習がある。その全ては監督へのアピールだ。しかし、現在の浦和東高校のサッカー部員は70人前後。監督が全ての部員を指導していない。監督の下にはコーチが2人いた。レギュラー組は大体、22名に決められて、その22名が監督の指導を受ける。残りの部員はコーチ2人が指導する。監督の目に止まるにはまずコーチにアピールしなくてはいけなかった。しかし1年生であるため、ボール拾いがメインで、コーチにアピールすることさえままならない。監督にアピールするには、途方もない、順序があった。ただ、大介だけは違った。監督は、大介をしっかり見ていた。大介は一番乗りで練習に来て、人一倍練習をしていた。努力は人を振り向かせるらしい。監督は大介のひたむきさに感心し、レギュラー組の練習に参加させることにした。例え実力がなくとも、サッカーに取り組む姿勢を、3、2
年に見習ってほしかった。今やサッカーの強豪と呼ばれる浦和東。監督は初心を思い出させるために、大介をレギュラー組に入れた。大介は大活躍した。大介が持てば得点が生まれた。監督は大介のプレーを見て、一つの希望が見えた。全国大会優勝。大介が上手く育てば、夢じゃない。 大介はレギュラーに定着した。1年生でただ一人だけ。誰も嫉妬はしなかった。みんな、大介の並外れた才能に惹かれていた。
、高校の監督になるのは珍しかった。 『でもよ、右でシュートをするなって、めちゃくちゃだろ』『確かに言葉だけ聞いたら訳わかんないよな。でもさ、それは…お前のための言葉なんだよ。監督はお前一人だけに言ったんだぞ。絶対になんか意味あることなんだよ。監督が意地悪で言ったと思ってるのか?あの監督はそんな人じゃない。お前が1番よくわかってることじゃないか』 確かに監督は、意地悪を言うような人じゃない。監督は、サッカーの監督としてはもちろん、一人の人間としても素晴らしい人なのだ。サッカー部員達からも、学校の職員達からも評判は良い。冷静に考えてみると、顧問の先生に抗議したとしても、まともに取り合ってはくれないだろう。 大介は監督を尊敬していた。高校1年生の時からレギュラーになれたのは監督のおかげだった。3年生と2年生の中でレギュラーを決めていくのが基本。どんなに実力があろうと1年生が使われることは滅多にない。1年生はボール拾いが多く、練習でアピールする機会が少ない。試合形式
の練習は、11人対11人でやるため、この22人のメンバーに入らなければ、試合での実力もアピールできない。もちろん試合形式だけでなく色々な練習がある。その全ては監督へのアピールだ。しかし、現在の浦和東高校のサッカー部員は70人前後。監督が全ての部員を指導していない。監督の下にはコーチが2人いた。レギュラー組は大体、22名に決められて、その22名が監督の指導を受ける。残りの部員はコーチ2人が指導する。監督の目に止まるにはまずコーチにアピールしなくてはいけなかった。しかし1年生であるため、ボール拾いがメインで、コーチにアピールすることさえままならない。監督にアピールするには、途方もない、順序があった。ただ、大介だけは違った。監督は、大介をしっかり見ていた。大介は一番乗りで練習に来て、人一倍練習をしていた。努力は人を振り向かせるらしい。監督は大介のひたむきさに感心し、レギュラー組の練習に参加させることにした。例え実力がなくとも、サッカーに取り組む姿勢を、3、2
年に見習ってほしかった。今やサッカーの強豪と呼ばれる浦和東。監督は初心を思い出させるために、大介をレギュラー組に入れた。大介は大活躍した。大介が持てば得点が生まれた。監督は大介のプレーを見て、一つの希望が見えた。全国大会優勝。大介が上手く育てば、夢じゃない。 大介はレギュラーに定着した。1年生でただ一人だけ。誰も嫉妬はしなかった。みんな、大介の並外れた才能に惹かれていた。