『プロになるまで、お前は右足でシュートをするな』               俺の利き足である右足で、シュートをするな!?    中学生の頃から、少しずつ才能が開花した大介は、サッカーの強豪校である、埼玉県の浦和東高校に進学した。大介はその才能をいかんなく発揮して、高校1年生にしてレギュラーを獲得した。順風満帆だった。大介が1年生の時には県大会で優勝し、全国大会ではベスト4に入った。現在は2年生で、大介の活躍もあり、県大会を見事に優勝した浦和東は、これから全国大会に向けて本格的に練習するところだ。今年こそは全国で優勝する。そんな気持ちでいた。…今日から本格的に練習をスタートさせる。大介はロッカールームで練習をするための準備をしていた。みんなと他愛のない話しをしながら。そして大介だけが監督に呼び出された。キャプテンでもない自分が一人だけ呼ばれるなんて、一体なんだろ? 大介は心の中で期待と不安があった。まだ誰もいない、サッカーコートに呼び出された。監督はためらわず言った。『プロになるまで、
お前は右足でシュートするな』 大介は言葉を理解するのに時間がかかった。右耳から左耳に抜けるような言葉だ。右足は俺の利き足。その足でシュートするなとはどういうことだ? 『お前は今日から左利きだ。左足のシュートなら良い』 苦笑いした大介は聞いた。『監督、何を言ってるんですか?』『お前はもう右足は使わなくていい』『…』大介は疑問の大きさに戸惑っていた。『俺が何故こんなことを言うのかをまず、考えてみろ』『両足が使えるようになるためですか?でも、試合中は右を使わざるをえないときもあります』『右足でのシュートは禁止だが、パスはしても良いんだ。シュートだけ禁止する』 やがて、浦和東の練習がスタートした。本格的な練習の初日である今日は、試合形式の練習をすることになっていた。チーム内で、2チームに分かれる。レギュラー組と控え組で分かれた。大介はレギュラー組に入った。試合が始まってすぐに大介にシュートチャンスが訪れた。大介は右足でシュートし、ゴール。監督は大介を練習から外した。   試合形式の練習が終わっ
たあと、大介は監督に詰め寄った。『あれは右でシュートしたからゴールになったんです。あそこで慣れてない左足を使えばゴールにはならなかったと思います。パスしようにも味方は良い位置にいなかったし。外された理由がわかりません』『確かに右で使うのは正解だった。だがお前の場合は正解じゃないんだ。何故、右は禁止か考えたか?俺は、考えろといったはずだぞ』『監督の言ってることが理解できません』 大介は残りの練習もせず、帰宅した。初めての早退だった。