「星が綺麗ですね。」
「あなたの名前は何ですか。」
「僕の名前はー。」
私は今日も一日を日記に記録する。何時に起きて何時に何をしたか。オヤツの時間も『15時03分』きちんと記録した。記録しないと忘れてしまうのだ。忘れると言う事は、その出来事が…その日丸々が私の中でなかったことになってしまう。皆の一日が私にとってはただのお菓子の空箱。だからそうならないようにキチンと毎日寝る前に記録する。
「お兄ちゃん。」
お兄ちゃんが帰ってきた。これはもう記録済み。なぜなら、お兄ちゃんは毎日決まってこの時間に帰ってくる。夜の7時30分きっちりに家を出て、1時間半後の9時ちょうどに帰ってくる。時計の秒針すらずれたことがない。この後の会話も大体同じで、私と星の話をする。でも、星の話を始めるのは私だから、これももう記録済み。今日の話はー。
「おにいちゃん。今日も星が綺麗だね。」
「そうだね。」
「あそこに明るい星が集まってMみたいになってるでしょ。あれがカシオペア座。」
「うん。」
「カシオペア座は5つの星でできていて、全てが二等星か三等星なの。」
「うん。」
「赤経が1。赤緯が+60で…」
「それWikipediaで調べただろ。」
「何でわかったの。」
「そのくらい分かるさ。」
「うん。」
こうやって毎日話をするのは、訓練なんだ。何の訓練なのかはわからないけど、自分の思ったことを話さないとダメなんだって。星について思った事。
「今日はもう終わりにしよう。」
お兄ちゃんは時計を見ながらそう言った。
続く