ベリ桃もボノ桃も桃のうち-バーディ
アラン・パーカー監督による1984年制作の「バーディ」。
鳥のように空を飛ぶことを夢見ていた青年がベトナムの戦場において精神を病み本国の病院へ収容される。
同じくベトナム戦争で顔に重症を負い帰還した友人が病院を訪ね、殆ど食事をとらず誰の問いかけにも答えずに鳥のように押し黙ったままの彼を必死に救い出そうと苦悶する物語。


この監督の映画では他に、異国の地で収監され脱獄した実話を基に描いた「ミッドナイト・エクスプレス」や人種問題を扱った「ミシシッピー・バーニング」、死刑制度を扱った「ライフ・オブ・デビッド・ゲイル」などがあります。
「ミッドナイト・エクスプレス」は比較的シリアスだが、その他の映画は普通にサスペンスものとしても楽しめます。
扱うテーマが重い割には偏った思想を前面に出さず、客観的な自由な視点から映画を作っている感じがする。


興味深いことに、昔、日本でヒットした「小さな恋のメロディ」の原作・脚本を書いたのが若かりし日のアラン・パーカーである。
殆どの人はあの映画を子供たちに焦点を当てて可愛らしい夢物語として見ていたと思うが、アラン・パーカーからしたら、自分たちの都合だけで子供たちを縛り付ける大人を皮肉った映画だったのだと思われます。
そして「小さな恋のメロディ」のラストで男の子と女の子がトロッコに乗って大人の利己的な世界から去っていく後姿は、「ミッドナイト・エクスプレス」の劣悪な刑務所から脱獄した青年の後姿へとシリアスな形で引き継がれたのであろう。
「バーディ」でも最後は友人と彼が病院から脱走するが、これがまた洒落が利いていて面白いのである。