第52話 暴走族 | うちらのじだい

第52話 暴走族

孝太郎の家に着くと、何台かバイクが止まっている。


それは、スクーターから中型まで3台くらいは止まっていた。


どれも派手で、バイクの後ろには長いしっぽみたいなのが上を向いて固定されていた。


中からは深夜なのに、かなり笑い声が聞こえてくる。


親はなんで何も言わないのだろうかと不思議に思いながら、静かに玄関を開けると足音に注意しながら孝太郎の部屋へ入った。


すると、孝太郎の他に見知らぬ男たちが3人一斉にこっちを向いた。


それは明らかに私や孝太郎よりも年上で、高校生くらいに見えた。


金髪のツンツン頭に、虎壱の紫のニッカ姿の男が口を開いた。




「な~に~(笑)これが孝太郎の女~?まぢ小学生に見えねー!!」




孝太郎「そうっすか(笑)?まあまだ付き合いたてっすけどね…。はじめさんの彼女も俺見たいっすよ~。まあ、ゆうな座れよ!」




ゆうな「……ども」




はじめさん「ゆうなって言うんだ、宜しくな!俺はじめって言うから何かあったら俺の名前出せばい~から。龍神會(りゅうじんかい)のはじめって言えば知らねー奴いないから。」




ゆうな「はぁ…じゃあ何かあったら宜しくお願いします」




孝太郎「すいません、はじめさん」




はじめ「良いってぇ!俺女には優しいから!孝太郎には厳しいけどな!」



孝太郎「勘弁して下さいよ(泣)!!」




全く誰かいるなら、一言くらいポケベルに入れといて欲しいものだ。


しかも初対面なのに、孝太郎はいつも突然だ。


もう少し気を使ってくれないと困る。


大人な空気が漂うこの部屋は、昼間と違って居心地が悪かった。




孝太郎「っつうことで、メンバーの先輩達にお前の事紹介したかったんだよ。あっもう分かると思うけど、俺暴走族なんだ。」




ゆうな「はぁ?だってまだ小学生でしょ?バイク乗れないじゃん。」




孝太郎「運転くらいできるよ!あっでも集会の時は後ろに乗っけてもらうだけだけどね(笑)」




ゆうな「ふ~んそうなんだ。」




孝太郎「びっくりした?」




ゆうな「まあ、ちょっとはね。」




本当はかなり驚いた。有り得ないと思った。孝太郎が好きでやってれば良いとは思うが…。


学校のみんなは誰も知らない。




はじめさん「やべぇ、俺の女も紹介したくなってきた!よし!みんなであいつんとこ行こうぜ!」



ゆうな「でも…どうやっていくんですか?」




はじめさん「孝太郎にクーター貸してやるから、ゆうなちゃんは孝太郎の後ろ乗ってけばいいよ。」



孝太郎「やったぁ!!運転できる!!」




ゆうな「はあ…。」




はじめ「大丈夫、こっから五分くらいだから。」



そう言うと、そそくさとバイクに乗り込んだ。


はじめさんはピッチで彼女に電話すると、近くの公園まで来てくれるみたいだった。




孝太郎「…お前落ちんなよ…」




ゆうな「…孝太郎こそ落ちるような運転しないでよ…」




いくらスクーターとはいえ、バイクなんて乗るのが初めてだったので、怖くて死ぬんじゃないかと思った。


しかも寒い日にバイクなんて凍え死ぬんじゃないかと思った。


孝太郎は、私を後ろに乗せ急発進した。




ゆうな「っちょっと!!あんた私を殺す気?!」



孝太郎「悪い悪い!!でも気持ちいいだろ?」




ゆうな「寒いだけだよ!!もうっ!!」




孝太郎「じゃあもっとしがみつけよ。」




ゆうな「え?」




夜の町に響くバイクの音にかき消され、会話も聞き取りにくい。


運転する嬉しそうな孝太郎を見ると、何故か私の心も晴れていった。


不器用な2人だったけれど、確実に気持ちは孝太郎に向いていった。
好きか嫌いかと言われれば、はっきりと孝太郎が好きだ。


その孝太郎の後ろに座り、腕を腰にしっかりと回して、まだあどけない背中にピッタリと顔をくっつける。


慣れないバイクは今にも落ちそうで、恐怖でいっぱいだけれど孝太郎となら怖くない。


端から見ればバイクに乗るのにあまりにも不自然な私たちは、なんとか公園に向かったのだった。