第43話 散乱する部屋 | うちらのじだい

第43話 散乱する部屋

受話器の向こうにいるのは、拓海なんじゃないかなと思った。


それは、今まで家に無言電話なんて掛かってきたことがなかったからだ。



ゆうな「拓海なの?ねんねだよ?」




「…………………ガチャ!ツーツー…。」




今のは、絶対イタズラなんかじゃない、絶対拓海だという自信があった。

心のどこかで、やっぱり拓海が気になっていた。

真さんがいくら良くしてくれても、家族が減ってしまった拓海は寂しいと思う。


何も知らない拓海がいきなり車で知らない土地に連れて行かれ、姉と真さんとの生活になり、何も疑問に思わないはずがない。


今のが本当に拓海だったら…。


だとしたらどうして無言電話なんか…。


母と父に今の出来事を話すと、心配だから姉のアパートまで行ってみようという話になった。




午後8時、姉がまだ仕事に出てるうちに車でアパートまで飛ばす。


夜の道路はすいていて、ついついスピードが出てしまう父の運転から、かなり焦っている父の様子が分かる。


いつも平気な顔をしている父だけに、内心かなり動揺しているようだった。


車内の中はみんな無言で、考えることは同じだった。


どうか無言電話が拓海じゃありませんように。


どうか拓海が楽しくやってますように。


どうにかアパートに着き、インターホンを押す。







「………………………」







何の反応もない。


ドア越しから、母が大きな声を出す。




母「ばあばだよ~拓海いるの?出ておいで!」




「………………………」




それでも反応は特にない。


私たち3人は、顔を見合わせた。


誰もいないという事は、真さんと拓海でご飯でも外に食べに出てるのかもしれない。



帰ろうとしたとき、ドアが開いた。




そこにはなんと、泣きはらした真っ赤な目をした拓海がいた。




父「拓海大丈夫か?!」



母「真さんはいるの?!」




拓海「…ひっく…うぇ~ん!!寂しかったよ~!!お兄ちゃんはお出掛けしてるの」




ゆうな「拓海、どうしてパンツはいてないの?」



拓海「おしっこ漏らしちゃったんだけど、パンツがなかったの~。」




とにかく中に入る、そこは2LDKの部屋で、全く掃除がされていなく足の踏み場がない。
食べかけの腐ったカップラーメンや、腐った牛乳、部屋は悪臭が漂いここに拓海が生活していたんだと思うと、ゾッとした。


なんと、拓海は四時間もの間、パンツが見つからずに寒い部屋の中をうろうろしていた。


お腹が空いていた拓海に、父がコンビニでお弁当とお茶を買ってきて与えた。




落ち着いた所で拓海に話しを聞いた。