私とは違って…、私は、私なんて…
引き続き促された呼吸法とは反して、また激しく乱れる呼吸。少しばかり焦った彼女が、またぎゅっと私を抱きとめた。
「こっちがいいか、こっちにしとこう。…あっ」
急に何かを見つけたかのような夏鈴さんの声に思わずビクッと体が強張った。
「ごめん、大丈夫、声おっきかったね、ごめんごめん。」
背中でするすると再開される手の動き。
そしてすぐに聞こえてきた、足音と、聞き慣れた声。
「おはよどうしたの?」
「保乃、おはよ。過呼吸みたいでさ…もう結構、経ってんだけど、おさまりきらなくてさ。」
過呼吸か…辛いな…、と頭に保乃さんの優しい手が降ってきた。さわさわと髪が撫でられる。辞めてください、なんて反発する気力など毛頭ない。
「ね、夏鈴、どのくらいこんな感じなの。」
「あー、どうだろ、10分くらいかな…。時計見てないからわかんないけど。」
「それ、夏鈴が来てからやろ?今日確か私の仕事のせいで、電車だったと思う。…美羽、いつから発作起こしてたんだろ。」
「わかんないけど、とりあえずちゃんおさめてあげないと」
「そうだね、楽屋入ろう、仰向けがいいよ。」
私がいるのに、私がいないみたいに進んでく会話。また、また世界から置いて行かれる。それに、いや。あんな楽しげなメンバーにこんなところ見られたない、現に、だって、私がここに着いてから、楽しげな声はずっと聞こえていた。
さっきと同じように、顔を覗き込まれ、歩けるか、と問われたが、ゆるく首を横に振った。
歩ける、歩けない以前に、楽屋には入りたくない。だだっこのように首を振ることしかできなかった。
「いや?歩きたくない?連れて行こうか…?」
その声に頭をまた振る
歩ける、歩けない以前に、楽屋には入りたくない。だだっこのように首を振ることしかできなかった。
「いや?歩きたくない?連れて行こうか…?」
その声に頭をまた振る
いつの間にか視界に入ってきてた保乃さんが、困った顔をしながら聞いてきた。
「楽屋、入りたくない?」
その言葉に横に振ってた頭を止めた。否定も肯定もしない私。
その動きに、前の二人が困ったように顔を見合わせた。
あ、また迷惑かけた…もう…私の…わがままで、何してるんだろ…ごめんな…さい…
うなだれるように、頭を下げた。指先の痺れが復活して、いつまでも解放されない苦しみに、感情的な涙がこぼれ始めた。
「楽屋、入りたくない?」
その言葉に横に振ってた頭を止めた。否定も肯定もしない私。
その動きに、前の二人が困ったように顔を見合わせた。
あ、また迷惑かけた…もう…私の…わがままで、何してるんだろ…ごめんな…さい…
うなだれるように、頭を下げた。指先の痺れが復活して、いつまでも解放されない苦しみに、感情的な涙がこぼれ始めた。
「隣の小さい楽屋、空いてるんじゃない?鍵あいてるかな。私見てくるから…「いや、夏鈴は美羽のそばいてあげて。美羽の一番安心する人は夏鈴やろ。」
そう言いさって隣の楽屋の扉に向かう保乃さんの足音が聞こえた。
そして私はまた、夏鈴さんにぎゅっと抱きしめられた。
いくらもしないうちに保乃さんが戻ってきて、空いてる、と一言発した後には、もう、私は夏鈴さんに、お姫さまだっこされていた。ごめんね、ちょっと揺れるよ、と十数メートル先の楽屋に連れて行かれた。夏鈴さんの細い腕が折れないか心で心配する
真ん中に置かれているソファーにふわっと置かれ、横から保乃さんが、ちょっとごめんね、と言って上半身を支えられクッションを挟んだ。少し頭の方上げといた方が楽らしいよ、と。
なんでこんなに、頭の隅では冷静にいられるんだろうか。
「美羽、ゆっくり、何にも考えないでいいから、私の真似だけしてて、ね。ちゃんと息吐いて…」
そうしてまた夏鈴さんに呼吸を促され、何も考えるなと言われても、私のざわざわはもはやしっかり形をなしていた。それが、アイドルでいることへの漠然とした恐怖だということも、理解してしまっていた。
絶え間なく溢れる涙は、もはや感情的なものなのか、生理的なものなのか、わからなかった。
夏鈴さんは私の身体をずっとさすってくれ、たまに涙を拭ってくれて、保乃は頭を撫でてくれた。
馬鹿みたいに、夏鈴さんの真似をしていた。それはもう無意識のところで。どうにでもなれ、申し訳ない、もう私のことなんて放っておいて、と思う反面、強く目の前の2人に助けを求めていた。
不意に思い出した世界から置いて行かれる感覚に、力の戻ってきた私の手が宙をさまよった。何かにすがりたくて、置いて行かれたくなくて。
彷徨った手は、ギュと夏鈴さんに握り止められた。
「落ち着いたね…。大丈夫、大丈夫だよ。…涙、止まんないね…。」
いつの間にか治っていたらしい過呼吸。
だから、力戻ったんだ……いらない思考も…
それでも、流れ続ける涙はなんなんだろう。
「夏鈴さん…保乃さん…ごめんなさい…」
「んーん、大丈夫だよ。もう少し休みな」
「そうだよ、気にしないで。…て言っといて申し訳ないんだけど、ちょっと隣見てくるね。もう集合時間だし…。」
「マジか…でも…みう、仕事、できる?」
夏鈴さんの仕事という言葉に無意識に肩が跳ねる。
できるかどうかじゃない、やらないと。やらないといかなち。わかってる、わかってるのに…
「……っ」
やれると伝えるべきなのに言葉が出てこなかった。
なんでこんなに、頭の隅では冷静にいられるんだろうか。
「美羽、ゆっくり、何にも考えないでいいから、私の真似だけしてて、ね。ちゃんと息吐いて…」
そうしてまた夏鈴さんに呼吸を促され、何も考えるなと言われても、私のざわざわはもはやしっかり形をなしていた。それが、アイドルでいることへの漠然とした恐怖だということも、理解してしまっていた。
絶え間なく溢れる涙は、もはや感情的なものなのか、生理的なものなのか、わからなかった。
夏鈴さんは私の身体をずっとさすってくれ、たまに涙を拭ってくれて、保乃は頭を撫でてくれた。
馬鹿みたいに、夏鈴さんの真似をしていた。それはもう無意識のところで。どうにでもなれ、申し訳ない、もう私のことなんて放っておいて、と思う反面、強く目の前の2人に助けを求めていた。
不意に思い出した世界から置いて行かれる感覚に、力の戻ってきた私の手が宙をさまよった。何かにすがりたくて、置いて行かれたくなくて。
彷徨った手は、ギュと夏鈴さんに握り止められた。
「落ち着いたね…。大丈夫、大丈夫だよ。…涙、止まんないね…。」
いつの間にか治っていたらしい過呼吸。
だから、力戻ったんだ……いらない思考も…
それでも、流れ続ける涙はなんなんだろう。
「夏鈴さん…保乃さん…ごめんなさい…」
「んーん、大丈夫だよ。もう少し休みな」
「そうだよ、気にしないで。…て言っといて申し訳ないんだけど、ちょっと隣見てくるね。もう集合時間だし…。」
「マジか…でも…みう、仕事、できる?」
夏鈴さんの仕事という言葉に無意識に肩が跳ねる。
できるかどうかじゃない、やらないと。やらないといかなち。わかってる、わかってるのに…
「……っ」
やれると伝えるべきなのに言葉が出てこなかった。
「美羽…休もうか。今日は、やめとこう。」
「だ、だいじょうぶ...ッ」
私のせいで。私のせいで迷惑をかけちゃう。
「今の美羽には無理。」
夏鈴さんの優しくもきっぱりとした声に、谷底に落とされたような気がした。
子供のように頭を振る私
やだ、できると頭を振り続けた。
ひどく優しい声が、私の拒否する言葉を遮った。
「美羽。...私が。私が中止したくて、中止するの。みうのせいじゃないよ」
どこまで優しいだろうか。どうして、こんなに優しくできるんだろうか。
どうしてこんなに人のことを考えられるんだろうか。私は、私は自分のことで精一杯だというのに。
「美羽、なんかあった?…仕事、嫌になった?」
夏鈴さんは優しく私の涙をぬぐった。
「みーうー、話したくない?」
優しすぎる声は逆に私を追い込んでくる。優しさが痛くて、怖くて、仕方ない。
「…ゃめて…やめ…」
恩をあだで返すかのように、拒否する言葉が無意識にこぼれ落ちる。
「…優しくしないでください…私なんか…私なんかに…優しく、しないで……」
「なんで、なんで、そんな悲しいこと言うの」
優しさを拒否したい自分と、優しさを甘んじて受け入れたい自分。対局の感情は、時期にどちらかがどちらかに吸収され消えていくものだ。
「みう、教えて。」
私の目をとらえて逃がさない夏鈴さんの目。強く、優しい
「みう?…涙止まらないね…。」
夏鈴さんがまた涙を拭ってくれた。温かい手に、私はもう耐えられなかった。
「...ッもう、むりです...」
もう私の思考は機能してないも同然。なんの思考も通さない言葉が口から出て行く。
「何がもうむりなの」
「みんなキラキラして、私だけ取り残されてるような感覚がいつまでも慣れなくって....頑張って頑張って必死に食らいついても夏鈴さんの隣には並べなくて......ッ...それが悔しくてなんで認めて貰えないんだろうって...」
「うん」
「周りもそう思ってるんじゃないかって勝手に怖くなった。電車にも乗れなかった...それに迷惑もかけて...」
「ううん、来て、ちゃんと話してくれた。それだけで十分だよ」
その言葉に頭を振る
「みう、私、美羽のパフォーマンスが一番大好きだよ。 仕事も求められてることちゃんと答えようってがんばってる。それだけで十分なんだよ 」
「...ちがッ」
「ううん、ちがくない。私の言葉を今は素直に信じられないかもしれないけど美羽が思ってるよりちゃんとやれてるよ。大丈夫。それに、私が追いつかれてしまうと焦ったくらいなんだから」
その言葉にまた頭を振ってしまう
「私が認めてるんだからいいの。」
「.....っ...」
「大丈夫。美羽ならできるよ。」
そう言って拭われた涙の先に見えた夏鈴さんの顔はいつにも増して強く意志のこもった目をしていた。バチッとあったその目に、私の中にあった否定する言葉なんてどこかに消えていった。
もはや操られるかのように頷いた私。目の前の夏鈴さんは嬉しそうに口角を上げた。優しくて、あたたくて。もやもやしていた心の中に光が差した気がした。
もはや操られるかのように頷いた私。目の前の夏鈴さんは嬉しそうに口角を上げた。優しくて、あたたくて。もやもやしていた心の中に光が差した気がした。
「.....ずるい」
「え?」
ぽろっとこぼれた私の不器用な言葉に、夏鈴さんははてなを浮かべた。
「...優しすぎてずるい」
「なにそれ笑」
「...夏鈴さん、わたし、またがんばる...」
「うん。がんばろう、一緒に」
その言葉に安心したのか、それとも自分が思ってたより体力を消耗していたのか、遠くで扉の開く音と、保乃さんの声が聞こえる中、ふわっと夢の世界に落ちていってしまった。
体を揺らす心地よい車の振動とそばに感じる夏鈴さんの匂いで意識が浮上する。雪崩れるように寄りかかってるものが、夏鈴さんだということも瞬時に理解した。
「美羽、起きた?」
状況に驚き身じろいだ私に気がついたのか、夏鈴さんが話しかけてきた。それにも驚き急いで頭を浮かそうとすると、いいから、とそれをも阻止された。
「夏鈴さん、なんかはずかしい…」
「いまさら?笑」
いつもなら恥ずかしくない
「美羽、起きた?」
状況に驚き身じろいだ私に気がついたのか、夏鈴さんが話しかけてきた。それにも驚き急いで頭を浮かそうとすると、いいから、とそれをも阻止された。
「夏鈴さん、なんかはずかしい…」
「いまさら?笑」
いつもなら恥ずかしくない
けど今日は色々重なって素直に甘えるのが少し照れくさい
「ねぇ美羽。またしんどくなったら連絡して。1人で抱え込まないことね」
夏鈴さんの優しさに、うん、と答える代わりに腕を絡めてやった。それを甘んじて受け入れてくれる、彼女は、私の大好きな人。
「あまえんぼ。」
「...るさい」
「ねぇ美羽。またしんどくなったら連絡して。1人で抱え込まないことね」
夏鈴さんの優しさに、うん、と答える代わりに腕を絡めてやった。それを甘んじて受け入れてくれる、彼女は、私の大好きな人。
「あまえんぼ。」
「...るさい」
END
村山勝手に病ませてごめんなさい
美羽ちゃんってあんなポテンシャル高いのになんで3列目なんだという想いがあり村山にもそれに対して葛藤があったんじゃないかなと思い書いてみました
夏鈴ちゃんと保乃ちゃんって相手の欲しい言葉ちゃんとくれる人だと思ってます
最後まで読んでくれてありがとうございました^^