あの甘ったるい香りの季節
橙の花は毎年のこの時期当たり前のように毎日見ていたのに
その存在をすっかり忘れていた
実家にいたときのこの時期は
市内の暖かさと地元の寒さで着る服によく悩まされた
今はそんなことはなく
寝る前にはクーラーをつける日さえまだある
当たり前のように自分の部屋があった
綺麗に散らかった部屋
隆志君の部屋みたいに綺麗に片付いておらず
そこで生きていたときと殆ど変わらない
相変わらずベランダにはアライグマが出没するらしく
アライグマ対策が多少なされていた
ベランダには灰皿がある
ナカワキ家では喫煙者が4人中3人もいるが居室で吸うことは許されてない
キッチンか庭かベランダでしか吸えないので
隆志君が学生時代にベランダで吸うために置いていた
もう5、6年もそこにある
隆志君が社会人になってからは私が使っていた
風呂上がりにベランダに出たら
あの甘ったるい香りがする
庭には3、4本の金木犀があってどの窓を開けても香りがする
久しぶりにこのベランダで葉巻が吸いたくなった
去年までは当たり前の出来事だったのに
今では次に来るときには金木犀はもう散り始めているか、もう散ってしまった後だろう
この甘ったるい香りが好きでよく葉巻を吸った
この時期の肌寒さと甘ったるい香りと葉巻の香りが至福のときだった
灰皿の蓋を開けると真新しいセッタのフィルターが刺さっていた
灰皿にはたくさんの葉巻の吸い殻の上に数本の白い吸い殻
どうやら帰ってきていたらしい
もう隆志君とは半年も会ってない
メールをすることは会っても電話はしない
決して仲は悪くない
むしろ仲はすごく良い
私には出来過ぎの兄だと思うほど良い兄だ
今度いつ会えるんだろうか
隆志君もまた金木犀の香りを懐かしく思っているのだろうか
そんなことが駆け巡り
悲しくなった
葉巻に火を点ける
葉巻を吸うと思い出す
火を点けるためのライターはもう少しで3年目
煙草を吸ってる君に影響されて15から吸いはじめたが肺に入れられなくて葉巻に変えたんだった
君のことを考える時間
君といつまでこういう関係でいられるんだろうか
一緒にいることは出来るんだろうか
時間が迫る
実家を後にするときまた金木犀が咲いてるうちに帰ってロードバイクの整備をすると頭の中で声にした
本来の10月であることを思い出させる肌寒さ
真新しいニュータウンのバスターミナルもいささか寂しい
いつも通りの私以外乗らないバスはいつもと違うようにロータリーで休んでいる
やがて全ての動作がけだるいようにドアが開く
いつもと反対側の座席に座ってみた
いつも通りの私以外乗らないバスは珍しく私以外も乗せて出発した
橙の花は毎年のこの時期当たり前のように毎日見ていたのに
その存在をすっかり忘れていた
実家にいたときのこの時期は
市内の暖かさと地元の寒さで着る服によく悩まされた
今はそんなことはなく
寝る前にはクーラーをつける日さえまだある
当たり前のように自分の部屋があった
綺麗に散らかった部屋
隆志君の部屋みたいに綺麗に片付いておらず
そこで生きていたときと殆ど変わらない
相変わらずベランダにはアライグマが出没するらしく
アライグマ対策が多少なされていた
ベランダには灰皿がある
ナカワキ家では喫煙者が4人中3人もいるが居室で吸うことは許されてない
キッチンか庭かベランダでしか吸えないので
隆志君が学生時代にベランダで吸うために置いていた
もう5、6年もそこにある
隆志君が社会人になってからは私が使っていた
風呂上がりにベランダに出たら
あの甘ったるい香りがする
庭には3、4本の金木犀があってどの窓を開けても香りがする
久しぶりにこのベランダで葉巻が吸いたくなった
去年までは当たり前の出来事だったのに
今では次に来るときには金木犀はもう散り始めているか、もう散ってしまった後だろう
この甘ったるい香りが好きでよく葉巻を吸った
この時期の肌寒さと甘ったるい香りと葉巻の香りが至福のときだった
灰皿の蓋を開けると真新しいセッタのフィルターが刺さっていた
灰皿にはたくさんの葉巻の吸い殻の上に数本の白い吸い殻
どうやら帰ってきていたらしい
もう隆志君とは半年も会ってない
メールをすることは会っても電話はしない
決して仲は悪くない
むしろ仲はすごく良い
私には出来過ぎの兄だと思うほど良い兄だ
今度いつ会えるんだろうか
隆志君もまた金木犀の香りを懐かしく思っているのだろうか
そんなことが駆け巡り
悲しくなった
葉巻に火を点ける
葉巻を吸うと思い出す
火を点けるためのライターはもう少しで3年目
煙草を吸ってる君に影響されて15から吸いはじめたが肺に入れられなくて葉巻に変えたんだった
君のことを考える時間
君といつまでこういう関係でいられるんだろうか
一緒にいることは出来るんだろうか
時間が迫る
実家を後にするときまた金木犀が咲いてるうちに帰ってロードバイクの整備をすると頭の中で声にした
本来の10月であることを思い出させる肌寒さ
真新しいニュータウンのバスターミナルもいささか寂しい
いつも通りの私以外乗らないバスはいつもと違うようにロータリーで休んでいる
やがて全ての動作がけだるいようにドアが開く
いつもと反対側の座席に座ってみた
いつも通りの私以外乗らないバスは珍しく私以外も乗せて出発した