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土曜日は平日の疲れが一気に出る日で大抵死んだように金曜日のうちに眠り、土曜日のお昼に目が覚める


そして誰もいない一階に行ってテレビを見て、誰かが帰ってくる前に思考が上手くいく作業部屋、いわゆる隆志君の部屋だったところに逃げる


そこには学校用のPC、製図板、エレクトーン、ギター、ベースが在って


隆志君の雰囲気がふんわり残っていて落ちてつく


この家でいろんなところに思考を伝えたくなる唯一の場所が隆志君の部屋だったこの場所になる




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土曜日に続いて日曜日も死んだように眠れた


週末というのいつからか退屈な日になっていた


特別することもなく、思考が上手くいかない部屋に篭る


そうして平日にばらばらになった自分をつなぎ止める


そういう週末にいつからかなっていたんだろうな



週末の風呂はいつも長風呂になる


熱いお湯に1時間ばかり真っ暗にしてアロマキャンドルをつけて携帯の音楽を聞きながらつかる


この家で思考がいろんなところに繋がる場所の一つだ



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課題が一段落して1時を回ってた


どうにもあちこちに落としものをしているみたいだった


ウィスキーを飲んでもあまり満たされなかった



でも無事眠りにはつけた



朝6時に起こされた


ひどい顔だった


和代さんに

19なんだから次の日が休みの日には飲んで二日酔いになったっていいけど、学校行くのがしんどくなるような飲み方はだめよ

と言われた


それから陽気な足で思考が上手く行かない部屋に戻った


数時間して昼から学校に行くために和代さんに起こされた


家を出るときにお金を渡された


また梅田で甘いものでも買ってきて


明日でいい?


そんなやり取りも久しぶり


11時15分発の電車というのはきっと自分を梅田に届けてくれる


1時間15分の道のりを本を読んでやり過ごすにはひどい顔だった


そんなひどい顔に気付いて横に藤岡が座る


たわいもない話を梅田までする


小中と同じだったのにあまり仲良くない藤岡と


梅田に着いて改札を出て、再び宝塚線に乗りなおす


川西でゲーセンに入ってスロットをして


池田のミスドで葉巻と本とカフェオレで時間を潰す


葉巻というのは吸っている人間の何かを感じて味を変える不思議なもので


今日のは特に湿っぽい土の味がした


ひどい顔とひどい味



ミスドの店員も毎回カフェオレとドーナツを買い、葉巻をプカプカしながら本を読む髭を生やしたボサボサメガネを覚えているらしい


そういう眼はすぐわかる



今日はたくさんの傘がふわふわしている



雨でなければ京都やら今津線に揺られに行こうと思ったけど


傘は嫌いだ


雨を受け止めたい



紫煙に包まれて気付いた


動くとカラカラ音がしている



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専門学校というのは入ってからが大変とよく言う


全くその通りで火水金は9時から16時


月は9時から12時


木は13時から16時


と授業がある、課題が迫ると21時くらいまで残らないといけない


それに往復2時間半の通学時間


それでもしんどくはない


学校は人と話すことが出来る数少ない場所で毎日を苦痛には感じられないし、通学時間には本を読むことが出来る



しんどくはない



そういう毎日を送り続けるのが大変というだけ



梅田とか人間がいっぱいいるところでは急に心配になる


前に進んでいない自分に気付くから


どこでもない場所にいては前も後ろもない



周りの人間のどれ程がどこでもない場所に落とされたんだろ?



井戸と井戸は深いところでは繋がっているとしても


人が行き来出来ることは稀な気がする




言われた通り焼きドーナツを買ってみた



髭を剃った自分の顔というのは何か足らない



生きたいという覇気が足らないのかもしれないし


人と関わりたいという気持ちも希薄なのかもしれない


髭があったらどうなのか



小汚さ、やさぐれた感じが眼の隈や、やつれた顔にあうだけで不自然さが消えるということ



やっぱり、今の自分の素顔は何処か不自然過ぎる



この焼きドーナツのでかい箱とA2の用紙を持ち運ぶための肩がけの筒と一点もののメッセンジャー用のバックパック



不自然がかたまる



変な色の空