毎日が、なぜだか忙しい。


僕も、家内も、転がるように一日を過ごしている。


忙しさにかまけて、気付いているのに


ほったらかしのことが日々 積もっていき、そのストレスに疲弊してくる。



夏休みの家族旅行は、


こどもたちにとっては ぐん!と大きく成長するために欠かせない時間だし、


僕らにとっては疲れた日常から開放されて、もっかい力をゼロから充電するようなものなのだ。



飛行場までの道程や、離陸まで空港で過ごす時間も楽しいのだけれど、


やはり着陸して感じる空気感は その土地の最初の印象となる。


帯広は、さらっと乾いて気持ちよくひんやりしていて、


気持ちいい!が、第一印象になった。



北海道に来て、最初の食事は「かしわ」という名の食堂だ。


名前からは鶏料理を連想するかもしれないけれど、


もちろん名物の豚丼を。


旅先で出会う人が親切だと、俄然その町が好きになる。


最初の店から、この町が好きになった。


観光行政は、こんな側面から観光プロモーションを考えていくことが


結局、投資対効果的にも有意義な施策となるんでは?





競馬を楽しんだり、モール温泉の銭湯に浸かったりした後、



僕らが宿泊したのは一棟建てのヴィラだ。



ひろい敷地を贅沢に使って、敷地の一部である広大な牧場や木立や並木道を楽しめる。



ホテルの一室とは違って、部屋のひとつひとつが広々と気持ちいい。



地元の人たちも通うというレストラン棟でゆっくりと夕食を摂る。



たっぷりと食べてヴィラへ帰る小道を月明かりが照らす。






今回の旅行は、大手旅行社に部屋を供給するオオバコ施設と



こうして1日数組限定のヴィラを、交互に選びながら道東を旅した。



展望風呂付き温泉大浴場や、巨大な夕食会場での飽食バイキングも面白かったし、




巨大旅館をあまり経験していないこどもたちには新鮮で楽しかったようだ。



一方で、地元の食材を使って手間隙を掛けて作られたヴィラのテラスで食べる食事は、



夕食も 朝食も とても美味しくて贅沢な気分になった。








屈斜路湖から釧路川の源流をカヌーで下ったり、



オホーツク海の波打ち際で水遊びをしたり、



牧場で馬と戯れたり、ムックリの奏で方を教わったり、



ほんとうに楽しい時間は、システムで管理されたホテルでの時間ではなく



こうした体験だったり、人とのふれあいだったりする。





こうしたスモールトリップやスロートリップが、もっと求められる時代になるだろうから



大量送客するだけの旅行会社も、大量受入するだけの施設も厳しいなぁ、と思う。



お客様第一主義のホテルでも、お客様自体が変化していることに気付かなければ、



お客様第一からは遠のいてしまうのだ。






アイヌ語の名前のついた川に、たくさんの魚が群れ泳いでいる。



近くのパーキングに車を止めて、心行くまで遊んだ。



河口から広がる海岸でも存分に。



大型観光バスが橋を徐行しながら、僕らの遊ぶ川を見下ろしていく。



バスの窓越しに魚の群れを見下ろしながら、走り始めたバスの中の乗客たちの表情が一瞬ゆがむ。



きっと、もっと観たかったんだ。バスから降りて水に手をつけたかったのかもしれない。




水辺の遊びに満足して、ぼくらは次の場所へ。



水煙のようなマイナスイオンが心地よい大きな滝だ。



ぼくらが着いた頃、さっきのバスの乗客はひな壇に並んでいた。



たまたまパッケージ型の旅行で乗り合わせた他の乗客たちと旗を持ったバスガイドと一緒に、



カメラマンから「笑って!」「目をつぶらないで!」「もう少し左へ寄って!」「ハイ、いきますよ!」と



言われながら みんな一生懸命に笑おうとしていた。



「じゃあ、○○分に出発します。それまでにトイレは済ませておいてくださいね」



説明が終わると一斉にピクチャースポットへ急ぐ。まるで、スケジュールをこなしていくように



手際よく観光していく。



一行が立ち去った後も、ぼくらはゆっくりと涼を楽しんだ。







インターネットが発達して、ロングテール的に小さなツアー会社や現地オプショナルの会社が


ビジネスを展開している。



1日数組しか獲れないヴィラも、数組で成立するスモールビジネスを展開している。



大手の旅行会社やオオバコ施設は、どんなビジネスモデルを描けばいいのだろう?



各社が狙っているようにシニア層に向けて独自のサーヴィスを用意すること。



そして、旅+αの付加価値を、パッケージツアー自体に付帯させることだ。



もっと もっと 普通の目線が必要だ。



普通に暮らしている生活者が、テレビや雑誌やインターネットやカルチャースクールや塾では



決して味わうことのできないメニューを用意してこそ、こうした他業種の競合と渡り合える。



市場は、余暇という時間をいかに奪い合うか、だ。



ショッピングセンターやフィットネスジムやケーブルテレビや任天堂のWiiだって競合だ。



消費者インサイトのひとつを掴んで生まれた新たなビジネスモデルを



たまたまかつての旅行会社が始めるだけで、もう旅行マーケットといった


確固たる市場は無いのかもしれない。