村上龍の故郷、長崎県佐世保市に、その棘は在った。
針尾無線塔は、写真で見ても尋常でないドキリッとするよな建築物だ。
塔基の直径12m、高さは137mに達する。
ほぼ同じ高さの塔がさらに二本あり、三本は互いに300mの等距離を保って
正三角形を成す。
日本海軍が無線通信するために造った施設で、1922年に完成。
この施設の保存に関しては、賛否があるらしい。
維持するにはコストも掛かるし、しかしながら歴史的にも建築技術的にも
たいへん価値のある建築物であるらしい。
流行ったよね~、リリアン。
冠状に突き出た針金に太い番手の色とりどりの糸を掛けては、
針で梳(す)くってはくぐらせ、梳くっては通し、と組紐を編んでいく遊び..
今では百円ショップにでも在りそうな遊びも30年ほど前は、
女の子の間で一大ブームになったヒット商品だったよね~。
だから、ここに通したら次はここだってば。
いい? こいつを こう 通して 次はこれを こう 梳くって..
だからぁ..これを、こうして、こうやって..
..そうそう、うまいじゃん。 そうそうそう..
神様がリリアンするよな、その3本の塔から、
あの指令が発信された。
様々な事象が絡み合い縺れ合い、
日本は世界を敵にしてしまった。
..そうそう、うまいじゃん、その調子..
色とりどりの糸から組あがってきた紐は、
どんな色でしたか。
神様が、リリアン遊びをするみたく、
針尾の3本の鉄塔から時代が紡がれていきました。