凛々花が泊まりに来てから早2ヶ月が経った。


凛々花は最近部活に入ったみたいで東京に来ない。


彩先輩とは一進一退の関係で、「付き合おう」って言われそうな雰囲気になった時は何度かあった。だけどしっかりとその言葉を聞いたことは無い。


そして今日は体育祭


運動は小さい頃からそんなに得意じゃないからあんまり乗り気じゃない。


「おはよ」


今日もインターホンが鳴り、ドアを開けると大好きな顔


「おはようございます」


「ふふっ、今日元気ないやん」


「そんなこと……あるのかな?」


「ははっ、なんやねん!」


「だって体育祭」


「あ〜そっかぁー。」


「彩先輩はいいですよねぇ。なんでも出来るし」


うん。彩先輩は本当になんでも出来る。

運動だけじゃない。ギターも、歌も全部完璧にこなすから、羨ましい。


そんなことを話してたらいつの間にか駅に着いていた。


電車がホームに入って来たので乗り込んだ。

今日もいつもの様に混んでいる。


事件が起こったのは電車に乗って5分程たった頃だった。


この満員電車の中では座ることなんて滅多に出来ない。


今日もいつもの様に必死につり革に捕まり、電車の揺れに耐えていた。

その時、腰の辺りに何かが当たった気がした。

だけど、この満員電車の中では人とぶつかるなんてよくあること。だから大して気にしていなかった。


だけど、その後もまた何度か同じような事があった。


そして、また何かが腰に当たり、それが手だと気づいたのはしばらくしてからだった。

手が腰を撫でるように動いていた。

初めての感覚、体験に驚きすぎて声が出ない。

彩先輩に助けを求めようとした時腰の辺りで動いていた手が下へ下へと下りてきた。

いわゆる痴漢


彩先輩は、このぎゅうぎゅうの電車の中で一生懸命つり革に捕まっている。

ほんとは声に出したいけど出ないから、助けて……そう心の中で何度も叫んだ。