その夫婦は世間から悪し様に言われても、世間が背を向けても笑顔だった。家族の絆は、それはそれは強かった。今も変わらない。
 地方紙の隅で見つけた名前。何処の誰か知りたくて、関係機関に事情を説明して情報を貰った。その時の担当者も良い言い方はしなかった。まるで村八分。一縷の望みを持って電話したら、思いがけなくあっさりと快諾してくれた。

 無農薬に取り組むきっかけは家族、自分の妻を守るため。そんな事情なんて誰も耳を貸さなかっただろうことは、話の端々で窺い知れた。それでも、その夫婦は笑顔で話してくれた。

 人様に迷惑かけないよう、彼が園地に日参して虫を取り除き病気になった樹の手入れをしたそうだ。かまどきゃしと世間は言ってるよと、彼は笑顔で話した。

 言葉の刃。放った人達にはわかるまい。園地を手伝う娘さんたちは警戒してアタシの前には現れなかった。

 写真を撮るとき、奥さんを拝み倒して一緒に園地に行ったっけ。ようやく実現した林檎の樹をバックに、弾けるような笑顔のツーショット。下手くそなカメラワークの中での会心のショットだった。

 奥さん、彼と一緒の写真なんて何年ぶりだろうねって、また笑ってたっけ。

 その後、地方紙やらNHKやらで彼を見かけるけど、夫婦ツーショットはなかったような気がする。忘れられない思い出。