◆2004年 5 月 27日 ~旅日記より

 

昨夜はあまり風が吹かず、前日が強風だっただけに肩透かしをくらった感じ。

夜空の星も美しく輝き、最果て感を味わいながら眺めていた。

今朝も晴れそうな天気でひと安心。

しかしント内の湿気による濡れる状況は変わらず、寝袋もマットも濡れている。

朝食はパンとチーズ、そしてチョコジャムを塗っていただく。

9時40分出発し、ペダリングは順調。

右手の雪山の連なりがサメの歯のような形であったり、ラクダのコブのようであったり、想像しながら進む。

そして徐々に下って行き、10時45分、ウシュアイアの入口通過

14kmぐらいの走行だったので、もう6km程度先と思っていたが、予定より早く町に入ったよう。

南米大陸最南端の都市なので、思い入れはあり、心の準備が出来てなかったことは、何となく悔しい。

予想より大きな町並みが広がり、その先にはビーグル水道も青く見える

何かの旅本に載っていた「ビーグル水道だ!」という言葉が、ずっとあり私も2回も「ビーグル水道だ!」と叫んでいた。

その先には、チリ領のナバリノ島が見える、その北岸の町が地球最南端の町プエルト・ウィリアムズ。

セントロに入り、肉を買い、YPFのガソリンスタンドで水を汲ませてもらい、ラパタイヤを目指す。

そう!ウシュアイアの先にまだ道は続いており、目指すはパンアメリカンハイウェイの終点!

パンアメリカンハイウェイは南北アメリカ大陸の国々を結ぶ幹線道路網であるので、アラスカ準州のフェアバンクスから南下してきた旅人にとっては感慨深いものだろう。

私の場合は、2023年7月13日ブラジルのクイアバから南米大陸を反時計回りに進んでいる他の旅人とは違うコースの自転車旅なので、思い入れはそこまで強くはないかも知れないが、それでも最果ての道の終点へ向かうことにワクワクしている。

ウシュアイアを過ぎると、状態の良い未舗装路になりアッダウンの勾配となる。

ウシュアイアゴルフ場手前の木製の橋の所でアクシデント発生

下っておりスピードも出ており、橋の段差で自転車が横転し、右ペダルのトゥクリップが破損した。

ケガがなく良かった。油断しないように走ろう。

その後も、アップダウンを繰り返し、国立公園入口では入場料はいらないようで、地図をもらい先を急ぐ。

山道をから下って景色も開け、トレッカーたちも、ポツポツめにする。

そして、ついにラパタイア到着!

13時55分。R3号線終点。

良く自転車や旅の雑誌などで目にしたあの終点の木の看板がある。

南米旅出発から走行229日目18315kmで到着

感慨は・・・あまりないけど、今南米大陸最南端に立っていることへの特別感はある。

周囲に人は誰もおらず静かであり、近くのゴミ箱にカメラを載せて何枚か記念撮影。

出発前に家族などにコメントを書いてもらった日章旗を初めて取り出し、一緒に撮影した。

ただこれは何か恥ずかしい。

その後、行き止まりまで行き、再び撮影し、来た道を少し戻り、川のほとりにあるキャンプ場でテントを張る。

天気が良く、一昨日の悪天候が嘘のように穏やかでありがたい。

心地良く南米大陸最南端、最果てでのキャンプ時間である

夕食は、米、牛肉280g玉ねぎ1個、トマト1個、ジュース粉、食後にビスケット少々。

これからゆっくり夕食を調理し、最果ての夜を楽しみたい。

◆◆◆◆◆◆◆◆

現在17時54分。食事を終えると周囲は暗くなったなで、テント内でヘッドライトの明かりを頼りに日記を書いている。

キャンプの夜は長い。

日照時間の短いこの時季なら尚更。

最近は19時からのNHKワールド放送の受信状況が良くないので、少し読書をして眠りに就くようにしている。

その後に、途中に目が覚めたら短波ラジを聴くというパターン。深夜の方が受信状態が良いから。

すぐ近くの川が流れる音が深い眠りにつくキッカケとなるのか?と思っていたが、今夜は念願の最南端へ到着した日の夜ということもあり、興奮しているようで、なかなか寝付けない。

思えば去年の7月にブラジルのクイアバを出発し、昭文社の南米地図を広げるたびに、ウシュアイアへはいつ到着するのだろう?そんなことを考えていた。

ペルー走行時では、4月頃には到着するのでは?と予想していたが、やはり思ったようには進まない。

長旅は様々な要素が加味されるので、行程に限らず変化していく。

ただ、当初予定していなかったアコンカグア登山に挑戦したことや、パタゴニアのルート40を南下するのに時間がかかったことが、主な要因のようにも感じる。

風のパタゴニア、その風は確かに恐ろしい暴風で、走行中に一瞬で反対側へ飛ばされたこともあったが、全体的には予想ほど強風の日は多くなく、思ったほどではなかった印象である。

寒さもまだそこまで冷えていない。

水の補給に関しては、ガソリンスタンドや民家でいただけ、最高で10L持って移動した日もあり、困る状態にはならなかった。

テント設営場所も、道端や橋の下、空き地などで野営でき、それなりに順調だった。

今後の予定は、明日、ウシュアイアへ戻り、日本人宿の「上野山荘」で4~5日間滞在した後、バスでリオ・ガジェゴス⇒ブエノスアイレスのルートで北上予定。

ブエノスアイレスまで自転車走行をしようか考えたが、私の持つ航空チケットは1年FIXオープンチケットであり、期限が7月9日なので、残り日数などを考慮し、ウルグアイやパラグアイを自転車走行し、イグアスの滝で、この南米編を終えることに決めた。

JALの復路予約変更が上手くいけばいいのだが・・・。

まずは、とりあえず今日でほとんどの南米大陸走行は終わった気がしている。

もちろんウルグアイもパラグアイも、それなりに走行距離はあるのだろうが、景色の変化や感動や感嘆などは、これまで見たり体験したものを超えることはない気はする。

出会いなどに関しては期待するところはあるが、今のところ気持の中で南米大陸の自転車旅に区切りをつけている部分もある。

だから、これまで大きなトラブルもなく走行で来たことに感謝したい。

 

風もあまりない半月の夜。

ここから南極まで1000kmぐらいの距離なのだが、その端っこ感は地図などを眺めれば実感するものの、この場所だけを切り取れば、そんなにも感じない。

今後行くであろう、アメリカ大陸最北端のアラスカやヨーロッパ最北端のノールカップなどでも、そんな感じを受けるのなら、少し残念な気がする。

とにかく、まだ世界自転車旅は始まったばかりで、これから他の大陸でも、もっと違う景色や遺跡などを見ながら、様々な出会いや出来事に、楽しんだり悲しんだり苦しんだり喜んだりするのだろう。

一度きりの人生の「今」を感じながら過ごしていきたい。

 

 

◆走行距離 48km ◆総走行距離(18318km/走行229日間)

最高時速 44.5km/h

◆平均時速   12.6km/h

◆時間   3時間 48分

 

●出費 5月 27

●牛肉250g2

計 2(合計 3032.96ペソ)