第42話「ビッグ・バッド・ママ」
母がやってきた。
半年ぶりの上京だった。
彼が空港まで迎えに行くと、彼女は手を振って笑った。
還暦をとうに過ぎているとは思えない、派手な動作だった。
荷物と一緒に車に押し込んで、出発したが、母は、ずっと喋り続けた。
近所や親戚縁者の消息や彼の高校時代の恩師の転任先、自分が
長年習っていた日舞の発表会に出演したこと。
近所の、彼の幼馴染だった女の子(もう、いい女性)に2人めの子供ができた。
と彼女は、なぜか得意そうに言った。
上の子は、来年、小学校に上がるそうだ、と言った。
二十三で結婚し、今年でもう三十なのだから、子供が小学生になっていても
おかしくはあるまい。と彼は考えた。
母は、突然、女性歌手のゴシップの話をしだした。どうやら、実家の近所の
美容室あたりで、仕入れてきたのだろう。その話は、週刊誌の記事の域を
出なかった。
彼は、相槌だけを打っていた。
母は、手に持っていたバッグから、チョコレートを取り出し、彼に渡した。
彼は、銀紙に包んだままのそれをポケットに入れた。
かあさんは、太りすぎだから、甘いものは控えた方がいいよ。と言うと、
もうこの歳で、節制しても仕方がないよ。と答えた。
夕方に、彼のアパートに着くと、彼女は荷物を解き、中から、ラップに包んだ
握り飯とタッパに入ったおかずとを取り出した。
ゆで卵と、ゆでたアスパラと、ししゃもと、ハムと、焼いたタラコだった。
こんなものを持って来ても、と彼が言うと、
家に置いてきても腐らせるだけだから、と弁解がましく言った。
この家は、コタツがないから落ち着かない、などと文句を言った。
背の低いテーブルを出させて、自分の居場所を定めた。ポータブルテレビの
一番よく見える場所だった。
テレビをつけると母は静かになった。
彼の見たいドキュメンタリー番組を嫌がって歌番組ばかりを見たがった。
一年一年と、母は、子供に帰っていくようだ、と彼は思った。
いい歳の取り方をしている。とも思った。
十一時を過ぎてから、母と、いろいろなことを話し合った。
母は、結婚は、好きな時に好きなヒトとすればいい、と言った。
かあさんは、一人で暮らすつもりだから、かあさんの気に入るヒトなんて
考える必要はないよ、などと言った。
ウソに決まっている、と彼は思った。
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