ボクとキミのるう 4 | ヒロN式!

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「メイド喫茶元オーナーが書いた女の子の取扱い説明書」
の著者・ヒロNが綴る毎日のよしなしごとです。

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 今日は、職場で、ちょっとうれしいことがあった。

 臨時工の安田さんが、半年ぶりにウチの班に

戻ってきたんだ。


 安田さんは50歳のおっさんだけど、競馬、競輪

が大好きで、それでボクと話が合う人なのだ。休み

の日に一緒に競馬場に行ったり、競馬新聞を見て

予想のし合いッこをしたりしていた。

 

 うちの工場は、自動車のエンジンを組み立てる

工場なんだけど、最近は自動車が売れないので

エンジンの出荷数も減った。それで、臨時工は、

首を切られたし、ボクら正規工も残業時間が減り、

月給が減った。それでも、首を切られるよりいい

よね。


「よおよおよお」と言って、安田さんは、うれしいそ

うにやって来た。

 今まで、どうしてたの?と聞くと、安田さんは、

頭をかきかき「パチンコと競輪やってた。」と

答えた。

 聞くと、ウチの工場をクビになったけど、失業保

険が出てたので、その金をもらって、パチンコや

競輪をやってたのだそうだ。

 少し痩せたんじゃない?と聞くと、うんにゃ、太っ

た、と答えた。負けた時は我慢したけど、勝った

時は昼っから酒呑んだりしていたので、かえって

太ってしまったんだそうだ。

「失業保険もそろそろ切れるしさ、やべえなあ、

と思ってたら、ハイブリッドが売れ出したんで助

かったあ。また、よろしくなあ。」

 そう言って、安田さんはニヤニヤ笑った。

 なんも考えてないなあ、このおっさん。


 安田さんは、この道30年以上のベテランで

エンジン作りにかけちゃあ熟練工なんだけど、

本当言って、ウチの工場じゃ、工員がエンジン

なんか作れても、あんまり関係ないんだ。

 どういうことかって言うと、エンジン作りは、

ほとんど機械化されていて、ロボットが作って

しまうから、ボクたち人間が直接エンジンを作る

ことは、ほとんどないのだ。


 じゃあ、ボクたちは、何をやっているのかって

いうと、このロボットのメンテナンス。ロボットは

手入れをしていないと、結構故障するので、い

つも手入れをしていないといけない。

 だからなんか、ウチの工場ではエンジンを

作っているんだよ、といっても、実際の仕事は、

ロボットばっかりいじっているんで、エンジン屋

というよりロボット屋みたいだ。


 それに最近は、ロボットの入れ替えの回数

が減ったけど、ちょっと前までは、しょっちゅう

新しいロボットに替えていたので、いつも勉強

させられていて、安田さんみたいな臨時工の

ベテランはちょっとついて行けないところがあっ

た。

 なんか適当に動かして、ロボットを壊しちゃっ

て、よく班長に怒られていたなあ。

「け、おりゃ、ロボットの子守りじゃねえや!」

 班長に怒られた後、安田さんは、よくそんな

ことを陰で小声で言っていた。


 まあ、とにかく、安田さんが戻ってきたので

ボクはうれしかった。また、安田さんと競馬の

予想ごっこができるな。


 仕事が開けて、寮の食堂で夕食を取り、部

屋に戻って、早速パソコンをつけて、るうのブ

ログを開いた。

 最近は、それが習慣になってしまったのだ。

 なになに、今日は、いちごのショートケーキ

を食べたのか。そう言えば最近ケーキなんて

食べてないなあ。

 ケーキもくだものも食べてない。

 なんか、女の子が食べるようなものは食べて

ないなあ。女の子に縁がないもんなあ。

 女の子って言っても、工場にいる工員とか

事務員の女の子しかいないもんなあ。


 ちょっと前までは、残業代もいっぱい出て、

ボーナスも出たから、キャバクラにも行った

ことがあったけど、今は、そんなお金ないもん

なあ。

 それに、なんかキャバクラの女の子って

ケバイ化粧の子が多いから、なんか好きに

なれない。ボクは、田舎くさくてもいいから、

ケバくない子のほうが好みなんだ。


 ドアを叩く音がした。

 「なに?」開けると、目黒が、赤い顔をして

立っていた。

 「津田の部屋で呑んでるから、岩村もどう

か?って。」

 「ああ、今日はやめとくよ。」

 「ああ、そう。」

 と言って、目黒は背伸びするようにして、僕

の部屋を覗き込んだ。


 「あれっ?だせえ。」

目黒は、昨日壁に張った音無るうのピンナッ

プを見て言った。

 悪気はない。なんか頭に浮かんだことが

そのまま、つい、声になって出てしまったと

いう感じだった。

 「ださいかな?」

 「あ、ごめん。じゃあ、またね。」

 そう言って、目黒は津田の部屋に帰っていっ

た。


 ださいか、やっぱり。音無るうって、ださい

のか。

 ボクの趣味ってださいのかなあ。


(続)


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