ボクとキミのるう 2 | ヒロN式!

ヒロN式!

「メイド喫茶元オーナーが書いた女の子の取扱い説明書」
の著者・ヒロNが綴る毎日のよしなしごとです。


 (ああ、また終わった。)

 パチンコとかパチスロっていうのは、終わる時は、実に

あっけないもので、なんにもドラマチックなものがない。

 

 玉が皿からすーッとなくなって、台はなんかピカピカし

ているけど、「キミは今死にました。」って感じ。

 蛍の光もないし、クラッカーの音もない。

 ただ、すーッと終わるだけ。

 せめて、ジャジャジャジャーン。ハイ、残念!終わっ

ちゃったねえ、残念だったねえ、みたいなイベントが

あれば、もう少しフンギリってものがつくんだけどなあ。


「へへへ、岩村君。キミまた、ダメだったの?カアイソ。」

 咥えタバコの谷岡が、ヘラヘラしながら、ボンヤリ座っ

ているボクの背中から声をかけてきた。

 声かけんなよ。休みの日にまで、お前の顔なんかみ

たくないっての。


「お前さ、いくらスッっちゃったの?もう今日は、予定数

オーバーじゃないの?」


 でも、この辺じゃ、休みに行くとこなんかないから、皆

非番の奴は、ここに集まっちゃう。谷岡、目黒、津田、

ウチの班の連中は、ホント、皆、ここにいる。

 そうでない奴は、寮で麻雀をしている。

 でも、ボクは、麻雀ができないから、パチンコか、たま

に電車に乗って、競馬場に行くくらいだ。


 麻雀は、教えてやるよ!なんて、昔、寮の先輩に言わ

れたけど、なんか全然ちゃんと教えてくれなくて、カネばっ

かり巻き上げられたので、イヤになってやめた。

 それに休みの日まで、寮にいたくない。ウチの連中は

場所代が惜しいので、雀荘には行かず、寮の部屋で、

麻雀を打っているんだ。お蔭で、近所の雀荘が2軒潰れ

てしまった。

 

 それに、結局、麻雀なんて、ボクら安月給の工員たち

が、その安い給料をお互いに取りッこしているだけなん

だから、なんだかバカバカしいんだ。

 それより、まだパチンコの方が建設的というか。だって

勝てば、店からカネを分捕れる訳だから、まだ、意味が

あるような気がする。パチンコだって、競馬だって、まだ、

外向きでしょ。


 でも、今月はなんだかダメで、もう全部で5万円スッて

いる。いや、今日の負け分があるから7万5千円の赤字

だ。チキショウ。

 ボクの手取りは、残業分とかあるから一定じゃないけ

ど、月18万円から22万円くらいだ。そのうちから、寮費

やら、食費やら、ケータイ代やらを使っているので、7万

5千円の負けというのは、ほとんど月の小遣いやら全部

を注ぎ込んでしまった計算になる。でも、まあ、いいや。

別に外に呑みに行ったり、贅沢をしなければ暮らせない

訳じゃないし、負けた時は、おとなしく部屋でテレビでも

見てればいいんだから。

 勝った時は、どっかに遊びに行けばいいんだから。そ

んな時もあるさ。


「岩村さ、岩村さ、オレ、大勝しちゃったよ!15箱だよ!

15箱。」

 人の気も知らないで、というか、人の神経を逆撫です

るように、津田がやってきて、ヘラヘラとそんなことを言っ

た。

「岩村さ、もう終わったんなら、皆で、庄屋に呑みに行

かない?」

「いや、カネないから。」

「カネなら貸してあげるよ。」

 おごってあげるよ、とは言わない。そりゃそうだよな。

皆給料安いし、津田だって、いつも勝ってる訳じゃない

もんな。

「いや、やめとくよ」

 そう言って、スクーターに乗って、ひとりで寮に帰った。


 部屋に戻って、シャワーを浴びたけれど、まだ、クサク

サするので、この前、UFOキャッチャーでシャレで取っ

た、たれパンダに蹴りをいれたけど、それでも気は晴れ

なかった。


 パチンコの出費は、1万円以内にする。と決めていた

のに、なんだかもう少し粘れば出るような気がして、つい

つい財布をはたいてしまった。バカだなあ。


 大体、パチンコは、あの終わり方が気に食わんのだ。

もっと派手に、水着の女の子でも出てきて、「あああ、

もう終わりにしてえ!」とか「もうだめえ!」とか言って

終わりにしてくれれば、フンギリもつくってものなのに、

ただただ受け皿の玉がなくなって、すーって終わりだ

モンな。辛気くさいったらない。


 そこまで考えて、我ながら、自分の思いつきのバカ

バカしさに、ちょっと笑ってしまった。寝転がって天井

を見ながら、試しに、もう一度声を出して、「はははは

は」と笑ってみたけど、笑い声は、天井とボクの間の

空間に吸い込まれるようにして、消えただけだった。


 ああ、こんなことなら、津田にちょっと金を借りても、

皆と呑みに行けばよかったかな。でも、毎日毎日、職

場で顔を合わせてる連中と、相も変わらない居酒屋

で呑んだところで、なんにも楽しいことないしな。話題

と言えば、職場の愚痴か、女子工員の噂話くらいしか

ないもんなあ。バカバカしいよなあ。


 そう言えば、水着の女の子といえば、ちょっと昔に

好きなグラビアアイドルの子がいたなあ。

 バストが超絶大きくて、腰のクビレがキュッとなって

いて、なにより顔が好きだったなあ。ちょっと色が黒く

て、田舎くさい感じの子だったけど、逆にそれが好み

だったんだよなあ。最近は見ないけど、あの子、なん

て言ったっけ?


 あの子のグラビアが出てる雑誌は、結構買ってたし、

そう言えば、写真集を買って、おかずにしてたことも

あったんだ。なんて言ったかなあ、あの子。

 たしか、栃木の田舎の高校で、やり投げの選手やっ

てたんだけど、18になって、東京に出てきて、スカ

ウトされてグラビアアイドルになったんだっけ。なんて

言ったかなあ、あの子。

 あの子のパチンコ台とかあったら楽しいんだけどな

あ。でも、あんまりブレイクしなかったから、そんな

もん出ないよなあ、いまさら。

 なんて言ったっけなあ、あの子。


 気になって気になって、しょうがなくなってしまった

ので、押入れに潜り込んで、昔見ていた雑誌やらエロ

本の束を引っ張り出して捜してみると、1冊のエッチ

系の雑誌のグラビアに、その子が出ていた。

 スゴク面積の小さな水色の水着を着て、砂浜で

ヒザ立ちになって、こっちを(カメラを)見つめている。

やっぱり、胸が超絶大きくて、やっぱり、記憶の通り

ちょっと野暮ったい、垢抜けない子だったけど、それ

が結構好みだったんだ。


「ビーチの妖精」

 け!だせえ。


「音無るう」


 そうだ!音無るうだ!るうちゃんだ!

 この時は、グラビアアイドルになったばかりで、19才

だったんだから、今は24、5歳になってる筈だ。


 どうしてるんだろう、今、音無るう。

 最近姿をみないなあ、音無るう。


 そうだ、検索してみよう!と思いついて、パソコンを

立ち上げた。


 検索ヒット数137,000件。

 ふ~ん、結構あるじゃないの。


「音無るうのエッチ動画」ウソだい!


「音無るうとやっちゃった!」ウソつけ!


「音無るう、風俗店でみたよ」 そうかもしんない。


「音無るうの日記、るうぶろぐ」


へええ、日記ね。え?日記?本人の日記?


音無るう、まだ生きていたのね。


(続)


  

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