僕が二店舗目で働きはじめて、半年後にあるボーイが入ってきた。
年齢は40才。
前職は営業マンだったそうだ。
吉原で働く動機は離婚により、慰謝料を払うためだ。
離婚の原因は知らない。
彼は面接で即採用となり、その日から働くことになる。
しかし、彼はスーツを持っていない!
面接は私服でのぞんでいたのだ。
全財産は、わずか二千円だという。
そんなギリギリの状態で、彼は吉原にやってきた。
スーツを持っていないので、これまで飛んだボーイが置いていったスーツが大量にあるから、そこから自分の体型に合うものを選んでもらった。
彼は、ボーイに必需品の携帯電話を持っていなかった。(送迎で使うために必需品なのだ)
通話料金が払えなくなったらしい。そこまで困窮していたのだ。
ボーイには、毎日二千円の食事代が支給される。(店にもよるが)
その食事代を最初のうちは切り詰めてもらい、なるべく早く携帯電話を買うようにしてもらった。
彼は元営業マンだったことも理由なのか、人当たりがいい。
しばらくすると、お客様とも仲良くなって担当もたくさんかかえるようになった。
彼とは、仕事後によく飲みに行った。
そこで彼はこう言っていた。
「いつか、寄りを戻したい…」
と。
まだ奥さんを愛しているのだ。
「吉原で稼いで、いつかはまたいっしょに暮らしたい。」
こうも言っていた。
その夢をかなえるために、毎日頑張って働いていた。
ソープのボーイといえば、その日暮らしで明日のことなんか考えられないような人ばかりだと思われがちだが、こんなボーイもいるのだ。