「眠狂四郎」 第12話 「悪女狩り」1969年 (市川雷蔵37歳)

 

[制作]監督:池広一夫 脚本:高山肇/宮川一郎 撮影:武田千吉郎 

美術:下石坂成典 音楽:渡辺岳夫

[出演]市川雷蔵:久保菜穂子:藤村志保:江原真二郎:小池朝雄

 

 江戸大奥。大奥総取締錦小路(久保菜穂子)の部屋で若い女ちづるが逆さつりの折檻を受けていた。見かねて止めに入った小夜(藤村志保)は錦小路に叱られシオシオ。時を同じくして錦小路の部屋子と反錦小路のお千加が将軍の子を身籠り大奥は世継ぎ問題でピリピリしている。

 

 

その頃江戸市中をいつもの黒の着流しの狂四郎が奉行所の役人を問答無用で斬り、『断 眠狂四郎』の紙切れを残し、そればかりか娘を追い乱暴をハタラキその身体に『狂四郎これを犯す』の血文字を残す暴虐振り。その名の通り狂ったかと世間で悪評が立つが、当の狂四郎(市川雷蔵)は「狂四郎がふたりあっても構わん」とどこ吹く風。馴染みの女と待ち合いにいると向いの家に人目を避けた男女が入って行く。看板には「中條流」とあり不義の子をオロすのだという。

 

 

大奥ではお千加が行方知れずになったちづるの心配をしているが錦小路はそんな女は知らぬとにべもない。それから数日後ちづるは無惨な姿で発見される。お小夜はそっと菩提を弔いに寺へ行く途中で前を歩く侍に「お兄様!」と呼びかけるが振り向いたのは狂四郎だった。人違いを詫びてすり抜けようとする小夜を「私と間違えたそなたの兄が偽狂四郎か、目的は何だ」と問いつめる狂四郎、だがその背後に現れたお高祖頭巾の女が仕掛けた爆薬が爆発し小夜はその隙に逃げてしまいます。

 

 

大目付板倉将監(小池朝雄)と錦小路のもとに狂四郎を騙る川口周馬(江原真二郎)がやってきます。キリシタン信徒の周馬兄妹はルソン島へ信者達を逃がす代わりに反大目付派の一掃を企む板倉らの手先に使われていたのです。

次の狙いは御用人、土屋丹後守。小夜は兄を止めますが、周馬は聞く耳持たず狂四郎をかたどったマスクを付け出て行きました。その行列に切り込み丹後守を倒した偽狂四郎は本物の狂四郎とかち合いますが、マスクの男に「あえてその顔を見ようとは思わん」とその場を去る狂四郎。

 

その後、女の部屋にいた狂四郎はまたも「中條流」に今度は駕篭が入って行くのを目撃します。中では攫われてきたお千加が薬を呑まされたのかぐったりしています。そこへ堕胎医のオバーが術を施そうとする寸前狂四郎が現れます。狂四郎は大奥の女が攫われて来たとは知りません。不行跡の果てに子をオロそうとした女に怒っていたのです。

 

【いよいよ錯綜する後半へ続く…】

 

 

怠げな狂四郎が横になっている所へ庭の木々から白や黒装束の鳥達がヒラヒラ舞い降りてきます。夢でしょうか!? 背に刀を帯びていますが、フワフワと狂四郎を誘いどこかの広間に、今度は謎の能面集団。女面に「唇から魂を入れて下され」と迫られますが面を奪いその女の唇に押し付けると女は踠き苦しみだしました。それを合図のように襲って来る仮面集団をなぎ倒しながら屋敷を脱出、仮面女の逃げ込んだ蔵の中にもう一人の狂四郎が現れますがこれは鏡に映った自分の姿でした。狂四郎は鏡ごと後ろに隠れた女を切り捨てました。外に出てみると今度はマスクの偽狂四郎。対峙する二人の足元にどこからか怪しい煙が流れて来てました…。

 

 

ハッと気づくと狂四郎はぐるぐる巻きにされそれを錦小路が見下ろしています。「殺すには惜しい男、この錦小路が嬲って嬲り殺しにしてやろう」色情に眼が爛々と輝いていますが、狂四郎錦小路の刀を躱しつつ屋敷を無事脱出します。

 

 その頃大浜に大勢の信徒が集まっていました。ルソン行きの船が出る日でしたが、いつの間にかぐるりを役人が取巻いています。約束は反故にされ信徒は皆捕縛され、小夜は立ち向かいますが斬られてしまいます。からくも逃げ延びた周馬は大目付の屋敷に押し入り裏切った板倉将監を斬ります。そして命乞いをする錦小路…。

 

周馬から果たし状が届き狂四郎がある森に出向いてみるとそこには錦小路の姿が。錦小路はまだ未練があるのか狂四郎を誘います。そこへどこからか偽狂四郎の「抱いてやれ」という声。狂四郎は錦小路に近づきつつ声に向かって小柄を投げます。姿を現した偽狂四郎の放った矢は錦小路の胸を貫きます。ふたりは一騎討ちになり、狂四郎は「眠狂四郎が何人いようと構わぬと思っていたが、その了見が変わった、狂四郎はやはり一人でなければならん」と円月殺法を構えます。両者の刀が一閃、血飛沫とともに周馬の身体が錦小路の上にくずおれるのでした。ーー 

(完)

 

 

 

 

>今回も色々盛りだくさんでしたが本作が狂四郎最後と思うとどの場面も大事に大事に見たいと思います。それにしてもあの手この手がつきたのか、木々の中を降って来る鳥軍団には驚きました。刺客のようだが刺客で無い。どんな演出意図か悩むシーンですが、私はたまたま前に「オルランド」(貴公子オルランドはエリザベス一世の「永遠に若さを保て」という使命、呪い?をうけ400年若いまま生きたお話)という映画で、ラスト現代になり子供を遊ばせながらふと見ると空から天使が祝福の歌を歌いながら降りて来るシーンがばっちり浮かび、非常に不思議な気がしました。意図不明ながら場違いにファンタステックなこの場面か大好きです。

この頃のプログラムピクチャー、まさか60年も経ってつなぎがどうの伏線がどうのとDVDで見られるとは想定してなかったでしょうね。

絵面で好きなのは小夜と狂四郎が会うお寺の境内に一面ローソクの燈がある場面。あまり重要なシーンではないですが、美しいですよね。これが美しい絵になると確信している演出のおかげか美術のお手柄か解りませんが、辻褄が合おうが合うまいが心に残る場面でこの絵があるだけですごく上等な映画になっていると思います。

 

>お陰さまでブログを初めてちょうど1年。ダラダラ長い怪しい日本語あまり上達していませんが備忘録だものと居直ってまだまだ書きますよ。

それにしても暑い! きのうテレビで蓮舫ちゃんが「こう毎年ではもう”異常気象”とは言えません!」って。ひどく納得しました。今日は一歩も外出ませんでした。

皆様もお身体大切に!