学校での毎日は、愛香にとって地獄であった。

そして彼女にとってそれは、果てのないものに感じられた。

誰にも頼れず、ただ耐えるだけの日々。

もう死んでしまおうと、今日、屋上に立った。

しかし今なお、愛香の肉体は動いている。


どうして死なせてくれなかったの?


愛香の中で、ドロドロとたぎる赤黒い沼が、ボコンと音を立てた。

あの子――美優のせいで、私はまた苦しみを味わった。

私を苦しめる権利が、どこにあるというの?

何のために助けたの?

見てみぬふりをするあの教師たちと、どうせ同じなくせに。

許せない!


愛香は音もなく席を離れ、隣のクラスへと向かった。

眩暈を抑えながら、歩くのがやっとだった。

指先は、氷のように冷たくなっている。

グルグルと、同じフレーズが頭の中で渦巻く。


ユルセナイ

ユルセナイ

ユルセナイ


愛香の姿を見た美優は、驚いた顔で口を開いた。

「愛香、どうし・・・」

その言葉を遮るように、愛香は彼女の長い髪に掴みかかった。

ブチブチブチと、その繊細さに似合わない音を立てて、柔らかい束が彼女から引き千切られた。

キャーという声を上げて、生徒たちが二人の周りから散り散りになった。

「あんたなんか!大嫌い!!」

悲鳴にも似た愛香の叫びが、教室中に響き渡る。

「どうして死なせてくれないの!?」

涙と鼻水で、愛香の顔面はグチャグチャになっていた。

髪はべったりと頬に貼り付き、醜さを極めていた。


「死なせてよ!」

愛香は大きく腕を振りかぶり、美優の頭上に掲げた。

ブンと、腕が振り下ろされる。

しかしそれは、美優に打撃を与えることはできなかった。

愛香は、ギュッと抱き締められていた。

美優の細い腕と、ふっくらとした胸が、彼女を包み込んでいた。


「死なせない。アタシは愛香を死なせない。」

熱い雫が、ポタポタと愛香の背中に落ちていた。