「みんな席に着けよー!」

ガラリと音を立てて入ってきた教師が、生徒たちを促した。

立ち上がっていた者たちも、蜘蛛の子を散らすように、それぞれの場所に戻った。

何事もなかったかのように、静まる室内。

教師は重い影を背負った愛香に気付き、チラリと彼女の方を見た。

涙の乾ききっていない愛香は、哀願する目で彼に縋った。

しかしその視線は空を切るように、彼の視界から逸らされたのだった。


あぁ、やはりそうか――


愛香は、少しでも期待した自分を恥じた。

悔やんだ。

そして塗り重ねられた絶望感から、閉じられた扉に一層固く鍵をかけた。


淡々と、授業は進められていく。

愛香を囃し立てた生徒たちも、大人しくしているかのように思えた。

ところが、突然バラバラと愛香の髪に、何かが撒き散らされた。


・・・!?


大量の消しゴムのカスが、頭上から振り掛けられたのだ。

クスクスと、声を殺した笑い声が教室を満たす。

愛香は俯きそれを払うと、また静かに前を向いた。

カサッ、カサッ。

数秒もたたないうちに、今度は何かが投げつけられ始めた。

丸めた紙くずが四方八方から飛んで来て、みるみるうちに彼女の周りを一杯にした。


モウ、ヤダ。

イ ヤ ダ。


鼓膜が膨張したように、耳の中でボンボンと空気が音を立てる。

生徒の笑い声も、見てみぬふりの教師の視線も、何もかもが空虚だ。

私は、何のためにここにいるのだろう。

吐き気がする。

いっそここで、吐いてやろうか。