虹色の約束 結芽
前編 君が好き
プロローグ
『俺・・・お前が幸せならそれでいいや』
雨上がりの空に掛かる綺麗な虹の空の下
君はそう言ったね。
恋をするにはまだまだ未熟な2人だったからかな?
今なら・・・
今なら2人幸せに手を繋いで歩けたのかな?
今更だけど
あの時、あたしは君を失って初めて君のいない日々を後悔しました。
君と過ごした毎日は
今でも大切な宝物です。
君は今、幸せですか?
第一章 沢山の出逢い
第一時限目
「結芽(ゆめ)~っ! 今日部活は?」
「先生進路相談で来れなくて自主練だから、今日は行かな
~い!」
「やったぁ! じゃあ、久々にカラオケでも行かない?」
「カラオケ!? 行く行くっ!」
高校生になってから初めての秋。
紺色のブレザーに、黒と白のチェックのスカートの制服をほんの
少し崩して着る。
あたし、竹内(竹内)結芽は受験勉強というプレッシャーの開放からか、
高校に入ってから毎日のように新しく出来た友達と遊び回っていた。
こんなあたしでも、高校は部活推薦で入学。
中学から始めた剣道は思いのほかすんなり体に溶け込み、中学時
代は部長を任せられ、退会では結構いい成績を残していた。
学業の成績があまり良くなかった分、合格が決まるまでバカな頭
をフル活動させ、必死になって勉強したっけ・・・
合格の知らせを担任から聞いた時、まさか合格するなんて
思いもしてなかったあたしは、泣いて喜んだ記憶がある。
あたしの通う学校は、男女共学で校則もかなり暖かい。茶髪OK私
服OKピアスOKバイトOK・・・
別にそれが理由で入学した訳じゃないけど、『生徒の個性』を尊
重してくれるこの学校があたしは好きだった。
「あれ~? 結芽、髪の色変えた?」
「分かる? ゆうべ何だか寝つけなくて・・・暇だったから染めちゃ
った」
「似合う似合う!」
あたしの隣で一緒に歩いているのは、高校に入ってからの一番
の友達、水沼菜緒 (みずぬまなお)。
赤髪でとても太いボディピアスを付けている。髪はショートで目
が大きく、ぷっくりとした唇が印象的な可愛い女の子だ。
クラスで自己紹介の時、正直その身なりに驚いたけど、本当は素
直で優しい子だと知り、すぐ仲良くなった。
「ねぇねぇ、結芽、そろそろ好きな人出来た?」
恋愛話大好き人間の菜緒がキラキラした目で話しかけてくる。
「好きな人? いないいないっ」
「何で? ユッキとはすぐ別れちゃうし・・・お似合いだったのに」
夏休み明け直前・・・
あたしには彼氏がいた。
学校の生活に少し慣れた頃、斉藤幸宏(さいとうゆきひろ)【通称「ユッキ」)に告白
され、初対面だったが、周りにはやし立てられるがまま付き合い、
案の定上手くいかずにすぐ別れた。
「結局さ、何でユッキと別れたの?」
「何でって・・・お互い話した事すら無かったし・・・」
「結芽から振ったんでしょ?」
「うん」
「ユッキ、普通にカッコ良かったのに・・・面白いしさ」
「確かにね(笑)」
「実は他に好きな人いるんじゃないの~?」
「好きな人・・・ねぇ・・・」
あたしは今まで、3人の男の子と付き合った。中学で2人、高校
に入ってからはユッキ。
みんな楽しくていい人だった。その中でも2人目に付き合った小
泉尚太 (こいずみしょうた)。
バスケバカで成績優秀、かなりの照れ屋でぶっきらぼうだったけ
ど、ふとした時の優しさが大好きだった。
2年も付き合ったのに、手しか繋ぐ事無く、お互い部活や生徒会
に忙しくあっという間に卒業式を迎え、別れ話をする事も無く自
然消滅してしまった。
きっと、世間からすればこんなの恋人同士言わないのだろ
う。
でも・・・それでもあたしは未だに尚太への想いを断ち切れずにいた。
ユッキと付き合う事で尚太を忘れ、新しい恋愛が出来るかと思っ
てみたけれど、やっぱりそんな恋愛は長続きしなかった。
「まぁ、結芽にも色々あるんだろうけどさ、何か悩みとかあった
ら相談してよね?」
「うんっ! ありがとう。 何かあったら絶対話すから」
あたしの通う学校は地元にある。
あたしは学校の駐輪場に置いてある自分の自転車にまたがり、菜
緒に後ろに座ってと合図した。
「さてさてっ! どんな経路で出発する?」
「なんか小腹空いたから、コンビニ寄って結芽ん家の近くの・・・え
っと・・・何だっけ?」
「まつぼっくり?」
「そうそう! まつぼっくり! あそのこカラオケ、行ってみた
かったんだよね~!」
「了解! じゃあ腰にお手をお掛け下さい」
「はいは~い!」
「でわ、軽く蛇行運転で出発しまぁす!」
「普通でいいからっ!」
菜緒を乗せ、あたしはペダルを力一杯踏み込む。
「ねぇ、結芽~!」
「ん~? 何~?」
「何でまつぼっくりって名前なの?」
「知るかっ! 店長に聞けっ(笑)」
「アハハ! ですよね!」
菜緒との楽しい毎日。
あたしは歌を歌ったり聴いたりするのがとにかく大好きだった。
金色に近いあたしの髪と真っ赤な髪の菜緒。
背が高い菜緒とチビ助なあたし。
恋なんて今は邪魔なだけ・・・必要ない。
「菜緒~!」
「はい~?」
「大好きだぁ~」
「そんなの前から知ってる~(笑)」
足に力を入れる程、ほんのり冷たい風が体にぶつかる。
(菜緒・・・重いっ・・・)
目的地までのちょっと長い道のり。
あたしはただ、今を精一杯生きていた。
次回 第二時限目
