2019年ゴールデンウィークも終わります。

 
 20年ほど前でしょうか、深夜のコント番組の中に
「頑固おやじの店」というのがありました。
大変印象深いコントで、私の忘れ得ぬネタでした。
「お客さん、初めに水飲むのやめてくんねーかな、ラーメンの味変わっちゃうから」。
「お客さん・・・」と次々と続く展開に夜中に腹を抱えて笑ったものです。
今でも、その記憶は色褪せません。
 
 この時期だからというわけではないですが、冒険的にあるラーメン屋に入ることにしました。
一組だけ、外で待っている夫婦がいました。
お客さんが2人出てきました。
カウンターは、食器が片付けられています。
先客のお父さんがドアを開けようとしたら、
「もう少々お待ちください、こちらから案内するまでお待ちください」と丁寧に声がかかりました。
よく見ていると、テーブルを整え、立ててあるレンゲの並びまで整え、準備が完了した時点で
二人は案内されたのです。
(この店、かなり神経質でいいな、ワクワクしてきた)
同様に私たちも案内されました。
「水が美味い」←ホンモノです。
ラーメンが出来上がると、主人が先客に説明を始めました。
 
 お客さんいいですか、味玉は崩さないでください 最後にすくって食べてください
 初めに二口ほどスープを召し上がってから麺にいってください 
 うちは素材で勝負してます。まずそれを味わってください。
 命を頂いているわけですから。と、念を押されていた。
 さらに、
 麺はを引っ張るのはやめてください。ラーメンの味、変わっちゃうから。
 ラーメンの味、変わっちゃうから。
 でたー!
ついに、出合いました。「がんこ親父の店」まさかこのセリフ、本当に聞くとは思いませんでした。
 
いいですね。こういうの、自分のラーメンを自信もって
提供している。
上っ面だけの愛想とマニュアルで客商売やってるような店ではありません。
私たちのラーメンができました。
「私がカウンターに置きますから、お客さんは手を出さないでください」。
はい。畏まりました!(こちらも緊張です)
「どうぞ!」と。「初めに二口スープから…」(さっきあちらで話したの聞いてたと思うけどという笑顔で)同様に説明をうけました。
 
(うわーおいしい) ←心の中で
 
何も言うことがありません。
私は妻と顔を見合わせました。
 
 
その頑なに後始末や仕込みをしている店主の背中を見ていたら
微笑ましくなり、♪『  LONGER  /  DAN FOGELBERG  』 
が心に流れましたね。(冗談ではなく)
 
普通、店主が「頑固おやじ」と評されるのは、大抵、偏屈だとか、
不愛想だとか、そういう話題になるものです。
 
しかし、私たちの出会った親父はそういうものとは全く違うものでした。
ここに職人あり。という印象しか受けないのです。
 
すがすがしい気持ちで、店を後にしました。
 
言わば、これはありがたい貴重な体験です。