ポリュカルポス | 泉中央キリスト教会 白岩牧師のブログ

ポリュカルポス


白岩牧師の体験
(ポリュカルポス)


ローマの宗教観を書いていて、寛容ですばらしいかのような印象を与えたのではと思い、当時の殉教者の中で、有名なポリュカルポスの事を書こうと思いました。

多神教の行き着く所は、どこでも、何時の時代でも変らないようですが、人と神の境界が曖昧になる事です。

ローマの神々も、非常に人間的(失敗したり、恋をしたりなど)であり、人も神にしてしまいます。

典型が、皇帝を神とする事です。

ユダヤ人もこの点で、反発したのです。

ローマ人側から言えば、我々はユダヤ人の拝む神を認めるのだから、ローマ人が神として認める者も認めろ。

という事になるのでしょうが、神が、世界を造った唯一の方だと信じている者には、人を神として拝む事は出来なかったのです。

するならば、神の前に罪を犯すことになる。

キリスト教徒も、この点では変らない上に、公認されていない宗教です(当初はユダヤ教の一派と思われていました)から、ローマ帝国において迫害が激しく行われました。


ポリュカルポスは、小アジアの西にあるスミルナの地の教会で監督(地域の長)をしていました。

彼は、イエス様の12弟子の一人、ヨハネ(ヨハネの福音書、手紙、黙示録を書いた)の弟子でした。


余談ですが、最近、カトリックでは、365日毎日の守護聖人(教会の守護聖人もあるようです)を決めていると知りました(聖人の数が多くて、国によって変るようです)。

ポリュカルポスは2月23日の守護聖人だそうです。

東方教会(ロシア正教やギリシャ正教など)も聖人にしていますが、聖公会(イギリス国教会)やルーテル教会(ドイツ、スウェーデンなどの国教会)にも聖人(の考えがある事自体に)とされているのにはちょっと驚きました。


とにかく、キリスト教の世界では有名な方です。


AD110年頃にピリピ教会に宛てたポリュカルポスの手紙には、

「徳を重んじ善を行う生活をし、キリストにある信仰によって救われたのだから、万一、死ぬような事があっても信仰を捨ててはならない。」

とあり、当時の殉教が日常化する中での信仰を励ましています。

そのポリュカルポスが、農家の信徒の家で集会があり、滞在していた時、密告があり、農家の家に兵士がやってきました。

集まっていた信徒達は、ポリュカルポスを隠そうとしましたが、彼は、少しも恐れず、静かに二階から下りてきて、兵士達に挨拶しました。

そして、家の者に、

「兵士の方々に食事を出してあげて下さい。」

と頼み、兵士達を親切にもてなしました。

「連れて行く前に、一時間ほど祈らせて下さい。」

と頼むポリュカルポスに、兵士達は許可を与えました。

跪き、祈り続けるうちに、喜びに溢れたポリュカルポスは、兵士達に、イエス・キリストの救いの話を始めました。

兵士達は、この老聖徒の話に心動かされ、逮捕する事を恐れました。

しかし、ポリュカルポスは、兵士達が命令違反をする事を心配し、市長の元に連れて行ってくれる様に頼みました。

役人達はりっぱな人物である事を知り、改宗させて命を助けようと、何人もやってきましたが、ポリュカルポスの固い決心を揺るがす事は出来ませんでした。

自分たちの善意を受け入れないポリュカルポスに役人達は怒り、彼を、遂に死刑場に引き出しました。

その時、突然天から声がしました。

『ポリュカルポスよ、勇め!』


聖人として名高いポリュカルポスの処刑を聞きつけて、多くの人々が、闘技場に集まりました。

執行官が、最後のチャンスを与えようと、

「キリストを呪え、そうすれば助けよう。」

と声を掛けました。

「私は八十六年間、キリストに従い続けてきましたが、キリストは、その間ただの一度も私に不幸をお与えにならず、恵みのみを与えてくださいました。こんなにまで私を愛してくださるお方を、どうして呪う事ができましょう。

「もし命令に従わなければ、猛獣の餌にするがよいのか?」

「たとえ、どのようにされても、公平に扱って下さる神の御許に行くだけです。」

「猛獣を恐れぬのなら、火で焼き殺すが、どうじゃ!」

「火ですとな。それならば、しばらく燃えてすぐ灰になるだけです。本当に恐ろしいのは、来るべき審判の火と永遠の刑罰である。」

そう語るポリュカルポスの顔は、喜びと確信に満ち、微笑んでいます。

それを見、その答えを聞いていた群集は激怒、

「火で焼け!」

「焼き殺せ!」

と叫び、たちまち山のような薪が運び込まれ、磔にされたポリュカルポスの回りにうず高く積み上げられ、火が放たれました。

火炎は天をも焦がす勢いで燃え上がりました。

ところが、炎はまるでアーチのようにポリュカルポスの身体を取り囲み、少しも焼けないのです。

執行官は、やむなく兵士に命じ、ポリュカルポスのわき腹を槍で突かせました。

それで、遂にポリュカルポスは死に、炎に焼き尽くされました。

この有様を見た、群衆は、ポリュカルポスが神と共に居た事を認めざるおえませんでした。