令和元年5月31日金曜日
座・高円寺1 ソワレ

JACROW #26
日本劇作家協会プログラム
作・演出:中村ノブアキ

小平伸一郎
狩野和馬
吉田テツタ
谷仲恵輔
佐々木なふみ
堤千穂
福田真夕
芦原健介
真田真

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作品解説・みどころ

2015年秋に初演した作品の再演です。
経営危機にあった電機メーカーで働く技術者たちが大手メーカーに吸収合併されることが決定したことで右往左往するというお話。
バブル崩壊以降もがき続ける日本の悲劇であり、大企業で働くビジネスパーソンたちの喜劇でもあります。
タイトルは当時、第20回という節目に原点回帰を宣言してネーミングしました。
すなわちJACROWというカンパニー名の語源にした“ザクロ”をイメージして。
ごく普通な見かけに内包するグロテスクな中身を表現します。
物語を通して「働くとは」「企業とは」「組織とは」を問いかけます。
3年半前の自分にもう一度向き合おうと思います。
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部長をリストラするために、副部長にあなたもリストラ対象になってると告げ、あなたのポストは確保するから、部長が辞めるような工作に協力せよと迫る。部長は去り、副部長はカスタマーセンターという畑違いの部署に配置変えになる…

と、いうような、ヒリヒリする話の連続で、胃が痛くなる。サラリーマンは無理だな、と、思った学生時代の判断は正しかった…気がする。が、同時に自分はこのような課題から逃げてしまい、この芝居が問いかけてくるような職業観の形成がきちんとなされず、だらだらと生きてしまったなとも思う。

そして↑の工作を迫るキャリアウーマンが、今回の福田真夕さんの役。憎まれ役で、恐怖を感じた。あまりにドライなので、終演後必ず会って、ニコニコしたお顔を拝見してから帰らねば、彼女のイメージが変わってしまうと思ったほど。

そんなドライなキャリアウーマンであっても、自らのミッションを達成しなければ切られる運命にあるという描写があり、そこにも組織というものの本質が現れている気がした。

最も印象深いシーンは、主人公の野間と、同僚の蔦の価値観がぶつかり合い、やがて迫真の言い合いになるところ。長台詞の大変な場面で、見応えがあった。どちらが正義かなどまったく決めることができない。野間は天才的狂人だが、狂気があるからこそ技術の発展もあるわけで、人の世は単純ではないなと思わされた。



この芝居、ほとんどの役者さんが一人二役を演じる仕掛け。

真夕さんは、先ほどのキャリアウーマンと、主人公野間の妻の役。この妻が、真夕さんに寄せたのか?と思うほどはまってた(再演なので、それはないらしいです)。だらしない夫の態度を叱りつける真夕さん、魅力的だった。

堤千穂さん。ヘッドハンティングスカウトの女性と、若手の妊娠してる研究員が同じ役者さんというのが驚いた。


セットがすごかった。え?というようなものが舞台上に!しかも閉まる!2階のティールームもそれっぽくてわくわくした。

そして何より主人公の野間役の役者、小平伸一郎さん。
もう、役柄のような人としか思えない。終演後、ロビーでお客さんとお話されてるところを見かけたが、舞台上よりずっと小柄に見えた。よい役者さんほど、そういうギャップが大きい気がする。


この劇団は、チケット代の割引がある。40歳以上だと割引になるのが嬉しい。

次回作は年末だそうだ。真夕さん、所属だから必ず出演する。楽しみ。

↓舞台とはまったくの別人


ロデオ★座★ヘヴン「日本演劇総理大臣賞」
に出演が決まっています。
手にしてるのは、そのリーフレット。
他所の劇団なので、「さりげなく」とおっしゃってました