令和元年5月30日木曜日
赤坂RED/THEATER、ソワレ

TAIYO MAGIC FILM 第13回公演
脚本・演出 西条みつとし
出演 神保悟志、中村涼子 ほか

満席で、追加席も出ていた。
この劇場は椅子が広く段差もあり、とても見やすい。


以下、ネタバレあります。
ご注意ください。

テーマをどうとらえるか、いろいろあると思うが、僕は自殺が大きなテーマと感じた。50代の男性の自殺の割合が最も高いという台詞があったが、自分もその年代なので、他人事とは思えなかった。

自身の損得を抜きにして、他人を支援することを信念とする主人公は、助けた相手の(故意とはいえない)裏切りに会い、経済的な窮地に陥り、やがて自殺を決意するまでに追い込まれる。しかし息子が結婚したいという娘を連れて来たことで、男は希望を見いだす。ところがその娘は、人に知られたくない大きな秘密を抱えていた。

ふたつの話が同時進行していたり、嘘を突き通すための仕掛けがあったり、凝った作りになっているが、結局は「情けは人のためならず」という話で、突飛な話ではない。始めからいろいろ散らかるが、最後はそこに収斂するので、見終わった後はすっきりとする。

話のテーマに自殺が絡んでいたりするので、重くてつらいのだが、中村涼子の存在によって、重さがしのげる。やや胴長の彼女の体のフォルムも、様々なことをごまかしまくる役柄にぴったりだった。

要するに、中村涼子は最強だった。



ただひとつだけ、あれ?と思ったことを書きます。

主人公の母親は、シングルマザーで、息子を大学に進学させるために身を粉にして働く。息子は、高校の同級生から、お前の母親は風俗店で働いてるぞと罵られ、ひどくいじめられる。息子は母親を軽蔑し、その後母親が死ぬまで関係を断絶してしまう。

母親の死後、風俗店で働いていたというのは誤解で、本当はスナックで働いたということが判明する。高校の同級生が目撃したのは、進学費用を借り入れるために、知り合いの男が経営する風俗店を訪れた母親の姿だったのだ。

そんな都合のいい話があるかいな、とも思ったが、それはお芝居だから、別によい。問題は、母親は射精産業に従事していたのではなく、スナック勤めだったのだ、風俗のような汚れ仕事はしてませんでした、めでたしめでたしというニュアンスで描かれていたこと。これは、もう、明確に風俗という職業に対する差別です。

息子は、大学の進学費用を母親が出してくれたことを知らなかったのだが、その費用を捻出するために、母親は風俗店に勤めた、で何がいけないのかな?苦労の多い仕事をしてまで、自分の夢を支援してくれた母親を恨んでいた自分を激しく後悔する、でいいんじゃないの?





神保悟志の芝居は、圧倒的。声からして、違ってた。

セットは素晴らしい出来。個人的には、小さなベランダの下の踏み台やホースがリアルでよかった。

歌の演出も見応えがあった。

全体としては、おすすめです。



客席に、かもめんたるのう大さんいたな。