今日は、辻調理師学校の辻さんの本。
フランス料理の第一人者でいらっしゃるわけですが、
驚いたことに元新聞記者。グルメな生活を送ってもいなかったところ
奥様とのご結婚を期に料理の世界に足を踏み入れたそう。
確かに、このシリーズは全3巻で、一冊の分厚さを見るにつけ、
元々本を愛し文章を書くことに慣れていなければ気を失ってしまいそうな
分量です。
この本は、料理の話というよりはむしろ、
料理を介して彼に強い影響を与えた人や物事とのエピソードが語られます。
だいたい、「料理人の休日」というタイトルがいい。
例えば、秀才コースを歩んできていつもニヒルな雰囲気の先輩が
「人は苦労して立派になるなんてことをいうが、順風満帆の方がいいに決まっている。
しなくていいんなら、しない方がいい。苦労が顔に出るのがなおいけない。」と言ったり、
開口一番「かわいそうな開高です」と、いかにもあわれをさそう声で電話をかけてきて
質問攻めにした挙句、
ニヤリとしながら、「そうなの、君でも知らないの」と嬉しそうに言う小説家がいたり
みんないそいそと勝手気まま。
それについ魅力を感じ惹かれてしまう辻さんの温かなまじめさは
私が見習いたいと思う姿そのものです。
- 辻静雄コレクション 2 (全3巻) (ちくま文庫)/辻 静雄
- ¥1,260
- Amazon.co.jp