～方丈記より～ ゆく川の流れ
川の流れは絶えることはなく、そこを流れる水は同じ水ではない。
川のよどみに浮かんでいる泡は、消えたり新しくできたりと、
川の中で そのまま長くとどまっている事はない。
この世に生きる人、人々が住む場所も また同じである。
玉を敷いたような美しく立派な都の中に 棟を並べ、
皆、屋根の高さを競っている。
身分の高い者も 低い者も、人の住まいというのは
時が進んで無くなる訳ではないが
調べてみれば 昔から在る家というのはまれである。
去年の火事で焼けて 今年できた家もあれば、
大きな家が滅びて 小さな家になったものもある。
そこに住む人も同じで 場所は変わらず住む者は多いが、
昔から住む人は２、３０人中 １人か２人程度である。
朝、死ぬ者あれば 夕方に生まれる子供がいるというのは
丁度水の泡と似ている。
わからない･･･
生まれる人や 死ぬ人というのは どこから来て どこへいくのだろうか。
わからない･･･
私たちは 生きている間だけの仮の住まいである家に心悩まし、
何のために 豪華にしようとするのだろうか?
家の主と住居の関係をいうなれば アサガオとその葉についている露に似ている。
露が落ちて花が残ることがある。残ると言っても朝日がさすころには枯れてしまう。
あるいは花がしぼんでも露が消えずに残っていることもある。
消えないと言っても 夕方になるまで消えないとうことはない。
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