つくり笑いの不誠実と、公務員も予備自衛官になることを閣議決定する非民主的プロセス -今度は公務員への成り手不足が生じる可能性も
高市首相のつくり笑いが不快だという声に接することがしばしばある。高市首相のつくり笑いが不快に感じられるのは、「表向きの表情」と「内面の感情」のズレを感じ、それが不誠実に見えるからだ。
高市氏は誠実な性格だとは言い難い。高市経済安保担当相(当時)は、23年3月3日の参院予算委員会で自身が「テレビ朝日に公平な番組なんてある?」などと語ったことが記されているとされる総務省文書が問題にされると、「悪意を持って捏造されたものだ」と主張し、小西洋之参院議員(立憲民主党)から「もし捏造でなければ議員辞職するのか」と迫られると「結構ですよ」と答え、自身に関する記述が事実なら議員辞職するつもりであると述べた。官僚が行政文書を捏造するとは考えにくく、文書に書かれてあることは事実であったに違いない。高市氏が潔い人であるならば、議員辞職していただろう。2月の総選挙前もれいわ新選組の大石晃子共同代表から自民党と旧統一教会の問題を指摘されると、「名誉棄損ですよ」と平然と言ってのけた。「至誠」とか「誠実」からは程遠い印象を受ける。
米国のウォルツ国連大使は3月22日、CBSのテレビの番組で、高市首相がホルムズ海峡に自衛隊による支援を「約束した」と述べた。高市・トランプ会談後の高市首相の説明のニュアンスとすれば、憲法など日本の法律的制約を理由に自衛隊の派遣はできないとトランプ大統領に伝えたというものだった。しかし、トランプ大統領は12日にも、フォックスニュースのインタビューで、「日本が得る石油の93%はホルムズ海峡を通過しているのに、日本は米国を助けなかった。4万5000人から5万人の米兵が守り、保護しているのに」と日本批判を繰り返した。もし自衛隊の派遣をトランプ大統領に伝えていたとすれば、国民とは異なる説明をしていたことになる。
石橋湛山元首相は「大日本主義の幻想〈1921年〉」の中で次のように語っている。
「朝鮮・台湾・樺太・満州という如き、わずかばかりの土地を棄つるこにより、広大な支那の全土を我が友とし、進んで東洋全体、否、世界の弱小国全体を、我が道徳的支持者とすることは、いかばかりの利益であるか測りしれない。」
画像
石橋氏が「弱小国」として意識した国の中には当時は日本とは接触が稀な中東イスラム諸国も入っていたと思う。第二次世界大戦後、イスラムの人々は日本に対する「道徳的支持者」であり続け、それが日本の有形、無形の財産になってきた。石橋は「何でも人の言う事をハイハイというのが平和をもたらす方法ではありません。理不尽な事を言われれば果敢にこれに立ち向かうことも重要です。」とも語っている。この考えは「何でもハイハイ」の現在の自民党の国会議員たちに向けられるべきだ。
「保守本流」の対極にあるのが岸信介の流れを汲む「自民党本流」であり、特に安倍政権による安保法制以降、いまの高市政権もそうだが、自民党はこの「自民党本流」が支配するようになってしまった。後藤田正晴は、「自民党本流」の岸信介について次のように語っている。
「僕は個人的には、戦犯容疑で囚われておった人が日本の内閣の首班になるというのは一体どうしたことかという率直な疑問を持ちました。文字通り統制経済の総本山の方ですよね。そして中央集権主義的な行政のあり方、政治の主張、これを色濃く持っていているかたですよね。(略)これは、戦争に対する反省がないからです。それが、いまにいたるまでいろいろな面で尾を引いている。(講談社刊『情と理 カミソリ後藤田回顧録』より)」
画像
石橋や後藤田が所属した自民党は、2015年に安全保障関連法案の内容を説明するための政策ビラ100万枚を刷った。ビラでは、「戦争に巻き込まれることも徴兵制も、決してありません」などと訴え、「迫る危機」として中国の軍備増強を強調した。ビラには「国民の命と平和な暮らしを守る大切な法律です。『スキのない構え』でさらに抑止力を高めます」と書かれてあった。自衛隊が戦争に巻き込まれる組織になれば、そんな物騒な組織に子弟を入れたいと思う家庭は大幅に減ることだろう。その時は「徴兵制」が待っている。
政府は3日、公務員が有事や災害などの際に招集される予備自衛官として活動する際の特例に関する法案を閣議決定した。簡単に言ってしまえば、公務員も予備自衛官として駆り出されることになるということで、現在予備自衛官の充足率は7割程度だそうだ。こんな重要なことも閣議決定してよいのだろうかと思ってしまう。国民に対して満足な説明もなく、国会での議論もなしに決めてよいのだろうか。公務員が危険な任務に就く自衛官になる可能性があるならば、今度は公務員の成り手も減ることだろう。