私は子どもの頃、貧しい家庭で育ったので多くの人とのこころの
繋がりを大切にしています。
私の高校時代の同級生がハローワークに行き仕事を探していました。
彼女はその中で、老人ホームのシーツ交換の仕事を見つけました。
早速彼女は履歴書を持ってその老人ホームに行き、面接を受け
採用されました。
仕事を始めて知ったのですが、シーツ交換が終わるとトイレ掃除が
ありました。
彼女はここの仕事がシーツ交換とお部屋の掃除と聞いていたので、
まさかトイレの掃除までするとは思っていませんでした。
1日に何か所ものトイレの掃除をするのは大変でした。
いつまでもその臭いと汚れが体に染みついているような気がしました。
最初の頃はトイレ掃除の直後の昼食はなかなか食が進みませんでした。
彼女はこんな仕事を始めたことに後悔しました。
彼女は恥ずかしくて、絶対に、この仕事をしていることを知り合いには
知られたくないと思いました。
そのうちトイレの掃除は慣れましたが、一緒に働く介護職員の仕事を見て、
彼女はその仕事の違いに落ち込んだようです。
介護職員はお年寄りに喜んでもらえる肌と肌が触れ合う温かい仕事、一方、
彼女はひとりぼっちで冷たい便器を相手に汚れをごしごし取る仕事。
トイレ掃除の合間に、介護職員の仕事を見ていると、こうしたら
もっとお年寄りが喜ぶのではないかと考えるようになりました。
彼女は仕事に慣れてくるにつれて、お年寄りにできるだけ
一声かけるようにしました。
毎日の一言の積み重ねで、彼女は一人ひとりのお年寄りの気持ちが
それぞれわかるようになりました。
だんだんお年寄りと彼女との間には信頼感が生まれました。
そして彼女が老人ホームで働き始めて5年が過ぎました。
職員は介護の技術についてはよく知っていますが、
お年寄りのこころについてはわからないことが多いので、
よく彼女に相談するようになりました。
そんな頃、人事異動で別の施設から男性の職員がやってきました。
彼は仕事が早いのですが、お年寄りの気持ちより仕事の効率を
優先しました。
食事の時間になるとみんなが食堂に集まりますが、自力で車いすを
操作するお年寄りもたくさんいました。
そんなお年寄りに対して「もっと急げ」と強い口調で言いました。
でも、体が不自由な人は思うように早く動けません。
彼女はそれを見て彼に、もっとやさしくするように言いました。
すると彼は「トイレの清掃員のくせに生意気なことを言うな」
と怒鳴りました。
彼女はその言葉に怒りを抑えきれませんでした。
彼女は力の限り「私は同じ人間としてお年寄りがかわいそうだから
言っているのです、あなたには人を愛する気持ちはないのですか」
と強く言いました。
彼はその迫力に驚き、何も言いませんでした。
彼にも少しは良心があったようです。
それから彼は反省したのか、みんなにやさしくなりました。
彼女は最初の頃、トイレ掃除なんて嫌だと思っていましたが、今では
どんな仕事でもこころが繋がれば素晴らしいと思っているようです。
彼女はこれからもトイレの掃除を誇りを持って続けるつもりだそうです。
最後まで読んでいただきありがとうございます。