4月1日(火)

2月に続いて3月も、マンガを除くと20冊に到達しませんでした。
体調が悪かった時期に、気持ちが読書に向かなかったのが原因です。
っていうか、ずっと動画を見ていた。
今月は娘の家に結構長く滞在する予定ですが、その間は図書館から本を借りないので、読書もあまり進まないはず。
せいぜい10冊くらいかな。

★5つは3冊。

薬丸岳の『友罪』。
部外者の立場から他人を断罪するのは簡単だが、親しい人が過去に罪を犯した時、自分はそれまでと同じように付き合えるのか。
何年たてば過去は許されるのか。
難しい問題を突き付けられた。

『奇跡のフォント』
平均的日本人よりは毎日多く文字を読んでいると自負していますが、それでも一つ一つのフォントのデザインに込められた意味まで、思いをはせることがありませんでした。
デザイナーが作成しているものだということは知っていましたが…。
誰もが、自分の読みやすい字体を選択して字を読める環境になることは、障害のあるなしや高齢化などと無関係に、今後目指していくべきと思います。

『先生、イソギンチャクが腹痛を起こしています』
動物が好きなので、動物行動学の本は洋の東西を問わず何冊か読んでいるけれど、小林先生の本が一番面白いです。
笑えるという意味で。
学生さんたちも、それぞれにいい味を出していて、充実した大学生活を送っているなあと少し羨ましくなります。

3月の読書メーター
読んだ本の数:22
読んだページ数:7399
ナイス数:678


創元SF文庫総解説創元SF文庫総解説感想
SFは早川、ミステリは創元。そういう棲み分けを心の中でこっそりしていたつもりでしたが、意外と読んでいました創元のSF。記念すべき創刊一号目がフレドリック・ブラウンだったのも意外。超嬉しいけど。日本作家のSFは2007年まで刊行していなかったというのも驚き。何かこだわりがあったのでしょうか。嬉しかったのは、執筆陣の中に森下一仁の名前があったこと。図書館で借りて読んだけど、やっぱりこれ、買った方がいいかも。総解説って好きなんですよね。★★★★☆
読了日:03月02日 著者:

QED ベイカー街の問題 (講談社文庫 た 88-3)QED ベイカー街の問題 (講談社文庫 た 88-3)感想
今度はシャーロキアンのパーティーでの殺人事件に巻き込まれるとは、人嫌いにしてはずいぶん社交的な場にいたものだな、桑原崇。と思ったら、またもや大学時代のつながりで、しかもシャーロキアンに物申したいことがあったから、という理由付き。シャーロック・ホームズのシリーズは、一応全部読んだはずだけど、さほど詳しいわけではなかったので、シャーロキアンといわれる人たちが、重箱の隅をつつくような細かなところにこだわりながら自説を展開していく様は、非常に面白かった。でも、そのうえで、今作はちょっとマニアックすぎたと思う。★★★★☆
読了日:03月03日 著者:高田 崇史

聖なる洞窟の地 上 エイラ 地上の旅人 14聖なる洞窟の地 上 エイラ 地上の旅人 14感想
この巻ではまた、のっけから〈夏のつどい〉である。今度は、乳飲み子を抱えているので、それほど大きな事件に巻き込まれることはないが、エイラに反感を抱いている3人については進展がないことがもどかしい。そろそろ決着つけろよ、と思ってしまうのは、とにかく繰り返しが多いから。大ゼランドニが自分の後継と見込んだエイラを連れて、修行の旅に出る。前巻から突然クローズアップされるようになったのが、洞窟に書かれている絵。マンモスやそのほかの動物たちの絵が描かれた洞窟で、女神の機を感じるのが修行なのである。★★★★☆
読了日:03月06日 著者:ジーン・アウル

愛の話 幸福の話愛の話 幸福の話感想
スピリチュアルな部分は私にはよくわからないのでおいておくとして、彼の物言いが好き。忖度なく確信をズバッと突くところ。読んでいて気持ちがいい。例えば、「幸せとは探しに行くものでもなければ、与えてもらうものでもない」と言う。自分の心の持ちようなのだ。それは謙虚であること、感謝の気持ちを持つことで得られるのだ、と。また、「無償の愛」というのは簡単に得られるものではない。たとえ親子の間だとて、見返りを求めてしまいがちであるけれど、だからこそ無償の愛が尊いのだ、と。見返りを求める心って、無自覚なんだよなあ。★★★★☆
読了日:03月07日 著者:美輪 明宏

カメレオンの呪文 (ハヤカワ文庫 FT 31 魔法の国ザンス 1)カメレオンの呪文 (ハヤカワ文庫 FT 31 魔法の国ザンス 1)感想
魔法世界で魔法を使えない主人公のビンク。魔法を使える者ばかりが住んでいるとはいえ、その魔法っていうのが結構しょぼい。それより魔法生物が怖い。とはいえ、国の掟で25歳になって魔法を使えない者は、国を追放されるのだ。でまあ、いろいろあって、ビンクの魔法とは一体何かとか、なぜ発現しないのかとかが、すとんと腑に落ちるのだけど…やっぱり魔法世界の冒険部分が面白いのよね。文章だけで読むのがもったいないくらい、いろんな魔法が、いろんな魔法生物が、これでも買って出てくる。これはぜひ紫堂恭子さんに漫画化していただきたい。★★★★☆
読了日:03月10日 著者:ピアズ アンソニイ

ミステリと言う勿れ (15) (フラワーコミックスα)ミステリと言う勿れ (15) (フラワーコミックスα)感想
特別ライカさんのことが好きだったわけではないけれど、ライカさんと一緒にいる時の整くんが本当に幸せそうで。最初から別れが決まっていた出会いだったけど、この間のライカさんは過去一表情が豊かで楽しそうで、だから却って寂しさが募ってしまう。消えるタイミングを自分で決められる強さ。ライカさんも整くんのことも知らない千夜子を傷つけないように、最後までそれを貫く優しさとか。二人の心が美しくて、風景も美しくて、泣けます。レン君、後は頼んだぞ。
読了日:03月11日 著者:田村 由美

口語訳『古事記』 完全版口語訳『古事記』 完全版感想
神も天皇もやっていることは恋愛か戦。子どもの頃「ローマの神さまって恋愛してるか戦ってるかじゃん」と思ったことが、ブーメランのように返ってきた。『古事記』は歴史書にしてはエンタメ寄りで、繰り返しのことばや対句などを駆使して、物語性を高め、時には破綻したストーリーや人物(もちろん神も)もいたりして、ちょっと体制批判な部分もあったりする。特に出雲の国譲りのおおもとである大国主命の部分は『日本書紀』にはないんだって。では、『古事記』が面白いかと言うと…今となっては、それほどでも。しかし古代史の補助としては必要。★★★★☆
読了日:03月13日 著者:三浦 佑之

友罪 (集英社文庫)友罪 (集英社文庫)感想
ジャーナリストになろうとしてなれず、食うに困って埼玉にある寮付きの工場で働くことにした益田。同じ日に採用された鈴木とともに、寮生活を始める。人とのつきあいを極端に避けるような鈴木に益田は声をかけ、徐々に鈴木は皆とうちとけてゆく。だが、十四年前に日本中を震撼させた連続児童殺傷事件の犯人ではないかと疑いを抱いたことから、話は加速する。最後まで、書かれているのは鈴木の周りの人々の気持ちだ。ただ、鈴木は益田のことを初めてできた親友だと思い、誰のことよりも大切にしていたことが強く伝わってきて、余計に切なかった。★★★★★
読了日:03月16日 著者:薬丸 岳

黄泉のツガイ(9) (ガンガンコミックス)黄泉のツガイ(9) (ガンガンコミックス)感想
デラさんのお父さんが初めて出てきたけど、顔出しはまだ。大きくストーリーが動くことなく、いろいろ整理の巻。影森家やデラさんたちは体を張ってるし命を懸けているけれど、それ以外の部分でも生きているのに、東村や西ノ村の人たちって、アサやユルを捕まえて天下を取ることのためだけに生きているというか、生かされているというか、そこが気持ち悪い。影森家長男・波久礼ヒカルの「誰も排除されないやさしい世界を描きたいです」というセリフは、いつか何かの伏線になるのだろうか。アスマがちゃんと兄ちゃんのファンで可笑しい。
読了日:03月18日 著者:荒川弘

聖なる洞窟の地 中 エイラ 地上の旅人 15聖なる洞窟の地 中 エイラ 地上の旅人 15感想
この作者がまじめで勉強熱心なのはわかる。だから、知りえた事実をすべて作品内に盛り込もうとしたのだろうけれど、だとしたらなぜ挿絵をつけないのか。以前から、エイラたちの作る道具、衣装などのネアンデルタール人とクロマニオン人の違いなど、挿絵があればなあと思っていた。前作辺りから洞窟の中に描かれた絵についての描写が増えて、その気持ちは圧倒的に強くなった。だって、洞窟の形状も質感も、描かれている絵についても、全然文章から見えてこないのだ。事細かに書かれすぎていて、逆に多少うんざりだ。★★★☆☆
読了日:03月19日 著者:ジーン・アウル

QED 東照宮の怨 (講談社文庫 た 88-4)QED 東照宮の怨 (講談社文庫 た 88-4)感想
つくづく和歌というものは侮れない。表面に見えている言葉と、言葉の中に隠された裏の真意。今作は、「三十六歌仙絵」から始まる家康の呪だ。なんとしてでも天皇家を押さえて徳川家を上に、という野望。いつから家康はそんなことを考えていたのだろう。それを実行したのが天海僧正と言われている。が、天海僧正にはさらに隠された野望があった。…僧正にまで上り詰めながら、野望は捨てられないの?悟りは開けなかったの?歴史は好きなんだが、宗教が絡むと途端に難しくなってしまう。まあ、これからもボチボチ勉強するとして。★★★★☆
読了日:03月20日 著者:高田 崇史

東京ナイトメア: 薬師寺涼子の怪奇事件簿 (講談社文庫 た 56-18)東京ナイトメア: 薬師寺涼子の怪奇事件簿 (講談社文庫 た 56-18)感想
数十年ぶりに勘違いが是正されました。私、薬師寺涼子と小早川奈津子をごっちゃにしてました。どちらも田中芳樹の作品に登場する人物です。薬師寺涼子は、いい。いや、性格は悪いけど。でも、自身の正義感に基づいて行動するからね。手段は問わないけど。作者がストレス解消のために描いたというだけあって、読んでいるほうもストレス解消ができる。田中芳樹お得意の、軽妙な会話のやり取り。目に浮かぶかのような、派手で大仰なアクションの数々。きっかけは勘違いだったけれども、これからもシリーズを読んでいこうと思う。★★★★☆
読了日:03月22日 著者:田中 芳樹

魔王の聖域 (ハヤカワ文庫 FT 44 魔法の国ザンス 2)魔王の聖域 (ハヤカワ文庫 FT 44 魔法の国ザンス 2)感想
前巻では、自分が持っているはずの魔法の力を知るための旅に出たビンク。結果として、新しい王をザンスにもたらし、愛するカメレオンと結ばれた。今巻では、なぜザンスには魔法が存在しているのかという謎を解き明かすための旅に出る。結論としては、魔王ザンスが地底に閉じ込められており、そこから染み出た魔力がザンスの地に魔法をもたらした、ということだったのだが。ビンクは魔王を解放する。一瞬にしてザンスから魔法が失われ、魔王が逃げ出したために崩落した瓦礫の下に、友人たちは埋もれてしまった。一人残されたビンクは…。急転直下。★★★★☆
読了日:03月23日 著者:ピアズ アンソニイ

はるひのの、はる (幻冬舎文庫)はるひのの、はる (幻冬舎文庫)感想
「ささら」シリーズの最終巻。今更?と思ったけれど、もう出版されて10年以上たったのね。主人公のユウスケは、『ささら、さや』の時にはまだ赤ん坊だった、さやの息子。小学校に入る前の年から数年おきに、ユウスケは「はるひ」と名乗る少女に出会う。「はるひ」はもちろん幽霊ではない。ユウスケの成長と同じペースで成長しているから。少しずつ重なり合いながら、少しずつすれている、「はるひ」との思い出と、高校で知り合った翼や美鳥の過去の出来事。それらが織りなす結末は、想像がついたけれども。一番好きなのは、ミヤのエピソード。★★★★☆
読了日:03月24日 著者:加納 朋子

奇跡のフォント   教科書が読めない子どもを知って―UDデジタル教科書体 開発物語奇跡のフォント   教科書が読めない子どもを知って―UDデジタル教科書体 開発物語感想
本に書かれている文字が読めない、という障害があることは知っていました。UDデジタル教科書体は、年齢や障害や国籍などを問わず、誰もが読みやすい文字というコンセプトで作られています。教科書体といわれるだけあって、書き順を勉強するのにはとても分かりやすいフォントでした。横線から書き始めるときは横線の書き始め部分が少し飛び出し、縦線から書き始めるときは縦線が飛び出しているというルールを知っていたら、自然に書き順が覚えられるようになります。個人的には縦書きは明朝体の方が好きですが。★★★★★
読了日:03月25日 著者:高田 裕美

ホテル・カイザリンホテル・カイザリン感想
ホテルを舞台にした連作短篇なのかなと思ったら、それぞれ個別の作品だった。小さな悪意と混じりけのない正義のどちらが人を追い詰めるのか(降霊会)報われなかった努力の中にも自分にとって大切な核はあった(金色の風)など、ちょっとダークなものから、じんわり沁みてくる作品まで。一番ミステリ色が強いのは『未事故物件』。まさかそんなことが行われていたとは!『赤毛連盟』を想起させる作品。★★★★☆
読了日:03月26日 著者:近藤 史恵

BANANA FISH (2) (小学館文庫 よA 12)BANANA FISH (2) (小学館文庫 よA 12)感想
アッシュの兄グリフィンが殺される。アッシュは保釈で刑務所を出て復讐をたくらむが、とどめを刺すには至らない。故郷に隠れるが敵に見つかり、父親も殺される。ロスへ向かうアッシュたち。そのころアッシュに手を貸していたチャイニーズマフィアが敵と同盟を組み、ロスでアッシュを迎え撃つことに。展開が早いけれども、壮絶なアッシュの子ども時代などもしっかり描かれていて、アッシュ、英二それぞれの痛みが明らかになる。だがアッシュが英二をかばう理由も英二がアッシュについていく理由もまだよくわからん。解説で盛大なネタバレあり。
読了日:03月27日 著者:吉田 秋生

古池に飛びこんだのはなにガエル?短歌と俳句に暮らす生き物の不思議古池に飛びこんだのはなにガエル?短歌と俳句に暮らす生き物の不思議感想
ふと目に着いた『古池に飛びこんだのはなにガエル?』という書名。さて、件のカエルはなにガエルだったのかというと、ツチガエルであるというのが定説のようです。芭蕉の時代、歌に詠むカエルといえば鳴き声のきれいなカジカガエルが一般的だったのだそうですが、そういう定番の美しさではなく、見たまま聞こえたままを詠んだ中に詫び錆を感じさせたのが芭蕉のすごさ、と言われれば確かにそう。私の好きな与謝蕪村の「菜の花や月は東に日は西に」の月は、満月。なるほど、脳内に浮かぶイメージの解像度がぐんと上がりました。★★★★☆
読了日:03月27日 著者:稲垣 栄洋

先生、イソギンチャクが腹痛を起こしています!: 鳥取環境大学の森の人間動物行動学先生、イソギンチャクが腹痛を起こしています!: 鳥取環境大学の森の人間動物行動学感想
このシリーズを一気に読み上げた時、当時の最新刊も読んだはず。2015年6月刊行の『先生、洞窟でコウモリとアナグマが同居しています!』を2015年の10月に。つまり、前回読んでから10年もの月日が経っていたのか。感無量。ヤギの話もしみじみよかった。言葉をもたない動物は、どうやって感情の交流を行っているのかわからないが、すべてが本能のなせる業ではないと思いたい。傷心の友を慰めるヤギがいたっていいじゃないか。10年ぶりに読んだけれども、私のなかでは「一番笑える動物行動学の本」という立場は揺るがなかった。★★★★★
読了日:03月28日 著者:小林 朋道

図書室で暮らしたい (講談社文庫 つ 28-20)図書室で暮らしたい (講談社文庫 つ 28-20)感想
てっきり書評集荷と思ったら、エッセイ集でした。まあ、本に関すること多めですが。本当に子どもの頃から本を読むのが好きで好きでしょうがなかったんだろうなあというのが強く伝わってきました。子どもを産んで成長できたことも書かれていますが、子どもを産んで成長できる人は、子どもがいなくても別な方向から成長できる人だと思います。そのうえで、著者は子どもに寄り添った作品を書きたいと思っているわけです。子どもの時の感性を忘れないように大事にしながら。もう少し彼女の作品を読んでみようと思いました。★★★★☆
読了日:03月29日 著者:辻村 深月

クレオパトラの葬送 (講談社ノベルス タK- 19 薬師寺涼子の怪奇事件簿)クレオパトラの葬送 (講談社ノベルス タK- 19 薬師寺涼子の怪奇事件簿)感想
南米の国の元大統領、ホセ・モリタ。在任中は治安維持の名目で軍を掌握し、金も権力も使い放題だったが、国から追われる身となった今、日本に保護を求め、香港の銀行へ出向くための豪華客船上での護衛を、薬師寺涼子が押し付けられる。お決まりのアクションと軽妙な会話のやり取りの末、無事事件は解決したのだが、解せないのはやっぱり「ラ・ぺノラロスタ」だ。塩が弱点ということで、船内に海水を撒いたり塩の弾丸で打ち抜いたりするのは理解できる。しかし、塩が弱点のくせに、あんなにスプラッターに人を殺す?絞め殺せばいいだけじゃん。★★★★☆
読了日:03月30日 著者:田中 芳樹

QED 式の密室 (講談社文庫 た 88-6)
QED 式の密室 (講談社文庫 た 88-6)感想
今回は、三十年前の殺人事件の被害者の孫が、その密室の謎を大学生時代の桑原崇に解いてもらったという、過去の事件の話。しかも飲み会での話題。今回はちゃんとした密室殺人だなあと思って読んでいたのに、やっぱりちゃんとした密室ではなかった。人の心が作った階級が、同じ人間たちを見えない存在にしてしまうという苦い現実。菅原道真や安倍晴明を祀った神社があると、遠回りでもお参りしてしまう私には、大変有意義で面白うございました。★★★★☆
読了日:03月31日 著者:高田 崇史


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