1月2日(木)
師走のあわただしさと無縁の生活なので、いつものペースで読書ができました。
ただ、お酒を飲む機会が多かったので、飲んだ後は読書もできず、それがなければあと1~2冊は読めたかな。
お正月期間のうちに、読書リストを更新しようと思っているのですが、なかなか…。
これもまた、お酒を飲まなきゃいいだけの話なんですけどね。
★5つは2冊。
『猫の建築家』は、文庫サイズで読んだのですが、これ絵本サイズで出てなかったかしら?
文庫サイズでもとっくりと絵を眺め倒し、お目当ての猫がどこにいるか探しました。
文章で哲学を感じ、イラストで絵本を感じる読書。
サイコーじゃないか。
『ここに物語が』
ここ最近の読書で、私は文系の割には感性より論理寄りなんだなあと感じました。(あれ?非論理?)
だから理系の人の文章を読むのが好きなんだ。
梨木香歩については『西の魔女が死んだ』で感性を揺さぶられ、号泣した割には、彼女の書く論理的な話(特に地球環境についてとか、自然科学について)に刺激を受けることが多い。
物語の行間に含まれる情報の多さ、理性と感情のバランスの良さが、きっと好きなんだと思う。
12月の読書メーター
読んだ本の数:24
読んだページ数:8646
ナイス数:658
特捜部Q―アサドの祈り― (ハヤカワ・ミステリ 1957)の感想
ついにアサドが自分の過去をQのメンバーに語る。それは国際紛争地で手柄を焦った人物に巻き込まれたことによる、悲劇だった。逆恨みによって家族を人質に取られ、16年も安否がわからず苦しんでいるアサド。ついにアサドの前に現れた家族の姿は…。アサドの目の前で彼の家族を殺すことと、イスラム過激派としてのテロ行為をすること。アサドの宿敵ガーリブは、その二つを人生の目標として生きてきた。今回の事件で、カールとアサドは過去最高の信頼関係を築いた。だからカールの事件では、アサドにそばにいてほしいのだけど。★★★★☆
読了日:12月01日 著者:ユッシ・エーズラ・オールスン
(新装版)三国志 八の巻 水府の星 (ハルキ文庫 き 3-48)の感想
赤壁が終わり、気の抜けた感がぬぐえない。本来ならまだ天下の情勢は定まっていないのに、なんでこんなに「終わった」感が強いのだろう。膠着状態の間延々と続けられる一人語り、または部下に対してかます薫陶など、はっきり言って鬱陶しい。そういうのは行動で示し、行間から読者が読み取るものだ。さんざん大物感を煽ってきた馬超が、一瞬で敗走する。周瑜亡き後の呉も、一瞬で舞台から退場。荀彧死す。「臥竜」(孔明)も「鳳雛」(龐統)も見せ場なし。一般的な『三国志』のヒーローに出番がないので、作者の思想が前面に出てきちゃって萎える。★★★★☆
読了日:12月04日 著者:北方 謙三
写楽殺人事件 (講談社文庫 た 43-1)の感想
写楽は謎の人というのは、たぶん高校の時の日本史でも先生が雑談として話してくれたような気がします。でも、たった10ヶ月の活動期間中、100枚以上の浮世絵を描いた、そのすべてが蔦谷重三郎のところから出版されていたとは知りませんでした。蔦谷重三郎と言えば、来年の大河の主人公じゃありませんか。こりゃあいいタイミングで予習ができるぞと、ほくほく読み進めると、これが本当に面白い。浮世絵には全然詳しくないけれど、歴史は大好物。写楽とはだれか?蔦谷が大躍進したのはなぜか?源内、田沼、秋田蘭画…説得力ある説と思うんだけど。★★★★☆
読了日:12月06日 著者:高橋 克彦
The MANZAI (4) (カラフル文庫 あ 1-10)の感想
メグの父と秋本の母が結婚したら、メグの恋はどうなる?っていう第三巻の話は全く進展せず、今度は高原と森口の話。森口がスーパーで高原の母親から何やら文句を言われているところを、ついその場に居合わせたメグが余計な口出しをしたせいで、気まずい雰囲気に。そして次の日、高原も森口も学校を休んだ…。というのが今回のメインのエピソードのはずなんだけど、とにかくそこにたどりつくまでが長い。ずっと秋本と歩のボケと突っ込みという態のいちゃいちゃ。一章から三章までがずっとそれ。うんざり。この作者とは合わないのかもしれないなあ。★★★★☆
読了日:12月07日 著者:あさの あつこ

魔法の言葉の感想
700ページを迎えるまで、どこにどう収まるのか全然先が読めない物語でした。敵はわかっている。不死身のスネーク・ヘッド。しかし打つ手打つ手がことごとく失敗したり裏切られたりで、全然予定調和に向かっていかない。コルネーリア・フンケの書く作品なので、勧善懲悪とは限らない苦さが予想される。案の定、今回一番作品をひっかきまわしてくれた奴は、まんまと逃げおおせた可能性が残されている。罪のない子どもたちはたくさん死んだのに。私は本の中の世界に住みたいと思ったことないんだけど、結局みんな本の中の世界で生きるのね。★★★★☆
読了日:12月08日 著者:コルネーリア・フンケ
猫の建築家の感想
論文でも散文でもない森博嗣の文章は、詩だ。詩は哲学を含み、数学を内包する。またも思い知らされる。詩に、哲学に、数学に排除される自分を。ああ、ほんと苦手。多分この3つに共通する概念は『真・善・美』であり、私はそれをうまく掬い上げることができないのだと思う。「造形」は機能の表現かもしれない。しかし、いつか造形は崩れてゆく。変化するもの、動くもの。内側と外側の間にある部分。猫の建築家は世界を眺めながら、思考する。私はイラストの力を借りながら、詩のような文章の行間をいかにくみ取れるかを試行錯誤するだけだ。★★★★★
読了日:12月09日 著者:森 博嗣
永遠の都 下 (潮文学ライブラリー)の感想
この物語には3本の柱がある。恋愛と宗教と革命。どれも中途半端な気がした。恋愛と宗教、または恋愛と革命だったらもう少し読みやすかったのではないか。かなり冗漫。まず、革命家は口が堅くなくてはいけない。そしてカトリックの司祭も警察当局も、業務上知りえた秘密は守らなければならない。登場人物の誰もかれもが感情によって行動しがちで、真に愛情で結ばれている二人は引き裂かれ、運命のいたずらで分かれ分かれの人生を送った父子は名乗り合うこともできず、過剰にドラマチックな展開の割にはボー然とエンディングを迎えることになった。★★★★☆
読了日:12月10日 著者:ホールケイン
エイラ 地上の旅人(7) マンモスハンター 下の感想
上中下巻合わせて1200ページ以上もあるのに、マンモスの狩りを始めたのは残り100ページになってから。しかもせいぜい20ページ程度の描写。『マンモス・ハンター』の上中下巻で、エイラは無双となった。それが、エイラの知識も技術も美貌もすべてひっくり返してしまうような一言をエイラは発してしまった。マムトイ族の夏の祭り、1000人もの人が集まっている場で。いやー、1000ページ以上も、エイラとジョンダラーの心のすれ違いをねちねち読まされてきましたが、もう、この先は大丈夫でしょう。大丈夫であってくれ。★★★★☆
読了日:12月11日 著者:ジーン・アウル
魔法のことば (文春文庫)の感想
星野道夫の本の感想を書いた時に、読書メーターの利用者の方から紹介いただいた本。いくつもの講演原稿を収録したものなので何度も繰り返されるエピソードがある。小説ならあり得ない。けれどもこれは、星野道夫が何をどう見て、どう感じて生きているかを語る講演会の原稿なのだ。繰り返されるということは、それだけ彼の心に強い印象を与えたエピソードだということだ。例えば熊との距離感。「生物の多様性」と「人の生き方の多様性」この二つが大事とも。自分が見えていないところでも自然は存在し続けている。それを感じることが大切なのだ。★★★★☆
読了日:12月12日 著者:星野 道夫
ここに物語がの感想
書評、解説、時々エッセイ。梨木香歩の小説を読むと、彼女は理系の人だなあと思うことが多々ある。形としては散文なのだけど、実は詩なのではないかと思えるような文章を書く人だから。それは誰に言ったこともなく、心の中でひっそりと思っていたのだが、実は初めての自費出版本は詩集だったと書いてある箇所をよんで、「やっぱりね」と一人強く頷いたのだった。最後の方、コヴィット―19が作り出した新しい世界についてのエッセイを読んで、それはまだ5年もたっていない最近の出来事なのに、遠い昔のように感じる自分に驚いた。★★★★★
読了日:12月13日 著者:梨木 香歩
むかしむかしあるところに、死体があってもめでたしめでたし。の感想
いやいやいや。死体があったら、めでたしめでたしにはならんでしょ。勧善懲悪でもないの。だって、正直者だからって殺されたりするんだよ。全然めでたくない。まあ、そんな中でわりかし好きなのは「陰陽師、耳なし芳一に出会う。』です。安倍晴明との闘いにやぶれ地方に飛ばされた蘆屋道満の子孫の陰陽師の子がいいキャラしています。あとは『三年安楽椅子太郎』が好きですね。山奥の小屋で安楽椅子に座って日がな一日を過ごす。レンタル本やDVDのサブスクを利用すれば、すぐさま理想の生活。一生安楽椅子太郎に私はなりたい。誰か家事やって。★★★★☆
読了日:12月15日 著者:青柳 碧人
特捜部Q―カールの罪状― (Hayakawa pocket mystery books No. 1)の感想
副題が『カールの罪状』なので、そちらがメインかと思ったら違った。ヤコプスンがずっと気にかけていた30年以上前の爆発事故。これの再調査を特捜部Qに命じる。事件かどうかはわからないまま。特捜部Qの捜査は、シリーズ随一のスムーズさで真相に近づいていく。「正義のため」に行われる、神に許された私的制裁。絶対正義というものはないと思う。それでも殺された人たちの身勝手さや、倫理感の乏しさに、殺されるべき存在であることを納得してしまいそうになる。それもまた身勝手な「正義漢」の暴走であるのに。今回はゴードンが頑張った。★★★★☆
読了日:12月16日 著者:ユッシ・エーズラ・オールスン
(新装版)三国志 九の巻 軍市の星 (ハルキ文庫 き 3-49)の感想
赤壁以降の曹操軍の停滞、呉も蜀も決定力がなくて、天下三分の計というよりも、三つ巴の膠着状態。この間に水面下でいろいろ動いていることを、もう少し熱く語ってほしかったのだけど…。作者の熱が、感じられない。もう、漢(おとこ)が漢(おとこ)として戦う時代ではなくなったからだろう。そして、ずっと張飛ばかりを贔屓していたため関羽の存在感が薄かった結果、今回は関羽の見せ場のはずが、感情を揺さぶられることはなかった。劉備と孫権、互いに相手を漁夫の利で領土をせしめる姑息なやつ、と思っているところが笑える。★★★★☆
読了日:12月18日 著者:北方 謙三
The MANZAI5 (ポプラカラフル文庫 あ 1-11)の感想
中3の大みそかから元日にかけてのドタバタ。初詣というのにそろわないメンバーがいる、というくらいで、あとはいつもの彼ら過ぎて、お正月感も受験生感もないのだけれど、いいのだろうか。高校生になったらいよいよ本格的に漫才に向き合いたい秋本と、今度こそ漫才と縁を切りたい歩。「いやだ」とはっきり言っている人にごり押しするのを見続けるのは、はっきり言って気分のいいものではないのだけれど。漫才は読むものではないから、実際に見たら面白いのかもしれないけれど、内輪受けから出てはいないような気がするが。★★★★☆
読了日:12月19日 著者:あさの あつこ
釈迦と十人の弟子たちの感想
仏教家の書いた本ではなく、彫刻家の書いたお釈迦様と十人の弟子たちの話。仏師でもない彫刻家が、なぜこのような本を?と思って読んでみたけれど、彫刻に限らず何かを創り出すということとの向き合い方というか、掘り下げ方というか、勉強になった。弟子の一人一人について、お釈迦様との会話やエピソードからその人柄を想像し、その人柄を表出させる表情、体型、指の形、背中の佇まいなどを決めていったのだという。私が仏教を好きだと思うところは、修行はもちろん厳しいのだろうけれども、他者に対する寛容さ。絶対悪も絶対善もない中道善き。★★★★☆
読了日:12月20日 著者:中村 晋也
耽美なわしら 完全版(上)の感想
私、森奈津子をSF作家だと思っていました。著者紹介を見たら”性愛をテーマに、現代物、SF、ホラー小説等を発表している”とあるので、SF作品もあるようですが、SF作家ではなかった。今の時代に性的嗜好をギャグにしたらいろいろと炎上しそうですが、基本的に作者は彼らに対して好意的です。だから好きな人には刺さるのかもしれない。私はちょっと苦手でした。キャラクターがうるさくて。ただ、作品そのものはとても読みやすくて、彼女さえいなければそれぞれのキャラクターの持つ悩みや思い過ごしまで、ちょっと楽しく読めるのに、と思う。★★★★☆
読了日:12月21日 著者:森 奈津子
北斎殺人事件 (講談社文庫 た 43-6)の感想
どうしましょう。これを読んだら、北斎の正体はあれとしか考えられなくなってしまいます。フィクションだよ、これは、と何度も自分に言い聞かせても、尋常ではない引っ越しの数や何度も名前を変えたわけなどの事実が後押しして、つまり北斎の謎って言うのは正体を隠さねばならなかったからなのね、と納得させられる。さて、売れっ子浮世絵画家だった葛飾北斎なのに、なぜかいつも貧乏暮らしのわけとは。考えたこともなかったけれど、言われてみればこれしか理由がない気がしてくる。ああ、小布施に行って、北斎の天井絵を見てみたいなあ。★★★★☆
読了日:12月22日 著者:高橋 克彦
エイラ 地上の旅人(8) 平原の旅 上の感想
今巻からは、エイラとジョンダラーがジョンダラーの故郷へ旅をする話。今までエイラが住んだことがあるのは、洞穴を住居にできるような岩場だったり崖の中腹のようなところ。初めて平原を旅して、その地形だけではなく、植生や動物の分類、その修正など目に触れるものみな興味深く、文字を追うだけなのに脳内ではいろんなイメージが渦を巻く。だけど、とにかく性愛描写がくどいのね。オーロラを初めて見たときの不安感や、夜間の突然の雷雨で旅の荷物の大半を失ってしまったこととか、充分面白いんだけど、余分なシーンが多くてもったいない。★★★★☆
読了日:12月24日 著者:ジーン・アウル

その農地、私が買います 高橋さん家の次女の乱の感想
著者の実家は愛媛の農家。その実家が、畑を太陽光パネルの会社に売るという。地域で悪目立ちしたくない父と、農家を続けたい母と姉と妹。しかし、思うように話は進まないのです。まず、農地を買うためには、すでに3反以上の農地を持っていなければならない。そして、個人の意見よりも地域の意向が優先する社会。村八分なんて生易しいものではない、積極的な排除。生まれ育った我が家で、細々とでもいいから安心安全な野菜を作るということが、これほどまでに人々の心や暮らしに傷を与えるのなら、たぶんその制度はどこかが間違っている。★★★★☆
読了日:12月25日 著者:高橋久美子

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 2の感想
前作に続き、著者の息子の視点を中心に、周囲で起こるあれこれを綴った社会学的エッセイ。息子のぼくは、日本の中学生よりも論理的でクールで涙もろい。ぼくのスピーチのテストのテーマである「社会を信じること」。私たちは社会の一員なのであって、社会を外から見ている評論家ではない。社会を信じて何をするかが問われている。前作に比べてぼくの成長はもとより、著者も子どもの成長を信じて、一人の人間として尊重し始めている。それはつまり親の成長ということだ。そして親子でも難しい絆を、息子と祖父が紡いでいるのもよいなあ。★★★★☆
読了日:12月26日 著者:ブレイディ みかこ

木曜殺人クラブ 逸れた銃弾 (HAYAKAWA POCKET MYSTERY BOOKS No. 1)の感想
今回はゴリゴリの刑事事件で、さらにエリザベスの誘拐事件まで絡んできて、次はどうなる!?が止まらなかった。たぶん彼女のことだからうまく切り抜けるのだろうと思いつつ、逃げ道はどこ?それがタイトルの『逸れた銃弾』につながった時、解決してないじゃーん!!って。エリザベスが寒空の下、泳ぐジョイスに、「夏になってもまだプールはあるのよ」というのに対して「そうね、だけど私達はいないかもしれないわ」と答えるのは、切ないけれど真実だ。ボグダンについては、常々有能すぎて胡散臭いと思っているのだが、裏切るなよ、ボグダン。★★★★☆
読了日:12月27日 著者:酒井 貞道,リチャード・オスマン

ボタニストの殺人 上 (ハヤカワ・ミステリ文庫)の感想
ボタニスト(植物学者)と名乗る連続殺人犯の事件と、ポーの友人であるドイルが容疑者となっている、ドイルの父が射殺された事件の2つを同時進行で捜査。犯人からかかってきた電話を受けた巡査の「判事、陪審、死刑執行人を務める権限がご自分にあると考える理由をうかがったつもりですが」というセリフが、この事件を端的にとらえている。直接手を下さなくても、ネットニュースなどで知った情報をもとに、安易に正義の味方になった気がしてしまうことの独りよがり。ポーとティリーの信頼関係が、会話の節々から感じられて嬉しい。★★★★☆
読了日:12月28日 著者:M・W・クレイヴン
ボタニストの殺人 下 (ハヤカワ・ミステリ文庫)の感想
切り札は犯人が持っているようにずっと見えていた。けれど、犯人が被害者を選別するときに彼らの自尊心に注目したように、犯人の足を救ったのもまた、自尊心だった。有名になりたい、尊敬されたい、もっと、ずっと。ポーには友人と呼べる人が4人しかいないというのに、そのうちのひとりとの関係性が変わってしまって、この先どうなるのだろう。にやにや。スピーディーなストーリー展開。最後まで気を抜けないどんでん返しの応酬。周到にちりばめられた、大小の手がかり。どれも絶品。★★★★☆
読了日:12月29日 著者:M・W・クレイヴン
(新装版)三国志 十の巻 帝座の星 (ハルキ文庫 き 3-50)の感想
関羽の仇を討つ。劉備と張飛の気持ちは同じはず。それなのに、張飛ったらさ。思いもよらない愛妻ができて、それが張飛の弱点となってしまった。愛妻を持つのはいい。でも、愛妻のせいで腑抜けになってはだめだ。張飛は関羽の敵を討つどころか、その前に劉備を一人にすることにしてしまった。関羽や劉備より、董香を取ったように見えてしまう。それでいいのか、張飛?そして、結局誰も孔明の意見を尊重しないので、孔明の方が劉備の気持ちに寄せるようになっていく。蜀が大国になれなかったのは、偏にそのせいだといえる。趙雲の出番はいつ来るのか?★★★★☆
読了日:12月31日 著者:北方 謙三
読書メーター
師走のあわただしさと無縁の生活なので、いつものペースで読書ができました。
ただ、お酒を飲む機会が多かったので、飲んだ後は読書もできず、それがなければあと1~2冊は読めたかな。
お正月期間のうちに、読書リストを更新しようと思っているのですが、なかなか…。
これもまた、お酒を飲まなきゃいいだけの話なんですけどね。
★5つは2冊。
『猫の建築家』は、文庫サイズで読んだのですが、これ絵本サイズで出てなかったかしら?
文庫サイズでもとっくりと絵を眺め倒し、お目当ての猫がどこにいるか探しました。
文章で哲学を感じ、イラストで絵本を感じる読書。
サイコーじゃないか。
『ここに物語が』
ここ最近の読書で、私は文系の割には感性より論理寄りなんだなあと感じました。(あれ?非論理?)
だから理系の人の文章を読むのが好きなんだ。
梨木香歩については『西の魔女が死んだ』で感性を揺さぶられ、号泣した割には、彼女の書く論理的な話(特に地球環境についてとか、自然科学について)に刺激を受けることが多い。
物語の行間に含まれる情報の多さ、理性と感情のバランスの良さが、きっと好きなんだと思う。
12月の読書メーター
読んだ本の数:24
読んだページ数:8646
ナイス数:658

ついにアサドが自分の過去をQのメンバーに語る。それは国際紛争地で手柄を焦った人物に巻き込まれたことによる、悲劇だった。逆恨みによって家族を人質に取られ、16年も安否がわからず苦しんでいるアサド。ついにアサドの前に現れた家族の姿は…。アサドの目の前で彼の家族を殺すことと、イスラム過激派としてのテロ行為をすること。アサドの宿敵ガーリブは、その二つを人生の目標として生きてきた。今回の事件で、カールとアサドは過去最高の信頼関係を築いた。だからカールの事件では、アサドにそばにいてほしいのだけど。★★★★☆
読了日:12月01日 著者:ユッシ・エーズラ・オールスン

赤壁が終わり、気の抜けた感がぬぐえない。本来ならまだ天下の情勢は定まっていないのに、なんでこんなに「終わった」感が強いのだろう。膠着状態の間延々と続けられる一人語り、または部下に対してかます薫陶など、はっきり言って鬱陶しい。そういうのは行動で示し、行間から読者が読み取るものだ。さんざん大物感を煽ってきた馬超が、一瞬で敗走する。周瑜亡き後の呉も、一瞬で舞台から退場。荀彧死す。「臥竜」(孔明)も「鳳雛」(龐統)も見せ場なし。一般的な『三国志』のヒーローに出番がないので、作者の思想が前面に出てきちゃって萎える。★★★★☆
読了日:12月04日 著者:北方 謙三

写楽は謎の人というのは、たぶん高校の時の日本史でも先生が雑談として話してくれたような気がします。でも、たった10ヶ月の活動期間中、100枚以上の浮世絵を描いた、そのすべてが蔦谷重三郎のところから出版されていたとは知りませんでした。蔦谷重三郎と言えば、来年の大河の主人公じゃありませんか。こりゃあいいタイミングで予習ができるぞと、ほくほく読み進めると、これが本当に面白い。浮世絵には全然詳しくないけれど、歴史は大好物。写楽とはだれか?蔦谷が大躍進したのはなぜか?源内、田沼、秋田蘭画…説得力ある説と思うんだけど。★★★★☆
読了日:12月06日 著者:高橋 克彦

メグの父と秋本の母が結婚したら、メグの恋はどうなる?っていう第三巻の話は全く進展せず、今度は高原と森口の話。森口がスーパーで高原の母親から何やら文句を言われているところを、ついその場に居合わせたメグが余計な口出しをしたせいで、気まずい雰囲気に。そして次の日、高原も森口も学校を休んだ…。というのが今回のメインのエピソードのはずなんだけど、とにかくそこにたどりつくまでが長い。ずっと秋本と歩のボケと突っ込みという態のいちゃいちゃ。一章から三章までがずっとそれ。うんざり。この作者とは合わないのかもしれないなあ。★★★★☆
読了日:12月07日 著者:あさの あつこ

魔法の言葉の感想
700ページを迎えるまで、どこにどう収まるのか全然先が読めない物語でした。敵はわかっている。不死身のスネーク・ヘッド。しかし打つ手打つ手がことごとく失敗したり裏切られたりで、全然予定調和に向かっていかない。コルネーリア・フンケの書く作品なので、勧善懲悪とは限らない苦さが予想される。案の定、今回一番作品をひっかきまわしてくれた奴は、まんまと逃げおおせた可能性が残されている。罪のない子どもたちはたくさん死んだのに。私は本の中の世界に住みたいと思ったことないんだけど、結局みんな本の中の世界で生きるのね。★★★★☆
読了日:12月08日 著者:コルネーリア・フンケ

論文でも散文でもない森博嗣の文章は、詩だ。詩は哲学を含み、数学を内包する。またも思い知らされる。詩に、哲学に、数学に排除される自分を。ああ、ほんと苦手。多分この3つに共通する概念は『真・善・美』であり、私はそれをうまく掬い上げることができないのだと思う。「造形」は機能の表現かもしれない。しかし、いつか造形は崩れてゆく。変化するもの、動くもの。内側と外側の間にある部分。猫の建築家は世界を眺めながら、思考する。私はイラストの力を借りながら、詩のような文章の行間をいかにくみ取れるかを試行錯誤するだけだ。★★★★★
読了日:12月09日 著者:森 博嗣

この物語には3本の柱がある。恋愛と宗教と革命。どれも中途半端な気がした。恋愛と宗教、または恋愛と革命だったらもう少し読みやすかったのではないか。かなり冗漫。まず、革命家は口が堅くなくてはいけない。そしてカトリックの司祭も警察当局も、業務上知りえた秘密は守らなければならない。登場人物の誰もかれもが感情によって行動しがちで、真に愛情で結ばれている二人は引き裂かれ、運命のいたずらで分かれ分かれの人生を送った父子は名乗り合うこともできず、過剰にドラマチックな展開の割にはボー然とエンディングを迎えることになった。★★★★☆
読了日:12月10日 著者:ホールケイン

上中下巻合わせて1200ページ以上もあるのに、マンモスの狩りを始めたのは残り100ページになってから。しかもせいぜい20ページ程度の描写。『マンモス・ハンター』の上中下巻で、エイラは無双となった。それが、エイラの知識も技術も美貌もすべてひっくり返してしまうような一言をエイラは発してしまった。マムトイ族の夏の祭り、1000人もの人が集まっている場で。いやー、1000ページ以上も、エイラとジョンダラーの心のすれ違いをねちねち読まされてきましたが、もう、この先は大丈夫でしょう。大丈夫であってくれ。★★★★☆
読了日:12月11日 著者:ジーン・アウル

星野道夫の本の感想を書いた時に、読書メーターの利用者の方から紹介いただいた本。いくつもの講演原稿を収録したものなので何度も繰り返されるエピソードがある。小説ならあり得ない。けれどもこれは、星野道夫が何をどう見て、どう感じて生きているかを語る講演会の原稿なのだ。繰り返されるということは、それだけ彼の心に強い印象を与えたエピソードだということだ。例えば熊との距離感。「生物の多様性」と「人の生き方の多様性」この二つが大事とも。自分が見えていないところでも自然は存在し続けている。それを感じることが大切なのだ。★★★★☆
読了日:12月12日 著者:星野 道夫

書評、解説、時々エッセイ。梨木香歩の小説を読むと、彼女は理系の人だなあと思うことが多々ある。形としては散文なのだけど、実は詩なのではないかと思えるような文章を書く人だから。それは誰に言ったこともなく、心の中でひっそりと思っていたのだが、実は初めての自費出版本は詩集だったと書いてある箇所をよんで、「やっぱりね」と一人強く頷いたのだった。最後の方、コヴィット―19が作り出した新しい世界についてのエッセイを読んで、それはまだ5年もたっていない最近の出来事なのに、遠い昔のように感じる自分に驚いた。★★★★★
読了日:12月13日 著者:梨木 香歩

いやいやいや。死体があったら、めでたしめでたしにはならんでしょ。勧善懲悪でもないの。だって、正直者だからって殺されたりするんだよ。全然めでたくない。まあ、そんな中でわりかし好きなのは「陰陽師、耳なし芳一に出会う。』です。安倍晴明との闘いにやぶれ地方に飛ばされた蘆屋道満の子孫の陰陽師の子がいいキャラしています。あとは『三年安楽椅子太郎』が好きですね。山奥の小屋で安楽椅子に座って日がな一日を過ごす。レンタル本やDVDのサブスクを利用すれば、すぐさま理想の生活。一生安楽椅子太郎に私はなりたい。誰か家事やって。★★★★☆
読了日:12月15日 著者:青柳 碧人

副題が『カールの罪状』なので、そちらがメインかと思ったら違った。ヤコプスンがずっと気にかけていた30年以上前の爆発事故。これの再調査を特捜部Qに命じる。事件かどうかはわからないまま。特捜部Qの捜査は、シリーズ随一のスムーズさで真相に近づいていく。「正義のため」に行われる、神に許された私的制裁。絶対正義というものはないと思う。それでも殺された人たちの身勝手さや、倫理感の乏しさに、殺されるべき存在であることを納得してしまいそうになる。それもまた身勝手な「正義漢」の暴走であるのに。今回はゴードンが頑張った。★★★★☆
読了日:12月16日 著者:ユッシ・エーズラ・オールスン

赤壁以降の曹操軍の停滞、呉も蜀も決定力がなくて、天下三分の計というよりも、三つ巴の膠着状態。この間に水面下でいろいろ動いていることを、もう少し熱く語ってほしかったのだけど…。作者の熱が、感じられない。もう、漢(おとこ)が漢(おとこ)として戦う時代ではなくなったからだろう。そして、ずっと張飛ばかりを贔屓していたため関羽の存在感が薄かった結果、今回は関羽の見せ場のはずが、感情を揺さぶられることはなかった。劉備と孫権、互いに相手を漁夫の利で領土をせしめる姑息なやつ、と思っているところが笑える。★★★★☆
読了日:12月18日 著者:北方 謙三

中3の大みそかから元日にかけてのドタバタ。初詣というのにそろわないメンバーがいる、というくらいで、あとはいつもの彼ら過ぎて、お正月感も受験生感もないのだけれど、いいのだろうか。高校生になったらいよいよ本格的に漫才に向き合いたい秋本と、今度こそ漫才と縁を切りたい歩。「いやだ」とはっきり言っている人にごり押しするのを見続けるのは、はっきり言って気分のいいものではないのだけれど。漫才は読むものではないから、実際に見たら面白いのかもしれないけれど、内輪受けから出てはいないような気がするが。★★★★☆
読了日:12月19日 著者:あさの あつこ

仏教家の書いた本ではなく、彫刻家の書いたお釈迦様と十人の弟子たちの話。仏師でもない彫刻家が、なぜこのような本を?と思って読んでみたけれど、彫刻に限らず何かを創り出すということとの向き合い方というか、掘り下げ方というか、勉強になった。弟子の一人一人について、お釈迦様との会話やエピソードからその人柄を想像し、その人柄を表出させる表情、体型、指の形、背中の佇まいなどを決めていったのだという。私が仏教を好きだと思うところは、修行はもちろん厳しいのだろうけれども、他者に対する寛容さ。絶対悪も絶対善もない中道善き。★★★★☆
読了日:12月20日 著者:中村 晋也

私、森奈津子をSF作家だと思っていました。著者紹介を見たら”性愛をテーマに、現代物、SF、ホラー小説等を発表している”とあるので、SF作品もあるようですが、SF作家ではなかった。今の時代に性的嗜好をギャグにしたらいろいろと炎上しそうですが、基本的に作者は彼らに対して好意的です。だから好きな人には刺さるのかもしれない。私はちょっと苦手でした。キャラクターがうるさくて。ただ、作品そのものはとても読みやすくて、彼女さえいなければそれぞれのキャラクターの持つ悩みや思い過ごしまで、ちょっと楽しく読めるのに、と思う。★★★★☆
読了日:12月21日 著者:森 奈津子

どうしましょう。これを読んだら、北斎の正体はあれとしか考えられなくなってしまいます。フィクションだよ、これは、と何度も自分に言い聞かせても、尋常ではない引っ越しの数や何度も名前を変えたわけなどの事実が後押しして、つまり北斎の謎って言うのは正体を隠さねばならなかったからなのね、と納得させられる。さて、売れっ子浮世絵画家だった葛飾北斎なのに、なぜかいつも貧乏暮らしのわけとは。考えたこともなかったけれど、言われてみればこれしか理由がない気がしてくる。ああ、小布施に行って、北斎の天井絵を見てみたいなあ。★★★★☆
読了日:12月22日 著者:高橋 克彦

今巻からは、エイラとジョンダラーがジョンダラーの故郷へ旅をする話。今までエイラが住んだことがあるのは、洞穴を住居にできるような岩場だったり崖の中腹のようなところ。初めて平原を旅して、その地形だけではなく、植生や動物の分類、その修正など目に触れるものみな興味深く、文字を追うだけなのに脳内ではいろんなイメージが渦を巻く。だけど、とにかく性愛描写がくどいのね。オーロラを初めて見たときの不安感や、夜間の突然の雷雨で旅の荷物の大半を失ってしまったこととか、充分面白いんだけど、余分なシーンが多くてもったいない。★★★★☆
読了日:12月24日 著者:ジーン・アウル

その農地、私が買います 高橋さん家の次女の乱の感想
著者の実家は愛媛の農家。その実家が、畑を太陽光パネルの会社に売るという。地域で悪目立ちしたくない父と、農家を続けたい母と姉と妹。しかし、思うように話は進まないのです。まず、農地を買うためには、すでに3反以上の農地を持っていなければならない。そして、個人の意見よりも地域の意向が優先する社会。村八分なんて生易しいものではない、積極的な排除。生まれ育った我が家で、細々とでもいいから安心安全な野菜を作るということが、これほどまでに人々の心や暮らしに傷を与えるのなら、たぶんその制度はどこかが間違っている。★★★★☆
読了日:12月25日 著者:高橋久美子

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 2の感想
前作に続き、著者の息子の視点を中心に、周囲で起こるあれこれを綴った社会学的エッセイ。息子のぼくは、日本の中学生よりも論理的でクールで涙もろい。ぼくのスピーチのテストのテーマである「社会を信じること」。私たちは社会の一員なのであって、社会を外から見ている評論家ではない。社会を信じて何をするかが問われている。前作に比べてぼくの成長はもとより、著者も子どもの成長を信じて、一人の人間として尊重し始めている。それはつまり親の成長ということだ。そして親子でも難しい絆を、息子と祖父が紡いでいるのもよいなあ。★★★★☆
読了日:12月26日 著者:ブレイディ みかこ

木曜殺人クラブ 逸れた銃弾 (HAYAKAWA POCKET MYSTERY BOOKS No. 1)の感想
今回はゴリゴリの刑事事件で、さらにエリザベスの誘拐事件まで絡んできて、次はどうなる!?が止まらなかった。たぶん彼女のことだからうまく切り抜けるのだろうと思いつつ、逃げ道はどこ?それがタイトルの『逸れた銃弾』につながった時、解決してないじゃーん!!って。エリザベスが寒空の下、泳ぐジョイスに、「夏になってもまだプールはあるのよ」というのに対して「そうね、だけど私達はいないかもしれないわ」と答えるのは、切ないけれど真実だ。ボグダンについては、常々有能すぎて胡散臭いと思っているのだが、裏切るなよ、ボグダン。★★★★☆
読了日:12月27日 著者:酒井 貞道,リチャード・オスマン

ボタニストの殺人 上 (ハヤカワ・ミステリ文庫)の感想
ボタニスト(植物学者)と名乗る連続殺人犯の事件と、ポーの友人であるドイルが容疑者となっている、ドイルの父が射殺された事件の2つを同時進行で捜査。犯人からかかってきた電話を受けた巡査の「判事、陪審、死刑執行人を務める権限がご自分にあると考える理由をうかがったつもりですが」というセリフが、この事件を端的にとらえている。直接手を下さなくても、ネットニュースなどで知った情報をもとに、安易に正義の味方になった気がしてしまうことの独りよがり。ポーとティリーの信頼関係が、会話の節々から感じられて嬉しい。★★★★☆
読了日:12月28日 著者:M・W・クレイヴン

切り札は犯人が持っているようにずっと見えていた。けれど、犯人が被害者を選別するときに彼らの自尊心に注目したように、犯人の足を救ったのもまた、自尊心だった。有名になりたい、尊敬されたい、もっと、ずっと。ポーには友人と呼べる人が4人しかいないというのに、そのうちのひとりとの関係性が変わってしまって、この先どうなるのだろう。にやにや。スピーディーなストーリー展開。最後まで気を抜けないどんでん返しの応酬。周到にちりばめられた、大小の手がかり。どれも絶品。★★★★☆
読了日:12月29日 著者:M・W・クレイヴン

関羽の仇を討つ。劉備と張飛の気持ちは同じはず。それなのに、張飛ったらさ。思いもよらない愛妻ができて、それが張飛の弱点となってしまった。愛妻を持つのはいい。でも、愛妻のせいで腑抜けになってはだめだ。張飛は関羽の敵を討つどころか、その前に劉備を一人にすることにしてしまった。関羽や劉備より、董香を取ったように見えてしまう。それでいいのか、張飛?そして、結局誰も孔明の意見を尊重しないので、孔明の方が劉備の気持ちに寄せるようになっていく。蜀が大国になれなかったのは、偏にそのせいだといえる。趙雲の出番はいつ来るのか?★★★★☆
読了日:12月31日 著者:北方 謙三
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