おお!
なんと珍しいことに、読んだ本すべて★4つでした。

『三体Ⅲ』と『大名倒産』は、上巻の段階では★5つでもいいと思っていたのですが、下巻で失速してしまい、残念。
逆に『狐罠』は、シリーズの最初だったので、様子見の★4つ。

図書館の返却日に追われながら読むことが多いここ数週間。(そして今現在も!)
10さんには「大変そうだねえ。もっとゆっくり読めばいいのに」と言われますが、面白い本ほど続きが気になって気が急くもの。
楽しく面白くわくわく読めているのは、最近小説を読む比率が高いから。
★の数関係なしに、やっぱり小説が一番好きなんですわ。

さて、今月は祝日もあり、休暇の予定もあります。
これが読書に吉と出るか、凶と出るか。
あ、Hey!Say!JUMPのLIVE映像が発売されるから、読書はちょっと抑えめになるかも。

6月の読書メーター
読んだ本の数:24
読んだページ数:6902
ナイス数:672


ある男ある男感想
事故で亡くなった夫は戸籍どおりの人ではなかった。ではいったい誰なのだ?自分の選んだ人生でさえ、選ばなかった方の人生について後悔のような無念のような思いを感じることがあるのに、ままならないことばかりの人生なら、他人の人生と入れ替えてでも一からやり直したい、と思うこともあるだろう。でも、思うことと実行することは別だ。「ある男」は、後の人生を誠実に生きたので、幸せを得ることができたのではないか。読みやすい文章だけれど、書いてあることは重い。どの登場人物もあまり好きではない部分があるけれど、特に弁護士の妻は嫌だ。★★★★☆
読了日:06月02日 著者:平野 啓一郎

ぶたぶたのシェアハウス (光文社文庫)ぶたぶたのシェアハウス (光文社文庫)感想
ぶたぶたさんは料理が上手だから、そうなってしまうのかもしれないけれど、シェアハウスって、共同の台所を使ってそれぞれ自分の食事は自分で作るものだと思っていたので、シェアハウスで食事付きっていうのに少し引いた。これでは賄い付きの下宿じゃないの?ただ、母親にがんじがらめに管理され、何も自分でしたことがなかった実里が住むには最適かもしれない。あと、男女を問わず、自分のことは自分でできるようになろうね。じゃないと人を助けることもできやしない。会社人間であることは言い訳にならんのよ。★★★★☆
読了日:06月05日 著者:矢崎 存美

青の物語青の物語感想
貧しい村の娘・アルジェナール。美しく驕慢なアマンドは親しい友であるけれども、やはり多少疎ましく、彼女が肺の病に倒れたとき、一番親身に看病しながらも心の中でその死を願ってしまう。魔が差したのかもしれない。本人も自覚していない心の奥深くに隠した本音だったかもしれない。だけど手を下したわけではない。心の中で願っただけだ。それが厄払いの男の前で明らかにされたとき、アルジェナールは魔女となった。これは「のろい」だろうか、「まじない」だろうか。どちらにしても言葉にからめとられた若い女性の姿が浮かんでくる。(「呪い」)★★★★☆
読了日:06月06日 著者:マルグリット ユルスナール

歌舞伎町のミッドナイト・フットボール: -世界の9年間と、新宿コマ劇場裏の6日間- (小学館文庫)歌舞伎町のミッドナイト・フットボール: -世界の9年間と、新宿コマ劇場裏の6日間- (小学館文庫)感想
ジャズや映画や精神分析など、興味はあるけどまったく詳しくない分野の話は、とてつもなく難しかったのです。言葉の意味は分かるのに、文章になると意味が読み取れない。零れ落ちた意味をひとつひとつ拾い集めるように読むのは大変でしたが、面白くもありました。難しい割には、文章が読みやすかったのが、救いです。一番面白かったのは、やっぱり書評の章。ほとんど読んだことない本ばかりだったけど、その本に対する愛が感じられただけで◎。★★★★☆
読了日:06月07日 著者:菊地 成孔

夫よ、あなたがいちばんストレスです!夫よ、あなたがいちばんストレスです!感想
この本のタイトルを見たとき、もう少しふざけたような、笑いの中に愚痴があるっていうようなエッセイなのかなって思ったのですが、結構真剣に分析と対応策を書いたものでした。妻と夫をざっくりとタイプ別に分け、組合せによってどういう対応が望ましいかが変わってくる。そして最終的な解決策は3つ。・離婚する・あきらめて受け入れる・ストレス源である夫の改造/まあ、夫婦の関係ってそんなに単純には割り切れないけれども。それでも、こんなふうに感じているのは自分だけじゃないんだ、と知ることですくわれる人もいると思う。★★★★☆
読了日:06月08日 著者:村越 克子

そういうことなんだ。そういうことなんだ。感想
絵本的フリートークと言われれば、確かに、な内容。五味太郎の絵本は子ども向けでも侮れません。ましてやこの本は子ども向けとは言い切れないものでした。だからこそ、皮肉に振れる部分に配慮が少し足りないと思ってしまいました。例えばいじめについてや、差別について。双方をばっさり切り捨てるのは気持ちがいいかもしれません。しかし、いじめられた方、差別された方は、それで再び木津ついてしまうのではないかと思うのです。時代のせいなのか、五味太郎氏はもともとそういう人だったのか。この本にはそれほど納得できませんでした。残念。★★★★☆
読了日:06月09日 著者:五味 太郎

果しなき旅路 (1978年) (ハヤカワ文庫―SF)果しなき旅路 (1978年) (ハヤカワ文庫―SF)感想
エピソードは単純で、人と違う能力を持つ人(あるいは人たち)が、悩み苦しんだ末に同胞《ピープル》と出会うことによって救われる、という話。それでも自分たちの正体がばれないように、能力を隠しながら息をひそめて人間たちの間で暮らす《ピープル》たちの悲しみ・苦しみ・苛立ちに引き込まれるように、読む手がとまらなかった。それらのエピソードを繋ぐのが、普通の人間であるリー。だけど、数多くの人間の中から、どうしてリーを助けることにカレンがこだわるのかがちょっとわからない。普通に《ピープル》の年代史でよかったのでは?★★★★☆
読了日:06月10日 著者:ゼナ・ヘンダースン

さざなみのよる (河出文庫)さざなみのよる (河出文庫)感想
最初に書いておくと、作者が書きたかったことはわかるし、読後感は良いし、こういう作品を必要とする読者は一定数いると思う。ただ、これはもう本当に個人的な問題なのだけど、人の「死」を感動の機転にする、または感動の核とするような話が嫌い。それと、『昨日のカレー、明日のパン』の時も思ったけれど、あだ名のつけ方に品がないと思う。そんな本筋ではないところにひっかかって、最初の方は20~30ページごとに本を置いて「しんどいなあ」と思っていた。でも作品としてはいいと思うので、好きな人にはハマるのでは。★★★★☆
読了日:06月11日 著者:木皿泉

神様のパズル (ハルキ文庫)神様のパズル (ハルキ文庫)感想
今さらながらQuizKnockにハマり、いまなら物理もいけるかも、と思って読んでみましたが、やっぱり物理は難しいです。主人公が落ちこぼれ学生のおかげで、難しい物理のあれこれも割とわかりやすく登場人物たちが説明してくれて助かる。多分この物理の部分を取り除けば、普通にライトな青春小説だ。ひとつ彼らがかわいそうだなと思うのは、勉強すること、知らないことを知る喜びを感じていないこと。もったいないなあ、せっかく知る喜びを得られる環境にいるのに。と、自分も学生時代は勉強しなかったくせにそう思う。★★★★☆
読了日:06月12日 著者:機本 伸司

大名倒産 上 (文春文庫 あ 39-20)大名倒産 上 (文春文庫 あ 39-20)感想
主人公は殿様の庶子として生まれた松平小四郎。9歳になるまで顔を見たこともない実父より、実直な育ての親を慕っているが、急遽家督を継ぐことになった21歳。頭が切れて人情味などの持ち合わせのない先代と真面目で誠実だけが取り柄の凡庸な跡継ぎの、藩の経営をめぐる戦いが始まる。が、どうもそれだけではない。藩に取りついていたはずの貧乏神が不本意ながら小四郎たちのために七福神を呼んだり、何なら仁王様までも味方になる?小四郎チートじゃん。いやいや浅田次郎だもの。結果はハッピーエンドとしても、まだまだ二転三転するはずだ。★★★★☆
読了日:06月14日 著者:浅田 次郎

フーガはユーガ (実業之日本社文庫)フーガはユーガ (実業之日本社文庫)感想
フーガとユーガは双子で、誕生日の日にだけ入れ替わることができる。事前に知っていた情報はこれだけだったので、この二人の幼い日々には胸をつかれた。気分次第で暴力を振るう父と、見てみぬふりをする母。読み進むにつれて、モヤモヤ感が湧いてくる。これ、幸せにならないやつじゃない?どうしても頭の中に『アヒルと鴨のコインロッカー』がよぎる。案の定、いろんな伏線を回収して訪れたエンディングは、手放しで喜べるハッピーエンドではなく。ううう…。でもね、フーガとユーガ、顔は同じかもしれないけど、中身は全然違うよ。★★★★☆
読了日:06月15日 著者:伊坂 幸太郎

香菜里屋を知っていますか 香菜里屋シリーズ4〈新装版〉 (講談社文庫)香菜里屋を知っていますか 香菜里屋シリーズ4〈新装版〉 (講談社文庫)感想
前回読んだときは単行本だったけれど、今回は文庫本。未完の「双獣記」も収録されているので、ちょっとお得感。やっぱり最後の展開は唐突過ぎると思うの。工藤が待っていたという香菜からの連絡。それを匂わせるような描写がないかと最初から読んでいたけれど、今作になって初めて明かされた工藤の過去がすべてだった。今までいろいろと食べ物屋を舞台にした小説を読んできましたが、工藤の料理が一番美味しそうに感じられる。もっと彼の料理と謎解きを味わいたかったなあ。★★★★☆
読了日:06月17日 著者:北森 鴻

黄泉のツガイ(4) (ガンガンコミックス)黄泉のツガイ(4) (ガンガンコミックス)感想
やっぱりアスマさん、味方じゃなかったね。だけど、一番いい人そうな波久礼さんが敵だとしたら、一番怖い気がするんだけど。今までで最強に強かった手長足長も倒し、今度は与謝野イワンが最強の使い手のように思えるけれど、沖縄の様子も気になるし…。っていうか、謎が全然解明されてないじゃん。9月の新刊を待つしかないのか。
読了日:06月17日 著者:荒川弘

三体III 死神永生 下三体III 死神永生 下感想
長いシリーズを読み終わりました。シリーズ全体の感想から書くと、なんと面白い読み物を読ませていただいたか、ということ。特に『三体』『三体 Ⅱ』は、登場する人物の魅力的でした。三体問題・フェルミのパラドックスなどの、実際の科学者が解明しようとしているテーマをうまく作品の中に落とし込んで、納得のいく筋書を用意する。これが面白くないわけがない。けれど、『三体 Ⅲ』の主人公である程心が出てくると、ブレーキがかかってしまう。世界の運命を決定する人には向いていない程心より、トマス・ウェイドの目指す未来を見たかったな。★★★★☆
読了日:06月18日 著者:劉 慈欣

名探偵ぶたぶた (光文社文庫 や 24-28)名探偵ぶたぶた (光文社文庫 や 24-28)感想
『名探偵ぶたぶた』というタイトルから、殺人事件を解決したり、尾行したり潜入捜査をしたりする探偵かと思ったら違いました。通常のぶたぶたさんの存在が、名探偵ということ。確かに悩みの本質を見極める目は、名探偵かもしれません。どの話も、以前ぶたぶたさんのシリーズに出て来た場所がその舞台。けれど、ぶたぶたさんに背中を押してもらうというのを基本設定にしてしまったので、どの登場人物たちもうじうじ悩みがち。もう少し自分の力で一歩踏み出す努力をしたり、誰かに相談したりできないものか。あんまりぶたぶたさんに頼り過ぎやろ。★★★★☆
読了日:06月19日 著者:矢崎存美

でんでんむしのかなしみでんでんむしのかなしみ感想
子どもに媚びていない力強い筆遣いは、もしかしたら最近の子どもには受け入れられないのかもしれません。しみじみと、ではなく、激しく描かれる悲しみは、でんでんむしの深い絶望を突きつけてきます。ちいさな子どもには難しいかな。でも、意外に難しいこともすっと理解できていたりもするんだよね。だから子どもに媚びず、大人の本気の絵本を作ってほしいと思っています。そして読み手は、「かなしみだけじゃなくて、うれしいこともたのしいこともからの中に入っているよね、きっと」などと話してみたりして欲しいと思います。★★★★☆
読了日:06月20日 著者:新美 南吉

東亰異聞 (新潮文庫)東亰異聞 (新潮文庫)感想
江戸幕府を倒して開国、文明開化が進む街・東亰。東京ではない。惨殺事件が多発し、一族のどろどろとした確執もあったにもかかわらず、なかなかに読後感は良かったのでした。いや、ラスボスの正体にはびっくりしたよ。だけど、ガス灯の灯りは闇を消失させたのではなく、ただ見えなくさせただけで、闇自体はずっとそこにあるのかもしれない。なんて思ってみると、もう少し人間は、世界に対して謙虚であるべきなのではないかな。というような難しいことはまったく考えなくても、つるつる読めて、ハラハラしたりどきどきできる本。ああ、楽しかった。★★★★☆
読了日:06月21日 著者:小野 不由美

天使の耳 (講談社文庫)天使の耳 (講談社文庫)感想
交通警察が取り扱うような事故を題材にしたミステリ集。そして「因果応報」という隠しテーマ(?)がある。1990年代最初の頃の作品なので、交通事故に遭ってもスマホも携帯も出てこない。やりたい放題の人たち。みんなやってるでしょ。バレなきゃいいんでしょ。そういう人たちに泣かされる善意の人たち。彼らを救いたいという作者の気持ちはわかる。でもやっぱり法は遵守しないといけないと私は思ってしまう。逆に人間ドラマとしては、短編ながら読ませる話が多かった。★★★★☆
読了日:06月22日 著者:東野 圭吾

ぼくはこうして大人になる (角川文庫)ぼくはこうして大人になる (角川文庫)感想
主人公は中3の少年。家でも学校でもよい子を演じているが、実は女子に興味がなく、男子に恋愛感情を抱く性癖があることを必死に周囲に隠している。10歳離れた双子の姉兄にいたぶるようにかわいがられて育った彼は、幼い頃自分を女だと思っていた。女の子として育ってしまったから男の子のことを好きになってしまうのだと思っている。だけど、本人にもわかってはいたのだ、姉兄のせいではないことを。だけど、認めたくなかった自分。そして思い出したくない過去。そういうことを認めるところから大人への一歩が始まるのだね。★★★★☆
読了日:06月23日 著者:長野 まゆみ

炎の爪痕 (創元推理文庫)炎の爪痕 (創元推理文庫)感想
事件の背景にあったものはなかなかに重苦しく、読後嫌な感じがぬぐえません。親に厳しくしつけられ情愛を感じることなく育った父と、親に甘やかされ自分のことしか考えられない母と、親に暴力を振るわれ誰にも心のうちを見せない子守り。こんな家庭は嫌だな。小さな島の小さな集落では、秘密を持てようはずがない。誰もがみんなのことを知り尽くしているのだから。あー、息苦しい。そんな島での殺人事件。よそ者が犯人とでも思わないとやっていけない同調圧力。あー、鬱陶しい。それでも面白くて本当に一気読み。★★★★☆
読了日:06月25日 著者:アン・クリーヴス

大名倒産 下 (文春文庫 あ 39-21)大名倒産 下 (文春文庫 あ 39-21)感想
上巻を読んだとき、次々出てくるキャラクター(人も神も)の個性的なことにわくわくし、彼らが一体どうやって倒産を阻止するのだろう、と続きを読むのが楽しみでしょうがなかった。恩田陸の『ドミノ』のように、一つの出来事が次の出来事を引き寄せ、次々と事態がかわっていく、「そんなバカな。わっはっは」と笑えるものだと思った。でも、主人公の松平小四郎は評判通りにくそまじめで、思った以上に影が薄かった。そして、主人公の小四郎の影の薄さのせいか、上巻の最初と下巻の最後は新次郎なのである。ちょっと肩透かしな展開でした。★★★★☆
読了日:06月26日 著者:浅田 次郎

不自然な死 (創元推理文庫)不自然な死 (創元推理文庫)感想
ふとしたことから関わり合うことになった、殺人事件と思しき出来事。ピーター・ウィムジイ卿は貴族探偵として興味をもっただけだけれども、強かな犯人はまったく尻尾を出そうとしない。そして続く関係者の不審死。最初から犯人もその動機も明らかにされていますが、犯行方法だけがわかりません。自然死にしか見えない死体。正直展開は遅いのですが、その分丁寧に書かれている会話のやりとり。ちょっとした違和はちゃんと伏線です。犯人はわかっているので、最後の怒涛の展開に至るまでに溜まった疑問やら怒りやらがスッキリ解消されて満足です。★★★★☆
読了日:06月27日 著者:ドロシー・L. セイヤーズ

草原のコック・オー・ヴァン 高原カフェ日誌II (文春文庫 し 34-20)草原のコック・オー・ヴァン 高原カフェ日誌II (文春文庫 し 34-20)感想
有名観光地ではない高原で、編集者の仕事を辞めてカフェを開いた菜穂の、二年目の日々。たった一人で店を切り盛りすることの大変さが、相変わらず読み取れない。営業時間に調理するだけではなく、接客も、仕込みも、清掃もひとりでやるのだ。そして、経営の問題。毎日日替わりメニューで、フードロスはどうなんだろう?物語よりもそういう些末なことが気になってしょうがないのは、私が悪い。それよりも本当に料理が美味しそうで。鶏の赤ワイン煮を作ってみたくなりました。★★★★☆
読了日:06月28日 著者:柴田 よしき

狐罠 (講談社文庫)狐罠 (講談社文庫)感想
骨董のことなんか全然わからないけれど、面白かった。店舗を持たずに、直接同業者やコレクター相手に取引を行う宇佐見陶子。屋号は冬孤堂。ある日、同業者である橘薫堂から贋作を買わされ、仕返しのために罠を仕掛けるのだが。贋作と知って他人に売りつけるのは犯罪である。主人公がのっけから犯罪に手を染めようだなんて、この先シリーズをどう進めるつもりなのか?オセロのように優勢劣勢が入れ替わり、落としどころが全く見えなかったのに、気がついたらいろいろと謎が解け、事件は解決していたのだった。巧い!★★★★☆
読了日:06月29日 著者:北森 鴻


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