20冊読めないかと危惧していましたが、なんとか読めたのでほっとしています。
数が大事なわけではないのですが、やっぱり気になってしまいます。

なぜそれほど読書が進まなかったのかというと、ちょっと難しめの本が多かったことと、QuizKnockにはまったからですね。
動画を見る時間が増えたというのもあるのですが、QuizKnockに触発されて、漢字の書き取り時間までもが増えてしまいまして、当然読書時間が減るわけです。

でもQuizKnockの皆さんを見ると、仕事のほかに自分の勉強をしたり、マンガを読んだり、ゲームをしたり、ものすごく時間の使い方がうまい。
見習わないと。

さて★5つは3冊。
後半に集中しましたね。

『閉鎖病棟』は、正常と異常についていろいろ考えました。
どこに線を引くか、線を引いたとしてそれは単に割合の問題に過ぎないこと。
だからこその人間の尊厳について、静かに温かな眼差しで書ききった作者の思いが強く胸を打ちました。

『東方綺譚』
西の文化圏の作者が書く東方の綺譚。
どれも面白かったです。
中国や日本を舞台にしたものはわかりやすかったですし、インドや東欧の話の奇想には驚きました。
読書の楽しみって、こういうところにあるのですよね。

『呪われた首環の物語』
ダイアナ・ウィン・ジョーンズ作品は、わたしの中では別格の存在。
決して甘くはないけど、ダークではないので安心して読めます。
またいろいろ読みたいなあ。

5月の読書メーター
読んだ本の数:22
読んだページ数:6054
ナイス数:673


花の下にて春死なむ 香菜里屋シリーズ1〈新装版〉 (講談社文庫)花の下にて春死なむ 香菜里屋シリーズ1〈新装版〉 (講談社文庫)感想
以前、シリーズの最終巻を読んでしまったので、最初から通読することに。短編一作を読んでも話は分かるが、店の常連やマスターとの会話でゆるく話が繋がってもいるので、やはりこれは順に読むべき作品と思った。年のせいか『花の下にて春死なむ』と『終の棲み家』が、ことによい。ひとり、寒いアパートで震えながら死んでいくというのは嫌だけど、その枕元に季節外れに咲く桜があってよかった。決して不幸ばかりの人生ではなかったのだと思いたい。謎のすべてを明らかにするわけではないからこそ残る余韻。それは工藤の、作者の優しさなのだと思う。★★★★☆
読了日:05月02日 著者:北森 鴻

大崎梢リクエスト! 本屋さんのアンソロジー大崎梢リクエスト! 本屋さんのアンソロジー感想
十人もの作家が同じモチーフで短編を書けば、やはりそれぞれの個性がはっきり出るものだなあと思いました。『本と謎の日々』なんて、30ページほどの掌編に「いくつ謎をぶっ込んでるんだ」と笑えるほど有栖川有栖。笑。一番気に入ったのは『ロバのサイン会』。ベタだけど。ちょっとご都合主義だけど。ウサウマのキャラクターがとってもよくて、山田ちゃん愛に溢れていて、ぐっと来た。娘がテレビ制作会社のADをやっていたこともあって、私も山田ちゃんが元気になれるよう祈りながら読んだ。一つだけ。米澤穂信にも声かけてほしかったな。★★★★☆
読了日:05月04日 著者:大崎 梢

寒波: P分署捜査班 (創元推理文庫)寒波: P分署捜査班 (創元推理文庫)感想
今回も事件はふたつ。同居する兄妹が殺された事件と、父親による中学生の娘への性的虐待。作品としてはちょっとワンパターンになってきたな。ふたつの事件が並行して起こり、二班に分かれて捜査。犯人または犯人と思しき人物のモノローグが差し挟まれる。そしてP分署の署長を含めた7人の捜査班のプライベートな問題についての記述。群像劇だから、それぞれのエピソードは必要だと思うけど、毎回毎回均等に描写しなくてもいいと思う。少々冗漫。あと、前作を読んだときにも思ったのだけど、イタリア寒すぎ。ナポリで凍死者のイメージないわ。★★★★☆
読了日:05月05日 著者:マウリツィオ・デ・ジョバンニ

三体III 死神永生 上三体III 死神永生 上感想
前作で羅輯が三体人に突き付けた両刃の剣の最終兵器。膠着状態に陥って終わったけれど、それはそれで納得の終わり方だった。なんならこれで『三体』が終わってもいいくらいの。さて、ではどんな続きが始まったのか。「面壁計画」と並行して行われていた「階梯計画」について書かれる。そして、均衡がとれていたはずの地球人と三体人の関係が激変する。ところが宇宙のかなたでも状況が変わる。その結果の衝撃の展開。え?え?じゃあ、下巻は何やるの?…って、これ『三体 Ⅱ』の時も、Ⅲで何やるの?って思ったんだよなあ。毎回引きが強すぎる。★★★★☆
読了日:05月06日 著者:劉 慈欣

ぼくんち 中 (角川文庫 さ 36-11)ぼくんち 中 (角川文庫 さ 36-11)感想
アル中、薬中、賭博にヤクザ。環境はとことん悪いけど、二太はいい子だ。ねえちゃんは「考えてどうにもならない事なら考えずに笑え」と言う。「どうしていつも笑うの?」とねえちゃんに聞いたら「こうなったら自分が一番いややということを考えてみなさい。きっとそんな事になってない。だから笑えるんや」ねえちゃんは強くて優しい。でも、いつまでこんな生活を続けていくんだろう。さおりちゃんのお父さんが死んだ。さおりちゃんはどうなったんだろう。一太の初恋も切ない。読むほどに苦しい。
読了日:05月06日 著者:西原 理恵子

編集者ぶたぶた (光文社文庫)編集者ぶたぶた (光文社文庫)感想
5作の短編が収録されているが、特に気になったのは『文壇カフェへようこそ』。文壇カフェという設定もそそられるが、そこで展開されるのは上司との関係に悩む編集者の話。もしかしてパワハラを受けているのだろうか、それともこのくらい普通のことなのだろうか。ひとりで悩むから、考えがグルグルして答えが見つからない。そんな人たちに、ゆっくり心を休める時間とちょっとした人脈をもたらす場所。それがぶたぶたさんの経営する『文壇カフェ』。行ってみたいなあ。★★★★☆
読了日:05月08日 著者:矢崎 存美

ハドリアヌス帝の回想ハドリアヌス帝の回想感想
古代ローマ帝国五賢帝の一人ハドリアヌスが、人生と治世の終焉を迎え、次期後継者のさらに後継者であるマルクス・アウレリウス(『ミステリと言う勿れ』でおなじみ『自省録』を著した哲人皇帝)に宛てて書いた回想録、という態の小説。ハドリアヌスは人間存在を評価するのに三つの手段があるという1.自己自身の研究2.他人を観察すること3.書物/切れ者の皇帝の回想は、波乱万丈の人生を静謐な文章で綴られたもので、叙事詩のような趣も感じられる。多分彼の目に、既にマルクス・アウレリウスは写っていなかったのではないだろうか。★★★★☆
読了日:05月10日 著者:マルグリット・ユルスナール

新ロードス島戦記6 終末の邪教(下) (角川スニーカー文庫)新ロードス島戦記6 終末の邪教(下) (角川スニーカー文庫)感想
完結したのですが、想像を超える結末ではありませんでした。まったくの想像通り。そして、本来ここをじっくり書いてほしい、というところが、すっぱりカットされている。例えば、スパークが、闇の精霊が与える試練に打ち勝たねばならない、というシーン。”真の恐怖との戦いは、その先にあるのだ。/ 「もどってきました……」”え?真の恐怖との戦い書いてないの?もうね、ずっこけましたよ。というわけで、最後まで読んでやっとわかりました。これは、ロードス島の戦記ではなく、スパークとニースの恋愛小説だったのです。うむうむ。★★★★☆
読了日:05月11日 著者:水野 良

炎上フェニックス 池袋ウエストゲートパークXVII炎上フェニックス 池袋ウエストゲートパークXVII感想
コロナ禍の池袋が舞台。パパ活という名の売春もどき、ストレスを弱い者にぶつける若者、副業を重ねないと生活できない現実、そしてSNS上で日々行われる、正義を気取った匿名の弱い者いじめ。このシリーズは、時代を切り取ったテーマがウリではあるが、『P活地獄篇』が雑誌掲載されたのが2020年8月号から。ということは4月か5月には書き始めているということだ。早い。★★★★☆
読了日:05月12日 著者:石田 衣良

桜宵 香菜里屋シリーズ2〈新装版〉 (講談社文庫)桜宵 香菜里屋シリーズ2〈新装版〉 (講談社文庫)感想
今回は人の心の暗部をさらすような結末が多くて、しかもちょっといい話系の『十五周年』や『桜宵』にしても、仕掛け人にからめとられたような展開に、心が爽快感を欲してしまう。後半の3編はどれも、自分勝手な人物の話。自分勝手の最たるものだったのが『約束』に出てくる彼女。彼女と別れたことが、彼の人生最大のラッキーだったかもよ。★★★★☆
読了日:05月14日 著者:北森 鴻

エセー 6エセー 6感想
一番難しいと言われている巻、一番厚い巻を乗りこえて、気持ちが切れたのでしょうか。ずいぶん時間がかかってしまいました。しかし、読み終わってみれば、今までで一番エッセイ集らしい巻だったかもしれません。そしてモンテーニュさん、どうしたんでしょう。一番長い章は「ウェルギリウスの詩句について」というタイトルで、もっぱら性愛についてを延々と書いてらっしゃる。検閲が厳しかった時代はカットされたそうだけど、ねちねち書きすぎです。笑★★★★☆
読了日:05月17日 著者:ミシェル・ド モンテーニュ

ホテルジューシー (角川文庫)ホテルジューシー (角川文庫)感想
主人公は女子大生のヒロ。卒業旅行の資金のために、夏休みにバイトをすることにした。昼は薄らぼんやりしているけど、夜は頼れる男の「オーナー代理」。客の朝ごはんと従業員の昼ご飯を作ってくれる、料理情上手な比嘉さんや、清掃を担当しているセンばあとクメばあとのやりとりも、くすりと笑えるほど楽しい。短編集というのは最初か最後に泣かせる話を持って来ることが多い。が、途中に挟まっていると不意を打たれてしまうじゃないか。ヒロとは真逆のギャルたちユリ&アヤに泣かされるとは。(越境者)「嵐の中の旅人たち」も、切ない。★★★★☆
読了日:05月18日 著者:坂木 司

金持ち父さん貧乏父さん金持ち父さん貧乏父さん感想
まず最初に、こういうアメリカの啓発本ってそれほど読んでいないけど、どれも似たような体裁なのが気になりました。きっと、この手のテンプレートがあるのでしょう。”人生で大事なのはどれだけのお金を稼げるかではなく、どれだけのお金を持ち続けることができるかだ。”金持ち父さんはとにかく税金を払いたくないようなのですが、そのくせ子どもは公立校に通っているんですよね。金は欲しいが払いたくない。そういう人がなぜこんな、「みんなで金持ちになろうぜ」的な本を書くのか?…ってことをつい考えてしまいます。★★★★☆
読了日:05月21日 著者:ロバート キヨサキ,シャロン・レクター(公認会計士)

ぼくんち 下 (角川文庫 さ 36-12)ぼくんち 下 (角川文庫 さ 36-12)感想
働けど働けど、底辺に暮らす人の手に入るお金って、右から左。自分の稼ぎで姉と弟を幸せにしたいと考える一太。そんな一太を姉ちゃんは解放する。自分たちに縛られて、無理して金もうけに走らなくてもいい、体ひとつで逃げろ、と。姉ちゃんは、二太をも解放する。この、先のない港町から。貧乏かもしれないけれど、悪いことをしなくても生きていける町へ。姉ちゃんは、どんなことがあっても笑って生きることを二太に教えた。”僕のおねえちゃんは笑う事と、泣く事のとても上手な人。”二太が迎えに来るまでで生きて、と祈るしかない。
読了日:05月21日 著者:西原 理恵子

春、戻る (集英社文庫)春、戻る (集英社文庫)感想
ある日目の前に現れた「お兄ちゃん」と名乗る年下の男の子。主人公は結婚を控えたさくら・36歳。お兄ちゃんは24歳。…?どゆこと?両親どちらかの隠し子であるという可能性は、最初に潰される。さくらが封印しているらしい記憶の向こうに謎の答えはあるのだろうとは思う。こんな設定普通ありえないよね、と思うのは簡単だけど、私は受け入れることのできる人間でありたいと思う。瀬尾まいこの作品にはいつもこういう人が存在する。「思い描いたとおりに生きなくたって、自分が幸せだと感じられることが一番だ」と言ってあげられる人。★★★★☆
読了日:05月22日 著者:瀬尾 まいこ

ぶたぶたのティータイム (光文社文庫)ぶたぶたのティータイム (光文社文庫)感想
アフタヌーンティーというものを体験したことはありません。だから基本的なルールをこの本で知ることができてよかったです。そのうえで、「好きなように召し上がってください」と言ってくれるぶたぶたさんがありがたい。「幸せでいてほしい」勉強もスポーツも芸術関係も難なくこなし、しかも美貌の姉の好美。なんでも簡単に手に入るので、何に対しても執着心がない。というよりも拠り所がない。ところがぶたぶたさんに出会って、姉の様子がおかしい。明らかに挙動不審。もしかして、恋?…愉快なお話でありました。★★★★☆
読了日:05月23日 著者:矢崎 存美

閉鎖病棟 (新潮文庫)閉鎖病棟 (新潮文庫)感想
一体いつの時代の話なのだろうと思うくらい、テクノロジーとは無縁の人々。「普通」ではないと言われ、「普通」の人たちから隔離され、それでも明るく温かく時に寂しく日々を送る。ストーリーはもちろんあるのだけど、大事なのはそこではない。彼ら患者が発病する前の生活、今の暮らし、そしてこれからのこと。作中で主人公のチュウさんが貰う手紙にこう書いてある。”病院はついの棲み家ではありません。渡りに疲れた鳥たちが羽を休める杜(もり)でしかないのです。(中略)いずれ翔び発って自分の巣に帰って欲しいのです。”★★★★★
読了日:05月24日 著者:帚木 蓬生

東方綺譚 (白水Uブックス 69)東方綺譚 (白水Uブックス 69)感想
とくに良かったのは『老絵師の行方』。物心がつく前に天才絵師の絵に囲まれて育った皇帝は、現実が絵ほどに美しくないことに腹を立てて画師を殺そうとします。師を庇って目の前で殺された弟子の首が飛ぶのを見て、血の赤と床の石畳の緑の対比を感嘆して眺めるに至っては、絵の才能が業でしかない。『死者の乳』は、日本にも似たような話があったはず。自分は死んでも、子どもにはお乳をのませる母親の話。『源氏の君の最後の恋』も面白く読んだ。ユルスナールの書く最後の恋は、残酷と言ってもいい展開だけれど、そういう解釈もあるのかとも思う。★★★★★
読了日:05月26日 著者:マルグリット・ユルスナール

螢坂 香菜里屋シリーズ3〈新装版〉 (講談社文庫)螢坂 香菜里屋シリーズ3〈新装版〉 (講談社文庫)感想
《香菜里屋》に集まる人は、皆それぞれに鬱屈を抱えながら、マスターの工藤に心をほぐしてもらって前に進む。取り返しのつかない選択でさえ、工藤に話を聞いてもらって、美味しい料理とビールがあれば、なんとか前に進んでいける。苦い後味の話もあるけれど、時系列と人称が複雑な割に最後に明るく終わる『双貌』が面白かったかな。だけど『孤拳』が白眉。5歳しか年の違わない叔父と姪。幼なじみの恋人同士のような二人の日々。「前に進みなさい。でも忘れないで。」あまりにも切ないメッセージに涙が。★★★★☆
読了日:05月27日 著者:北森 鴻

長いお別れ (文春文庫)長いお別れ (文春文庫)感想
東昇平の認知症になってからの10年を、折々のエピソードで綴っている。妻曜子は都内の一戸建ての家で、ひとりで在宅介護をしている。家でひとりで面倒を見るというのには限界がある。精神的にも、体力的にも。デイサービスや、症状が進むにつれてショートステイなども利用してはいるが、なんといっても曜子が「お父さんの面倒は私が見なくちゃ」という思いが、却って昇平の社会性を阻止して症状を悪化させているようにも見える。そして昇平の面倒を見るということが、曜子の支えになってもいるのだろう。どうすることが正解なのか、判断は難しい。★★★★☆
読了日:05月28日 著者:中島 京子

呪われた首環の物語呪われた首環の物語感想
イギリスの湿原に暮らすゲイア。勇者の父、賢者の母、〈能〉を持つ姉のえいなと同じく〈能〉を持つ弟のセリと暮らしている。ひとりだけ何のとりえもなく父の期待に応えられないだろうことを気にしている。湿原にはゲイア達”人間”のほかに”巨人”と”ドリグ“も住んでいる。最初は純然たるファンタジーと思ったのね。だけど”巨人”が出てきて、その恐ろしい存在が、ゲイアの目を通して描写されると「あれ?」と思い当たる。自分たちの常識が、誰にとっても常識ではないこと。他者からどう見えるのか?違う常識とは本当に相容れないのか?★★★★★
読了日:05月29日 著者:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ

エセー 7エセー 7感想
400年も前の、フランスの人の文章ですが、「私もずっとそう思っていたの!」と思うようなことが多くて、友だちになれそうな気がしてきました。まあ、わたしはカトリックではないので、向こうから「話しにならん」と断られますが。知識が足りなくて正直読んでいて苦痛な部分も多かったですが、モンテーニュの意見を現代に置き換えて、自分にひきよせて読むとなかなか面白かったです。毎回読み始めは気合いが必要でしたが、全巻通読することができてよかった。とくに老後の生き方について考えるところは、身につまされました。★★★★☆
読了日:05月31日 著者:ミシェル・ド・モンテーニュ


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