マンガを除くと22冊。
よく読めたと思います。
と、言うのも、ついに我慢しきれず『黄泉のツガイ』を買っちゃったんですよねえ。
現段階で出ている3巻までを一気に。
で、通読で3回ずつは読んだ。
気になったところをぱらぱらと、は、もっと読んでる。
よくこれで22冊読めたなあ。
ゴールデンウィーク中にまた何回か再読する予定。楽しみ。
で、★5つが6冊。
実は読書ノリノリ月間だったのでは?
『お菓子と麦酒』は、思っていた話と全然違って、イギリスの閉鎖的な階級社会に風穴を開けたかのような爽快感があって、わくわくしながら読みました。
多分悪女に分類されるのであろうロウジーの、清々しいほどの自己中。
自分が幸せなら、周囲も幸せであるという自信。
それはお金でも権威でもないと笑い飛ばせる彼女が、かっこいい。
『指差す標識の事例 下』
一応下に★5つをつけたけど、上下巻合わせての★5つです。
本当に理解できているのかと言われるとまったく自信はないけれど、とにかく語り手が変わるたびに見えていた世界が一変するところが愉快。
自分たちの都合で、ひとりの女性を見殺しにするのはいかがかと思うけど、それも含めて中世のヨーロッパの片田舎のイギリスの実態だったのだろう。
自分の本だったらもう2~3回読みなおして答え合わせをしたいものです。
『P分署捜査班 集結』
シリーズの1冊目ということもあって、人物紹介の巻とも言える。
だから余計にキャラクターたちのクセが際立っていて、面白くて、今後どう関係性が変わっていくのだろうとわくわくする。
イタリアのミステリは初めて読んだけど、あまり理屈っぽいわけでもなく、とても読みやすかった。
普通のイタリア小説って理屈っぽいよね。身構えちゃったよ。
『パリ左岸のピアノ工房』
自分に音楽の才能がないのが本当に無念。
ふとしたことから、中古のピアノを修復する工房が気になってしまったパリのアメリカ人である著者。
修復士、調律師、ピアノ配送業者、ピアノ教師、ピアニスト…。
ピアノを巡る様々な人たちと関わりながら音楽を楽しむ日々は、なんと心豊かであることか。
『熱帯』
森見登美彦渾身の一冊というのが伝わる作品。
複雑な構成の、起承転結を無視した小説は賛否両論あるのでしょうが、わたしは好きです。
作者の創造者としての苦悩を受け取りました。
だから、作者の作った作品世界を楽しませてもらうのではなく、作者に自分の読書体験を呼び覚まされて、翻弄されて、再び読書の海へ漕ぎ出でようという気にさせてられました。
だって本を読むことを止めることはできないのだもの。
『高野聖』
近代日本の文学はあまり読んでこなかったので、中途半端な知識で勝手に想像していましたが、全然違いました、
もっと早く読めばよかった。
特に『義血供血』と『外科室』は本当に心臓を掴まれたかのように、胸がぎゅうっと苦しくなるほどのめり込んで読みました。
タイトルで損してると思うわ。
本当によい作品なのに。
4月の読書メーター
読んだ本の数:27
読んだページ数:7257
ナイス数:751
オリエントの冒険 (ミス・ビアンカシリーズ 5)の感想
今回の冒険はちょっと手ごわかった。何しろ、死刑にされるという少年が見つからない。誰に聞いてもそんな人はいないという。死刑は、象に踏みつぶされるというもの。事実を知ったミス・ビアンカは象と話しあうために、王宮を抜け出るのだった。今回、気まぐれに人の命を奪うような王妃は、懲らしめられることも反省することもなかった。だけど、ミス・ビアンカの力になってくれた人たちのことは、きちんと逃がしてやったのだ。王宮の侍女たちも、囚われていると言えばそうなのだから。凄腕だな、ミス・ビアンカ。★★★★☆
読了日:04月01日 著者:マージェリー・シャープ
新ロードス島戦記3 黒翼の邪竜 (角川スニーカー文庫)の感想
1巻2巻とも、章ごとに短篇のようにストーリーが切れてしまい、長編としてはやや乗り切れない部分があったのだけれど、今作は邪竜とそれを操る敵を倒すという一つの流れがはっきりしていたので、読みやすかった。それにしても、帝国の首席宮廷魔術師のヴェイルは、切れ者のように書かれているけれど、手勢を捨てゴマのように切り捨てているようなやり方では、いずれ行き詰ってしまうのでは?それに比べて、未だ猫を被っている皇帝のレイエスの方は、密に仲間を集めて何やら画策している模様。これは、ヴェイルも切り捨てられる運命か。因果応報。★★★★☆
読了日:04月02日 著者:水野 良
ひと (祥伝社文庫)の感想
東京の私大生だった僕、柏木聖輔は、地元の鳥取でひとり残って仕送りをしてくれた母の急死により大学を中退し、就職先を探す生活となる。天涯孤独になった聖輔が唯一失わずにすんだのが、ひととのつながり。だからタイトルは「ひと」なんだな。”大切なのはものじゃない。形がない何かでもない。人だ。人材に代わりはいても、人に代わりはいない。 道は譲る。ベースも譲る。店のあれこれも譲る。でも青葉は譲らない。譲りたくない。”高校時代からずっと聖輔を見ていてくれた青葉は、聖輔のこの覚悟をきっと喜んでくれるだろう。★★★★☆
読了日:04月03日 著者:小野寺史宜
お菓子と麦酒 (新潮文庫 モ 5-7)の感想
一人称で書かれているこの小説は、語り手の少年時代に近所に住んでいた、作家とその妻との交流がその軸となっています。後年ひとかどの作家になった主人公は、時代を代表する大作家となったドリッフィールドの伝記を書くという同年代の作家に若かりし彼のことを聞かれ、あれやこれや思い出す。という話ですが、大切なのはそんなことではないのです。階級社会イギリスの、庶民ですら自分の下の者を見下げるような世間で、自由闊達であろうとするドリッフィールド夫妻の姿は、実に清々しいのです。端からどう思われても、人生楽しんだ者勝ちだよね。★★★★★
読了日:04月05日 著者:ウィリアム・サマセット・モーム
指差す標識の事例 下 (創元推理文庫)の感想
下巻は暗号解読の達人である幾何学教授の手記から始まる。
暗号解読の達人であるいつも勝ち組に乗るウォリスが、コーラとプレストコットの手記を読み、その嘘を暴き真実を語る…ことになっているのだけど、これが過去最高に信用できない語り手。最後の歴史学者ウッドが3名の手記の噓や矛盾を暴き、真相を解明するという流れなんだけど。上巻はグローヴ教授毒殺事件の謎が物語の中心と思っていたのだけど、下巻に入るとイギリスという国の歴史の中のブラックボックスが中心になっていた。だけど面白かったんですわ。ぐいぐい読んでただいま寝不足。★★★★★
読了日:04月07日 著者:イーアン・ペアーズ
モップの精と二匹のアルマジロ (実業之日本社文庫)の感想
シリーズ初の長篇です。誰もが羨むイケメンと結婚した地味な女性・真琴から、夫が浮気をしているか調べてほしいと頼まれるキリコ。あまり現実的ではない導入部だけど、キリコを動かさなくては話が進まないので、まあしょうがないか。二匹のアルマジロとは友也と真琴夫婦のこと。互いの体温を感じることもできないくらいの厚い皮で覆われた心。全てが明かされた後、二人はその皮を脱ぎ捨てて寄り添い合うことができるのか、それとももう手遅れなのか。その判断は読者にゆだねられる。私は寄り添い合うと思いました。★★★★☆
読了日:04月08日 著者:近藤 史恵
集結 (P分署捜査班) (創元推理文庫)の感想
有能だけど癖が強くて鼻つまみ者の刑事が4人、有能な後方支援が2人、そして理想の上司の所長。この7人がメインの登場人物。一応ロヤコーノ警部が中心となってはいるけれど、あくまで群像劇です。ひと癖もふた癖もある彼らは家庭にも問題を抱えていて、おいおいこれらの問題も深掘りされていくことと思います。さらにイタリアの都市が抱える老い、孤独、自殺、格差、貧困などの社会的問題もしっかり書かれていて、これは続きが楽しみなシリーズを教えてもらったと、紹介してくださった司書さんに感謝です。★★★★★
読了日:04月09日 著者:マウリツィオ・デ・ジョバンニ
ぶたぶたラジオ (光文社文庫)の感想
『ぶたぶたの本屋さん』の続編。ブックカフェを営みながら、ミニFMで本の紹介をしていたぶたぶたさんが、AMラジオの悩み相談コーナーも務めることになったという話。ラジオの人生相談みたいのを聞いたことがないのでわからないけれど、それほど深刻ではなく普遍的な悩みなので、本にするとそういう感じになるのかな。本当ならぶたぶたさんの渋い声で説得力ある語りを聞きたいものですが。★★★★☆
読了日:04月10日 著者:矢崎 存美
ワイルダーならどうする?―ビリー・ワイルダーとキャメロン・クロウの対話の感想
映画にそれほど詳しくないもので、和田誠の絵が表紙の映画本は「あたり」と決めている。これはビリー・ワイルダーに特化した本なので、正直よくわかったとは言えないけれど、詳しくない私でも知ってる映画が多くて楽しい。こうなると映画を観たくなってしまう。特に『お熱いのがお好き』。トニー・カーティスとジャック・レモンが女装するのですが、これがまあ綺麗。素敵。ジャック・レモンなんて、写真によっては女の子にしか見えない。三谷幸喜は絶対にビリー・ワイルダーが好きだろうな、と思う。何故かそれだけは確信できた。★★★★☆
読了日:04月11日 著者:キャメロン クロウ
エセー〈4〉の感想
白水社の『エセー』全7巻の折返しの第4巻にして最難解と言われる「レーモン・スボンの弁護」収録。「レーモン・スボンの弁護」とは、理性によって信仰を立証しようとしたスボンの論をモンテーニュが弁護しようとしたものである…はず…なのだけど、気がつくと神に選ばれた人間という存在=特権的存在を徹底的に否定している。あれれ?難解な部分も終えて、エセ―の坂も下りに差しかかります。とおもったら、次巻はもっとも分厚い巻になるらしい。1巻も相当長く感じたんだけどなあ。毎回が勝負巻の『エセー』。頑張らねば。★★★★☆
読了日:04月12日 著者:ミシェル・ド・モンテーニュ
名探偵コナン (103) (少年サンデーコミックス)の感想
もう今更キッドの話はいらないなあ。灰原を狙う若狭先生と、これをガードする沖矢。ここで何かが変わるかと思ったけれど、ジャブの応酬だけで終わってしまった。最後に出て来た謎のおじいさんが烏丸蓮耶なのでしょうか。でも途中に出てきたダースベイダーのような音させてるおじいさんがそうなのでしょうか。これ以上人物関係面倒にするなよ。とにかく早く話を進めてほしい。
読了日:04月13日 著者:青山 剛昌
黄泉のツガイ(1) (ガンガンコミックス)の感想
ずっと買うのを我慢していたのだけど、無料期間に何度も同じ部分を読んで、ついに我慢の限界。買ってしまった。まだこの世界の全容はわからないけれど、面白くなる予感しかない。小ボケの連発で笑いながら読んでいるけれど、結構血なまぐさいダークな世界。そしておまけのマンガで笑い、カバーを剥がして驚愕する。作者のマンガへの情熱、ブレないなあ。
読了日:04月13日 著者:荒川 弘
黄泉のツガイ(2) (ガンガンコミックス)の感想
登場時点では敵役のようだったアサが、めっちゃブラコンで笑う。会話の最後に「ぎゅってしていい?」って必ず聞くかわいさよ。黙って抱き着くわけではなく、ユルに断られては引き下がる素直さ。少しずつツガイと主の関係がわかり、東村と影森の関係もわかって来るけれど、どちらが正義でどちらが悪かということはわからず。二人とも幼い頃から命を狙われ続けたということだけはわかった。超絶強い兄は小柄、ってところはハガレンと同じなのね。そして兄に対する絶大な信頼も同じ。
読了日:04月15日 著者:荒川弘
黄泉のツガイ(3) (ガンガンコミックス)の感想
アサと一緒に東村を出ていった両親が、朝を残して行方不明となっている。信じられるのは両親だけ、のユルは、両親の行方を捜すことにする。東村も影森も信じられないユルは、朝と袂を分かつが、尾行者がついてくることに気づく。アサは自分が暗殺者に一度殺されているからこそ、ユルの生死が心配だったのか。東村も影森も一枚岩ではないらしいので、ますます敵味方がわからない中、圧倒的強さを誇る左右様がユルのツガイとなっていることは、今後どういう意味を持つのか。次巻が待ち遠しい。
読了日:04月15日 著者:荒川弘
パリ左岸のピアノ工房 (新潮クレスト・ブックス)の感想
パリに住むアメリカ人ライターである著者が、子どもを幼稚園へ送った帰り道、ふと見かけたピアの工房に心惹かれたところから始まる、ピアノを巡るノンフィクション。静かな住宅街にピアノの部品や修理工具販売の店があって、商売になるのだろうかと思ったのがはじまり。そこから広がる著者のピアノを巡る旅。それぞれのエピソードが流れるメロディーのように頭の中でイメージされる。その心地よさのため、時間がある限り一気読みを是とする私が、意識的に休み休み余韻を楽しみながら読んだ。★★★★★
読了日:04月16日 著者:T.E. カーハート
南極の冒険 (ミス・ビアンカ シリーズ 6)の感想
今回のとらわれ人は、実はミス・ビアンカとバーナード。南極に置き去りにされた詩人を救出しに行って、代わりに取り残されてしまったのだ。結局腹をくくったミス・ビアンカの言動が、自分たちを救うことになる。誰も彼らが南極にいることを知らないので、自力で脱出しなければならないという絶望的な状況の中、年をとって体力の衰えも感じつつ、気持ちで負けることのないミス・ビアンカがとても良い。★★★★☆
読了日:04月17日 著者:マージェリー・シャープ
新ロードス島戦記4 運命の魔船 (角川スニーカー文庫)の感想
前巻辺りから気になってはいたのだけど、新マーモ帝国の人材不足に対する対策のなさがここに来て決定的なダメージを帝国に与えることになる。ヴェイルはできる男かもしれないが、自分を恃み過ぎることがいつか彼の足を救うだろうと思っていたけれど、やはりそうなった。ネータについても、いったいなぜ彼女が騎士団長に選ばれたのか、まったくわからない。もはや物語はマーモ公国対マーモ帝国ではなく、ニースを巡る転生者とスパークたちの戦いになってきている。破壊神を信仰するというのは実際にあることだけれど、私にはよくわからない。★★★★☆
読了日:04月18日 著者:水野 良
熱帯の感想
第一章から第三章は、現代の日本が舞台。最初に登場するのはスランプに陥った作家・森見登美彦。極些少な事実はあるかもしれないが、三章まではエンタメ小説。しかし第四章からは突然記憶を失った男が、どことも知れない小島に流れ着いてから魔王と対峙するまでを書く、ファンタジーのような純文学である。エンタメ部分は普通に面白かった。けれど純文学部分は抜群に面白かった。入れ子細工のような、メビウスの輪のような、二転三転する展開。そこに論理的な整合性はない。けれども、今までの自分の読書体験が物凄く揺さぶられたのだ。★★★★★
読了日:04月19日 著者:森見 登美彦
誘拐 (創元推理文庫 M テ 19-2 P分署捜査班)の感想
大きな事件は10歳の少年の誘拐事件。問題を抱えた刑事たちの中でも一番使えないと思われていたアラゴーナが、意外に勘が良くていい仕事をする。今回誘拐された少年が健気でねえ。周りの大人たちがみんな自己中なのに、人を信じて、辛いことも我慢して、約束は守って…。彼が熱を出した辺りから、気がせいて気がせいて、早く助け出してあげてと祈るような気持ちで読んでいた。子どもが被害者って、ほんと嫌。事件の真相は救いのないもの。結果の救いのなさよりも、発端の救いのなさに愕然とする。ネタバレになるから、これ以上書けないのが辛い。★★★★☆
読了日:04月20日 著者:マウリツィオ・デ・ジョバンニ
江勢(えせ)物語 (角川文庫)の感想
小説あり、エッセイあり、旅行記ありの一冊。一番面白かったのは、巻頭の『現代語訳「江勢物語」』。てっきり伊勢物語のパロディかと思ったらそれだけではなく、徒然草や枕草子、土佐日記にサラダ記念日と縦横無尽に繰り広げられるパロディは、元ネタが簡単にわかるくらいの有名な文章を、なんとも奇天烈なところに着地させるというもの。思わず噴いた箇所もいくつか。★★★★☆
読了日:04月21日 著者:清水 義範
ぼくんち 上 (角川文庫 さ 36-10)の感想
ぼくんちは、母ちゃんが三年前に買い物に出掛けたまま帰ってこないので、兄ちゃんとふたり暮らしだったが、三年ぶりに帰ってきた母ちゃんは、姉ちゃんを連れてきた。底辺の中の底辺で暮らす人たち。親を当てにできない子どもたちは、自力で生きていかなくてはならない。へらへらと笑いながら歯を食いしばって生きる姿に胸が痛くなる。が、一度戻ってきた母親は再び家を出ていき、あろうことか子どもたちが住んでいる家を売り払ってしまう。そういう家庭もあるんだなあ。
読了日:04月23日 著者:西原 理恵子
モップの精は旅に出るの感想
清掃員キリコシリーズの最終巻。地に足の着いた仕事をしている、若くて可愛くて頭の回転の良い人妻のキリコの前に、殺人事件が多すぎる。今回の事件でも殺意はなかったとはいえ、同僚に罪をなすりつけるような偽の証拠をでっち上げたり、親切を装って虎視眈々と復讐の機会を狙ったりと、度を越した悪意が頻発する。それなのに、いつも明るく元気なキリコ…だったらそれは鈍感すぎるでしょ。人の気持ちのすれ違いが事件を生むのはしょうがないけれど、人の気持ちのすれ違いが殺人に直結するのはなあ…ってずっと思っていた。★★★★☆
読了日:04月24日 著者:近藤 史恵
森のシェフぶたぶた (光文社文庫)の感想
『二人でディナーを』に少しやばい人が出て来たくらいで、他は大人女子の友情や夫婦のありかた、好き嫌いの克服と、比較的地味だけど良い話が多かった。特に『春の女子会』は、学生時代の友だち4人が、家族に子どもを預けて、一泊二日のお泊り会。学生時代と違うのは、ちょっとおしゃれしていつもよりワンランク上の食事を楽しむ、オーベルジュに泊まるというところ。だけど、みんなで相談してそれぞれ違う物を頼み、みんなで少しずつシェアして食べるって、あるあるだよね。★★★★☆
読了日:04月25日 著者:矢崎 存美
エセー 5の感想
モンテーニュにとっての『栄光』とは、今でいう『矜持』とか『プライド』のようなもののような気がします。過剰な承認欲求。児童虐待は、モンターニュの時代からあったんですね。多様性への言及も。今も昔も人間って変わらんなあ。ところで最終章のタイトル『子どもが父親と似ることについて』について。50ページもあるこの章のほとんどが、医者と医療行為への不信なのです。ただ、章の最初と最後に、先祖代々医者嫌いの一族と書いているので、間違いではないのでしょうが、正解でもないですよねえ。★★★★☆
読了日:04月26日 著者:ミシェル ド モンテーニュ
高野聖 (角川文庫 緑 10-2)の感想
この本を読むまで全く知らなかった「義血侠血」が良かった。父の死で学校を諦めざるを得なかった、法学士志望の乗合馬車の御者の青年。美貌と気っ風のよさで人気の女芸人。ひょんなことから知り合ったふたり。彼女は彼に夢を託す。平凡な幸せという夢を。そのため、彼の学生生活を援助し、彼の母親の面倒を見る。ああ、何でこんなことになってしまったんだろう。自分のできる範囲で、精一杯生きてきたのに。彼と彼女は出逢わないほうが良かったのだろうか。いや、不幸ではないが幸せでもない人生より、一瞬でも幸せだった方が良かったのだろう。★★★★★
読了日:04月28日 著者:泉 鏡花
さいごの冒険 (ミス・ビアンカ シリーズ 7)の感想
ミス・ビアンカの最後の冒険は、自身が住む大使館のなかです。大使の姪が結婚することとなり、結婚式前に大使館に泊まることになりました。妹のスーザンと一緒に。ところが結婚式の前の晩、6歳のスーザンが大使館から姿を消してしまいます。上質のミステリでした。だって、ヒントはあちこちに書いてあるのです。特に大切なのは、大使館で働く人々についての描写。ミス・ビアンカとバーナードの仲は変わりませんでした。これをきっかけに結婚するかと思ったんだけど。互いの生活スタイルを尊重しながら、思いやり深く付き合う。大人だなあ。★★★★☆
読了日:04月29日 著者:マージェリー・シャープ
新ロードス島戦記5 終末の邪教(上) (角川スニーカー文庫)の感想
新生マーモ帝国を実質敵に滅ぼし、ニースを未来の公王妃と国民に紹介し、ダークエルフや暗黒神を信仰する信者たちをも、マーモ公国の法さえ犯さなければ認めることを宣言。マーモ公国はこれから平和と繁栄に向かって進んでいくと思われたとき。唯一マーモ公国と相容れない、破壊の女神を信仰するカーディス教団がついに本気で動き出す。というところで最終巻に続く。公王スパークは重傷を負い、近衛騎士隊長のギャラックとその妻ライナ、戦神の司祭であるドワーフのグリーバスは戦死、ここからどう立て直していくのか?★★★★☆
読了日:04月30日 著者:水野 良
読書メーター
よく読めたと思います。
と、言うのも、ついに我慢しきれず『黄泉のツガイ』を買っちゃったんですよねえ。
現段階で出ている3巻までを一気に。
で、通読で3回ずつは読んだ。
気になったところをぱらぱらと、は、もっと読んでる。
よくこれで22冊読めたなあ。
ゴールデンウィーク中にまた何回か再読する予定。楽しみ。
で、★5つが6冊。
実は読書ノリノリ月間だったのでは?
『お菓子と麦酒』は、思っていた話と全然違って、イギリスの閉鎖的な階級社会に風穴を開けたかのような爽快感があって、わくわくしながら読みました。
多分悪女に分類されるのであろうロウジーの、清々しいほどの自己中。
自分が幸せなら、周囲も幸せであるという自信。
それはお金でも権威でもないと笑い飛ばせる彼女が、かっこいい。
『指差す標識の事例 下』
一応下に★5つをつけたけど、上下巻合わせての★5つです。
本当に理解できているのかと言われるとまったく自信はないけれど、とにかく語り手が変わるたびに見えていた世界が一変するところが愉快。
自分たちの都合で、ひとりの女性を見殺しにするのはいかがかと思うけど、それも含めて中世のヨーロッパの片田舎のイギリスの実態だったのだろう。
自分の本だったらもう2~3回読みなおして答え合わせをしたいものです。
『P分署捜査班 集結』
シリーズの1冊目ということもあって、人物紹介の巻とも言える。
だから余計にキャラクターたちのクセが際立っていて、面白くて、今後どう関係性が変わっていくのだろうとわくわくする。
イタリアのミステリは初めて読んだけど、あまり理屈っぽいわけでもなく、とても読みやすかった。
普通のイタリア小説って理屈っぽいよね。身構えちゃったよ。
『パリ左岸のピアノ工房』
自分に音楽の才能がないのが本当に無念。
ふとしたことから、中古のピアノを修復する工房が気になってしまったパリのアメリカ人である著者。
修復士、調律師、ピアノ配送業者、ピアノ教師、ピアニスト…。
ピアノを巡る様々な人たちと関わりながら音楽を楽しむ日々は、なんと心豊かであることか。
『熱帯』
森見登美彦渾身の一冊というのが伝わる作品。
複雑な構成の、起承転結を無視した小説は賛否両論あるのでしょうが、わたしは好きです。
作者の創造者としての苦悩を受け取りました。
だから、作者の作った作品世界を楽しませてもらうのではなく、作者に自分の読書体験を呼び覚まされて、翻弄されて、再び読書の海へ漕ぎ出でようという気にさせてられました。
だって本を読むことを止めることはできないのだもの。
『高野聖』
近代日本の文学はあまり読んでこなかったので、中途半端な知識で勝手に想像していましたが、全然違いました、
もっと早く読めばよかった。
特に『義血供血』と『外科室』は本当に心臓を掴まれたかのように、胸がぎゅうっと苦しくなるほどのめり込んで読みました。
タイトルで損してると思うわ。
本当によい作品なのに。
4月の読書メーター
読んだ本の数:27
読んだページ数:7257
ナイス数:751

今回の冒険はちょっと手ごわかった。何しろ、死刑にされるという少年が見つからない。誰に聞いてもそんな人はいないという。死刑は、象に踏みつぶされるというもの。事実を知ったミス・ビアンカは象と話しあうために、王宮を抜け出るのだった。今回、気まぐれに人の命を奪うような王妃は、懲らしめられることも反省することもなかった。だけど、ミス・ビアンカの力になってくれた人たちのことは、きちんと逃がしてやったのだ。王宮の侍女たちも、囚われていると言えばそうなのだから。凄腕だな、ミス・ビアンカ。★★★★☆
読了日:04月01日 著者:マージェリー・シャープ

1巻2巻とも、章ごとに短篇のようにストーリーが切れてしまい、長編としてはやや乗り切れない部分があったのだけれど、今作は邪竜とそれを操る敵を倒すという一つの流れがはっきりしていたので、読みやすかった。それにしても、帝国の首席宮廷魔術師のヴェイルは、切れ者のように書かれているけれど、手勢を捨てゴマのように切り捨てているようなやり方では、いずれ行き詰ってしまうのでは?それに比べて、未だ猫を被っている皇帝のレイエスの方は、密に仲間を集めて何やら画策している模様。これは、ヴェイルも切り捨てられる運命か。因果応報。★★★★☆
読了日:04月02日 著者:水野 良

東京の私大生だった僕、柏木聖輔は、地元の鳥取でひとり残って仕送りをしてくれた母の急死により大学を中退し、就職先を探す生活となる。天涯孤独になった聖輔が唯一失わずにすんだのが、ひととのつながり。だからタイトルは「ひと」なんだな。”大切なのはものじゃない。形がない何かでもない。人だ。人材に代わりはいても、人に代わりはいない。 道は譲る。ベースも譲る。店のあれこれも譲る。でも青葉は譲らない。譲りたくない。”高校時代からずっと聖輔を見ていてくれた青葉は、聖輔のこの覚悟をきっと喜んでくれるだろう。★★★★☆
読了日:04月03日 著者:小野寺史宜

一人称で書かれているこの小説は、語り手の少年時代に近所に住んでいた、作家とその妻との交流がその軸となっています。後年ひとかどの作家になった主人公は、時代を代表する大作家となったドリッフィールドの伝記を書くという同年代の作家に若かりし彼のことを聞かれ、あれやこれや思い出す。という話ですが、大切なのはそんなことではないのです。階級社会イギリスの、庶民ですら自分の下の者を見下げるような世間で、自由闊達であろうとするドリッフィールド夫妻の姿は、実に清々しいのです。端からどう思われても、人生楽しんだ者勝ちだよね。★★★★★
読了日:04月05日 著者:ウィリアム・サマセット・モーム

下巻は暗号解読の達人である幾何学教授の手記から始まる。
暗号解読の達人であるいつも勝ち組に乗るウォリスが、コーラとプレストコットの手記を読み、その嘘を暴き真実を語る…ことになっているのだけど、これが過去最高に信用できない語り手。最後の歴史学者ウッドが3名の手記の噓や矛盾を暴き、真相を解明するという流れなんだけど。上巻はグローヴ教授毒殺事件の謎が物語の中心と思っていたのだけど、下巻に入るとイギリスという国の歴史の中のブラックボックスが中心になっていた。だけど面白かったんですわ。ぐいぐい読んでただいま寝不足。★★★★★
読了日:04月07日 著者:イーアン・ペアーズ

シリーズ初の長篇です。誰もが羨むイケメンと結婚した地味な女性・真琴から、夫が浮気をしているか調べてほしいと頼まれるキリコ。あまり現実的ではない導入部だけど、キリコを動かさなくては話が進まないので、まあしょうがないか。二匹のアルマジロとは友也と真琴夫婦のこと。互いの体温を感じることもできないくらいの厚い皮で覆われた心。全てが明かされた後、二人はその皮を脱ぎ捨てて寄り添い合うことができるのか、それとももう手遅れなのか。その判断は読者にゆだねられる。私は寄り添い合うと思いました。★★★★☆
読了日:04月08日 著者:近藤 史恵

有能だけど癖が強くて鼻つまみ者の刑事が4人、有能な後方支援が2人、そして理想の上司の所長。この7人がメインの登場人物。一応ロヤコーノ警部が中心となってはいるけれど、あくまで群像劇です。ひと癖もふた癖もある彼らは家庭にも問題を抱えていて、おいおいこれらの問題も深掘りされていくことと思います。さらにイタリアの都市が抱える老い、孤独、自殺、格差、貧困などの社会的問題もしっかり書かれていて、これは続きが楽しみなシリーズを教えてもらったと、紹介してくださった司書さんに感謝です。★★★★★
読了日:04月09日 著者:マウリツィオ・デ・ジョバンニ

『ぶたぶたの本屋さん』の続編。ブックカフェを営みながら、ミニFMで本の紹介をしていたぶたぶたさんが、AMラジオの悩み相談コーナーも務めることになったという話。ラジオの人生相談みたいのを聞いたことがないのでわからないけれど、それほど深刻ではなく普遍的な悩みなので、本にするとそういう感じになるのかな。本当ならぶたぶたさんの渋い声で説得力ある語りを聞きたいものですが。★★★★☆
読了日:04月10日 著者:矢崎 存美

映画にそれほど詳しくないもので、和田誠の絵が表紙の映画本は「あたり」と決めている。これはビリー・ワイルダーに特化した本なので、正直よくわかったとは言えないけれど、詳しくない私でも知ってる映画が多くて楽しい。こうなると映画を観たくなってしまう。特に『お熱いのがお好き』。トニー・カーティスとジャック・レモンが女装するのですが、これがまあ綺麗。素敵。ジャック・レモンなんて、写真によっては女の子にしか見えない。三谷幸喜は絶対にビリー・ワイルダーが好きだろうな、と思う。何故かそれだけは確信できた。★★★★☆
読了日:04月11日 著者:キャメロン クロウ

白水社の『エセー』全7巻の折返しの第4巻にして最難解と言われる「レーモン・スボンの弁護」収録。「レーモン・スボンの弁護」とは、理性によって信仰を立証しようとしたスボンの論をモンテーニュが弁護しようとしたものである…はず…なのだけど、気がつくと神に選ばれた人間という存在=特権的存在を徹底的に否定している。あれれ?難解な部分も終えて、エセ―の坂も下りに差しかかります。とおもったら、次巻はもっとも分厚い巻になるらしい。1巻も相当長く感じたんだけどなあ。毎回が勝負巻の『エセー』。頑張らねば。★★★★☆
読了日:04月12日 著者:ミシェル・ド・モンテーニュ

もう今更キッドの話はいらないなあ。灰原を狙う若狭先生と、これをガードする沖矢。ここで何かが変わるかと思ったけれど、ジャブの応酬だけで終わってしまった。最後に出て来た謎のおじいさんが烏丸蓮耶なのでしょうか。でも途中に出てきたダースベイダーのような音させてるおじいさんがそうなのでしょうか。これ以上人物関係面倒にするなよ。とにかく早く話を進めてほしい。
読了日:04月13日 著者:青山 剛昌

ずっと買うのを我慢していたのだけど、無料期間に何度も同じ部分を読んで、ついに我慢の限界。買ってしまった。まだこの世界の全容はわからないけれど、面白くなる予感しかない。小ボケの連発で笑いながら読んでいるけれど、結構血なまぐさいダークな世界。そしておまけのマンガで笑い、カバーを剥がして驚愕する。作者のマンガへの情熱、ブレないなあ。
読了日:04月13日 著者:荒川 弘

登場時点では敵役のようだったアサが、めっちゃブラコンで笑う。会話の最後に「ぎゅってしていい?」って必ず聞くかわいさよ。黙って抱き着くわけではなく、ユルに断られては引き下がる素直さ。少しずつツガイと主の関係がわかり、東村と影森の関係もわかって来るけれど、どちらが正義でどちらが悪かということはわからず。二人とも幼い頃から命を狙われ続けたということだけはわかった。超絶強い兄は小柄、ってところはハガレンと同じなのね。そして兄に対する絶大な信頼も同じ。
読了日:04月15日 著者:荒川弘

アサと一緒に東村を出ていった両親が、朝を残して行方不明となっている。信じられるのは両親だけ、のユルは、両親の行方を捜すことにする。東村も影森も信じられないユルは、朝と袂を分かつが、尾行者がついてくることに気づく。アサは自分が暗殺者に一度殺されているからこそ、ユルの生死が心配だったのか。東村も影森も一枚岩ではないらしいので、ますます敵味方がわからない中、圧倒的強さを誇る左右様がユルのツガイとなっていることは、今後どういう意味を持つのか。次巻が待ち遠しい。
読了日:04月15日 著者:荒川弘

パリに住むアメリカ人ライターである著者が、子どもを幼稚園へ送った帰り道、ふと見かけたピアの工房に心惹かれたところから始まる、ピアノを巡るノンフィクション。静かな住宅街にピアノの部品や修理工具販売の店があって、商売になるのだろうかと思ったのがはじまり。そこから広がる著者のピアノを巡る旅。それぞれのエピソードが流れるメロディーのように頭の中でイメージされる。その心地よさのため、時間がある限り一気読みを是とする私が、意識的に休み休み余韻を楽しみながら読んだ。★★★★★
読了日:04月16日 著者:T.E. カーハート

今回のとらわれ人は、実はミス・ビアンカとバーナード。南極に置き去りにされた詩人を救出しに行って、代わりに取り残されてしまったのだ。結局腹をくくったミス・ビアンカの言動が、自分たちを救うことになる。誰も彼らが南極にいることを知らないので、自力で脱出しなければならないという絶望的な状況の中、年をとって体力の衰えも感じつつ、気持ちで負けることのないミス・ビアンカがとても良い。★★★★☆
読了日:04月17日 著者:マージェリー・シャープ

前巻辺りから気になってはいたのだけど、新マーモ帝国の人材不足に対する対策のなさがここに来て決定的なダメージを帝国に与えることになる。ヴェイルはできる男かもしれないが、自分を恃み過ぎることがいつか彼の足を救うだろうと思っていたけれど、やはりそうなった。ネータについても、いったいなぜ彼女が騎士団長に選ばれたのか、まったくわからない。もはや物語はマーモ公国対マーモ帝国ではなく、ニースを巡る転生者とスパークたちの戦いになってきている。破壊神を信仰するというのは実際にあることだけれど、私にはよくわからない。★★★★☆
読了日:04月18日 著者:水野 良

第一章から第三章は、現代の日本が舞台。最初に登場するのはスランプに陥った作家・森見登美彦。極些少な事実はあるかもしれないが、三章まではエンタメ小説。しかし第四章からは突然記憶を失った男が、どことも知れない小島に流れ着いてから魔王と対峙するまでを書く、ファンタジーのような純文学である。エンタメ部分は普通に面白かった。けれど純文学部分は抜群に面白かった。入れ子細工のような、メビウスの輪のような、二転三転する展開。そこに論理的な整合性はない。けれども、今までの自分の読書体験が物凄く揺さぶられたのだ。★★★★★
読了日:04月19日 著者:森見 登美彦

大きな事件は10歳の少年の誘拐事件。問題を抱えた刑事たちの中でも一番使えないと思われていたアラゴーナが、意外に勘が良くていい仕事をする。今回誘拐された少年が健気でねえ。周りの大人たちがみんな自己中なのに、人を信じて、辛いことも我慢して、約束は守って…。彼が熱を出した辺りから、気がせいて気がせいて、早く助け出してあげてと祈るような気持ちで読んでいた。子どもが被害者って、ほんと嫌。事件の真相は救いのないもの。結果の救いのなさよりも、発端の救いのなさに愕然とする。ネタバレになるから、これ以上書けないのが辛い。★★★★☆
読了日:04月20日 著者:マウリツィオ・デ・ジョバンニ

小説あり、エッセイあり、旅行記ありの一冊。一番面白かったのは、巻頭の『現代語訳「江勢物語」』。てっきり伊勢物語のパロディかと思ったらそれだけではなく、徒然草や枕草子、土佐日記にサラダ記念日と縦横無尽に繰り広げられるパロディは、元ネタが簡単にわかるくらいの有名な文章を、なんとも奇天烈なところに着地させるというもの。思わず噴いた箇所もいくつか。★★★★☆
読了日:04月21日 著者:清水 義範

ぼくんちは、母ちゃんが三年前に買い物に出掛けたまま帰ってこないので、兄ちゃんとふたり暮らしだったが、三年ぶりに帰ってきた母ちゃんは、姉ちゃんを連れてきた。底辺の中の底辺で暮らす人たち。親を当てにできない子どもたちは、自力で生きていかなくてはならない。へらへらと笑いながら歯を食いしばって生きる姿に胸が痛くなる。が、一度戻ってきた母親は再び家を出ていき、あろうことか子どもたちが住んでいる家を売り払ってしまう。そういう家庭もあるんだなあ。
読了日:04月23日 著者:西原 理恵子

清掃員キリコシリーズの最終巻。地に足の着いた仕事をしている、若くて可愛くて頭の回転の良い人妻のキリコの前に、殺人事件が多すぎる。今回の事件でも殺意はなかったとはいえ、同僚に罪をなすりつけるような偽の証拠をでっち上げたり、親切を装って虎視眈々と復讐の機会を狙ったりと、度を越した悪意が頻発する。それなのに、いつも明るく元気なキリコ…だったらそれは鈍感すぎるでしょ。人の気持ちのすれ違いが事件を生むのはしょうがないけれど、人の気持ちのすれ違いが殺人に直結するのはなあ…ってずっと思っていた。★★★★☆
読了日:04月24日 著者:近藤 史恵

『二人でディナーを』に少しやばい人が出て来たくらいで、他は大人女子の友情や夫婦のありかた、好き嫌いの克服と、比較的地味だけど良い話が多かった。特に『春の女子会』は、学生時代の友だち4人が、家族に子どもを預けて、一泊二日のお泊り会。学生時代と違うのは、ちょっとおしゃれしていつもよりワンランク上の食事を楽しむ、オーベルジュに泊まるというところ。だけど、みんなで相談してそれぞれ違う物を頼み、みんなで少しずつシェアして食べるって、あるあるだよね。★★★★☆
読了日:04月25日 著者:矢崎 存美

モンテーニュにとっての『栄光』とは、今でいう『矜持』とか『プライド』のようなもののような気がします。過剰な承認欲求。児童虐待は、モンターニュの時代からあったんですね。多様性への言及も。今も昔も人間って変わらんなあ。ところで最終章のタイトル『子どもが父親と似ることについて』について。50ページもあるこの章のほとんどが、医者と医療行為への不信なのです。ただ、章の最初と最後に、先祖代々医者嫌いの一族と書いているので、間違いではないのでしょうが、正解でもないですよねえ。★★★★☆
読了日:04月26日 著者:ミシェル ド モンテーニュ

この本を読むまで全く知らなかった「義血侠血」が良かった。父の死で学校を諦めざるを得なかった、法学士志望の乗合馬車の御者の青年。美貌と気っ風のよさで人気の女芸人。ひょんなことから知り合ったふたり。彼女は彼に夢を託す。平凡な幸せという夢を。そのため、彼の学生生活を援助し、彼の母親の面倒を見る。ああ、何でこんなことになってしまったんだろう。自分のできる範囲で、精一杯生きてきたのに。彼と彼女は出逢わないほうが良かったのだろうか。いや、不幸ではないが幸せでもない人生より、一瞬でも幸せだった方が良かったのだろう。★★★★★
読了日:04月28日 著者:泉 鏡花

ミス・ビアンカの最後の冒険は、自身が住む大使館のなかです。大使の姪が結婚することとなり、結婚式前に大使館に泊まることになりました。妹のスーザンと一緒に。ところが結婚式の前の晩、6歳のスーザンが大使館から姿を消してしまいます。上質のミステリでした。だって、ヒントはあちこちに書いてあるのです。特に大切なのは、大使館で働く人々についての描写。ミス・ビアンカとバーナードの仲は変わりませんでした。これをきっかけに結婚するかと思ったんだけど。互いの生活スタイルを尊重しながら、思いやり深く付き合う。大人だなあ。★★★★☆
読了日:04月29日 著者:マージェリー・シャープ

新生マーモ帝国を実質敵に滅ぼし、ニースを未来の公王妃と国民に紹介し、ダークエルフや暗黒神を信仰する信者たちをも、マーモ公国の法さえ犯さなければ認めることを宣言。マーモ公国はこれから平和と繁栄に向かって進んでいくと思われたとき。唯一マーモ公国と相容れない、破壊の女神を信仰するカーディス教団がついに本気で動き出す。というところで最終巻に続く。公王スパークは重傷を負い、近衛騎士隊長のギャラックとその妻ライナ、戦神の司祭であるドワーフのグリーバスは戦死、ここからどう立て直していくのか?★★★★☆
読了日:04月30日 著者:水野 良
読書メーター