仕事が忙しかった割にはよく読めました。
決め手は土日に出歩かなかったこと。
しかし暖かくなってきたので、そろそろ土日に動き出さないとね。

★5つは5さつ。
ちょっと甘かったでしょうか。

「だまされ屋さん」
テーマはきついのですが、どうにも読んでいるとゆるゆると解けていくようで、そんな感じが好きでした。

「今も未来も変わらない」
これも、ゆるいですね。
もしかしたら、仕事で疲れていたから、こういう甘いコーヒーのような小説が沁みたのかもしれません。
ただし恋愛部分は要りません。←頑な

「辺境メシ」
自分では絶対に体験できないこと。
それはフィクションじゃなくても、こんな身近にもあると思い知らされる快感。
でも絶対体験したくない。

「43回の殺意」
もう、読んでいるのが辛いくらい、少年たちを取り巻く環境の悪さにやりきれなくなる。
少年たちが一人の少年を惨殺した、というだけではない。
家庭のありかた、学校のありかた、社会のありよう。
事件の表面だけではなく、深層を知ることが大事と教えられた。

「銀河鉄道の父」
私も子を持つ親なので、宮沢賢治の父の気持ちはわかる。
大切なわが子であると同時に、自分の果たせなかった思いを託したり、思うとおりにならずもどかしく思ったり。
だけどこれ、明治の父の話なのよね。
その愛情と信念に圧倒されました。

2月の読書メーター
読んだ本の数:22
読んだページ数:7401
ナイス数:620


びんぼう自慢 (ちくま文庫)びんぼう自慢 (ちくま文庫)感想
尋常小学校の卒業間近に素行不良で退学になるというくらい、今の世の中では考えられない悪ガキっぷり。何しろ酒は飲む、煙草も吸う、博奕もする。けれど、徐々に眉間にしわが寄る。真面目に生きて貧乏なのは仕方がない。芸のためなら女房を泣かすことだってあるんだろう。だけど、親身になって心配してくれる人や、善意の人からお金をだまし取って、飲む、打つ、買うはいただけない。ダメだ。いくら才能があっても、こういう人は好きになれん。石川啄木と同じですね。人として、ダメ。だけど才能はあるんだよね、確かに。それは認めます。★★★★☆
読了日:02月02日 著者:古今亭 志ん生

ミス・ビアンカ くらやみ城の冒険 (岩波少年文庫)ミス・ビアンカ くらやみ城の冒険 (岩波少年文庫)感想
ねずみの団体「囚人友の会」が、牢獄「くらやみ城」に囚われた詩人を救出するために、ねずみを派遣します。世間知らずのミス・ビアンカ、船乗りねずみのニルス、家ねずみのバーナードは、互いを補い合って任務を遂行します。もちろんミス・ビアンカも、いい味出してます。そこここに、都合のいい偶然が転がっているのはご愛敬。挿絵のガース・ウィリアムズの絵がまた、素晴らしい。過剰な擬人化はしていないのに、ちゃんとミス・ビアンカとニルスとバーナードが描き分けられています。挿絵を見ているだけで、和むなあ。★★★★☆
読了日:02月03日 著者:マージェリー・シャープ

私が殺した少女 (ハヤカワ文庫JA)私が殺した少女 (ハヤカワ文庫JA)感想
私立探偵って大変だなあと思う。依頼人の勝手な依頼を、仕事だからと受け入れ、警察に目の敵にされたとしても、弱音を吐くことはできない。あくまでも守秘義務を貫くストイックが要求される。が、実行犯から事件の真相へたどりつく部分が、飛び過ぎて置いていかれる。最後の最後。この事件の真相を解明した沢崎のセリフが刺さる。「家族を守ると言うが、(中略)一番苦しめているのは、(中略)つまりはあなた自身ではないのですか」家族の問題って、突き詰めればそういうことなのかもしれない。★★★★☆
読了日:02月04日 著者:原 りょう

だまされ屋さん (単行本)だまされ屋さん (単行本)感想
夫を亡くし、三人の子ども達とも断絶し、古びた団地で一人暮らしをしている70歳の秋代の元に、若い男が現れる。当然秋代は断るが、男は弁舌巧みにさわやかな笑顔で入り込み、得意のカレーを作って秋代と晩ご飯を食べる。もう何年も顔を見ていない娘と孫の話を聞きたい秋代は、しかし気づくと自分の話ばかりをしていることに気づく。この男、詐欺師か何かなのか?どきどきする導入部から一転、読み進めるにしたがって辛くなってくる。家族の問題。決して家族を憎んでいるわけではないのに、家族といると感じる閉塞感。心当たりがありすぎる。★★★★★
読了日:02月05日 著者:星野 智幸

今も未来も変わらない (単行本)今も未来も変わらない (単行本)感想
主人公の善財星子は、40代のシングルマザーで作家。娘は大学受験を控えた高校三年生。映画館で知り合った大学院生とちょっといい関係になったり、女友達とカラオケやスーパー銭湯などでストレス解消したり、娘の学業や恋愛にヤキモキしたりといった、特段大きな事件も起きないストーリー。だけど読み始めたら、なんとも心地よい。”楽しむことを工夫する。それが幸せへの第一歩。””大人は楽しくなければ”難しいけれど、私が子ども達に見せたい背中は、これだ。だからこの小説に惹かれるのかもしれない。★★★★★
読了日:02月06日 著者:長嶋 有

ユニクロ潜入一年ユニクロ潜入一年感想
著者は社長のワンマン経営がブラック企業と言われる原因であるとみているようだが、それだけなのだろうか。確かに極端な権力集中で、各店舗の店長どころか本部の役員ですら意見を言えないような雰囲気であるらしいことはわかる。そして、往々にしてそういう職場では、トップの逆鱗に触れないように事なかれ主義と、目に見える部分の体裁だけを取り繕うことが起こりがちである。Amazonのレヴューを読むと、「こんなの普通じゃないの?」みたいな意見もあって、それほどにブラック業態が日常化していたんだなと思う。今はどうなんだろう?★★★★☆
読了日:02月10日 著者:横田 増生

作ってあげたい小江戸ごはん3 ほくほく里芋ごはんと父の見合い (角川文庫)作ってあげたい小江戸ごはん3 ほくほく里芋ごはんと父の見合い (角川文庫)感想
ある日大地の父親が、見合いをすると言い出した。世話人がいるわけではなく、自分から相手に申し込んだ見合い。場所は、この店。明らかに何か企みがあると思われる展開。この手の、ほっこりいい話系に時折りみられる、「よい(良い・善い)ことをするためには手段を問わない」というのが好きではない。多くの宗教的問題がここから発しているのを知らんのか?自分だけは許されると思っているのか?安易なストーリー展開ではなく、もっとプロットを練ろうよ、プロなんだから。高野豆腐のサンドイッチは今度作ってみたいと思いました。★★★☆☆
読了日:02月11日 著者:高橋 由太

辺境メシ ヤバそうだから食べてみた (文春文庫)辺境メシ ヤバそうだから食べてみた (文春文庫)感想
一応覚悟して買ったのだけど、やっぱりすごい本でありました。巻頭カラーの『豚の生血の和え物』とか、『虫サンド』『水牛の脊髄』『ジュース用のヒキガエル』『モルモットの串焼き』など、インパクト強すぎ。「はじめに」で書かれた”注意してほしいのは、食事中に読まないこと。”の意味。いや、私の主たる読書時間は食事中なので、それは困るよ。実際、昆虫食にはまだ抵抗あるけれど、『オオナマズのトムヤム』とか『アヒル肉のビール煮』とか美味しそうだった。手間をかけて作る辺境メシを見たら、料理を作りたくなった。普通のやつね。★★★★★
読了日:02月12日 著者:高野 秀行

ドクターぶたぶた (光文社文庫)ドクターぶたぶた (光文社文庫)感想
患者だけではなく、新米ナースの心もほぐしてくれるドクターぶたぶたは、名医以外の何物でもない。だけど、「ぬいぐるみに手術してもらう」ことをどうしても納得できない人もいる。人間の医者にだって、不信感を持つことは多々ある。合う合わないはどうしようもないのだから、無理と思ったら医者を変える決心は必要。一番笑えるのは、ショートショート。(祖母の決断)これ、祖母の決断というよりも、祖母の野望なんじゃない?困り顔のぶたぶたさんを想像するとおかしくてしょうがないけど、おばあちゃんには健闘を祈ります。★★★★☆
読了日:02月13日 著者:矢崎 存美

ダレン・シャン 12 (小学館ファンタジー文庫)ダレン・シャン 12 (小学館ファンタジー文庫)感想
バンパイア元帥であるダレンとバンパニーズ大王のスティーブが戦い、ダレンが勝ってハッピーエンド。前巻を読むまではそう予想していたのだけど、どちらが勝っても勝者が闇の帝王となって世界が滅ぶというのなら、物語の落としどころはどこにあるのか。ふんふん、なるほど、そう来たか。ダレンの行動がエバンナの心を動かし、エバンナの決意が人類の未来に希望を灯す。辛いし大変だし必ずしも報われるとは限らないのに、不幸ではない。これは、未来を担う若い人たちへの、大切なメッセージなのだと思いました。★★★★☆
読了日:02月14日 著者:ダレン・シャン

さらば長き眠り (ハヤカワ文庫JA)さらば長き眠り (ハヤカワ文庫JA)感想
一年以上東京を離れていた沢崎が最初にしたことは、まず連絡の取れない依頼人を探すことだった。この事件には二組の父と娘が出てくるが、どちらの父親もある意味毒親。娘を憎んでいるのならまだしも、かわいいと思っていると言いながら、最終的には保身に走るのだ。タイトルの「長き眠り」の意味が分かった時、本当に長い間無為に眠りにつかされた娘たちを思って、怒りが込み上げた。さて、シリーズ最初から沢崎の周辺に出没する「渡辺」について、ひとまず片が付いた。作者はこれでシリーズを終了するつもりだったのだろうか。★★★★☆
読了日:02月15日 著者:原 りょう

天使天使感想
300ページにも満たない作品にずいぶん時間がかかってしまった。何しろ、第一次世界大戦頃のウィーンの貴族社会を舞台に、異能の少年が時代に翻弄されながら成長していく話なのに、舞台背景の理解が圧倒的に私にはない。佐藤亜紀という作家は、読者に媚びない。懇切丁寧に背景や心情を書いたりしない。なので話が進むにつれ、これはどんな人物で、主人公とどうかかわって、それがストーリーにどう影響するのかをいちいち脳内で確認しなければならない。そして、第一次世界大戦までは、ヨーロッパを動かしていたのは貴族だったのだと思い知る。★★★★☆
読了日:02月18日 著者:佐藤亜紀

ミス・ビアンカ ダイヤの館の冒険 (岩波少年文庫)ミス・ビアンカ ダイヤの館の冒険 (岩波少年文庫)感想
前作では行き当たりばったりで囚人を救出したミス・ビアンカ。今回は、冷酷な大公妃にこき使われる少女・ペイシェンスの救出をすることになる。事前にいろいろリサーチもし、作戦も万全のはずだった。ねずみが、たとえ少女とはいえ人間を救出して、その後どうするつもりなのか?これについてもちゃんとミス・ビアンカは考えてあって、思った以上の結末をもたらす。だけど、ペイシェンスとの別れはちょっと切ない。これからの彼女のために、自分のことは忘れたほうがいいのだ。ねずみでもミス・ビアンカはちゃんとした大人だ。だから安心して読める。★★★★☆
読了日:02月19日 著者:マージェリー・シャープ

夜の声を聴く (朝日文庫)夜の声を聴く (朝日文庫)感想
出だしこそ衝撃的だけど、人との関係に意味を見いだせず、家に引きこもっていた隆太が、定時制高校に通い、人は見た目ではわからない部分があり、本で見て知っていると思ったことも実際には違って見えたりと経験を重ねて成長していく話。多分ウリのポイントはミステリの方なのだろうけど、この作品はミステリとしての完成度よりも成長譚としての方が良いと思う。何でも屋に持ち込まれる小さな仕事に伴う小さな謎。それを解決していくことで繋がっていく一つの大きな謎。これが、割とわかってしまうのだ。ああ、音響で11年で…って。★★★★☆
読了日:02月20日 著者:宇佐美まこと

43回の殺意 川崎中1男子生徒殺害事件の深層 (新潮文庫)43回の殺意 川崎中1男子生徒殺害事件の深層 (新潮文庫)感想
最初の一ページから胸が苦しくなる。ちょっと前まで小学生だった少年が、酷寒の2月の深夜、全裸で体中に切り傷を負い、それでも助けを求めて川から23.5メートルを道路に向かって這っていた。残虐な事件に、犯人の少年たちへの怒りが込み上げる。だけど、著者が書きたかったのはそれではないことに気づく。加害者少年をネットでさらし者にして、実社会でレッテルを貼って排除して終わり、というのは第三者の自己満足でしかない。この本の副題は『川崎中1男子生徒殺害事件の深層』この本に書かれているのは一つの事件ではなく、この深層なのだ。★★★★★
読了日:02月21日 著者:石井 光太

銀河鉄道の父 (講談社文庫)銀河鉄道の父 (講談社文庫)感想
小説だと言い聞かせないと、これが事実だったんだと思ってしまう説得力。理想主義者で、人見知りで、まっすぐで、勤勉で、体が弱くて、甘ったれ。ああ、我が子だったらたまらんなあ。ところが父・政次郎は違った。政次郎は賢治のことをとてもよく見ている。だから頭ごなしに怒るということがあまりない。”子供のやることは、叱るより、不問に付す方が心の燃料が要る。”とはいえ、鉱物のための標本箱を買ってくれと言われて、500箱も買うのは親ばかじゃないか?どこを取っても読みごたえのある作品でした。★★★★★
読了日:02月22日 著者:門井 慶喜

天使はモップを持って (実業之日本社文庫)天使はモップを持って (実業之日本社文庫)感想
会社を舞台に起きる日常の謎を、清掃員の若い女性キリコが解決するというのが基本のパターン。しかし〈日常の謎〉の概念を逸脱するレベルの時間が多発してるじゃないの、この会社。殺人しかり、悪質なマルチ商法への勧誘しかり、盗難しかり。法律上罪にならなくても、例えば後輩の担当業務の書類を意図的に廃棄したり、セクハラ、パワハラ、不倫…。嫌だな、この会社。肝心のミステリについては、キリコの観察眼と行動力でスマートに事件の真相を暴くことができてスッキリはする。だけど…これ、嫌ミスの元祖なのかな、真相を知った後のモヤモヤよ。★★★★☆
読了日:02月23日 著者:近藤 史恵

名探偵に薔薇を (創元推理文庫)名探偵に薔薇を (創元推理文庫)感想
すごくグロテスクな話なんですよ。苦手な方はこの先ご遠慮ください。私は終始脳内で『こびとづかん』の小人たちが蠢いていて、閉口しました。「小人地獄」という究極の毒薬を巡る話です。小人(実際は胎児や赤ん坊)の脳髄をどうにかして作る秘薬で、無味無臭、少量で人を死に至らしめ、その痕跡を残すことがないという究極の毒薬。その毒薬造りを告発するのが、童話のかたちを借りた『メルヘン小人地獄』。『第一部 メルヘン小人地獄』が本当につらかった。けれど、『第二部 毒杯パズル』は二転三転する情報に名探偵が翻弄され、面白かったです。★★★★☆
読了日:02月24日 著者:城平 京

創竜伝 1 ≪超能力四兄弟≫ (YA! ENTERTAINMENT)創竜伝 1 ≪超能力四兄弟≫ (YA! ENTERTAINMENT)感想
後輩から送られてきたので、20数年ぶりに再読しました。そうそう、これこれ、この語り口。ストーリーは何とか覚えていたものの、四人姉妹(フォー・シスターズ)がこんな最初からストーリーに絡んでいたとは、すっかり忘れていた。古代中国の世界観と、現代社会の資本経済。竜の子孫である竜堂家の4兄弟は、否応なしに世界のパワーゲームに巻き込まれていくっていう話でいいんだよね?今作はその導入部。主な登場人物の紹介。『アルスラーン戦記』と同じく10巻くらいまでは面白く読めたはず。図書館本の合い間にぼちぼち読みます。★★★★☆
読了日:02月25日 著者:田中 芳樹

きっとあの人は眠っているんだよ: 穂村弘の読書日記 (河出文庫)きっとあの人は眠っているんだよ: 穂村弘の読書日記 (河出文庫)感想
読書日記やガイドブックや書評本を読む時、まず目次からわくわくする。どんな本を読んでいるのかな?私が読んだ本はどう紹介されているかな?今回、目次を見て、あまりの既読本の少なさに驚愕した。だけど、ニアミスにも愕然としてしまった。「そっちか…」読み込みの浅さが悔やまれる。既読本だとしても、油断はできない。同じ本を読んでも、感じる部分が違う。捉え方が違う。だから面白いのだ、この手の本は。穂村弘の読書日記をもっと面白く読むためには、私がより詩に俳句に短歌に近づけばよいということがわかった。…ハードル高いな。★★★★☆
読了日:02月26日 著者:穂村弘

スーツケースの半分は (祥伝社文庫)スーツケースの半分は (祥伝社文庫)感想
9つの短編が収録されている。人生に迷い旅に出たり、出かけた先で人生に迷ったり。傍らにはいつも青いスーツケース。帯に「女子に大ヒット」と書いているが、まったくその通りと思う。9つのどれかは必ず刺さるのではないだろうか。最後にその青いスーツケースが”幸運のスーツケース”となり得たのは、最初にスーツケースを買った人が込めた気持ちゆえとわかる。行きはスーツケースに半分だけ荷物を詰めて、残りの半分にお土産を詰めて帰ってくる。とっても読後感が良い作品でした。★★★★☆
読了日:02月27日 著者:近藤史恵

ぶたぶたの花束 (徳間文庫 や 36-6)ぶたぶたの花束 (徳間文庫 や 36-6)感想
今回のぶたぶたさんは、ボディガードだったりお花屋さんだったりショコラティだったり…まあ、いろいろな職業についている。お花屋さんなんて水仕事なのに、ぶたぶたさんたらちゃんとできてる。(あたりまえだけど)ただ、事件そのものがストーカーとか、育児放棄とか、ちょっとしんどいものがあって、ぶたぶたさんに求めているのはそういうのじゃないんだよなあ。ぶたぶたさんに八つ当たりで誘拐した挙句、ギャンブルで憂さ晴らしというのもいただけない。というわけで、お気に入りは『ロージー』『チョコレートの花束』。★★★★☆
読了日:02月28日 著者:矢崎存美


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