先月は、暇さえあれば本を読んでいたような気がするけれど、いつもの月とあまり変わらない読了数でした。
歩いて帰る日が多かったので、夕方の読む時間が少なかったからかな。
あ、ここ数カ月マンガを読んでいなかったので、反動で3冊まとめ読みしたのもあるかも。
その時間で1冊読めたかもしれん。

今月の★5つは4冊。
そしてそのうちの2冊が小池昌代。
小説『たまもの』も、書評等をまとめ『井戸の底に落ちた星』もどちらも良かった。
ものの見方というか、日ごろ感じていることが割と近いのもあるけれど、何よりもその言葉のセンス、的確さが非常に快感だった。
読書というのは快楽でもあるなあと思い知る。

小説ではもう1冊。
中里恒子の『時雨の記』
大人の恋愛だからこその、互いを思いやる懐の深さもあるのだけれど、ただ言葉の応酬だけでこれほどまでに喜びを感じられるという、恋愛の恋の部分も良かった。
あまり恋愛小説は読まないのだけど、この本はしみじみ好かった。

本関係で、もう1冊は、池澤夏樹・池澤春奈父子による対談『ぜんぶ本の話』。
子どもの頃名作文学全集を読んで育った子は、イギリス文学になじむ&翻訳小説に抵抗がない、という部分で、この間図書館の司書さんと盛り上がりました。
本の話は楽しい。
読んだことある本もない本も刺激をくれるので、いつも心がワクワクしている気がします。


6月の読書メーター
読んだ本の数:24
読んだページ数:6639
ナイス数:629


三国志 第八巻 (文春文庫)三国志 第八巻 (文春文庫)感想
遂に曹操が死んでしまったが、その前に関羽。一枚岩かと思われた劉備と関羽と張飛だけれども、諸葛亮が加わることによって亀裂が生じた。諸葛亮を重用する劉備から少しずつ距離を置くようになった。劉備も、同じだったのかもしれない。でも最後の関羽の戦いっぷりを、誰も非難することなどできないだろう。曹操が亡くなり、曹丕が後を継いだと思ったら、献帝からの禅譲の話。このタイミングでの禅譲ということは、曹操にも過去に持ち掛けていたのではないかと思われる。けれど曹操が相当はっきりときっぱりと、半ば脅すように断ったのではないかな。★★★★☆
読了日:06月02日 著者:宮城谷 昌光

聖地巡礼 (ダ・ヴィンチ・ブックス)聖地巡礼 (ダ・ヴィンチ・ブックス)感想
『聖地開発事業団』日本の中にある、なぜか心が清らかになるような、解放されるような、そんなパワースポットを田口ランディが仲間たちと巡る奇行エッセイ。なのだけど、思った以上にスピリチュアルでした。こういうのって信じている人と信じていない人とでは、同じ体験をしても受け取るものが全く違う。私としてはフラットな立場で体験したことを書いてほしかったのだけど、同行するのが超能力者だったり、アイヌのシャーマンだったり、占星術研究家だったり、タロット占い師だったり…。結果、超自然の方に寄っていってしまう。むむむ。★★★★☆
読了日:06月03日 著者:田口 ランディ

コシノジュンコの女の服装術―「知識、感覚、経験、判断」で服を着る トップデザイナーが教える自己演出の魔法コシノジュンコの女の服装術―「知識、感覚、経験、判断」で服を着る トップデザイナーが教える自己演出の魔法感想
おしゃれとかメイクとかファッションとか、とにかく苦手です。しかしコシノジュンコは言います。「まず自分を知り…」わかりました。まず私はここからつまづいております。ただ、おしゃれをするときに大事なことは、事前準備。ちゃんと数日前に一式鏡の前で着てみること。そうすると、どこかに不具合があっても対処できるから。ああ、当日なって数年ぶりに手を通したブラウスに染みがついていたこととかあるなあ…。せめてそういうのくらいは気をつけよう。★★★★☆
読了日:06月06日 著者:コシノ ジュンコ

ぜんぶ本の話ぜんぶ本の話感想
父と娘の本に関する対談。私も、読んだ本について思う存分語り、読んでない本について存分に語られているつもりで、つまり第3の話者のつもりで読みました。もう本を読みながら心の中で語る、語る。だって児童文学、少年文学、SF、ミステリ、好きなジャンルの本ばかりなんですもの。読みながら心の中で大いに語っていたので、多分私の血液はふつふつと煮えたぎっていたと思います。そのくらいエキサイティングな読書でした。ああ、楽しかった。でも本当はリアルでこういう話をしたいんだよねえ。だれか誘ってくれないかなあ。★★★★★
読了日:06月07日 著者:池澤 夏樹,池澤 春菜

神の島のこどもたち神の島のこどもたち感想
沖永良部島(奄美諸島)で日本から切り離されて、アメリカ統治下で暮らす子どもたちの話。不勉強ではずかしいのですが、沖永良部島が沖縄ではなく、奄美の島であることをこの本で知りました。食べる物と言えば蘇鉄のでんぷんと芋。毎日の水汲みは女の子たちの重要な仕事。最初から最後まで方言で書かれているので、最初はひどく読みにくかった。けれども、今度こそしょうがないと流されることなく、本当のことを知り、自分で考えていこうとする主人公・カミの姿に、明るい希望が感じられる。勉強になりました。★★★★☆
読了日:06月08日 著者:中脇 初枝

自由研究には向かない殺人 (創元推理文庫 M シ 17-1)自由研究には向かない殺人 (創元推理文庫 M シ 17-1)感想
5年前の少女失踪事件。彼女を殺し、自分も自殺したとされる少年は、ピップもよく知る人だったということもある。彼はそんなことをする人じゃない!その思い出ピップはかなり突っ込んだ行動をとるのだけど…。最初は挟み込まれているレポート部分が読みにくかったりもしたけれど、関係者(みんな知人)に取材を重ねるうちに、親しい人たちが隠していた闇が顕わになってくる。事実は思った以上に悪質で、ピップ自身にも危険が襲い掛かってくる。もっと大人を信じなさい、と言いたい気持ちでいっぱいだったが、その信頼すべき大人が…ねえ…。★★★★☆
読了日:06月09日 著者:ホリー・ジャクソン

崩れる脳を抱きしめて (実業之日本社文庫)崩れる脳を抱きしめて (実業之日本社文庫)感想
最初に書いておきますが、面白く読みました。タイトルがホラーっぽくて敬遠していましたが、全然そんなことはなかったです。ただ優れたミステリーかと言われれば、?です。ユカリの正体については、早いうちにわかりました。遠い親戚についても、これだけ金のかかったアレコレができるのなら、借金返せるのでは?って思いました。でも、若書きの文章が主人公の立場とリンクして、ミステリとしては不謹慎かもしれませんが、微笑ましく読めたのだと思います。タイトルのおどろおどろしさからは想像できないくらい、読後感がよかったです。★★★★☆
読了日:06月11日 著者:知念 実希人

見知らぬ人 (創元推理文庫 M ク 28-1)見知らぬ人 (創元推理文庫 M ク 28-1)感想
舞台は現代のイギリスなんだけど、見立て殺人とか古い館に出る幽霊とか、昔ながらのこてこてのイギリスっぽさがとてもツボでした。高校で英語を教えているクレア・キャシディ、その娘のジョージ―、事件を捜査する刑事ハービンダーという3名の女性が交互に視点となって事件を語る。犯人については、根拠は薄いけど最初から胡散臭いと思っていました。ひっかかった部分については、ネタバレになるので書けないけど。でもって、こういう犯人が一番怖いよね。全編通してMVPは犬です。★★★★☆
読了日:06月13日 著者:エリー・グリフィス

ちょー戦争と平和 (ちょーシリーズ) (コバルト文庫)ちょー戦争と平和 (ちょーシリーズ) (コバルト文庫)感想
いいですねえ。巻が進むにつれ、どんどん面白くなってきました。伏線はもはや伏線ではないし、落としどころもわかるんだけど、登場人物それぞれが自分にできる最善を考えながら行動するのを読むのが心地よくて。エデア・タロットワークがどうして魔王を召喚するのに手を貸したのかは、そっちの理由か、と。クラスターを説得できなかった宝珠は、トードリアの女王リブロに戦争をやめるよう訴えるが、それも叶わない。始めるときはさっと戦争で終わらせられると思っても、落としどころが見つからなくて長びくのもまた戦争なんだけどねえ。★★★★☆
読了日:06月14日 著者:野梨原 花南

ぶたぶたのいる場所 (光文社文庫)ぶたぶたのいる場所 (光文社文庫)感想
今回のぶたぶたさんは、海辺の瀟洒なリゾートホテルで、基本的にはお客さんに姿を見せないバトラー兼社員の指導係。通しのストーリーとしては、ホテルの周年イベントとして、街の人たちが演じるお芝居を行うというもの。演目はシェークスピアの『オセロ』イアーゴー役はぶたぶたさん。え?マジすか?そして、単純に大笑いしたのが「アリスの迷宮ホテル」。ホテルに缶詰めになったホラー作家が、ぶたぶたさんと関わることでどんどん壊れていく…っていうか、最終的にはヒット作書けてよかったね、ホラーじゃないけど。作家の思い過ごしにもう大爆笑。★★★★☆
読了日:06月15日 著者:矢崎 存美

三国志 第九巻 (文春文庫)三国志 第九巻 (文春文庫)感想
一押しの曹操亡き後の三国志なんぞ…と思っていましたが、やっぱり面白い。楽しい。圧倒的に非凡な人材というのはもうどこにもいないので、あっちもこっちもいろいろと停滞していますが、そこに人間が表れると言いましょうか、ドラマですなあ。そしてついに孫権が皇帝に。後漢の皇帝から禅譲された魏の皇帝。劉家以外の皇帝はならぬという正論(劉家の正論だよね)を基に立った蜀の皇帝。しかし、呉には何一つ皇帝に立つ正当性はないのだよね。結局後漢王朝のことを最後まで考えていたのは曹操だけなんだよね。★★★★☆
読了日:06月16日 著者:宮城谷 昌光

エンジェル (集英社文庫)エンジェル (集英社文庫)感想
自分が殺されたところから話が始まる。そして、フラッシュバックする主人公・掛井純一の人生。なのに直近二年の記憶だけが戻らない。復讐するのが一番簡単なのよ。だけど石田衣良は簡単に話を終わらせはしない。正直甘いな、と思わざるを得ない。甘くて青くて、だけど人として誠実に生きている(いや、死んでいるのだが)主人公の生きていた頃の人生は、空しくて切ない。何のために生まれてきたのだろう。そして…ああ、ネタバレになるなあ。記憶はどうなるのだろう?まさかそのままってことはないよね。★★★★☆
読了日:06月17日 著者:石田 衣良

未来(あした)のおもいで (光文社文庫)未来(あした)のおもいで (光文社文庫)感想
時間もののSFが好きで何冊も読んでいるので、展開も落としどころも予想通り。主人公の行きつけの飲み屋の常連である作家の加塩(かしお)の存在が、うるさいなーと思った。生きている時間が違う者同士が出会えるのかとか、未来または過去を変えられるのか、人の生死を変えることはできるのかなど、時間ものについてのお約束を説明する役割。けれど最後、つまりここは追及しないでね、ヒントは加塩のセリフの中にあるよってことなのかと納得。そのうえで、最後の主人公の行動からの落としどころへと一ひねり入れているのも気づいてね、と。★★★★☆
読了日:06月20日 著者:梶尾 真治

樽とタタン (新潮文庫)樽とタタン (新潮文庫)感想
事情があって小学校帰りに喫茶店に通っていた主人公・トモコ。喫茶店の客はクセの強い大人ばかり。子どもの目線で語られるのではなく、大人の言葉で語られる人生の真実を、トモコはわかる部分だけを繋げ合わせて理解する。その時理解できなくても、あとになってそういう事かと気づくこともある。理解できないまま抱えている事柄も、もちろんある。だから読んですっきり、とはならない。だって人生ってそういうものでしょう?現実寄りのシュールレアリズム。タイトルがイメージを固定してしまいそうで、却って邪魔かも。★★★★☆
読了日:06月21日 著者:中島 京子

たまものたまもの感想
40歳の時、幼なじみで昔の恋人だった男から赤ん坊を預かる主人公。それからの10年間の話。「迎えに来る」といった男は連絡が取れなくなって久しい。不規則な編集の仕事では赤ん坊を育てられないので、せんべい工場で働くことにした。赤ん坊だった山尾が小学校に入る年になった時、初めて役場に相談するが、そのまま彼女のもとで山尾は育つ。特に山場も修羅場もないストーリーだけを追ってもこの本の面白さは伝わらないだろう。ストーリーが単調なのに、ぐさぐさ刺さる言葉がてんこ盛りでまいった。作家の言葉って怖い。★★★★★
読了日:06月23日 著者:小池 昌代

百貨の魔法百貨の魔法感想
以前に読んだ、この作者が書いた本屋を舞台にした作品の時も書きましたが、経営努力なしの経営再建の話は現実味が全くなくて白けてしまいます。店員の善意だけで経営再建できるなら、倒産する店なんてもっと少ない。そう、誰かが、まあ社長が、悪者になるのを覚悟で改革に汗を流すシーンがちょっとでもあったら、物語に厚みが出たのに。本は分厚いけど、内容が薄いなと思ってしまいました。この作者とは多分相性が悪いんだな。★★★★☆
読了日:06月24日 著者:村山 早紀

ちょー英雄 (ちょーシリーズ) (コバルト文庫)ちょー英雄 (ちょーシリーズ) (コバルト文庫)感想
魔王の暴走って、暴れながら走り回ったのかと思ったが、魔王から漏れ出る魔力が止められない状況ということだった。魔力が周囲に悪影響を与えるのを阻止するため、魔王も力をセーブしようとしているのだが、止めることができない。クラスターはついに自分の殻を破り、トードリアと停戦し、自国の兵に謝る。「ばけもの」を作っていたのは父や母の言葉による戒めや城の者たちの冷たい視線だった。壊したかったのは、自分を受け入れてくれない世界。それはもう壊れたのだ、クラスターの成長によって。実はクラスターの巻だったかも。★★★★☆
読了日:06月26日 著者:野梨原 花南

税金で買った本(1) (ヤンマガKCスペシャル)税金で買った本(1) (ヤンマガKCスペシャル)感想
実は本好きのヤンキー・石平くんは、数年ぶりに図書館を訪れ、10年前に借りていた本を亡くしていたことを知る。弁償しろと言われて反発するが、どうして弁償しなくてはならないのかを聴き、本屋へ。その後図書館でバイトすることになり、図書館のいろんな仕事といろんな利用者を知る。十七夜って「かなき」って読むんだね。知らなかった。
読了日:06月26日 著者:系山 冏

税金で買った本(2) (ヤンマガKCスペシャル)税金で買った本(2) (ヤンマガKCスペシャル)感想
ちょっと絵が苦手系だけど、図書館お仕事マンガ楽しいです。でも今回はおまけの「中学校の図書室と石平くん」がよかったな。「本との出会いは一期一会だぜ?今逃したら読めるチャンスがあるか…」心しておこう。
読了日:06月26日 著者:系山 冏

夏の日のぶたぶた (徳間文庫)夏の日のぶたぶた (徳間文庫)感想
今回のぶたぶたさんは、山の中にある幽霊屋敷に住み、本を読むという仕事をしているらしい。ふもとのコンビニで父の手伝いとして配達をしている一郎は、最初こそ驚くが、すぐにぶたぶたさんと仲良しになる。母が弟を連れて実家に帰ってしまったこと、幼なじみの久美の様子が最近ちょっとおかしいことを気にしながら、何もできないでいる一郎。しかし、結果何もできなかったとしても、何もしようとしないのは違う。このひと夏の経験の後日談が、「紹介したい人」に繋がっているのだが、語り手が弟の冬二となることで俄然ユーモアの度合いが増す。★★★★☆
読了日:06月27日 著者:矢崎 存美

税金で買った本(3) (ヤンマガKCスペシャル)税金で買った本(3) (ヤンマガKCスペシャル)感想
モテる方法を調べてたどり着いた答え「お前の好きなお前になれ」山田、器のでかい男になれよ。そして、図書館にマンガを置かない理由。マンガは子どもが読むし、利用が多いし、ソフトカバーがほとんどだから、修理、買い替え、弁償の無限地獄になるから。なるほど、確かにね。
読了日:06月27日 著者:系山 冏

新装版 時雨の記 (文春文庫)新装版 時雨の記 (文春文庫)感想
二十年ぶりに再会した熟年の二人。実業家の男性と夫と死別して一人で生きる女性。なんか渡辺淳一臭がプンプンしていそうじゃないですか?しかし全然違います。あのね、この二人最後までプラトニックなのよ。純情ぶっているわけではない。互いを大切に思うから、無理強いはしない。気持ちが追いつくのを待つゆとり。どのシーンを切り取っても、絵になる。光と影、涼やかな風や、しんとした空気、しっとりとした湿度。瑞々しい文章。饒舌じゃないのに、情景がきちんと立ち上がる。いや~、久しぶりに文学読んだ気がするわ~。★★★★★
読了日:06月28日 著者:中里 恒子

日本人のまっかなホント感想
「日本人はあまり冗談を言わない。言う時は「これは冗談ですが」と前置きをする」とか、「日本人はブランドと流行に敏感。だれもが目立たないように目立とうとしている」なんて、当たり前すぎて気づかなかったよ。本音と建て前を使い分け、言われる前に空気を読む。日本人のわたしでも、大の苦手分野。でも、外国人から見た日本人は金太郎飴のように誰も同じに見えるかもしれませんが、日本人の中では県民性なんていう区別がまた存在する。もっと細かく県南県北で違うとか細分化していくと、みんな違ってみんないいにならないかなあ。なるといいな。★★★★☆
読了日:06月29日 著者:ジョナサン ライス,浜 矩子,嘉治 佐保子

井戸の底に落ちた星井戸の底に落ちた星感想
「本のなかをぐるぐる」は書評・レビュー等、「海の本」は短編小説、「本のそとをぐるぐる」は本にまつわるあれこれ。詩人の書く「言語化」についてなるほどと思ったのは、町田康の「告白」について書かれた部分。言語化するということは、その物事を断定してしまうということで、実はとても怖い行為であるのに、おおむね無意識無自覚にそれは行われ、反論の余地なく決定してしまう。むごいといえば、むごい。まったく異なる人生を生きてきた人に対して、多くの共通点を見つけ、夜っぴて語り合っているような読書でした。★★★★★
読了日:06月30日 著者:小池 昌代

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