4月は30日しかないのに飲み会も多くて、歩いて帰宅するようになったのでさらに毎日読書時間が1時間削られ、昼休みも地味に働いていたけど、23冊も読めました。
すごい!
シリーズで追いかけている3本『ちょーシリーズ』『ぶたぶたシリーズ』『三国志』がどれも読みやすいのが勝因です。ありがたい。
来月からはどうかなあ…。
★5つは三冊。
『透明人間は密室に潜む』
初読みの作家でしたが、収録作4作全て面白かったです。
特に表題作は、透明人間という特殊性の説明をすることで、完全犯罪が破れる可能性を潰していきながら、でも、やっぱり完全犯罪は無理なんだろうなあなんて思っていたら、まさかの展開。
想定していない方向からのどんでん返しに、まったくもって脱帽です。
『じごくゆきっ』
久しぶりに読む桜庭一樹だったけど、やっぱり彼女の放つ闇とか毒とか容赦ない。
弱い者(子ども)に対する愛情という名前の束縛、いや拘束。
それは罪悪感を持つこともなく、どこまでもエスカレートしてしまう。
「あなたのためを思って」という呪い。
苦しいけれど読んでしまうんだよね、桜庭一樹。
『銀花の蔵』
これもまた銀花の我慢が不憫でしょうがなかった。
気位の高い祖母、現実対応能力のない父、心弱い母、自分勝手な叔母。
彼らが世間と起こす齟齬を、銀花だけが受け止め、庇い、責任を負う。
そんな彼女の一生を読んで、最後まで読んで、読んでよかったなあと思った。
4月の読書メーター
読んだ本の数:24
読んだページ数:7481
ナイス数:634
歳三 往きてまた (文春文庫)の感想
しんどかったです。だって、この小説の結末はわかっているのですから。負けて負けて、それでもなお全身に疵を負いながら戦い続ける男たちの姿を、もっと若かったら胸を熱くして読むことができたのかもしれません。だけど、胸が熱くなるよりもまず、胸が痛くなってしまう。誰よりも侍になりたかった男。そして侍として死んでいった男。ちょいちょい間が悪いというか、運に恵まれないところがあって、それが時代の勢いというものなのかもしれないけれど、やっぱり惜しい男ではあったよなあ。永倉新八と斎藤一のところだけ、ちょっとほっこり。★★★★☆
読了日:04月01日 著者:秋山 香乃
あの本は読まれているかの感想
アメリカはCIAで働く女性イリーナを中心に、ソ連パートでは国民的詩人でありながら秘密警察に狙われるボリス・パステルナークとその愛人オリガの愛憎がメインに交互に描かれている。全体的にアメリカパートはもう少し整理して書いたほうが良かったと思う。書きたかったのは、CIAがソ連の言論統制や迫害を知らしめ、自由であることの素晴らしさをソ連国民に伝えるための「ドクトル・ジバゴ」作戦の実態であり、当時作者のパステルナークはどのような状況に追い込まれていたのか、だと思うので、そちらを濃い目に書いてほしかった。★★★★☆
読了日:04月03日 著者:ラーラ・プレスコット
盤上の向日葵(下) (中公文庫 (ゆ6-2))の感想
なるほどそういうことかと納得するとともに、なぜそんな過酷な運命を作者は上条桂介に強いたのかとも思う。幼い頃の彼の暮らしぶりを考えれば、そしてその後の努力が彼に社会的成功を与えたのであれば、何もそこまで過酷な運命を用意しなくても…。ただ、将棋が好きだっただけの、そしてめっぽう強かった少年の、生まれてきた意味。桂介が東明に頼んだことは、決して許されることではないけれど、桂介が東明にしたことは、罪ではあっても悪質ではない。やり直すチャンスを与えることはできなかったのか?幸せになってはいけない子なんていないはず。★★★★☆
読了日:04月03日 著者:柚月 裕子
ちょー新世界より (ちょーシリーズ) (コバルト文庫)の感想
前巻から7年経って、舞台は東大陸。人間の耳の代わりに猫耳がついているせいで人前に出ることができず、家族からも忌み嫌われていた宝珠は、初めて自分の容姿に偏見を持たずに接してくれる人に出会ったわけだけど、リターフの願いで単身西大陸に向かうことになる。宝珠という名前もそうだし、コーリャンの畑だったり、天津飯があったり、突然現実の東アジアが作品に登場してちょっと違和感。ファンタジーなんだからさ、そして今までは特定の国を模した国や風俗なんて出てこなかったのだから、ここもちゃんと独自の風俗を構築して欲しかった。★★★★☆
読了日:04月04日 著者:野梨原 花南
三国志 第四巻 (文春文庫)の感想
14ページ目で孫堅が死に、途中でちょっと劉備が出るものの、ほぼ曹操の巻。と思ったら、次巻に向けての最後の一文『建安年間は、曹操の時代であると言ってよい。』ですって。まだ序章だったか。三国志演義で曹操が悪役なのは、父の敵を取るためと言いながら陶謙だけではなく民衆も含めての大虐殺だったから、そこを突かれてしまうのですね。ちょっとやりすぎちゃったけどさ、口ばっかりの理想主義者より、有能な現実主義者の曹操が断然好き。しかも勉強好きで読書家で努力家だからね。曹操の本当の敵とは、偽善なのだって。惚れるわ~。★★★★☆
読了日:04月05日 著者:宮城谷 昌光
刑事ぶたぶた (徳間文庫)の感想
いやいや面白かった。「生きている本物のぬいぐるみ」という制約の中で、当たり前に生活しているからこそ、このぶたぶたシリーズは面白いのだ。これが「生きている本物のぬいぐるみ」をネタとして笑わそうなんて小細工をしたら、ドン引きだ。何か変だと思いながらも立川くんが素直にぶたぶたさんと接しているからこそ、見た目以外はしっかりと大人の男性であるぶたぶたの言葉や行動が沁みる。赤ん坊誘拐犯の抱える過去の痛み。本当に欲しかったのは赤ん坊ではないと気づけて良かった。★★★★☆
読了日:04月06日 著者:矢崎 存美
バラガキ 土方歳三青春譜 (講談社文庫)の感想
なんとも人前で読みにくい表紙。このあいだ読んだ『歳三 往きてまた』が、敗走に次ぐ敗走の中でも武士であろうと足掻く、勝負を諦めないために負け続けてもなお生きることを諦めなかった土方歳三の話でしたが、これは試衛館で武士を夢見ていた頃から池田屋に突入するまでの話。『歳三 往きてまた』は胸が痛くて読むのがしんどかったけれど、これは逆に愉快であるからこそ哀しくて辛かった。この先もう、新選組の本は読めないかも。何を読んでも辛くてしんどい。もし彼らが生きて明治を迎えることができたら、この時代を懐かしく思ったことだろう。★★★★☆
読了日:04月08日 著者:中場 利一
巴里諸諸―絵手紙パリ生活の感想
これは楽しい本でした。内容は、パリで絵の修業をしていた著者が、美大の恩師に宛てて送った絵手紙が主なのですが、描かれている題材が、観光名所とかファッションなどではなく、その辺にある日常のパリなのです。例えばミカン1個1個をつつんでいた包み紙のデザイン数種。ノベルティだったアンティークキーホルダー。マッチ、スーパーの袋、ワインのコルク、ビールの王冠、ミルクのポーションなど。身近にあるもののデザインの中にセンスを感じ、切り取ることのセンス。このような目を持つ人は、どこに住んでいても毎日楽しいと思う。★★★★☆
読了日:04月09日 著者:稲月 ちほ
菜の子先生がやってきた! (福音館創作童話シリーズ)の感想
小柄でやせっぽちで丸眼鏡に白衣の菜の子先生。困っている子どもの前に現れても直接問題を解決したりはしない。先生は道を教えて背中を押してくれるだけ。問題は本人が解決しないと意味がないから。最初は渋々、またはこわごわ先生に従う子どもたちだけど、最後は必ず「先生、また会えるの?」と聞いてしまう。答えはいつも「運がよければ、また、会いましょう」なのだけど。運の悪い子だった私は、菜の子先生に会うことなく大人になってしまった。理科実験、体験したかったなあ。★★★★☆
読了日:04月10日 著者:富安 陽子
泣くな道真 大宰府の詩 (集英社文庫)の感想
菅原道真については、教科書に書いてあるくらいのことしか知らなかったので、こんなに大人げない人だとは!と驚いた。(いや、これフィクションだし)何しろ身に覚えのない罪で左遷されちゃったので、ひきこもる、人にあたる、物にあたる。とてつもなく教養のある文人貴族じゃないの?私のお気に入りは大宰府の大弐(だいに・次官のようなもの)である小野葛絃(くずお)です。いつもニコニコ温厚で、できる男風ではないけれど、いうべき嫌味はとことん鋭く、見ないふりして全てをご承知。好きだなあ、こういう人。うん。小野恬子ちゃんも良き。★★★★☆
読了日:04月11日 著者:澤田 瞳子
透明人間は密室に潜むの感想
設定がトンデモなのに、実にフェアで本格的なミステリ短篇集でした。ちょっとでもひっかかる部分があれば、それは必ず事件解明に役立つヒントなのです。これほど無駄のないミステリもないのではないでしょうか。例えば表題作は、「透明人間病」にかかった女性が殺人を犯す話なのだけど、まず透明人間は何ができて何ができないのかを懇切丁寧に説明してくれる。そして「六人の熱狂する日本人」。タイトルだけでニマニマしちゃう。ちゃんとそれ風の作品になっているとこが笑える。そして何よりも、オタクの生態に詳しくなれました。笑★★★★★
読了日:04月12日 著者:阿津川 辰海
じごくゆきっの感想
どの作品も押しつけられる暴力と忍耐をする弱者が描かれていて、その先に明るい未来なんてない。忍耐とは、緩やかな絶望なんだって。その絶望を突き抜けてしまった時…。一番怖かったのは『ロボトミー』のユーノの母だけど、『ゴッドレス』の香さんも、『暴君』の三雲の母も、『脂肪遊戯』の紗沙羅の父も、とても怖い。自分しか見えない、自分の都合だけで生きる人たち。悪意なく自分の理屈を押しつけ、受け入れられないと心や体に暴力を振るう。紗沙羅の、醜さに依って立つ尊厳の美しさにまで言及するところが、桜庭一樹の容赦なさだなと思う。★★★★★
読了日:04月13日 著者:桜庭 一樹
屍人荘の殺人 (創元推理文庫)の感想
映画の感想を読み返してみたら、動機はすぐにわかるし、犯人も割とすぐわかったと書いてあったけど、本を読んでもやっぱり動機と犯人は割とわかりやすく感じた。逆に、映画でここ不要だなと思った部分が本にはなかったので、映画よりすっきりとわかりやすかったんじゃないかな。本格ミステリなので言うだけ野暮とは思うけれど、連続殺人を犯すほどの動機かなとは思った。葉村と明智先輩との関係も映画より良かったな。葉村の葛藤や逡巡が、ただの本格ミステリと言うだけではない厚みを今作に与えたと思う。★★★★☆
読了日:04月14日 著者:今村 昌弘
母の日に死んだ (創元推理文庫 M ノ 4-9)の感想
里子を何十人も育ててきたテオとリタの夫婦。リタは何十年も前に自殺し、老いたテオは元養子たち数人が面倒を見ている。テオの死体が発見され、敷地内から女性の死体が複数発見される。溺死させたのち冷凍保存し、ラップにくるんで遺棄された死体。入り組んだ人間関係で、複雑なプロットになっているけれど、まあ読後感はよかったと言える。なによりも、前回少年期の隠された真実を突きつけられて精神的に追い込まれたオリヴァーが立ち直ってよかった。今回はピアがずいぶん精神的に追い詰められたけれど、彼女はタフなので多分大丈夫だろう。★★★★☆
読了日:04月16日 著者:ネレ・ノイハウス
満月をまっての感想
ぼくのとうさんは月に一度、作った籠を売りにハドソンに行く。9歳になって半年、ぼくはようやくハドソンへ連れて行ってもらえることになった。とうさんと同じように、籠を括りつけた棒を肩に担いで歩くぼくの誇らしげなこと。けれど街の人たちがぼくたちのことをなんといってバカにしているかを知ってしまい、もう、籠を作るのも、街へ行くのも嫌になった。だけど、とうさんの仲間のビッグ・ジョーは言った。「風はみている。だれを信用できるか、ちゃんとしっているんだ」それを聞いた途端、ぼくは、ぼくも風が選んでくれた人になりたいと思った。★★★★☆
読了日:04月17日 著者:メアリー・リン レイ
時の香り―清香園の韓国料理の感想
日本にまだ韓国料理店がなかった頃、銀座に『清香園』を開いた著者の、韓国の歴史や文化に触れながら書かれたレシピ本。レシピ本と言いながら私の主眼はそちらではなく、コラム的な文章の方。韓国の料理は「五味五色」を大切にしているという。五味は「塩・甘・酸・辛・苦」、五色は「赤・白・黄色・緑・黒や茶色」なのだそうだ。私からすると全てが赤く、辛いような気がするけれど、多分日本人が白身魚の味の違いが分かるように、韓国の人もあの色合いの中から五色を、辛味の中に五味を感じているのだろう。そう思うと、文化の違いって面白い。★★★★☆
読了日:04月18日 著者:張 貞子
名探偵コナン (101) (少年サンデーコミックス)の感想
今更灰原のお姉さんの話ですか?という気がしましたが、なんかちょッと灰原がナーバスになっているようなので、今後の伏線でしょうか。アムロ対怪盗キッドはミステリ上の伏線もあって面白かった。だが、今更新キャラ登場はやめて~!私が生きている間に黒の組織の謎が解明されますように。
読了日:04月18日 著者:青山 剛昌
ぶたぶたの休日 (徳間文庫)の感想
普通の人々の生活の中に、当たり前のようにピンク色のブタのぬいぐるみが人として存在している。ぶたぶたさんが誠実に生きているからこそ、心に屈託を抱えた人たちが自分の足で前に歩いていけるようになる。しかし、読後感はいいとして、不倫に殺人ですぜ、抱えている屈託って。表紙のかわいらさからは考えられないくらいの、どろどろ。結婚するまではいろんな未来が、いろんな可能性があった筈なのに、結婚してしまえば家の中のことばかりで、世の中の変化から置いていかれる不安と諦め。これは今でも多くの女性が感じることだと思う。★★★★☆
読了日:04月20日 著者:矢崎 存美
ちょー先生のお気に入り (ちょーシリーズ) (コバルト文庫)の感想
最後まで読んでも誰が先生のお気に入りなのか、そもそも先生が誰の事を指しているのかわかりません。読解力の低下たるや…。魔族たちが異空間に人間を閉じ込めるわけなのだけれど、その背後にいるらしいジールのクラスター王子の目的がわからない。魔術を使える範囲とか、条件などの制約はあるみたいだけれども、バロックヒートとタロットワーク二人に守られるって最強だよね。敢えて冒険をする意味はあるのかしら。作中では2年前から行方知れずになっているというスマート。絶対いいところで登場するに決まっている。うーむ。手に汗握れんな。★★★★☆
読了日:04月21日 著者:野梨原 花南
三国志 第五巻 (文春文庫)の感想
いよいよ曹操の時代となっていきますが、曹操が周囲を従えてぐいぐい前に出ていくわけではありません。彼は実によく周囲の意見をよく聞くのです。そして人を見る目があります。曹操の瑕疵は2つ。出身が宦官の家であること。もう一つは、そうです、父の仇を討つために、徐州で大虐殺を行ってしまったこと。これを除くと、勉強を怠らず、情報の大切さを知り、嫡男を亡くしたため別れることになった奥さんにも生涯礼を尽くし、軍律厳しく…ちょっといいところしか見つかりません。運を味方につけるのも見放されるのも、生き方が反映されるのね。★★★★☆
読了日:04月22日 著者:宮城谷 昌光
隣の家の少女 (扶桑社ミステリー)の感想
これは本当に読むのがしんどくて、途中までは数ページずつ細切れにしか読むことができなかった。文章が難しいわけではなく、逆に読みやすくて、クリアに状況がイメージできてしまうからこそ、辛くてしんどくて読み続けることができなかったのだ。語り手は12歳の少年。彼の隣の家に、両親を交通事故で亡くしたメグとスーザン姉妹が引き取られてきた。3歳年上のメグにデイヴィッドはすぐに惹かれたのだけど…。人のもつ悪意の醜さと恐ろしさがこれでもかと書かれていて、小説としては上等なのだろうけど、正直絶対再読したくはない。★★★★☆
読了日:04月25日 著者:ジャック ケッチャム
銀花の蔵の感想
大阪の文化住宅で絵描きの父と料理上手な母と共に暮らす銀花は、父の実家の醤油蔵を継ぐため奈良へ引っ越す。厳格な祖母と、銀花よりひとつだけ年上の叔母・桜子が住む家は、歴史ある醤油蔵を持っているが、昔と違い杜氏と当主の二人で細々と営まれる家業は、傾いていくばかりだった。危ういバランスの上で成り立っていた銀花の家は、しかし、次々と不幸に見舞われる。銀花ばかりがなぜ我慢しなければならないのか。不憫で不憫でならなかった。けれども、想像よりはるかに温かいエンディング。家族って言うのは心が繋がってこそだよなあ。★★★★★
読了日:04月26日 著者:遠田 潤子
たゆたえども沈まず (幻冬舎文庫)の感想
『たゆたえども沈まず』というのは、パリのこと。何度セーヌ川が氾濫しようとも、パリは水にたゆたうことがあっても沈むことはない、という意味。そしてそれは、生前に認められることがなかったけれど、それでも絵を描き続けたゴッホのことでもあるのだろう。兄の才能を信じ、最高の一枚を最高のタイミングで世の中に出そうとしていたテオ。いや、もっと早く世間に絵を公表して、売った金で兄の面倒を見るとか、どうしてできなかったのか。あまりにもセンシティブでストイックな兄弟。彼らの結末を知らなくたって、悲劇しか予想できん。★★★★☆
読了日:04月29日 著者:原田 マハ
EPITAPH東京の感想
筆者・Kは、小説を書くかたわら、戯曲を構想中である。作者・恩田陸を思わせる筆者は、行きつけのバーで吉屋と名乗る男と出会う。彼は自らを吸血鬼だという。よく考えれば東京に限らず大都市は多くの死者を抱えている。けれどそれを東京という都市に無理なく落とし込んだところに恩田陸の上手さがある。さらに、東京を描いておきながらその背後には地下鉄サリン事件や、阪神淡路大震災、東日本大震災の存在がしっかりと根付いている。面白かったのはやっぱり筆者視点のエッセイのような部分。うんなるほど、そうだよね、と頷きながら読んでいた。★★★★☆
読了日:04月30日 著者:恩田 陸
読書メーター
すごい!
シリーズで追いかけている3本『ちょーシリーズ』『ぶたぶたシリーズ』『三国志』がどれも読みやすいのが勝因です。ありがたい。
来月からはどうかなあ…。
★5つは三冊。
『透明人間は密室に潜む』
初読みの作家でしたが、収録作4作全て面白かったです。
特に表題作は、透明人間という特殊性の説明をすることで、完全犯罪が破れる可能性を潰していきながら、でも、やっぱり完全犯罪は無理なんだろうなあなんて思っていたら、まさかの展開。
想定していない方向からのどんでん返しに、まったくもって脱帽です。
『じごくゆきっ』
久しぶりに読む桜庭一樹だったけど、やっぱり彼女の放つ闇とか毒とか容赦ない。
弱い者(子ども)に対する愛情という名前の束縛、いや拘束。
それは罪悪感を持つこともなく、どこまでもエスカレートしてしまう。
「あなたのためを思って」という呪い。
苦しいけれど読んでしまうんだよね、桜庭一樹。
『銀花の蔵』
これもまた銀花の我慢が不憫でしょうがなかった。
気位の高い祖母、現実対応能力のない父、心弱い母、自分勝手な叔母。
彼らが世間と起こす齟齬を、銀花だけが受け止め、庇い、責任を負う。
そんな彼女の一生を読んで、最後まで読んで、読んでよかったなあと思った。
4月の読書メーター
読んだ本の数:24
読んだページ数:7481
ナイス数:634

しんどかったです。だって、この小説の結末はわかっているのですから。負けて負けて、それでもなお全身に疵を負いながら戦い続ける男たちの姿を、もっと若かったら胸を熱くして読むことができたのかもしれません。だけど、胸が熱くなるよりもまず、胸が痛くなってしまう。誰よりも侍になりたかった男。そして侍として死んでいった男。ちょいちょい間が悪いというか、運に恵まれないところがあって、それが時代の勢いというものなのかもしれないけれど、やっぱり惜しい男ではあったよなあ。永倉新八と斎藤一のところだけ、ちょっとほっこり。★★★★☆
読了日:04月01日 著者:秋山 香乃

アメリカはCIAで働く女性イリーナを中心に、ソ連パートでは国民的詩人でありながら秘密警察に狙われるボリス・パステルナークとその愛人オリガの愛憎がメインに交互に描かれている。全体的にアメリカパートはもう少し整理して書いたほうが良かったと思う。書きたかったのは、CIAがソ連の言論統制や迫害を知らしめ、自由であることの素晴らしさをソ連国民に伝えるための「ドクトル・ジバゴ」作戦の実態であり、当時作者のパステルナークはどのような状況に追い込まれていたのか、だと思うので、そちらを濃い目に書いてほしかった。★★★★☆
読了日:04月03日 著者:ラーラ・プレスコット

なるほどそういうことかと納得するとともに、なぜそんな過酷な運命を作者は上条桂介に強いたのかとも思う。幼い頃の彼の暮らしぶりを考えれば、そしてその後の努力が彼に社会的成功を与えたのであれば、何もそこまで過酷な運命を用意しなくても…。ただ、将棋が好きだっただけの、そしてめっぽう強かった少年の、生まれてきた意味。桂介が東明に頼んだことは、決して許されることではないけれど、桂介が東明にしたことは、罪ではあっても悪質ではない。やり直すチャンスを与えることはできなかったのか?幸せになってはいけない子なんていないはず。★★★★☆
読了日:04月03日 著者:柚月 裕子

前巻から7年経って、舞台は東大陸。人間の耳の代わりに猫耳がついているせいで人前に出ることができず、家族からも忌み嫌われていた宝珠は、初めて自分の容姿に偏見を持たずに接してくれる人に出会ったわけだけど、リターフの願いで単身西大陸に向かうことになる。宝珠という名前もそうだし、コーリャンの畑だったり、天津飯があったり、突然現実の東アジアが作品に登場してちょっと違和感。ファンタジーなんだからさ、そして今までは特定の国を模した国や風俗なんて出てこなかったのだから、ここもちゃんと独自の風俗を構築して欲しかった。★★★★☆
読了日:04月04日 著者:野梨原 花南

14ページ目で孫堅が死に、途中でちょっと劉備が出るものの、ほぼ曹操の巻。と思ったら、次巻に向けての最後の一文『建安年間は、曹操の時代であると言ってよい。』ですって。まだ序章だったか。三国志演義で曹操が悪役なのは、父の敵を取るためと言いながら陶謙だけではなく民衆も含めての大虐殺だったから、そこを突かれてしまうのですね。ちょっとやりすぎちゃったけどさ、口ばっかりの理想主義者より、有能な現実主義者の曹操が断然好き。しかも勉強好きで読書家で努力家だからね。曹操の本当の敵とは、偽善なのだって。惚れるわ~。★★★★☆
読了日:04月05日 著者:宮城谷 昌光

いやいや面白かった。「生きている本物のぬいぐるみ」という制約の中で、当たり前に生活しているからこそ、このぶたぶたシリーズは面白いのだ。これが「生きている本物のぬいぐるみ」をネタとして笑わそうなんて小細工をしたら、ドン引きだ。何か変だと思いながらも立川くんが素直にぶたぶたさんと接しているからこそ、見た目以外はしっかりと大人の男性であるぶたぶたの言葉や行動が沁みる。赤ん坊誘拐犯の抱える過去の痛み。本当に欲しかったのは赤ん坊ではないと気づけて良かった。★★★★☆
読了日:04月06日 著者:矢崎 存美

なんとも人前で読みにくい表紙。このあいだ読んだ『歳三 往きてまた』が、敗走に次ぐ敗走の中でも武士であろうと足掻く、勝負を諦めないために負け続けてもなお生きることを諦めなかった土方歳三の話でしたが、これは試衛館で武士を夢見ていた頃から池田屋に突入するまでの話。『歳三 往きてまた』は胸が痛くて読むのがしんどかったけれど、これは逆に愉快であるからこそ哀しくて辛かった。この先もう、新選組の本は読めないかも。何を読んでも辛くてしんどい。もし彼らが生きて明治を迎えることができたら、この時代を懐かしく思ったことだろう。★★★★☆
読了日:04月08日 著者:中場 利一

これは楽しい本でした。内容は、パリで絵の修業をしていた著者が、美大の恩師に宛てて送った絵手紙が主なのですが、描かれている題材が、観光名所とかファッションなどではなく、その辺にある日常のパリなのです。例えばミカン1個1個をつつんでいた包み紙のデザイン数種。ノベルティだったアンティークキーホルダー。マッチ、スーパーの袋、ワインのコルク、ビールの王冠、ミルクのポーションなど。身近にあるもののデザインの中にセンスを感じ、切り取ることのセンス。このような目を持つ人は、どこに住んでいても毎日楽しいと思う。★★★★☆
読了日:04月09日 著者:稲月 ちほ

小柄でやせっぽちで丸眼鏡に白衣の菜の子先生。困っている子どもの前に現れても直接問題を解決したりはしない。先生は道を教えて背中を押してくれるだけ。問題は本人が解決しないと意味がないから。最初は渋々、またはこわごわ先生に従う子どもたちだけど、最後は必ず「先生、また会えるの?」と聞いてしまう。答えはいつも「運がよければ、また、会いましょう」なのだけど。運の悪い子だった私は、菜の子先生に会うことなく大人になってしまった。理科実験、体験したかったなあ。★★★★☆
読了日:04月10日 著者:富安 陽子

菅原道真については、教科書に書いてあるくらいのことしか知らなかったので、こんなに大人げない人だとは!と驚いた。(いや、これフィクションだし)何しろ身に覚えのない罪で左遷されちゃったので、ひきこもる、人にあたる、物にあたる。とてつもなく教養のある文人貴族じゃないの?私のお気に入りは大宰府の大弐(だいに・次官のようなもの)である小野葛絃(くずお)です。いつもニコニコ温厚で、できる男風ではないけれど、いうべき嫌味はとことん鋭く、見ないふりして全てをご承知。好きだなあ、こういう人。うん。小野恬子ちゃんも良き。★★★★☆
読了日:04月11日 著者:澤田 瞳子

設定がトンデモなのに、実にフェアで本格的なミステリ短篇集でした。ちょっとでもひっかかる部分があれば、それは必ず事件解明に役立つヒントなのです。これほど無駄のないミステリもないのではないでしょうか。例えば表題作は、「透明人間病」にかかった女性が殺人を犯す話なのだけど、まず透明人間は何ができて何ができないのかを懇切丁寧に説明してくれる。そして「六人の熱狂する日本人」。タイトルだけでニマニマしちゃう。ちゃんとそれ風の作品になっているとこが笑える。そして何よりも、オタクの生態に詳しくなれました。笑★★★★★
読了日:04月12日 著者:阿津川 辰海

どの作品も押しつけられる暴力と忍耐をする弱者が描かれていて、その先に明るい未来なんてない。忍耐とは、緩やかな絶望なんだって。その絶望を突き抜けてしまった時…。一番怖かったのは『ロボトミー』のユーノの母だけど、『ゴッドレス』の香さんも、『暴君』の三雲の母も、『脂肪遊戯』の紗沙羅の父も、とても怖い。自分しか見えない、自分の都合だけで生きる人たち。悪意なく自分の理屈を押しつけ、受け入れられないと心や体に暴力を振るう。紗沙羅の、醜さに依って立つ尊厳の美しさにまで言及するところが、桜庭一樹の容赦なさだなと思う。★★★★★
読了日:04月13日 著者:桜庭 一樹

映画の感想を読み返してみたら、動機はすぐにわかるし、犯人も割とすぐわかったと書いてあったけど、本を読んでもやっぱり動機と犯人は割とわかりやすく感じた。逆に、映画でここ不要だなと思った部分が本にはなかったので、映画よりすっきりとわかりやすかったんじゃないかな。本格ミステリなので言うだけ野暮とは思うけれど、連続殺人を犯すほどの動機かなとは思った。葉村と明智先輩との関係も映画より良かったな。葉村の葛藤や逡巡が、ただの本格ミステリと言うだけではない厚みを今作に与えたと思う。★★★★☆
読了日:04月14日 著者:今村 昌弘

里子を何十人も育ててきたテオとリタの夫婦。リタは何十年も前に自殺し、老いたテオは元養子たち数人が面倒を見ている。テオの死体が発見され、敷地内から女性の死体が複数発見される。溺死させたのち冷凍保存し、ラップにくるんで遺棄された死体。入り組んだ人間関係で、複雑なプロットになっているけれど、まあ読後感はよかったと言える。なによりも、前回少年期の隠された真実を突きつけられて精神的に追い込まれたオリヴァーが立ち直ってよかった。今回はピアがずいぶん精神的に追い詰められたけれど、彼女はタフなので多分大丈夫だろう。★★★★☆
読了日:04月16日 著者:ネレ・ノイハウス

ぼくのとうさんは月に一度、作った籠を売りにハドソンに行く。9歳になって半年、ぼくはようやくハドソンへ連れて行ってもらえることになった。とうさんと同じように、籠を括りつけた棒を肩に担いで歩くぼくの誇らしげなこと。けれど街の人たちがぼくたちのことをなんといってバカにしているかを知ってしまい、もう、籠を作るのも、街へ行くのも嫌になった。だけど、とうさんの仲間のビッグ・ジョーは言った。「風はみている。だれを信用できるか、ちゃんとしっているんだ」それを聞いた途端、ぼくは、ぼくも風が選んでくれた人になりたいと思った。★★★★☆
読了日:04月17日 著者:メアリー・リン レイ

日本にまだ韓国料理店がなかった頃、銀座に『清香園』を開いた著者の、韓国の歴史や文化に触れながら書かれたレシピ本。レシピ本と言いながら私の主眼はそちらではなく、コラム的な文章の方。韓国の料理は「五味五色」を大切にしているという。五味は「塩・甘・酸・辛・苦」、五色は「赤・白・黄色・緑・黒や茶色」なのだそうだ。私からすると全てが赤く、辛いような気がするけれど、多分日本人が白身魚の味の違いが分かるように、韓国の人もあの色合いの中から五色を、辛味の中に五味を感じているのだろう。そう思うと、文化の違いって面白い。★★★★☆
読了日:04月18日 著者:張 貞子

今更灰原のお姉さんの話ですか?という気がしましたが、なんかちょッと灰原がナーバスになっているようなので、今後の伏線でしょうか。アムロ対怪盗キッドはミステリ上の伏線もあって面白かった。だが、今更新キャラ登場はやめて~!私が生きている間に黒の組織の謎が解明されますように。
読了日:04月18日 著者:青山 剛昌

普通の人々の生活の中に、当たり前のようにピンク色のブタのぬいぐるみが人として存在している。ぶたぶたさんが誠実に生きているからこそ、心に屈託を抱えた人たちが自分の足で前に歩いていけるようになる。しかし、読後感はいいとして、不倫に殺人ですぜ、抱えている屈託って。表紙のかわいらさからは考えられないくらいの、どろどろ。結婚するまではいろんな未来が、いろんな可能性があった筈なのに、結婚してしまえば家の中のことばかりで、世の中の変化から置いていかれる不安と諦め。これは今でも多くの女性が感じることだと思う。★★★★☆
読了日:04月20日 著者:矢崎 存美

最後まで読んでも誰が先生のお気に入りなのか、そもそも先生が誰の事を指しているのかわかりません。読解力の低下たるや…。魔族たちが異空間に人間を閉じ込めるわけなのだけれど、その背後にいるらしいジールのクラスター王子の目的がわからない。魔術を使える範囲とか、条件などの制約はあるみたいだけれども、バロックヒートとタロットワーク二人に守られるって最強だよね。敢えて冒険をする意味はあるのかしら。作中では2年前から行方知れずになっているというスマート。絶対いいところで登場するに決まっている。うーむ。手に汗握れんな。★★★★☆
読了日:04月21日 著者:野梨原 花南

いよいよ曹操の時代となっていきますが、曹操が周囲を従えてぐいぐい前に出ていくわけではありません。彼は実によく周囲の意見をよく聞くのです。そして人を見る目があります。曹操の瑕疵は2つ。出身が宦官の家であること。もう一つは、そうです、父の仇を討つために、徐州で大虐殺を行ってしまったこと。これを除くと、勉強を怠らず、情報の大切さを知り、嫡男を亡くしたため別れることになった奥さんにも生涯礼を尽くし、軍律厳しく…ちょっといいところしか見つかりません。運を味方につけるのも見放されるのも、生き方が反映されるのね。★★★★☆
読了日:04月22日 著者:宮城谷 昌光

これは本当に読むのがしんどくて、途中までは数ページずつ細切れにしか読むことができなかった。文章が難しいわけではなく、逆に読みやすくて、クリアに状況がイメージできてしまうからこそ、辛くてしんどくて読み続けることができなかったのだ。語り手は12歳の少年。彼の隣の家に、両親を交通事故で亡くしたメグとスーザン姉妹が引き取られてきた。3歳年上のメグにデイヴィッドはすぐに惹かれたのだけど…。人のもつ悪意の醜さと恐ろしさがこれでもかと書かれていて、小説としては上等なのだろうけど、正直絶対再読したくはない。★★★★☆
読了日:04月25日 著者:ジャック ケッチャム

大阪の文化住宅で絵描きの父と料理上手な母と共に暮らす銀花は、父の実家の醤油蔵を継ぐため奈良へ引っ越す。厳格な祖母と、銀花よりひとつだけ年上の叔母・桜子が住む家は、歴史ある醤油蔵を持っているが、昔と違い杜氏と当主の二人で細々と営まれる家業は、傾いていくばかりだった。危ういバランスの上で成り立っていた銀花の家は、しかし、次々と不幸に見舞われる。銀花ばかりがなぜ我慢しなければならないのか。不憫で不憫でならなかった。けれども、想像よりはるかに温かいエンディング。家族って言うのは心が繋がってこそだよなあ。★★★★★
読了日:04月26日 著者:遠田 潤子

『たゆたえども沈まず』というのは、パリのこと。何度セーヌ川が氾濫しようとも、パリは水にたゆたうことがあっても沈むことはない、という意味。そしてそれは、生前に認められることがなかったけれど、それでも絵を描き続けたゴッホのことでもあるのだろう。兄の才能を信じ、最高の一枚を最高のタイミングで世の中に出そうとしていたテオ。いや、もっと早く世間に絵を公表して、売った金で兄の面倒を見るとか、どうしてできなかったのか。あまりにもセンシティブでストイックな兄弟。彼らの結末を知らなくたって、悲劇しか予想できん。★★★★☆
読了日:04月29日 著者:原田 マハ

筆者・Kは、小説を書くかたわら、戯曲を構想中である。作者・恩田陸を思わせる筆者は、行きつけのバーで吉屋と名乗る男と出会う。彼は自らを吸血鬼だという。よく考えれば東京に限らず大都市は多くの死者を抱えている。けれどそれを東京という都市に無理なく落とし込んだところに恩田陸の上手さがある。さらに、東京を描いておきながらその背後には地下鉄サリン事件や、阪神淡路大震災、東日本大震災の存在がしっかりと根付いている。面白かったのはやっぱり筆者視点のエッセイのような部分。うんなるほど、そうだよね、と頷きながら読んでいた。★★★★☆
読了日:04月30日 著者:恩田 陸
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