3月、読めなかったなー。
マンガも読んでないのに、16冊。
『読書の日記』に手こずったのと、残業のせいかなあ。
今月からは定常的に残業が増える予定なので、これからは月に20冊は難しいかも。
休日も家族サービスが増えそうなので、読書時間を確保数するのが難しいなあ。
そんな中でも★5つが4作。すごいね。
『失踪HOLIDAY』
久しぶりに読んでしみじみ好きだと再確認の白乙一。
特に「しあわせは子猫のかたち」にやられる。
ええ、ええ、作者の思うつぼですよ、全く。
『傑作はまだ』
設定はあり得ないんだけど、許せてしまえるが瀬尾まいこの力。
専業作家なんだから世間的には成功者なのに、世間知らずでポンコツの父と、初対面からぐいぐい距離を縮めてくる世間知に長けた息子。
いくつになっても人間って成長できるんだねえというほっこり系の皮をかぶって、ポンコツの加賀野に対して容赦なくダメ出しを浴びせるところが痛快。
『トラッシュ』
日本で生活していると気がつきにくいけれど、マイノリティであることの生きにくさや、それに伴う鬱屈を、山田詠美はいつも眼前につきつけてくる。
主人公は、内面に踏み込ませてくれない同居の恋人に不安を抱えつつ、彼の息子と過ごしている。
思春期のその息子に情を覚えながらも、親ではないという一線を守る主人公。
だけど、子どもは愛してあげようよ。身近な大人はさあ。ってどうしても思ってしまう私は、多分甘ちゃんなんだろうな。
『みんなの家』
単純にこういう本は好きなのです。
白黒の写真が小さくて見にくいとか、難点はありつつも、設計者の思いだけではなく、施主の意向、職人の姿もちゃんと書かれているところが良い。
「設計者はデザイン重視で考えがちだけど、住む側からしたらきれいを維持するのが大変なのは困る」と言った施主の内田樹に同感。
金銭的にも労力的にも、メンテナンスはミニマムに限る。
3月の読書メーター
読んだ本の数:16
読んだページ数:6255
ナイス数:565
三国志 第二巻 (文春文庫)の感想
この巻は延々と後漢王朝の腐敗が書かれています。外戚が横暴をきわめたかと思えば、次は宦官です。宦官たちの悪事に気づかない皇帝の無能ぶりはさておき、次々と国を憂いて皇帝に上申する清廉で能力のある官僚たちが殺されていきますが、人材を募ると有能な人々が出て来るのです。つくづく中国というのは大きな国であり、人材の尽きない国だと思いました。100ページほど読んだところで、ようやく曹操誕生。おめでとー!最後の章でようやく黄巾の乱。いよいよ次の巻からは知っている三国志。どんな切り口で書かれているのか、楽しみ、楽しみ。★★★★☆
読了日:03月02日 著者:宮城谷 昌光
宿命 (講談社文庫)の感想
殺人事件の犯人を捜す話ですが、作者が書きたいのはそれだけではなく、もっと生々しい人間の心。しかし人間の心って、心理って、どこから湧いてくるものなのか。運命に操られるようにで会った二人の男と一人の女。刑事である勇作の心情は丁寧に書かれている。ヒロイン美佐子の心情も。ただ、美佐子の夫が何を考えなにを感じているのか全く書かれていないことから、読者は不穏さを拭えないのだ。結末が作者の言うほど感動的とは思わなかったけれども、充分にミスリードしながらも先を予想させる按配が、さすがにうまい。★★★★☆
読了日:03月03日 著者:東野 圭吾
失踪HOLIDAY (角川スニーカー文庫)の感想
「しあわせは子猫のかたち」は、まさに初期の白乙一。どうしてもうまく人とコミュニケーションをとることができない。期待して裏切られるくらいなら最初から何も求めない。そんな僕が、殺された前住人の幽霊と暮らすことになる。やっぱり白乙一の作品が好きだ。切なさをこんなに巧みに描ける人がいるだろうか。いるかも、だけど。『失踪HOLIDAY」は、してやられました。主人公のナオは、中学生にしては子どもっぽいなあと思いながら読んでいたので、作品すらも子どもっぽいまま終わるのかと思ってしまった。えと…完全犯罪ってことでいいの?★★★★★
読了日:03月04日 著者:乙 一
ホリー・ガーデン (新潮文庫)の感想
小学生のころから30歳目前のいまに至るまで、ずっと友だち同士というのが、こんなに殺伐としたやり取りを?というのが、まず思ったこと。果歩も静枝も、互いを心配していることはわかる。けれど、江國香織の小説を読むといつもざわざわ感じるのは、登場人物たちがいつも、今目の前にないものしか見ようとしないところ。目と目を見交わすことをしない。いない人を思い、いない人を感じ、側にいる人を鬱陶しく思う。ここではないどこかにいる自分を探しているのかな。二人ともとても自虐的。それでは幸せになれないような気がする。★★★★☆
読了日:03月05日 著者:江國 香織
傑作はまだの感想
まさに瀬尾まいこ、な作品。まず設定が突拍子もない。
そして、家族のかたちが歪。生後25年経って初対面の父と息子って、どういう家族よ。だけどこれ、実にまっとうな家族小説なのだ。悪い人ではないんだけど、あまりに人間というものを、世間というものを、あるいは生活全般についても知らなすぎる父・加賀野。設定はハードだけれど、加賀野のポンコツぶりが可笑しくて、それに対する智の笑いながらの突込みが微笑ましくて、このまま二人の生活が続いていって欲しいと思ったけれど。想像の斜め上を行く読後感の良さ。脱帽です。★★★★★
読了日:03月06日 著者:瀬尾まいこ
トラッシュ (文春文庫)の感想
愛している男・リックとの生活に疲れ果てている女・ココ。
愛を伝える。彼のために献身する。二人の時間を楽しみたい。しかし、そんなココの態度が、リックを追いつめる。黒人として生まれ、幸せだったと思うことなく大人になったリックは、愛情というものがわからない。だって愛なんて見えないから。リックの息子ジェシーは、幼い頃から父母の喧嘩を見て育ち、大人を信じることができない。だけど、大人に面倒を見てもらわなければならない子どもであるという自覚はある。そういう鬱屈から始まる物語。とてもヘヴィーだけど、読みごたえたっぷり。★★★★★
読了日:03月08日 著者:山田 詠美
盤上の向日葵(上) (中公文庫)の感想
身元不明の白骨死体の遺留品である将棋の駒の持ち主を探すターンと、事件の関係者と思われる人物の幼少期のターンが交互に書かれている。過酷な少年時代を送っていた少年は、序章で、成功したベンチャー企業の経営者になったにもかかわらず、すべてを捨てて将棋界に乗り込んだ天才棋士となっている。あまりにも痛ましい少年時代。唯一の楽しみだった将棋を捨てた彼は、一体どんな人生を歩んできたのか。それが気になって、白骨死体の正体も、自殺か他殺か事故かもわからず、もし他殺だとしたら動機は何なのかも想像すらできないまま上巻を読了。★★★★☆
読了日:03月10日 著者:柚月 裕子
虹いろ図書館のへびおとこ (5分シリーズ+)の感想
小6の2学期に転校した先の学校でいじめられ、学校に行けなくなったほのか。いじめのえげつなさも嫌だけど、見て見ぬふりをする担任の先生はもっと嫌だ。ついに図書館にいる事が学校にばれてしまった。後日訪れた先生たちに「そもそも、小学生が平日の昼間から来ていたら、学校はどうしたと問いただすのが、大人の常識じゃないですか?」と言われた司書は「問いただしたら、その子はここに、もう来られない。次はどこへ行くんですか?そうやって、子どもの行き場をなくし、追いつめろというのですか?」と逆に聞き返す。爽快。★★★★☆
読了日:03月11日 著者:櫻井とりお
あんのまごころ お勝手のあん (時代小説文庫)の感想
料理を通してあんの世界が広がって行くのが読んでいて好ましい。おちよの件については、たぶん誰も傷つかない、一番いい解決方法だと思うけど、それでいいのだろうかという思いが残る。育てるつもりもないけれど中絶はもっといや。正直すぎるおちよの気持。おちよがどこまで覚悟を決めたのかが不明。そして、大地震や押し込み強盗未遂に続いて、今度は大嵐。どこまで試練が続くのか、と思うけれど、実際江戸末期は天災が多い時期でもあったのだからしょうがない。それでも庶民はしたたかにたくましく生き延びることを願って、次の巻を予約しよう。★★★★☆
読了日:03月19日 著者:柴田 よしき
読書の日記の感想
読書も好きだし、日記を読むのも好きなので、この本はすごく楽しみでした。けれど、結果としてこの本を読むことは、私にとって苦行となりました。引用を多用しすぎている割に、感想は感覚的で、それも含めて戦略的なのだろうけれど、ケレン味だらけの文章の中で、何が書かれているのか見失うことも多くありました。フィクションとノンフィクションがごたまぜの文章は、大変読みにくかったのでした。でも最後まで読んでよかった。「富士日記」について書かれ始めた頃から、文章がこなれたのかケレン味が失せたのか、読みやすくなりました。★★★★☆
読了日:03月20日 著者:阿久津隆
三国志 第三巻 (文春文庫)の感想
ようやく、知っている三国志の時代に入ってきました。皇帝を私物化した董卓はもちろん大悪党だと思いますが、董卓が出てくる以前から、皇帝も皇后も皇太子も権力争いのための旗印にすぎず、倫理観の欠如している人たちにとっては、国を動かしてうまい汁を吸うための人質にすぎなかったのが、霊帝の何代か前からの実態なのでした。反董卓の名のもとに大勢が集まりましたが、誰も動き出そうとはしません。そんな中、曹操は袁紹のもとから出撃し、大敗を喫し、孫堅は袁術のもとから出撃し、大勝します。孫権が長生きしていたら…と思ってしまう。★★★★☆
読了日:03月23日 著者:宮城谷 昌光
ちょー魔王(下) (ちょーシリーズ) (コバルト文庫)の感想
とりあえずレフーラ編を最後まで読んでよかったのは、タイトルの『魔王』の意味が分かったこと。魔法とこの世界のバランスをとるための、分銅と運命づけられたオニキス。小さな子どもの命ひとつでこの世界が救えるのなら、と考える人は当然いるだろう。しかしそれが愛する息子なら、どうぞこの命で世界を救ってくださいと言える親はほとんどいないと思う。タロットワークはオニキスの命もこの世界もすくべく考えて考えて考えて、行動した。このテーマだけでストーリーを深掘りすればよかったのに。いろんなことが空中に投げ出されたまま、琥珀!?★★★★☆
読了日:03月24日 著者:野梨原 花南
ぶたぶた【徳間文庫】の感想
まず、主人公の山崎ぶたぶたさんは、ぶたのぬいぐるみである。サイズはバレーボールくらい。軽いので風にあおられたり、犬やカラスに連れ去られたりすることもある。だけど、喋るし、動くし、飲み食いするし、酔っ払うし、仕事もするし(たいていは優秀)、時には妻子もいる。何が面白いのかと言うと、難しい。ぶたのぬいぐるみだからこその動きのコミカルさがわかりやすい面白さだけど、それだけでなく読後感がしみじみとよろしい。特に最後の『桜色を探しに』は、この本のトリとして絶品。いやほんと、ぶたぶたさん何者なのよ?笑★★★★☆
読了日:03月26日 著者:矢崎存美
一夢庵風流記 (新潮文庫)の感想
名前は知っていましたが、あとは何も知らずに読み始めました。秀吉の朝鮮出兵にあたり現地視察を命じられたりとか、家康の上杉攻めの際に味方を追いつめた最上義光の兵たちを、たった8人で追い散らしたりとか(味方の死者はゼロ)、マンガや小説のような出来事が実際に記録に残っているのですから、すごい人です。目立ちたいから人目を引くような奇抜な格好をした形だけの傾奇者ではなく、したいからそうする。天衣無縫とはまさにこのことか、と思いましたが、いやちょっと待て、なんか新庄ビッグボスのような気もしてきたぞ。★★★★☆
読了日:03月28日 著者:隆 慶一郎
みんなの家。建築家一年生の初仕事の感想
施主は大学教授で武道家の内田樹氏。家のコンセプトはかなり明快。そして、空間ごとの壁や柱、屋根の形すらそれぞれにデザインされ、そしてまた集合体としての統一感もあり。ゼロから物を創り出していくわくわく感。そして、施主や大勢の職人たちとコミュニケーションを取りながら意見をすり合わせ、より良いものをつくりあげていこうとする意気込み。読んでいてこちらもわくわくしました。何度も間取りと断面図と写真を見くらべて、ほほう、ここがこうなるのかと読みこんでいくため時間はかかりましたが、大変面白かったです。★★★★★
読了日:03月29日 著者:光嶋裕介,内田樹(ゲスト),井上雄彦(ゲスト)
帰郷 (集英社文庫)の感想
浅田次郎の戦争小説だけを集めた作品集。もちろんどの作品も上手い。戦後の遊園地で働く若者が主人公の『夜の遊園地』にはちょっと驚いた。生きて日本に帰ってきた兵士の心中をあらわすのに、遊園地という舞台をこう使うのかと。日本人はいつから死者に対して謙虚じゃなくなったんだろう。『無言歌』は最初、ほのぼの系かと思ってしまった。夢の話から始まる。寝る時に見る方の夢。随分のんきだなあと思いながら読んで、最後に状況がわかった時の衝撃。酸素を使い切るために、チャップリンの映画で有名な「スマイル」を鼻歌で歌う最後に号泣。★★★★☆
読了日:03月30日 著者:浅田 次郎
読書メーター
マンガも読んでないのに、16冊。
『読書の日記』に手こずったのと、残業のせいかなあ。
今月からは定常的に残業が増える予定なので、これからは月に20冊は難しいかも。
休日も家族サービスが増えそうなので、読書時間を確保数するのが難しいなあ。
そんな中でも★5つが4作。すごいね。
『失踪HOLIDAY』
久しぶりに読んでしみじみ好きだと再確認の白乙一。
特に「しあわせは子猫のかたち」にやられる。
ええ、ええ、作者の思うつぼですよ、全く。
『傑作はまだ』
設定はあり得ないんだけど、許せてしまえるが瀬尾まいこの力。
専業作家なんだから世間的には成功者なのに、世間知らずでポンコツの父と、初対面からぐいぐい距離を縮めてくる世間知に長けた息子。
いくつになっても人間って成長できるんだねえというほっこり系の皮をかぶって、ポンコツの加賀野に対して容赦なくダメ出しを浴びせるところが痛快。
『トラッシュ』
日本で生活していると気がつきにくいけれど、マイノリティであることの生きにくさや、それに伴う鬱屈を、山田詠美はいつも眼前につきつけてくる。
主人公は、内面に踏み込ませてくれない同居の恋人に不安を抱えつつ、彼の息子と過ごしている。
思春期のその息子に情を覚えながらも、親ではないという一線を守る主人公。
だけど、子どもは愛してあげようよ。身近な大人はさあ。ってどうしても思ってしまう私は、多分甘ちゃんなんだろうな。
『みんなの家』
単純にこういう本は好きなのです。
白黒の写真が小さくて見にくいとか、難点はありつつも、設計者の思いだけではなく、施主の意向、職人の姿もちゃんと書かれているところが良い。
「設計者はデザイン重視で考えがちだけど、住む側からしたらきれいを維持するのが大変なのは困る」と言った施主の内田樹に同感。
金銭的にも労力的にも、メンテナンスはミニマムに限る。
3月の読書メーター
読んだ本の数:16
読んだページ数:6255
ナイス数:565

この巻は延々と後漢王朝の腐敗が書かれています。外戚が横暴をきわめたかと思えば、次は宦官です。宦官たちの悪事に気づかない皇帝の無能ぶりはさておき、次々と国を憂いて皇帝に上申する清廉で能力のある官僚たちが殺されていきますが、人材を募ると有能な人々が出て来るのです。つくづく中国というのは大きな国であり、人材の尽きない国だと思いました。100ページほど読んだところで、ようやく曹操誕生。おめでとー!最後の章でようやく黄巾の乱。いよいよ次の巻からは知っている三国志。どんな切り口で書かれているのか、楽しみ、楽しみ。★★★★☆
読了日:03月02日 著者:宮城谷 昌光

殺人事件の犯人を捜す話ですが、作者が書きたいのはそれだけではなく、もっと生々しい人間の心。しかし人間の心って、心理って、どこから湧いてくるものなのか。運命に操られるようにで会った二人の男と一人の女。刑事である勇作の心情は丁寧に書かれている。ヒロイン美佐子の心情も。ただ、美佐子の夫が何を考えなにを感じているのか全く書かれていないことから、読者は不穏さを拭えないのだ。結末が作者の言うほど感動的とは思わなかったけれども、充分にミスリードしながらも先を予想させる按配が、さすがにうまい。★★★★☆
読了日:03月03日 著者:東野 圭吾

「しあわせは子猫のかたち」は、まさに初期の白乙一。どうしてもうまく人とコミュニケーションをとることができない。期待して裏切られるくらいなら最初から何も求めない。そんな僕が、殺された前住人の幽霊と暮らすことになる。やっぱり白乙一の作品が好きだ。切なさをこんなに巧みに描ける人がいるだろうか。いるかも、だけど。『失踪HOLIDAY」は、してやられました。主人公のナオは、中学生にしては子どもっぽいなあと思いながら読んでいたので、作品すらも子どもっぽいまま終わるのかと思ってしまった。えと…完全犯罪ってことでいいの?★★★★★
読了日:03月04日 著者:乙 一

小学生のころから30歳目前のいまに至るまで、ずっと友だち同士というのが、こんなに殺伐としたやり取りを?というのが、まず思ったこと。果歩も静枝も、互いを心配していることはわかる。けれど、江國香織の小説を読むといつもざわざわ感じるのは、登場人物たちがいつも、今目の前にないものしか見ようとしないところ。目と目を見交わすことをしない。いない人を思い、いない人を感じ、側にいる人を鬱陶しく思う。ここではないどこかにいる自分を探しているのかな。二人ともとても自虐的。それでは幸せになれないような気がする。★★★★☆
読了日:03月05日 著者:江國 香織

まさに瀬尾まいこ、な作品。まず設定が突拍子もない。
そして、家族のかたちが歪。生後25年経って初対面の父と息子って、どういう家族よ。だけどこれ、実にまっとうな家族小説なのだ。悪い人ではないんだけど、あまりに人間というものを、世間というものを、あるいは生活全般についても知らなすぎる父・加賀野。設定はハードだけれど、加賀野のポンコツぶりが可笑しくて、それに対する智の笑いながらの突込みが微笑ましくて、このまま二人の生活が続いていって欲しいと思ったけれど。想像の斜め上を行く読後感の良さ。脱帽です。★★★★★
読了日:03月06日 著者:瀬尾まいこ

愛している男・リックとの生活に疲れ果てている女・ココ。
愛を伝える。彼のために献身する。二人の時間を楽しみたい。しかし、そんなココの態度が、リックを追いつめる。黒人として生まれ、幸せだったと思うことなく大人になったリックは、愛情というものがわからない。だって愛なんて見えないから。リックの息子ジェシーは、幼い頃から父母の喧嘩を見て育ち、大人を信じることができない。だけど、大人に面倒を見てもらわなければならない子どもであるという自覚はある。そういう鬱屈から始まる物語。とてもヘヴィーだけど、読みごたえたっぷり。★★★★★
読了日:03月08日 著者:山田 詠美

身元不明の白骨死体の遺留品である将棋の駒の持ち主を探すターンと、事件の関係者と思われる人物の幼少期のターンが交互に書かれている。過酷な少年時代を送っていた少年は、序章で、成功したベンチャー企業の経営者になったにもかかわらず、すべてを捨てて将棋界に乗り込んだ天才棋士となっている。あまりにも痛ましい少年時代。唯一の楽しみだった将棋を捨てた彼は、一体どんな人生を歩んできたのか。それが気になって、白骨死体の正体も、自殺か他殺か事故かもわからず、もし他殺だとしたら動機は何なのかも想像すらできないまま上巻を読了。★★★★☆
読了日:03月10日 著者:柚月 裕子

小6の2学期に転校した先の学校でいじめられ、学校に行けなくなったほのか。いじめのえげつなさも嫌だけど、見て見ぬふりをする担任の先生はもっと嫌だ。ついに図書館にいる事が学校にばれてしまった。後日訪れた先生たちに「そもそも、小学生が平日の昼間から来ていたら、学校はどうしたと問いただすのが、大人の常識じゃないですか?」と言われた司書は「問いただしたら、その子はここに、もう来られない。次はどこへ行くんですか?そうやって、子どもの行き場をなくし、追いつめろというのですか?」と逆に聞き返す。爽快。★★★★☆
読了日:03月11日 著者:櫻井とりお

料理を通してあんの世界が広がって行くのが読んでいて好ましい。おちよの件については、たぶん誰も傷つかない、一番いい解決方法だと思うけど、それでいいのだろうかという思いが残る。育てるつもりもないけれど中絶はもっといや。正直すぎるおちよの気持。おちよがどこまで覚悟を決めたのかが不明。そして、大地震や押し込み強盗未遂に続いて、今度は大嵐。どこまで試練が続くのか、と思うけれど、実際江戸末期は天災が多い時期でもあったのだからしょうがない。それでも庶民はしたたかにたくましく生き延びることを願って、次の巻を予約しよう。★★★★☆
読了日:03月19日 著者:柴田 よしき

読書も好きだし、日記を読むのも好きなので、この本はすごく楽しみでした。けれど、結果としてこの本を読むことは、私にとって苦行となりました。引用を多用しすぎている割に、感想は感覚的で、それも含めて戦略的なのだろうけれど、ケレン味だらけの文章の中で、何が書かれているのか見失うことも多くありました。フィクションとノンフィクションがごたまぜの文章は、大変読みにくかったのでした。でも最後まで読んでよかった。「富士日記」について書かれ始めた頃から、文章がこなれたのかケレン味が失せたのか、読みやすくなりました。★★★★☆
読了日:03月20日 著者:阿久津隆

ようやく、知っている三国志の時代に入ってきました。皇帝を私物化した董卓はもちろん大悪党だと思いますが、董卓が出てくる以前から、皇帝も皇后も皇太子も権力争いのための旗印にすぎず、倫理観の欠如している人たちにとっては、国を動かしてうまい汁を吸うための人質にすぎなかったのが、霊帝の何代か前からの実態なのでした。反董卓の名のもとに大勢が集まりましたが、誰も動き出そうとはしません。そんな中、曹操は袁紹のもとから出撃し、大敗を喫し、孫堅は袁術のもとから出撃し、大勝します。孫権が長生きしていたら…と思ってしまう。★★★★☆
読了日:03月23日 著者:宮城谷 昌光

とりあえずレフーラ編を最後まで読んでよかったのは、タイトルの『魔王』の意味が分かったこと。魔法とこの世界のバランスをとるための、分銅と運命づけられたオニキス。小さな子どもの命ひとつでこの世界が救えるのなら、と考える人は当然いるだろう。しかしそれが愛する息子なら、どうぞこの命で世界を救ってくださいと言える親はほとんどいないと思う。タロットワークはオニキスの命もこの世界もすくべく考えて考えて考えて、行動した。このテーマだけでストーリーを深掘りすればよかったのに。いろんなことが空中に投げ出されたまま、琥珀!?★★★★☆
読了日:03月24日 著者:野梨原 花南

まず、主人公の山崎ぶたぶたさんは、ぶたのぬいぐるみである。サイズはバレーボールくらい。軽いので風にあおられたり、犬やカラスに連れ去られたりすることもある。だけど、喋るし、動くし、飲み食いするし、酔っ払うし、仕事もするし(たいていは優秀)、時には妻子もいる。何が面白いのかと言うと、難しい。ぶたのぬいぐるみだからこその動きのコミカルさがわかりやすい面白さだけど、それだけでなく読後感がしみじみとよろしい。特に最後の『桜色を探しに』は、この本のトリとして絶品。いやほんと、ぶたぶたさん何者なのよ?笑★★★★☆
読了日:03月26日 著者:矢崎存美

名前は知っていましたが、あとは何も知らずに読み始めました。秀吉の朝鮮出兵にあたり現地視察を命じられたりとか、家康の上杉攻めの際に味方を追いつめた最上義光の兵たちを、たった8人で追い散らしたりとか(味方の死者はゼロ)、マンガや小説のような出来事が実際に記録に残っているのですから、すごい人です。目立ちたいから人目を引くような奇抜な格好をした形だけの傾奇者ではなく、したいからそうする。天衣無縫とはまさにこのことか、と思いましたが、いやちょっと待て、なんか新庄ビッグボスのような気もしてきたぞ。★★★★☆
読了日:03月28日 著者:隆 慶一郎

施主は大学教授で武道家の内田樹氏。家のコンセプトはかなり明快。そして、空間ごとの壁や柱、屋根の形すらそれぞれにデザインされ、そしてまた集合体としての統一感もあり。ゼロから物を創り出していくわくわく感。そして、施主や大勢の職人たちとコミュニケーションを取りながら意見をすり合わせ、より良いものをつくりあげていこうとする意気込み。読んでいてこちらもわくわくしました。何度も間取りと断面図と写真を見くらべて、ほほう、ここがこうなるのかと読みこんでいくため時間はかかりましたが、大変面白かったです。★★★★★
読了日:03月29日 著者:光嶋裕介,内田樹(ゲスト),井上雄彦(ゲスト)

浅田次郎の戦争小説だけを集めた作品集。もちろんどの作品も上手い。戦後の遊園地で働く若者が主人公の『夜の遊園地』にはちょっと驚いた。生きて日本に帰ってきた兵士の心中をあらわすのに、遊園地という舞台をこう使うのかと。日本人はいつから死者に対して謙虚じゃなくなったんだろう。『無言歌』は最初、ほのぼの系かと思ってしまった。夢の話から始まる。寝る時に見る方の夢。随分のんきだなあと思いながら読んで、最後に状況がわかった時の衝撃。酸素を使い切るために、チャップリンの映画で有名な「スマイル」を鼻歌で歌う最後に号泣。★★★★☆
読了日:03月30日 著者:浅田 次郎
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