早いもので、今年も12分の1が過ぎてしまいました。
7草粥の日に帰省した娘、まだいます。
ありがたいけど、読書以外の時間が増えてしまう。
さて、今月は★5つが2冊。
『大人にも子供にもおもしろい本』は、絵本や児童文学のブックガイドですが、良質の絵本や児童文学は大人が読んでも面白いし、ものによっては大人が日ごろ使わない回路を使った解釈が必要だったりと、脳トレにもいいかもしれない。
元々児童文学が好きなので、退職後、小さな文字が追いにくくなったら読もうと思っている作品がたくさんあります。
『落日燃ゆ』
この本は賛否両論あるようですが、私は面白かったです。
もちろん小説なので、事実と異なる部分もあるのでしょう。広田弘毅の評伝ではないのですから。
でも、名前くらいしか知らなかったこの人に強い興味がわきましたし、戦争を止めようとしても戦争へと流されてしまう、しかも明確な責任者がいないというあの時代を、臨場感を持って読むことができました。
最後にマンガですが『水鏡奇譚』
1月に読んだ本の中で、実は一番面白かった。
形としてはマンガですが、絵物語のような読み心地。
テンポがゆったりしているからでしょうか。
結構波瀾万丈だし、民衆の悲惨な生活を描いたりもしているのですが、主人公たちがくよくよしないからかなあ、庶民の強かさも感じられて。
哀れもあり、切なさもあり、愛しさもあり、よかったです。
2月もあっという間に過ぎていくのでしょうね。
そして気がついたらコロナも過去の話になっていればいいなあ。
1月の読書メーター
読んだ本の数:20
読んだページ数:5794
ナイス数:665
ラピスラズリ (ちくま文庫)の感想
冬になると冬眠する人たちの、冬眠前の慌ただしい日を描いた『竈の秋』が一番長く、一番難解でした。多分論理で理解するのではなく、感覚で理解する話なのだと思いますが。現在進行形で語られながら、全てが古ぼけて見える。時系列も空間情報もあやふやになっていき、頭に浮かぶのはただ、青い闇。光を反射する青ではなく、光をのみ込む青。だけどそれは多分、一度終焉を迎えたのちに復活するのである。秋の枯れ葉に始まる春の目覚めのものがたり。美しく、儚く、たくましい。今年最初に読むにふさわしい一冊でした。★★★★☆
読了日:01月02日 著者:山尾 悠子
ちょーテンペスト (ちょーシリーズ) (コバルト文庫)の感想
今回はシリアス路線で、しかも導入部だけ。ジオとダイヤが最も信頼しているタロットワークが、三つ子の一人オニキスとともに姿を消す。どうもタロットワークの一族の秘密にかかわる仕事、しかもオニキスに害を与えかねないようなことのために、誘拐したっぽい。似たようなこと、前もあったね。タロットワークは心からジオやダイヤたち一家のことを愛しているけれど、職務(任務)に忠実なので結局裏切るはめになってしまう。このパターンで話が続くのならしんどいな。しかしまだ導入部だと思うので、もう少し先を読んでから出来を判断しようと思う。★★★★☆
読了日:01月03日 著者:野梨原 花南
ローマ人の物語 (41) ローマ世界の終焉(上) (新潮文庫)の感想
いよいよローマ帝国の終わりが見えてきた。国が衰えるというのは、能力のある人が排出されないのではなく、能力のある人を活かすシステムが作られないってことなんだと、ここ最近の巻を読んでいて思う。陰りを見せ始めても、能力のある皇帝は何人か出てきている。けれどそれを実務としてこなす人がいないとか、皇帝の意思が反映されないシステムとか。キリスト教の悪影響もあるけれど、ローマ市民の公共心の欠如が、結局彼らの首を絞めてしまったように思える。ローマ人として生きた最後の男、スティリコ。生まれた時代が悪かったなあ。合掌。★★★★☆
読了日:01月04日 著者:塩野 七生
アフターダーク (講談社文庫)の感想
深夜のファミレスで本を読む若い女性・マリ。彼女に声をかけ、ちゃっかり相席する男・高橋。ふたりは二年前にマリの姉エリとその当時の彼の4人で、一度だけホテルのプールでダブルデート(もどき)をした。深い眠りについているマリの姉のエリ。ラブホテルで事件を起こしたまま姿を消したサラリーマンの白川。エリの部分がまず不穏。寝ている彼女をじっと見つめる男の姿が描写されるが、顔は見えない。また、白川の暴力もなぜそこまで…は書かれていない。いろんなことが語られないままの不安定なバランス。あくまでも夜の時間のお話。★★★★☆
読了日:01月06日 著者:村上 春樹
キャリアデザイン入門[I]基礎力編 第2版 (日経文庫)の感想
若い頃にこういう本を読んで、意識高く仕事をしていたら出世したんでしょうか。いや、読むだけではだめだね。実践しないと。でも、著者は、出世を目指すことがキャリアデザインではないのだと言います。仕事に費やした時間をポジティブに受け入れられたら、キャリア成功なのだそう。”基礎力は対人能力――「親和力」「協働力」「統率力」、対自己能力――「感情制御力」「自信創出力」「行動持続力」、対課題能力――「課題発見力」「計画立案力」「実践力」を中心として、処理力・思考力を加えたものである。”さて、私の基礎力はいかばかりか。★★★★☆
読了日:01月07日 著者:大久保 幸夫
大人にも子供にもおもしろい本―虹の町の案内板 (中公文庫)の感想
自分が子どものころ読んだ本よりも、子どもたちと読んだ本が懐かしくて、しみじみ。良質な子どもの本って、子どもに媚びないし、ご都合主義もないから、大人が読んだってちゃんとおもしろいのよ。昔からずっと読みたいと思っていた『スイスのロビンソン』の外に、『新・ロビンソン・クルーソー』の紹介もあって、これはぜひ読みたいと思った。『冒険者たち』のシリーズも絶対読む。アーサー王伝説も学生時代からの宿題なんだよなあ。年を取って小さな字が読みにくくなっても、絵本や児童文学なら大丈夫。老後の楽しみに最適ですね。★★★★★
読了日:01月09日 著者:向井 元子
あんの青春 春を待つころ お勝手のあん (ハルキ文庫 し 4-4 時代小説文庫)の感想
あんの青春と言っても、現在の若い子のような甘酸っぱいものではなく、大人になる前の時期ってことです。おやすの親友お小夜は、親の勧める人と結婚しなければならない。お小夜は蘭方医になりたいと思っている。大人になるということは、子ども時代の夢を諦めないとならないということなのか。おやすも、自分の将来について考える。いつまでも「紅屋」で働いていたいと思いつつ、料理で身を立てられたら、とも思う。江戸時代の青春って、そういう年ごろ。★★★★☆
読了日:01月10日 著者:柴田よしき
ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)の感想
歴史が好きなので、改編歴史ものは好きなのですが、この作品に関して言えば、面白かったけれど名作というほどではなかったと思いました。プロットはいいのです。この路線でしっかりとストーリーをまとめれば、読者の胸を打つ感動的な作品になったろうと思います。ただ、作者の考える日本的というのと、日本人読者の考える日本的というのにずれがあることを踏まえたうえで、作者はロボット戦闘ものが書きたかったんだね、と思うしかありません。でも、エンタメとして面白く読みました。★★★★☆
読了日:01月12日 著者:ピーター トライアス
読書は格闘技 (集英社文庫)の感想
私は著者と対話するように読むので、格闘はしないかな。この本では著者と読者の闘いだけではなく、同テーマで視点の異なる作品を闘わせます。例えばRound 8のテーマ『未来』。フランシス・ベーコンの『ニュー・アトランティス』とジョージ・オーウェルの『一九八四年』。ユートピア小説とディストピア小説。対戦する2冊以外にもテーマに沿った本が紹介されていて、読みたい本が増える一方。しかし、待て。私にそれらの本を読む力があるのか?体力があるのか?だけど『韓非子』とか『君主論』とか、すごく気になるじゃない?★★★★☆
読了日:01月13日 著者:瀧本 哲史
認知症世界の歩き方の感想
認知症の親は、どのような世界に今いるのだろうと思い読んでみました。字が大きくイラストも多めですが、『(認知症)世界の歩き方』という設定よりも、個別に書かれた行動の意味や生活シーン別の困りごと索引が役に立ったと個人的には思います。軽度の認知症と長らく付き合っている人の言葉が主なので、この本では物足りない人も多いと思いますが、初心者にはいいと思います。「なんでそんなことするの!」と思うような行動にも意味があることを、わかりやすく書いてあるので。私の勉強不足で母を十分理解できなかったと反省しました。★★★★☆
読了日:01月14日 著者:筧 裕介
鎌倉燃ゆ 歴史小説傑作選 (PHP文芸文庫)の感想
鎌倉時代は、ちょっと隙を見せるとすぐに謀反人扱いされ、寄ってたかったボコられる。戦に勝たないと領地が増えないから争う。子どもに土地を分割して遺さなければならないから、年代を経るほどに土地は減る。長男総取り制を敷いた家康のおかげで江戸時代は平和でいられたのだろうな。そうそう、ちょっと隙を見せるとよってたかってボコられるって、今の時代みたいだ。それで三谷幸喜はあえてこの時代を舞台にしたのかなと深読みしてみたり。閑話休題。7つの作品中、既読は最後の『八幡宮雪の石階』のみ。実朝の哀しみと諦念が切ない。★★★★☆
読了日:01月16日 著者:安部 龍太郎,谷津 矢車,秋山 香乃,滝口 康彦,吉川 永青,髙橋 直樹,矢野 隆
ばんば憑きの感想
妖と人間の話が6編。シリーズ物も単発のものもあり。親に折檻されて死んだお文の影だったり、自身の命を救うために我が子の命を差し出そうとする父親だったり、道端に捨てられた子どもの亡骸だったり、子どもがひどい目に遭う話が多くて、妖も怖いのだけど、人間の方が怖い気がしてしょうがない。★★★★☆
読了日:01月17日 著者:宮部みゆき
ちょー海賊 (ちょーシリーズ) (コバルト文庫)の感想
ちょーシリーズ、いろいろタイトルがありますが、今回はストレートに『ちょー海賊』。でも、なかなか前回のあらすじを思い出せない。ライトノベルってするする読めるんだけど、するする忘れていくんだよね。バーナード嬢、曰く「忘我の果てに 私は川になったよ」よくない読書ですねー。多分次の巻を読んだらまた、あらすじをすっかり忘れているんだろうなあ。だって全然ひっかからないんだもの。★★★☆☆
読了日:01月18日 著者:野梨原 花南
ローマ人の物語 (42) ローマ世界の終焉(中) (新潮文庫)の感想
遂に西ローマ帝国が滅亡の時を迎えます。自身が先頭に立って国を治めるどころか、才能ある人材すら使いこなすことができないまま、蛮族におびえ、自分の安寧だけを切に願った皇帝ホノリウス。またまた短期政権の乱立時代が始まる。東ローマ帝国は、蛮族との緩衝材としての西ローマ帝国の存在を必要としていたので、ついに手を差し伸べる。西ローマ帝国の皇帝を派遣し、ともに蛮族に立ち向かおう。と。しかし蛮族の方が一枚上手で、蛮族に帝位を廃された後、さらなる皇帝を立てることもできず、そっと滅亡していった。諸行無常。★★★★☆
読了日:01月19日 著者:塩野 七生
水鏡綺譚 (ちくま文庫)の感想
親に捨てられ狼に育てられた青年・ワタルと、記憶と魂を失った少女・鏡子の旅。途中いろんな妖と出会い、それがワタルを成長させていくので、冒険ものとも、成長譚とも、バディ物とも読めるが、展開の早いエンタメではなく、じんわりじわじわ沁みてくる。人のもつ業に何度も苦しませられながら、それでも立派な人間になりたいと修行を続けるワタル。鏡子の思いに気づき、離れがたくなる前に早く家に帰してやらなくてはと思う彼の涙は、鏡子の魂と同じくらい美しい。
読了日:01月23日 著者:近藤 ようこ
白い果実の感想
独裁者が支配する理想形態都市から、奇跡の白い果実盗難の犯人を捕まえるため観相官クレイが属領であるアナマソビアへ着いた時から物語がはじまる。しかし魔法と薬が見せる幻想と宗教と旅人のミイラとが織りなす世界は、何が真実で何が虚構なのかわからない。この本は金原瑞人と谷垣睦美が訳してから、山尾悠子が彼女の文体に書き直したのだそうだ。グロテスクな描写も多かったけれど、ファンタジーの皮を被ったディストピア小説。これ、三部作らしいけど、続きはどうしようかなあ…。★★★★☆
読了日:01月24日 著者:ジェフリー フォード
変? (角川文庫)の感想
買い物依存症の中村うさぎが、依存症を脱出する糸口を見つけるために、13人の人たちと本音で対談。専門家の立場から話す人、依存症を回復した人の経験談等、どれも濃密。アルコール依存症も薬物依存も過食症も命がけの依存。精神科医の和田先生は「人間は依存しなけりゃ生きて行けない。だから、依存するコト自体は別にいいんですよ」という。いびつな依存をまともな依存にしていこうと。判断ポイントは2つ・自分の意志で辞められること・支払う代償が大きくないこと。少し心が楽になりましたか?★★★★☆
読了日:01月25日 著者:中村 うさぎ
落日燃ゆ (新潮文庫)の感想
東京裁判の結果、A級戦犯としてただ一人文官でありながら処刑された広田弘毅。日清・日露戦争後の国際情勢を見て、軍隊だけでは国際社会で勝ち残ることはできないと外交官を目指す。しかし時代はどんどんきな臭くなり、天皇のため・お国のためを振りかざす陸軍が、政府の言うことも参謀本部の言うことも天皇の言うことすら聞かずに独断専行することになります。「善き戦争はなく、悪しき平和というものもない。外交官として、政治家として、戦争そのものを防止すべきである」それができなかった自分を、彼は決して言い訳することなく、刑に臨んだ。★★★★★
読了日:01月27日 著者:城山 三郎
あんの青春 若葉の季 お勝手のあん (時代小説文庫)の感想
仲良しのお小夜が嫁ぎ、寂しくなるおやす。お小夜もおやすに会いたい。そこでおやすがお小夜に料理を教えることに。品川から日本橋まで月に1回、お小夜の夫の好みにあい、身体の健康も保てる料理を考えなければならない。その他にもお千代の妊娠、勘平の処遇など、次々事件が起こり、ちょっと詰め込み過ぎじゃないの?と思うけれども、先が気になりするすると読み進めることができる。幕末の、激動の時。誰もが先のわからない不安にかられている。そんななかで、料理の道一筋のおやすには、ぜひ女料理人として成功して欲しいと思う。★★★★☆
読了日:01月28日 著者:柴田よしき
熊と踊れ(上)(ハヤカワ・ミステリ文庫)の感想
実際の事件をモデルにした、父親の暴力で育てられた兄弟が起こした、などの事前情報を知り、読み始めるのがちょっと億劫だったけど、ページを開いたら一気呵成。確かに父親の暴力シーンは読んでいて辛かった。特に長男のレオは、暴力を抑えられない父を見て、自分は決して暴力に支配されることがないよう、律して生きてきた。その結果がどうして銀行強盗になるのかわからないよ。彼らを追うストックホルム市警のヨン。彼もまた暴力に支配された家庭で育って来たらしい。一番やらかしそうな仲間がやらかして、大事になったところで次巻に続く。★★★★☆
読了日:01月30日 著者:アンデシュ・ルースルンド,ステファン・トゥンベリ
読書メーター
7草粥の日に帰省した娘、まだいます。
ありがたいけど、読書以外の時間が増えてしまう。
さて、今月は★5つが2冊。
『大人にも子供にもおもしろい本』は、絵本や児童文学のブックガイドですが、良質の絵本や児童文学は大人が読んでも面白いし、ものによっては大人が日ごろ使わない回路を使った解釈が必要だったりと、脳トレにもいいかもしれない。
元々児童文学が好きなので、退職後、小さな文字が追いにくくなったら読もうと思っている作品がたくさんあります。
『落日燃ゆ』
この本は賛否両論あるようですが、私は面白かったです。
もちろん小説なので、事実と異なる部分もあるのでしょう。広田弘毅の評伝ではないのですから。
でも、名前くらいしか知らなかったこの人に強い興味がわきましたし、戦争を止めようとしても戦争へと流されてしまう、しかも明確な責任者がいないというあの時代を、臨場感を持って読むことができました。
最後にマンガですが『水鏡奇譚』
1月に読んだ本の中で、実は一番面白かった。
形としてはマンガですが、絵物語のような読み心地。
テンポがゆったりしているからでしょうか。
結構波瀾万丈だし、民衆の悲惨な生活を描いたりもしているのですが、主人公たちがくよくよしないからかなあ、庶民の強かさも感じられて。
哀れもあり、切なさもあり、愛しさもあり、よかったです。
2月もあっという間に過ぎていくのでしょうね。
そして気がついたらコロナも過去の話になっていればいいなあ。
1月の読書メーター
読んだ本の数:20
読んだページ数:5794
ナイス数:665

冬になると冬眠する人たちの、冬眠前の慌ただしい日を描いた『竈の秋』が一番長く、一番難解でした。多分論理で理解するのではなく、感覚で理解する話なのだと思いますが。現在進行形で語られながら、全てが古ぼけて見える。時系列も空間情報もあやふやになっていき、頭に浮かぶのはただ、青い闇。光を反射する青ではなく、光をのみ込む青。だけどそれは多分、一度終焉を迎えたのちに復活するのである。秋の枯れ葉に始まる春の目覚めのものがたり。美しく、儚く、たくましい。今年最初に読むにふさわしい一冊でした。★★★★☆
読了日:01月02日 著者:山尾 悠子

今回はシリアス路線で、しかも導入部だけ。ジオとダイヤが最も信頼しているタロットワークが、三つ子の一人オニキスとともに姿を消す。どうもタロットワークの一族の秘密にかかわる仕事、しかもオニキスに害を与えかねないようなことのために、誘拐したっぽい。似たようなこと、前もあったね。タロットワークは心からジオやダイヤたち一家のことを愛しているけれど、職務(任務)に忠実なので結局裏切るはめになってしまう。このパターンで話が続くのならしんどいな。しかしまだ導入部だと思うので、もう少し先を読んでから出来を判断しようと思う。★★★★☆
読了日:01月03日 著者:野梨原 花南

いよいよローマ帝国の終わりが見えてきた。国が衰えるというのは、能力のある人が排出されないのではなく、能力のある人を活かすシステムが作られないってことなんだと、ここ最近の巻を読んでいて思う。陰りを見せ始めても、能力のある皇帝は何人か出てきている。けれどそれを実務としてこなす人がいないとか、皇帝の意思が反映されないシステムとか。キリスト教の悪影響もあるけれど、ローマ市民の公共心の欠如が、結局彼らの首を絞めてしまったように思える。ローマ人として生きた最後の男、スティリコ。生まれた時代が悪かったなあ。合掌。★★★★☆
読了日:01月04日 著者:塩野 七生

深夜のファミレスで本を読む若い女性・マリ。彼女に声をかけ、ちゃっかり相席する男・高橋。ふたりは二年前にマリの姉エリとその当時の彼の4人で、一度だけホテルのプールでダブルデート(もどき)をした。深い眠りについているマリの姉のエリ。ラブホテルで事件を起こしたまま姿を消したサラリーマンの白川。エリの部分がまず不穏。寝ている彼女をじっと見つめる男の姿が描写されるが、顔は見えない。また、白川の暴力もなぜそこまで…は書かれていない。いろんなことが語られないままの不安定なバランス。あくまでも夜の時間のお話。★★★★☆
読了日:01月06日 著者:村上 春樹
![キャリアデザイン入門[I]基礎力編 第2版 (日経文庫)](https://m.media-amazon.com/images/I/41rlwwgJ7IL._SL75_.jpg)
若い頃にこういう本を読んで、意識高く仕事をしていたら出世したんでしょうか。いや、読むだけではだめだね。実践しないと。でも、著者は、出世を目指すことがキャリアデザインではないのだと言います。仕事に費やした時間をポジティブに受け入れられたら、キャリア成功なのだそう。”基礎力は対人能力――「親和力」「協働力」「統率力」、対自己能力――「感情制御力」「自信創出力」「行動持続力」、対課題能力――「課題発見力」「計画立案力」「実践力」を中心として、処理力・思考力を加えたものである。”さて、私の基礎力はいかばかりか。★★★★☆
読了日:01月07日 著者:大久保 幸夫

自分が子どものころ読んだ本よりも、子どもたちと読んだ本が懐かしくて、しみじみ。良質な子どもの本って、子どもに媚びないし、ご都合主義もないから、大人が読んだってちゃんとおもしろいのよ。昔からずっと読みたいと思っていた『スイスのロビンソン』の外に、『新・ロビンソン・クルーソー』の紹介もあって、これはぜひ読みたいと思った。『冒険者たち』のシリーズも絶対読む。アーサー王伝説も学生時代からの宿題なんだよなあ。年を取って小さな字が読みにくくなっても、絵本や児童文学なら大丈夫。老後の楽しみに最適ですね。★★★★★
読了日:01月09日 著者:向井 元子

あんの青春と言っても、現在の若い子のような甘酸っぱいものではなく、大人になる前の時期ってことです。おやすの親友お小夜は、親の勧める人と結婚しなければならない。お小夜は蘭方医になりたいと思っている。大人になるということは、子ども時代の夢を諦めないとならないということなのか。おやすも、自分の将来について考える。いつまでも「紅屋」で働いていたいと思いつつ、料理で身を立てられたら、とも思う。江戸時代の青春って、そういう年ごろ。★★★★☆
読了日:01月10日 著者:柴田よしき

歴史が好きなので、改編歴史ものは好きなのですが、この作品に関して言えば、面白かったけれど名作というほどではなかったと思いました。プロットはいいのです。この路線でしっかりとストーリーをまとめれば、読者の胸を打つ感動的な作品になったろうと思います。ただ、作者の考える日本的というのと、日本人読者の考える日本的というのにずれがあることを踏まえたうえで、作者はロボット戦闘ものが書きたかったんだね、と思うしかありません。でも、エンタメとして面白く読みました。★★★★☆
読了日:01月12日 著者:ピーター トライアス

私は著者と対話するように読むので、格闘はしないかな。この本では著者と読者の闘いだけではなく、同テーマで視点の異なる作品を闘わせます。例えばRound 8のテーマ『未来』。フランシス・ベーコンの『ニュー・アトランティス』とジョージ・オーウェルの『一九八四年』。ユートピア小説とディストピア小説。対戦する2冊以外にもテーマに沿った本が紹介されていて、読みたい本が増える一方。しかし、待て。私にそれらの本を読む力があるのか?体力があるのか?だけど『韓非子』とか『君主論』とか、すごく気になるじゃない?★★★★☆
読了日:01月13日 著者:瀧本 哲史

認知症の親は、どのような世界に今いるのだろうと思い読んでみました。字が大きくイラストも多めですが、『(認知症)世界の歩き方』という設定よりも、個別に書かれた行動の意味や生活シーン別の困りごと索引が役に立ったと個人的には思います。軽度の認知症と長らく付き合っている人の言葉が主なので、この本では物足りない人も多いと思いますが、初心者にはいいと思います。「なんでそんなことするの!」と思うような行動にも意味があることを、わかりやすく書いてあるので。私の勉強不足で母を十分理解できなかったと反省しました。★★★★☆
読了日:01月14日 著者:筧 裕介

鎌倉時代は、ちょっと隙を見せるとすぐに謀反人扱いされ、寄ってたかったボコられる。戦に勝たないと領地が増えないから争う。子どもに土地を分割して遺さなければならないから、年代を経るほどに土地は減る。長男総取り制を敷いた家康のおかげで江戸時代は平和でいられたのだろうな。そうそう、ちょっと隙を見せるとよってたかってボコられるって、今の時代みたいだ。それで三谷幸喜はあえてこの時代を舞台にしたのかなと深読みしてみたり。閑話休題。7つの作品中、既読は最後の『八幡宮雪の石階』のみ。実朝の哀しみと諦念が切ない。★★★★☆
読了日:01月16日 著者:安部 龍太郎,谷津 矢車,秋山 香乃,滝口 康彦,吉川 永青,髙橋 直樹,矢野 隆

妖と人間の話が6編。シリーズ物も単発のものもあり。親に折檻されて死んだお文の影だったり、自身の命を救うために我が子の命を差し出そうとする父親だったり、道端に捨てられた子どもの亡骸だったり、子どもがひどい目に遭う話が多くて、妖も怖いのだけど、人間の方が怖い気がしてしょうがない。★★★★☆
読了日:01月17日 著者:宮部みゆき

ちょーシリーズ、いろいろタイトルがありますが、今回はストレートに『ちょー海賊』。でも、なかなか前回のあらすじを思い出せない。ライトノベルってするする読めるんだけど、するする忘れていくんだよね。バーナード嬢、曰く「忘我の果てに 私は川になったよ」よくない読書ですねー。多分次の巻を読んだらまた、あらすじをすっかり忘れているんだろうなあ。だって全然ひっかからないんだもの。★★★☆☆
読了日:01月18日 著者:野梨原 花南

遂に西ローマ帝国が滅亡の時を迎えます。自身が先頭に立って国を治めるどころか、才能ある人材すら使いこなすことができないまま、蛮族におびえ、自分の安寧だけを切に願った皇帝ホノリウス。またまた短期政権の乱立時代が始まる。東ローマ帝国は、蛮族との緩衝材としての西ローマ帝国の存在を必要としていたので、ついに手を差し伸べる。西ローマ帝国の皇帝を派遣し、ともに蛮族に立ち向かおう。と。しかし蛮族の方が一枚上手で、蛮族に帝位を廃された後、さらなる皇帝を立てることもできず、そっと滅亡していった。諸行無常。★★★★☆
読了日:01月19日 著者:塩野 七生

親に捨てられ狼に育てられた青年・ワタルと、記憶と魂を失った少女・鏡子の旅。途中いろんな妖と出会い、それがワタルを成長させていくので、冒険ものとも、成長譚とも、バディ物とも読めるが、展開の早いエンタメではなく、じんわりじわじわ沁みてくる。人のもつ業に何度も苦しませられながら、それでも立派な人間になりたいと修行を続けるワタル。鏡子の思いに気づき、離れがたくなる前に早く家に帰してやらなくてはと思う彼の涙は、鏡子の魂と同じくらい美しい。
読了日:01月23日 著者:近藤 ようこ

独裁者が支配する理想形態都市から、奇跡の白い果実盗難の犯人を捕まえるため観相官クレイが属領であるアナマソビアへ着いた時から物語がはじまる。しかし魔法と薬が見せる幻想と宗教と旅人のミイラとが織りなす世界は、何が真実で何が虚構なのかわからない。この本は金原瑞人と谷垣睦美が訳してから、山尾悠子が彼女の文体に書き直したのだそうだ。グロテスクな描写も多かったけれど、ファンタジーの皮を被ったディストピア小説。これ、三部作らしいけど、続きはどうしようかなあ…。★★★★☆
読了日:01月24日 著者:ジェフリー フォード

買い物依存症の中村うさぎが、依存症を脱出する糸口を見つけるために、13人の人たちと本音で対談。専門家の立場から話す人、依存症を回復した人の経験談等、どれも濃密。アルコール依存症も薬物依存も過食症も命がけの依存。精神科医の和田先生は「人間は依存しなけりゃ生きて行けない。だから、依存するコト自体は別にいいんですよ」という。いびつな依存をまともな依存にしていこうと。判断ポイントは2つ・自分の意志で辞められること・支払う代償が大きくないこと。少し心が楽になりましたか?★★★★☆
読了日:01月25日 著者:中村 うさぎ

東京裁判の結果、A級戦犯としてただ一人文官でありながら処刑された広田弘毅。日清・日露戦争後の国際情勢を見て、軍隊だけでは国際社会で勝ち残ることはできないと外交官を目指す。しかし時代はどんどんきな臭くなり、天皇のため・お国のためを振りかざす陸軍が、政府の言うことも参謀本部の言うことも天皇の言うことすら聞かずに独断専行することになります。「善き戦争はなく、悪しき平和というものもない。外交官として、政治家として、戦争そのものを防止すべきである」それができなかった自分を、彼は決して言い訳することなく、刑に臨んだ。★★★★★
読了日:01月27日 著者:城山 三郎

仲良しのお小夜が嫁ぎ、寂しくなるおやす。お小夜もおやすに会いたい。そこでおやすがお小夜に料理を教えることに。品川から日本橋まで月に1回、お小夜の夫の好みにあい、身体の健康も保てる料理を考えなければならない。その他にもお千代の妊娠、勘平の処遇など、次々事件が起こり、ちょっと詰め込み過ぎじゃないの?と思うけれども、先が気になりするすると読み進めることができる。幕末の、激動の時。誰もが先のわからない不安にかられている。そんななかで、料理の道一筋のおやすには、ぜひ女料理人として成功して欲しいと思う。★★★★☆
読了日:01月28日 著者:柴田よしき

実際の事件をモデルにした、父親の暴力で育てられた兄弟が起こした、などの事前情報を知り、読み始めるのがちょっと億劫だったけど、ページを開いたら一気呵成。確かに父親の暴力シーンは読んでいて辛かった。特に長男のレオは、暴力を抑えられない父を見て、自分は決して暴力に支配されることがないよう、律して生きてきた。その結果がどうして銀行強盗になるのかわからないよ。彼らを追うストックホルム市警のヨン。彼もまた暴力に支配された家庭で育って来たらしい。一番やらかしそうな仲間がやらかして、大事になったところで次巻に続く。★★★★☆
読了日:01月30日 著者:アンデシュ・ルースルンド,ステファン・トゥンベリ
読書メーター