お盆過ぎから少し忙しさが和らいできたので、少し読書も進みました。
でも、マンガじゃない本を月に20冊というのは、まだ越えられない壁です。
9月はテレワークが増えることによって通勤時間と昼休みがなくなるので、どうやって読書時間を捻出するかがポイント。
祝日も多いので、家庭サービスとの兼ね合いも難しい。
さて、★5つは1冊。
浅田次郎の『一路』。
これは面白かったですねえ。
勧善懲悪が分かりやすく、読んでいてすっきりする。
主人公もいいのだけど、お殿様のとぼけた味わいがすごく好き。
8月の読書メーター
読んだ本の数:28
読んだページ数:7780
ナイス数:775
ローマ人の物語 (31) 終わりの始まり(下) (新潮文庫)の感想
つくづく思うのが、当たり前のようにローマ帝国の礎を築いたカエサルとアウグストゥスはすごかったな、ということ。というのも彼らは、権力を持つ者こそが自己を抑えなければならないことを熟知していたから。ペルティナクスはそれができたかもしれないが、その後に乱立した皇帝候補たちは、多分その覚悟を持っていなかった。皇帝として何をなすべきか、ではなく、自分のために何をしようか、が強かったのではないか。歴史に「もし」はないけれど、ペルティナクスが統治していたら、ローマ帝国はもう少し長く続いたのかもしれない。★★★★☆
読了日:08月03日 著者:塩野 七生
流転の海 第5部 花の回廊 (新潮文庫)の感想
富山での生活に見切りをつけ、大阪に戻ってきた熊吾一家。しかし、信頼していた部下に金を持ち逃げされた事実は、熊吾の信頼までも失うことになり、夫婦は水道も電気も通っていない空きビルに暮らし、伸仁は熊吾の妹の家で両親と離れて暮らすことになった。この、伸仁が暮らす蘭月ビルという2階建ての集合住宅が、今回のメイン舞台と言っていい。伸仁は、小さなころから町の大人たちの中でうまく立ち回ることができる。それは人をよく見ているから、なのだろうか。伸仁が生き生きと描かれているので、シリーズの中では一番好きかも。★★★★☆
読了日:08月06日 著者:宮本 輝
とりぱん(19) (ワイドKC)の感想
札幌市の図書館にある「とりぱん」はこれで最後。ちょっとしんみりとページを捲ったら、なんとなん子さん、熊と遭遇してるじゃないですか!子熊が木に登る(樹上に避難させられている)というのは、近くに母熊がいるってことなんですってよ、奥さん。母熊に会うことなく逃げられて、本当によかったです。我が家の場合は子熊が車の前に飛び出してきたからなあ。ヒグマだったし、本当に怖かったです。「とりぱん」なのに、最後ぜんぶ熊に持ってかれたわ。
読了日:08月07日 著者:とりの なん子
7SEEDS (11) (フラワーコミックスアルファ)の感想
夏Aチームのサバイバルも辛かったけど、シェルター編は全滅することを知りながら読むことになるので、彼らが生きることに必死で、でも誠実で、真実を知りながらも最後まで人々の希望たろうとしたところで涙腺決壊。貴士が選んだ「その道のプロ」たちは、若くてもみんなプロだった。貴士にはあるべきシェルターの姿が明確にイメージできていたから選べたんだろうけど、それにしても人を見る目の確かさハンパな!
読了日:08月08日 著者:田村 由美
7SEEDS (12) (フラワーコミックスアルファ)の感想
シェルターが崩落する前にかろうじて脱出できた花たち。そこに現われたのは、完全武装した夏Aチーム。汚染されたかもしれないお蘭をうつ安居。お蘭をかばって撃たれる十六夜。棄権に際して初めて本来の姿を取り戻した秋チーム。しかし私もお蘭さん汚染されてるんじゃ?とちょっと心配。ナツたちは船で仲間たちの待つ九州を目指すが、途中でひとりの少女を拾う。そして神戸で樹液にからめとられた仲間たちを救う。ナツの嵐への想いは、恋というよりも、何かにすがらないと崩れそうな自分を支えてくれる存在なのでは?という気もしてきた。
読了日:08月08日 著者:田村 由美
追憶のかけら (文春文庫)の感想
主人公・松嶋は3ヶ月前に妻を交通事故で失くした大学講師。夫婦喧嘩の果て、子どもを連れて実家に帰った時の事故のため、義理の両親との仲も上手くいかなくなり、子どもも取り上げられ、失意のまま日々を過ごしている。そんな時、短編を数編発表しただけで自殺した作家の手記が手に入る。これをもとに論文を書き、世に認められたら娘と暮らせるようになるかもしれない。ところが手記には謎が残され…。複雑に絡まる謎。多数の登場人物。しかし文章はすこぶる読みやすくわかりやすい。多少詰めが甘いけど、面白かったです。★★★★☆
読了日:08月08日 著者:貫井 徳郎
ラッキーマンの感想
著者はスターだったときの自分をラッキーマンと言っているわけではなく、不治の病を得た自分をラッキーマンという。落ち着きがなく人と同じことをするのが苦手な彼を最後まで信じてくれていた祖母。著者と真逆の生き方をしてきたのに、最後は息子の生き方を認めてくれた父。そして、アルコールに溺れ、自分と向き合うことから逃げ続けた著者を、最後まで見すてずに支えていた妻・トレイシー。女優として舞台に立ちながらも子育てと夫育てを両立させたトレイシーには頭が下がる。私なら夫が調子に乗って酒びたりになろうものならすぐ見捨てるが。★★★★☆
読了日:08月10日 著者:マイケル・J・フォックス
国を救った数学少女の感想
前作の『窓から逃げた100歳老人』よりは楽しく読めた。理由は、死者をポイ捨てするような描写がなかったから。面白くはあったんだけど、不満もある。国を救った…の国はどこのこと?最初は南アフリカのことかと思ったんだけど、最終的にはスウェーデンのこと?と思ったり。そして、割と早めに主人公のノンベコは少女よりも大人になっていた。本屋大賞の翻訳部門にノミネートされていたから読んだけど、彼の作品はもういいかな。面白く読んだけど、残るものは特にない。もっとずっしりと読みごたえのある本を読みたいのだ、私は。★★★★☆
読了日:08月13日 著者:ヨナス ヨナソン
一路(下)の感想
突然父を亡くしたことにより、家業の『参勤交代の供頭』をすることになった一路。失敗するとお家取りつぶしになるかもしれないというプレッシャーと戦いながら、無事に参勤交代を終えられるように奮闘する。殿様はうつけ者と名高い蒔坂左京太夫。殿さまの意を汲み、しかし失敗は許されない、綱渡りの毎日。しかし読み進むにつれ、殿さまはうつけ者などではないのでは?と思えてくる。図書館の休館で上巻との間に2ヶ月ほど空いてしまったのが本当に惜しい。一気呵成に読み終えて、いろいろなもやもやをすっきりさせたかった。★★★★★
読了日:08月14日 著者:浅田 次郎
香菜里屋を知っていますか (講談社文庫)の感想
やっちまった!北森鴻の作品3シリーズを読もうと思ってリストに入れていたのだけれど、そのうちの一つ「香菜里屋」がタイトルに入っていたので、まずこれから読もうと思って手にしたら、なんとこれが最終巻だった。実はシリーズ最初の『花の下にて春死なむ』は読んでいたので、どこから読んでも問題なかった筈なんだけど、実際は問題ありありだった。まず、のっけから常連さんのいつもの会話に入って行けない。人物の背景がわからないので、探り探り読む。これはもう一度、ちゃんと順番通りに読むしかない。だって北森鴻、絶対面白いはずだから。★★★★☆
読了日:08月15日 著者:北森 鴻
漢方小説の感想
体内を検査して、異常を数値化することで病気の症状をなきものにするのが西洋医学なら、本人の体質や精神的な傾向を考慮したうえで全体的なバランスをとることで症状を出ないようにするのが東洋医学。主人公は元カレの結婚話を聞いた時から症状が出始めた。心身のバランスを欠いたと言えば簡単だが、病院で検査しても「異常なし」と言われるだけ。子どものころお世話になった東洋医学の病院で治療しつつ、親しい友達との関係や仕事を通して自分の心の歪みというか、考え方の癖、傾向に思い至る。単純に恋愛に逃げないところが良い。★★★★☆
読了日:08月16日 著者:中島 たい子
日記をのぞくの感想
この本、読んだことがあると思っていたのですが、記録を探しても読んだ形跡がない。なぜこの本を読んだと思ったかというと、清沢洌をこの本で知ったのではないかと思ったから。この本じゃないとしたら、何で清沢洌を知ったんだろう?とりあえず松岡正剛の本で清沢洌について予習したので、いつか必ず「暗黒日記」を読もう。坂口三千代の「クラクラ日記」も読みたい。日本人と日本語で口論できるほどのアーネスト・サトウ(日本名:薩道愛之助)の日記も、ルイス・フロイスの「日本史」も読みたい本リストに入れてある。鳥井耀蔵は、評伝で読みたい。★★★★☆
読了日:08月17日 著者:
ローマ人の物語〈32〉迷走する帝国〈上〉 (新潮文庫 し 12-82)の感想
73年間に22人もの皇帝。これはさすがにひどすぎる。そして、もちろんそのほとんどが謀殺。ローマ帝国、世も末です。この時代の残念なところは、皇帝の資質がないものが帝位についた例が多かったこと。そして、たまに資質のあるものが帝位についても、時代が許さないというか、兵士に殺されてしまって長くは統治できなかったこと。それは、元老院の力が形骸化していたせいでもあると思う。しかし、既に皇帝の権威も元老院の権威も地に落ちて、あるのは直接武器にものを言わせる兵士たちだけってことか。★★★★☆
読了日:08月19日 著者:塩野 七生
流転の海 第6部 慈雨の音 (新潮文庫)の感想
この巻では松坂家の周囲で何人もの人が亡くなった。また、蘭月ビルで伸仁と仲良くしていた敏夫と光子の兄妹が、母の再婚相手と一緒に北朝鮮へ行くことになった。幾つもの別れがあったせいか、全体的に『静』な印象が強い。どうも熊吾の健康状態が、この先良くなる気がしない。伸仁が成人するまで、なんとしてでも生きるのではなかったのか?なぜ不摂生な生活をつづけるのか。逆に伸仁は、高価なビタミン注射のおかげですっかり健康体となり、反抗期に突入。松坂家は、静かに崩壊…家族がバラバラな方向に向かっていきそうで、次の巻がちょっと怖い。★★★★☆
読了日:08月21日 著者:宮本 輝
ミステリと言う勿れ (9) (フラワーコミックスアルファ)の感想
双子を見分けろ問題、了。これは今ひとつだった。違うマンガで似た設定のものを読んだというのもあるけれど、根本的な問題を先送りしたつけが子どもに行ってしまったというのがよろしくない。また、諸悪の根源が安っぽい。頭悪いし、行き当たりばったりだし。唐突に我路くんが出てきたのは、星座のシリーズに繋がっているよという伏線だと思うが、ただの大学生の周辺に起こるミステリの方が面白い気がして、あまり風呂敷を広げてほしくない。そして青砥刑事の娘誘拐事件。過去の繫がりがずるずる出てきそうで、嫌な予感しかしない。
読了日:08月22日 著者:田村 由美
7SEEDS (13) (フラワーコミックスアルファ)の感想
夏Aの保険として急遽つくられた、落ちこぼれ集団の夏B 。とは言え、その効果を一番信じていなかったから要は夏Bに入ったんだな。行き当たりばったりでも生き延びてきた彼らを見て、初めて「それでいいのか…」と気づけたのだろう。たいしてサバイバルの練達者集団である夏Aは助け合うが支え合わない。実は安居が一番みんなに支えられていると思うけど。偶然助けた桃太で人体実験をするあゆ。それを知っても止めない鷭ちゃんもまた、心を病んでいる。反目し合う花と安居。だけど、ハルと小瑠璃がふたつのチームの橋渡しになるのかな。
読了日:08月22日 著者:田村 由美
7SEEDS (14) (フラワーコミックスアルファ)の感想
選ばれたものとしてのプライドが高かった夏A。しかし徐々にそのプライドが揺るがされる。プロジェクトの最初に冷凍されたため最新の知識を知らないこと。技術は一流でも精神は17歳のあの日で止まったままの彼らは、自分たちの上に人がいるということを受け入れられない。不安や苛立ちを子どもの桃太にぶつけるくらい、精神が子どもだから。それを「温室育ち」と切って捨てる秋ヲ。自分で選択したことの結果を自分で受ける不安。パンピーをなめるなよ、と。くるみやハルのように一見弱く見える人の心の健康さよ。精神の柔軟さが強さでもある。
読了日:08月22日 著者:田村 由美
アジアンタムブルー (角川文庫)の感想
一番苦手だ。慟哭の恋愛小説。一人称の男性が過去を語る形式の恋愛小説は、間違いなくこれだ。この作者の『聖の青春』や『将棋の子』は好きでしたし、感動もしましたが、この作品はちょっと…。主人公の人生に登場する人が、みんなドラマチックなのよね。だから逆に私の気持がフラットのまま終わってしまいました。★★★★★
読了日:08月22日 著者:大崎 善生
学力は家庭で伸びる―今すぐ親ができること41の感想
100ます計算ドリルで有名になった陰山英男の著作。子どもが大人になり孫のいない私がなぜ読むかというと、自分のため。なんとかあまり苦労せず賢くなりたいと思っているのである。しかし読んでみたら、自分の子育てを顧みることばかりでした。一番大事な事は子どもの様子をよく見ていること。目配りをしても口出しや手出しをしないこと。あとは、親が背中を見せること。(読書習慣とか辞書を引くこととか)家族でよく会話すること。聞き上手な親は、質問上手な子どもに育つそうです。で、私はどうやったら賢くなるんだろう???★★★★☆
読了日:08月23日 著者:陰山 英男
約束 (角川文庫)の感想
どの短編も誰かとの約束がテーマになっている。事故や病気で亡くなった人との約束だったり、けがや病気で歩くにも事欠くような人との約束だったり。つまり、下手な人が書けばベタなお涙ちょうだいになるものばかり。ところが悔しいことに石田衣良は上手いんだな。池田小事件のニュースを見て、理不尽にも巻き込まれた被害者たちが、苦しみから立ち上がり人生に帰ってくるために何事かを救い出すことができればと書かれた『約束』は、設定を読むだけでも胸がふさがるほどの苦しみが押し寄せてくる。ベタなんだけど、ベタなのに…くそぉ、石田衣良め!★★★★☆
読了日:08月24日 著者:石田 衣良
ハリネズミの願いの感想
以前読んだ同じ作者の『きげんのいいリス』よりも読みやすかったんだけど、どうも世間の評価は逆みたい。自分に自信がなくて、臆病で、でも自意識が過剰で、気難しくて孤独なハリネズミが、誰かを家に招待しようと考える、というだけの話。 おもてなしできる自信がない…というよりも、おもてなしの失敗を指摘されるのが怖い。自分のいないところでみんながその話をしていたら…と考えると、身動きが取れなくなる。身に覚えがありすぎて笑える。煩わしい人間関係はめんどくさくていやだ。でも一人だけで生きていくだけの覚悟もない。これは私か?★★★★☆
読了日:08月25日 著者:トーン テレヘン
妖怪アパートの幽雅な日常 4 (講談社文庫)の感想
しばらく間が空いたので、このテンションの高い世界に戻るのに時間がかかった。今回は大きな流れが3つ。1.魔道士としてのレベルを上げるため、修行もレベルアップされた話2.バイト先の新人たちがコミュニケーション不全な話3.自殺未遂の小学生を説得した話。このうち2と3については、自分の知っている狭い世界の外に出て行けない若者(小学生も含む)に、夕士がコミュニケーションの大切さを教える。夕士の成長が、魔導士としての成長と重なった時、ちょっとすごいことが起きる。まあ、あんまり人外に寄っていかないでね、とも思いますが。★★★★☆
読了日:08月26日 著者:香月 日輪
田村はまだか (光文社文庫)の感想
すすきのの片隅にあるバーで、クラス会に間に合わなかった同級生「田村」を待つ男女五人。小学校時代の田村は決して人気者ではなかった。貧乏で、男にだらしない母と二人暮らしの彼は、小学生にして既に孤高の存在としてクラスメイトに認識されていた。「孤高の小学生」っていうのが、まず、いいじゃないですか。彼の家庭環境は、傍から見ればかわいそうだが、本人はただそっとそこに存在していた。伏し目がちではあるけれど、しっかりとそこに。最後のエピソードは、別になくてもよかったかな。最後の「おまえ、井上鏡子だろう」は切なすぎるなあ。★★★★☆
読了日:08月27日 著者:朝倉 かすみ
ポーの一族 (1) (小学館文庫 はA 11)の感想
それまで吸血鬼って怖い存在だったのに。時間の流れの中で、何者になることもできない人生。限られた人間関係のなかだけで、永遠にも思える時間を過ごさなければならない孤独。長いときを超えてもエドガーの心は少年だ。友達が欲しい。寂しい。そのエドガーの切実な思いが彼から全てを喪わせてしまう。いやしかし、すべてがエドガーのせいか?無謀にも医者に手を出す計画そのものに、破滅の種はあったのだろう。小学生の時に読んで、熱が出そうに衝撃を受けたが、大人になって読んだらより深く感じることができる。名作中の名作。
読了日:08月28日 著者:萩尾 望都
服従の感想
フランスの、ヨーロッパの、いや世界的な政治の流れについてほとんど何も知らないし、フランス文学についても、教育制度についても、イスラム教の社会制度についても知らないことがほとんどなので、理解できたとは言えないが、読みやすくはあった。こういう本にしては不思議なほど文章が上滑りしていくことはなかった。2022年、フランスの大統領にイスラム政党の党首が選ばれ、フランスの国が徐々にイスラム化していく。徐々に変わっていく社会は妙にリアルで、慣れてしまえばそれもありだと思わせるところが怖いところである。★★★★☆
読了日:08月28日 著者:ミシェル ウエルベック
7SEEDS(セブンシーズ) 15 (フラワーコミックスアルファ)の感想
夏Aの憎む貴士先生が花の父だった。それはシェルターで人を間引いていた貴士さんでもあったことが皆に知れる。ほかのメンバーとの距離を感じる花。けれど夏A以外の皆は両親の死を知った花を思いやっていただけだった。絆は途切れない。イライラのつのる安居は花をレイプ(未遂)する。安居は夏Aの中で一番メンタルが弱い。けれど安居のリーダーシップに期待した教師たちによる介入が、今の安吾の不安定の元だと思う。何しろ最終訓練が開けてから体感的には数ヵ月しか経っていないのだ。一見弱い小瑠璃や鷭ちゃんや源五郎君の方が精神的に健康だ。
読了日:08月29日 著者:田村 由美
7SEEDS(セブンシーズ) 16 (フラワーコミックスアルファ)の感想
傲慢にみえる態度の裏で安吾は弱い自分を認めることができずに葛藤していた。弱い自分を認めること、そして誰でも弱い部分があって当たり前なことが分かれば安吾は救われると思う。他の夏Aメンバーたちも、自分達だけで行動していたらトラウマを克服することはできないのだと思う。新たな人たちと新たな関係を結ぶことで癒されていく夏Aたちの中で、安居と涼だけが変われずにいる。あゆの言う「汚い、愚かなもの」。過去に置いてきたはずの。一歩を踏み外してしまった二人は、追放され、夏Bと出会う。
読了日:08月29日 著者:田村 由美
ローマ人の物語〈33〉迷走する帝国〈中〉 (新潮文庫 (し-12-83))の感想
この一冊だけでいったい何人の皇帝が現れ消えていったのだろう。たった30年ばかりの間に。一年に何度も皇帝が代わるどころか同時に数人の皇帝が存在する時代。それは、兵士たちが皇帝を担ぎ上げては「こんなんじゃない」と首を挿げ替えることが定例化してきたのが大きい。一体理想の皇帝ってのが本当にいると思っとるのか?そんな帝国の状況を見過ごすほど敵は甘くないのである。一時的な危機が去ると今度は皇帝同士の内戦だ。なんか、国が滅びていくときって、何をやっても裏目に出るのね。読んでいてうんざりしてきました。頑張れ、俺。★★★★☆
読了日:08月30日 著者:塩野 七生
読書メーター
でも、マンガじゃない本を月に20冊というのは、まだ越えられない壁です。
9月はテレワークが増えることによって通勤時間と昼休みがなくなるので、どうやって読書時間を捻出するかがポイント。
祝日も多いので、家庭サービスとの兼ね合いも難しい。
さて、★5つは1冊。
浅田次郎の『一路』。
これは面白かったですねえ。
勧善懲悪が分かりやすく、読んでいてすっきりする。
主人公もいいのだけど、お殿様のとぼけた味わいがすごく好き。
8月の読書メーター
読んだ本の数:28
読んだページ数:7780
ナイス数:775

つくづく思うのが、当たり前のようにローマ帝国の礎を築いたカエサルとアウグストゥスはすごかったな、ということ。というのも彼らは、権力を持つ者こそが自己を抑えなければならないことを熟知していたから。ペルティナクスはそれができたかもしれないが、その後に乱立した皇帝候補たちは、多分その覚悟を持っていなかった。皇帝として何をなすべきか、ではなく、自分のために何をしようか、が強かったのではないか。歴史に「もし」はないけれど、ペルティナクスが統治していたら、ローマ帝国はもう少し長く続いたのかもしれない。★★★★☆
読了日:08月03日 著者:塩野 七生

富山での生活に見切りをつけ、大阪に戻ってきた熊吾一家。しかし、信頼していた部下に金を持ち逃げされた事実は、熊吾の信頼までも失うことになり、夫婦は水道も電気も通っていない空きビルに暮らし、伸仁は熊吾の妹の家で両親と離れて暮らすことになった。この、伸仁が暮らす蘭月ビルという2階建ての集合住宅が、今回のメイン舞台と言っていい。伸仁は、小さなころから町の大人たちの中でうまく立ち回ることができる。それは人をよく見ているから、なのだろうか。伸仁が生き生きと描かれているので、シリーズの中では一番好きかも。★★★★☆
読了日:08月06日 著者:宮本 輝

札幌市の図書館にある「とりぱん」はこれで最後。ちょっとしんみりとページを捲ったら、なんとなん子さん、熊と遭遇してるじゃないですか!子熊が木に登る(樹上に避難させられている)というのは、近くに母熊がいるってことなんですってよ、奥さん。母熊に会うことなく逃げられて、本当によかったです。我が家の場合は子熊が車の前に飛び出してきたからなあ。ヒグマだったし、本当に怖かったです。「とりぱん」なのに、最後ぜんぶ熊に持ってかれたわ。
読了日:08月07日 著者:とりの なん子

夏Aチームのサバイバルも辛かったけど、シェルター編は全滅することを知りながら読むことになるので、彼らが生きることに必死で、でも誠実で、真実を知りながらも最後まで人々の希望たろうとしたところで涙腺決壊。貴士が選んだ「その道のプロ」たちは、若くてもみんなプロだった。貴士にはあるべきシェルターの姿が明確にイメージできていたから選べたんだろうけど、それにしても人を見る目の確かさハンパな!
読了日:08月08日 著者:田村 由美

シェルターが崩落する前にかろうじて脱出できた花たち。そこに現われたのは、完全武装した夏Aチーム。汚染されたかもしれないお蘭をうつ安居。お蘭をかばって撃たれる十六夜。棄権に際して初めて本来の姿を取り戻した秋チーム。しかし私もお蘭さん汚染されてるんじゃ?とちょっと心配。ナツたちは船で仲間たちの待つ九州を目指すが、途中でひとりの少女を拾う。そして神戸で樹液にからめとられた仲間たちを救う。ナツの嵐への想いは、恋というよりも、何かにすがらないと崩れそうな自分を支えてくれる存在なのでは?という気もしてきた。
読了日:08月08日 著者:田村 由美

主人公・松嶋は3ヶ月前に妻を交通事故で失くした大学講師。夫婦喧嘩の果て、子どもを連れて実家に帰った時の事故のため、義理の両親との仲も上手くいかなくなり、子どもも取り上げられ、失意のまま日々を過ごしている。そんな時、短編を数編発表しただけで自殺した作家の手記が手に入る。これをもとに論文を書き、世に認められたら娘と暮らせるようになるかもしれない。ところが手記には謎が残され…。複雑に絡まる謎。多数の登場人物。しかし文章はすこぶる読みやすくわかりやすい。多少詰めが甘いけど、面白かったです。★★★★☆
読了日:08月08日 著者:貫井 徳郎

著者はスターだったときの自分をラッキーマンと言っているわけではなく、不治の病を得た自分をラッキーマンという。落ち着きがなく人と同じことをするのが苦手な彼を最後まで信じてくれていた祖母。著者と真逆の生き方をしてきたのに、最後は息子の生き方を認めてくれた父。そして、アルコールに溺れ、自分と向き合うことから逃げ続けた著者を、最後まで見すてずに支えていた妻・トレイシー。女優として舞台に立ちながらも子育てと夫育てを両立させたトレイシーには頭が下がる。私なら夫が調子に乗って酒びたりになろうものならすぐ見捨てるが。★★★★☆
読了日:08月10日 著者:マイケル・J・フォックス

前作の『窓から逃げた100歳老人』よりは楽しく読めた。理由は、死者をポイ捨てするような描写がなかったから。面白くはあったんだけど、不満もある。国を救った…の国はどこのこと?最初は南アフリカのことかと思ったんだけど、最終的にはスウェーデンのこと?と思ったり。そして、割と早めに主人公のノンベコは少女よりも大人になっていた。本屋大賞の翻訳部門にノミネートされていたから読んだけど、彼の作品はもういいかな。面白く読んだけど、残るものは特にない。もっとずっしりと読みごたえのある本を読みたいのだ、私は。★★★★☆
読了日:08月13日 著者:ヨナス ヨナソン

突然父を亡くしたことにより、家業の『参勤交代の供頭』をすることになった一路。失敗するとお家取りつぶしになるかもしれないというプレッシャーと戦いながら、無事に参勤交代を終えられるように奮闘する。殿様はうつけ者と名高い蒔坂左京太夫。殿さまの意を汲み、しかし失敗は許されない、綱渡りの毎日。しかし読み進むにつれ、殿さまはうつけ者などではないのでは?と思えてくる。図書館の休館で上巻との間に2ヶ月ほど空いてしまったのが本当に惜しい。一気呵成に読み終えて、いろいろなもやもやをすっきりさせたかった。★★★★★
読了日:08月14日 著者:浅田 次郎

やっちまった!北森鴻の作品3シリーズを読もうと思ってリストに入れていたのだけれど、そのうちの一つ「香菜里屋」がタイトルに入っていたので、まずこれから読もうと思って手にしたら、なんとこれが最終巻だった。実はシリーズ最初の『花の下にて春死なむ』は読んでいたので、どこから読んでも問題なかった筈なんだけど、実際は問題ありありだった。まず、のっけから常連さんのいつもの会話に入って行けない。人物の背景がわからないので、探り探り読む。これはもう一度、ちゃんと順番通りに読むしかない。だって北森鴻、絶対面白いはずだから。★★★★☆
読了日:08月15日 著者:北森 鴻

体内を検査して、異常を数値化することで病気の症状をなきものにするのが西洋医学なら、本人の体質や精神的な傾向を考慮したうえで全体的なバランスをとることで症状を出ないようにするのが東洋医学。主人公は元カレの結婚話を聞いた時から症状が出始めた。心身のバランスを欠いたと言えば簡単だが、病院で検査しても「異常なし」と言われるだけ。子どものころお世話になった東洋医学の病院で治療しつつ、親しい友達との関係や仕事を通して自分の心の歪みというか、考え方の癖、傾向に思い至る。単純に恋愛に逃げないところが良い。★★★★☆
読了日:08月16日 著者:中島 たい子

この本、読んだことがあると思っていたのですが、記録を探しても読んだ形跡がない。なぜこの本を読んだと思ったかというと、清沢洌をこの本で知ったのではないかと思ったから。この本じゃないとしたら、何で清沢洌を知ったんだろう?とりあえず松岡正剛の本で清沢洌について予習したので、いつか必ず「暗黒日記」を読もう。坂口三千代の「クラクラ日記」も読みたい。日本人と日本語で口論できるほどのアーネスト・サトウ(日本名:薩道愛之助)の日記も、ルイス・フロイスの「日本史」も読みたい本リストに入れてある。鳥井耀蔵は、評伝で読みたい。★★★★☆
読了日:08月17日 著者:

73年間に22人もの皇帝。これはさすがにひどすぎる。そして、もちろんそのほとんどが謀殺。ローマ帝国、世も末です。この時代の残念なところは、皇帝の資質がないものが帝位についた例が多かったこと。そして、たまに資質のあるものが帝位についても、時代が許さないというか、兵士に殺されてしまって長くは統治できなかったこと。それは、元老院の力が形骸化していたせいでもあると思う。しかし、既に皇帝の権威も元老院の権威も地に落ちて、あるのは直接武器にものを言わせる兵士たちだけってことか。★★★★☆
読了日:08月19日 著者:塩野 七生

この巻では松坂家の周囲で何人もの人が亡くなった。また、蘭月ビルで伸仁と仲良くしていた敏夫と光子の兄妹が、母の再婚相手と一緒に北朝鮮へ行くことになった。幾つもの別れがあったせいか、全体的に『静』な印象が強い。どうも熊吾の健康状態が、この先良くなる気がしない。伸仁が成人するまで、なんとしてでも生きるのではなかったのか?なぜ不摂生な生活をつづけるのか。逆に伸仁は、高価なビタミン注射のおかげですっかり健康体となり、反抗期に突入。松坂家は、静かに崩壊…家族がバラバラな方向に向かっていきそうで、次の巻がちょっと怖い。★★★★☆
読了日:08月21日 著者:宮本 輝

双子を見分けろ問題、了。これは今ひとつだった。違うマンガで似た設定のものを読んだというのもあるけれど、根本的な問題を先送りしたつけが子どもに行ってしまったというのがよろしくない。また、諸悪の根源が安っぽい。頭悪いし、行き当たりばったりだし。唐突に我路くんが出てきたのは、星座のシリーズに繋がっているよという伏線だと思うが、ただの大学生の周辺に起こるミステリの方が面白い気がして、あまり風呂敷を広げてほしくない。そして青砥刑事の娘誘拐事件。過去の繫がりがずるずる出てきそうで、嫌な予感しかしない。
読了日:08月22日 著者:田村 由美

夏Aの保険として急遽つくられた、落ちこぼれ集団の夏B 。とは言え、その効果を一番信じていなかったから要は夏Bに入ったんだな。行き当たりばったりでも生き延びてきた彼らを見て、初めて「それでいいのか…」と気づけたのだろう。たいしてサバイバルの練達者集団である夏Aは助け合うが支え合わない。実は安居が一番みんなに支えられていると思うけど。偶然助けた桃太で人体実験をするあゆ。それを知っても止めない鷭ちゃんもまた、心を病んでいる。反目し合う花と安居。だけど、ハルと小瑠璃がふたつのチームの橋渡しになるのかな。
読了日:08月22日 著者:田村 由美

選ばれたものとしてのプライドが高かった夏A。しかし徐々にそのプライドが揺るがされる。プロジェクトの最初に冷凍されたため最新の知識を知らないこと。技術は一流でも精神は17歳のあの日で止まったままの彼らは、自分たちの上に人がいるということを受け入れられない。不安や苛立ちを子どもの桃太にぶつけるくらい、精神が子どもだから。それを「温室育ち」と切って捨てる秋ヲ。自分で選択したことの結果を自分で受ける不安。パンピーをなめるなよ、と。くるみやハルのように一見弱く見える人の心の健康さよ。精神の柔軟さが強さでもある。
読了日:08月22日 著者:田村 由美

一番苦手だ。慟哭の恋愛小説。一人称の男性が過去を語る形式の恋愛小説は、間違いなくこれだ。この作者の『聖の青春』や『将棋の子』は好きでしたし、感動もしましたが、この作品はちょっと…。主人公の人生に登場する人が、みんなドラマチックなのよね。だから逆に私の気持がフラットのまま終わってしまいました。★★★★★
読了日:08月22日 著者:大崎 善生

100ます計算ドリルで有名になった陰山英男の著作。子どもが大人になり孫のいない私がなぜ読むかというと、自分のため。なんとかあまり苦労せず賢くなりたいと思っているのである。しかし読んでみたら、自分の子育てを顧みることばかりでした。一番大事な事は子どもの様子をよく見ていること。目配りをしても口出しや手出しをしないこと。あとは、親が背中を見せること。(読書習慣とか辞書を引くこととか)家族でよく会話すること。聞き上手な親は、質問上手な子どもに育つそうです。で、私はどうやったら賢くなるんだろう???★★★★☆
読了日:08月23日 著者:陰山 英男

どの短編も誰かとの約束がテーマになっている。事故や病気で亡くなった人との約束だったり、けがや病気で歩くにも事欠くような人との約束だったり。つまり、下手な人が書けばベタなお涙ちょうだいになるものばかり。ところが悔しいことに石田衣良は上手いんだな。池田小事件のニュースを見て、理不尽にも巻き込まれた被害者たちが、苦しみから立ち上がり人生に帰ってくるために何事かを救い出すことができればと書かれた『約束』は、設定を読むだけでも胸がふさがるほどの苦しみが押し寄せてくる。ベタなんだけど、ベタなのに…くそぉ、石田衣良め!★★★★☆
読了日:08月24日 著者:石田 衣良

以前読んだ同じ作者の『きげんのいいリス』よりも読みやすかったんだけど、どうも世間の評価は逆みたい。自分に自信がなくて、臆病で、でも自意識が過剰で、気難しくて孤独なハリネズミが、誰かを家に招待しようと考える、というだけの話。 おもてなしできる自信がない…というよりも、おもてなしの失敗を指摘されるのが怖い。自分のいないところでみんながその話をしていたら…と考えると、身動きが取れなくなる。身に覚えがありすぎて笑える。煩わしい人間関係はめんどくさくていやだ。でも一人だけで生きていくだけの覚悟もない。これは私か?★★★★☆
読了日:08月25日 著者:トーン テレヘン

しばらく間が空いたので、このテンションの高い世界に戻るのに時間がかかった。今回は大きな流れが3つ。1.魔道士としてのレベルを上げるため、修行もレベルアップされた話2.バイト先の新人たちがコミュニケーション不全な話3.自殺未遂の小学生を説得した話。このうち2と3については、自分の知っている狭い世界の外に出て行けない若者(小学生も含む)に、夕士がコミュニケーションの大切さを教える。夕士の成長が、魔導士としての成長と重なった時、ちょっとすごいことが起きる。まあ、あんまり人外に寄っていかないでね、とも思いますが。★★★★☆
読了日:08月26日 著者:香月 日輪

すすきのの片隅にあるバーで、クラス会に間に合わなかった同級生「田村」を待つ男女五人。小学校時代の田村は決して人気者ではなかった。貧乏で、男にだらしない母と二人暮らしの彼は、小学生にして既に孤高の存在としてクラスメイトに認識されていた。「孤高の小学生」っていうのが、まず、いいじゃないですか。彼の家庭環境は、傍から見ればかわいそうだが、本人はただそっとそこに存在していた。伏し目がちではあるけれど、しっかりとそこに。最後のエピソードは、別になくてもよかったかな。最後の「おまえ、井上鏡子だろう」は切なすぎるなあ。★★★★☆
読了日:08月27日 著者:朝倉 かすみ

それまで吸血鬼って怖い存在だったのに。時間の流れの中で、何者になることもできない人生。限られた人間関係のなかだけで、永遠にも思える時間を過ごさなければならない孤独。長いときを超えてもエドガーの心は少年だ。友達が欲しい。寂しい。そのエドガーの切実な思いが彼から全てを喪わせてしまう。いやしかし、すべてがエドガーのせいか?無謀にも医者に手を出す計画そのものに、破滅の種はあったのだろう。小学生の時に読んで、熱が出そうに衝撃を受けたが、大人になって読んだらより深く感じることができる。名作中の名作。
読了日:08月28日 著者:萩尾 望都

フランスの、ヨーロッパの、いや世界的な政治の流れについてほとんど何も知らないし、フランス文学についても、教育制度についても、イスラム教の社会制度についても知らないことがほとんどなので、理解できたとは言えないが、読みやすくはあった。こういう本にしては不思議なほど文章が上滑りしていくことはなかった。2022年、フランスの大統領にイスラム政党の党首が選ばれ、フランスの国が徐々にイスラム化していく。徐々に変わっていく社会は妙にリアルで、慣れてしまえばそれもありだと思わせるところが怖いところである。★★★★☆
読了日:08月28日 著者:ミシェル ウエルベック

夏Aの憎む貴士先生が花の父だった。それはシェルターで人を間引いていた貴士さんでもあったことが皆に知れる。ほかのメンバーとの距離を感じる花。けれど夏A以外の皆は両親の死を知った花を思いやっていただけだった。絆は途切れない。イライラのつのる安居は花をレイプ(未遂)する。安居は夏Aの中で一番メンタルが弱い。けれど安居のリーダーシップに期待した教師たちによる介入が、今の安吾の不安定の元だと思う。何しろ最終訓練が開けてから体感的には数ヵ月しか経っていないのだ。一見弱い小瑠璃や鷭ちゃんや源五郎君の方が精神的に健康だ。
読了日:08月29日 著者:田村 由美

傲慢にみえる態度の裏で安吾は弱い自分を認めることができずに葛藤していた。弱い自分を認めること、そして誰でも弱い部分があって当たり前なことが分かれば安吾は救われると思う。他の夏Aメンバーたちも、自分達だけで行動していたらトラウマを克服することはできないのだと思う。新たな人たちと新たな関係を結ぶことで癒されていく夏Aたちの中で、安居と涼だけが変われずにいる。あゆの言う「汚い、愚かなもの」。過去に置いてきたはずの。一歩を踏み外してしまった二人は、追放され、夏Bと出会う。
読了日:08月29日 著者:田村 由美

この一冊だけでいったい何人の皇帝が現れ消えていったのだろう。たった30年ばかりの間に。一年に何度も皇帝が代わるどころか同時に数人の皇帝が存在する時代。それは、兵士たちが皇帝を担ぎ上げては「こんなんじゃない」と首を挿げ替えることが定例化してきたのが大きい。一体理想の皇帝ってのが本当にいると思っとるのか?そんな帝国の状況を見過ごすほど敵は甘くないのである。一時的な危機が去ると今度は皇帝同士の内戦だ。なんか、国が滅びていくときって、何をやっても裏目に出るのね。読んでいてうんざりしてきました。頑張れ、俺。★★★★☆
読了日:08月30日 著者:塩野 七生
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