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カバー裏より
『珠子(たまこ)、茉莉(まり)、美子(ミジャ)―。三人の出会いは、戦時中の満州だった。生まれも境遇も何もかも違った三人が、戦争によって巡り会い、確かな友情を築き上げる。やがて終戦が訪れ、三人は日本と中国でそれぞれの道を歩む。時や場所を超えても変わらないものがある―。二〇一六年本屋大賞第三位の傑作、遂に登場。』
昭和18年9月の終わり、珠子は満州についた。
ふるさとは貧しくて、国策としての満州開拓団に強制的に入団させられたのだ。
城壁に囲まれた土地ではあったが、地味豊かな満州の土地で、ようやく彼らはお腹いっぱい食べることができたのだった。
美子は朝鮮に生まれたが、日本の支配下にあった朝鮮で、朝鮮人が豊かに暮らすことはできなかった。
父が満州に仕事を探しに行っていた数年間、美子は母と二人で毎日働きづめに働いて、ようやくコーリャンの薄いおかゆをすすれるような暮らしだった。
やっと父が迎えに来て家族で満州に移住。
日本人たちのそばで日本人と同じように学校に通い、そこで珠子と友だちになった。
茉莉は横浜の貿易商の家に生まれ、着るもの食べるもの何一つ不自由をしたことのない暮らしだった。
欲しいと思う前にすべてを与えられ、愛情たっぷりに育てられた茉莉は、お産を控えた母が面倒を見られないので、満州を視察する父についてきて、そこで珠子や美子と出会った。
3人が大人に内緒で遠出をした時、疲れて眠りこけている間に天気が急変し、川が氾濫し橋は流され、そんな中、3人はたった一つのおにぎりを分け合い夜を過ごしたのだった。
それは彼女たちの長い長い生涯のなかのほんの短い時間だったけれど、この出会いが今後の辛い人生の中で彼女たちの精神的な支えになった。
終戦後、引き上げ途中で中国人にさらわれ売られた珠子。
終戦前に日本に戻ったけれども、いわれなき差別を受け続ける美子。
横浜大空襲で家も家族もすべてを失った茉莉。
読んでいて辛くて辛くてしょうがなかった。
戦争は子どもだろうと年寄りだろうと病人だろうとお構いなしに、というよりも弱者により激しく試練を与える。
大人が子どもを食い物にし、自分が生き延びるために他人を踏みつける。
抵抗できず、目を逸らすことも出来ずにそれを見る子どもたち。
戦争中よりも、戦後の生活の方が辛い。
日本人であることを忘れ、中国人として過ごしていた珠子が、後年、中国残留孤児として日本に帰って来るが、日本語を話せない彼女たちは働こうにも職種が限られる。
せっかく家族と再会できても、会話を交わすことすらできない。
空襲から一人生き残った茉莉は、近所の人たちに畑の野菜を奪われ、防空壕に隠していた家財道具いっさいも奪われ、手に握りしめていた一粒のキャラメルすら大人に奪われたことが一生残る心の傷となった。
しかし反面、戦争に巻き込まれて死んでいった家族のことを思う時、自分だけが幸せになることができず、プロポーズを断る。
戦争が終わっても、ずっとずっと戦争の影が彼女たちを追いかける。
どこまで傷つけられなければならないのか、苦しくて悔しくて、読みながら唇をかみしめる。
だけど彼女たちは、少なくとも家族に愛されて育った過去がある。
だから生きてこられたのだと思う。
そしてたった一度、3人がひとつのおにぎりを分け合ったこと。
一人占めせず、小さい子に多く分けて食べたおにぎり。
茉莉の生き方に頭が下がる。
戦後、弱者として虐げられながらも決して俯くことなく胸を張る。
同じ状況に陥ったら、私はこう強く生きて行けるだろうか。
真っ先に死んでしまうか、それともあさましい行いをしてしまうのか。
どんな大義名分があろうとも、弱いというだけで踏みつけられる世の中は間違っていると強く思った。
ネタバレし過ぎと思われるかもしれませんが、ネタではなく、この作品の世界すべてをまるごと味わっていただきたいと思いました。