1966年11月、ブライアンからの電話で、急遽ブライアン宅に集まったジョン、ジョージ、リンゴ。
ジョン
何てこった!
俺たちゃ、もうおしまいだ!
ジョージ
(俯き、首を振りながら、)
ノー、ノー、ノー・・・
リンゴ
(タバコを吸いながら、)
やっぱり、ジョークなんだろ?
ジョークだと言ってくれよ・・
ブライアン
何度も言ってるがリンゴ、ジョークなんかじゃない。
事実だ・・
ジョン
なぁ、ブライアン、一体どうするんだ?
だが、その前に、可愛そうなポールを弔ってやらなきゃな・・
こりゃ、大騒ぎになるな・・
ブライアン
メディアにはまだ知られていない。
ジョン
奴ら、すぐに嗅ぎ付けてしまうさ。
時間の問題だよ。
ジョージ
国葬にでもなるのか?
また、どえらいことだ!
リンゴ
(頷きながら、)
俺も死にたい・・
ジョン
盛大に弔って、後は解散するか・・
ジョージ
ポール抜きじゃな・・
リンゴ
ポールは偉大だったよ・・
天国のポールに祝福あれ・・
ジョン
おい、ブライアン!
奴らに嗅ぎ付けられる前に、とっとと知らせた方がいいんじゃないのかい?
ジョージ
うん、そうだ!
ブライアン
だが、待て!
ジョン
は? 解んないね!
ブライアン
君たちには、こんなに辛い時に申し訳ないのだが・・
ビートルズは解散するわけにはいかない。
ジョン
じゃあ、ポール抜きで、3人でやれっていうのかい?
ジョージ
ベースは誰がやるんだ?
リンゴ
俺はできないぜ・・
ジョージ
俺もだ・・
ジョン
じゃあ、俺がやんのか?
ブライアン
まあ、待て!
ジョージ
さっきから、待て、待て、って・・
リンゴ
ブライアン! あんたがベース!
ジョン
(頷きながら、ため息をつく。)
ブライアン
(3人を見回して、)
実はな・・
ジョン
お! 来ましたね!
ブライアン
実は・・
ポールの代わりがいるんだよ・・
ジョージ
どっかから、引っ張ってくるのか?
ブライアン
まあ、落ち着け!
君たちには、この際、ある意味いい知らせなんだから!
ジョン
誰だい?
リンゴ
俺は、あいつならうまくいかないぜ!
ブライアン
ポールだよ・・
リンゴ
やっぱし、ジョークか!
ブライアン
そうじゃない、ジョークなんかじゃない・・
ジョン
どういうことだい?
リンゴ
今、ここは夢の中?
ジョージ
(リンゴの腕をつねる)
リンゴ
おっ! 夢から覚めたよ!
ジョン
まさか、そっくりさん使おうってんじゃないよな? ブライアン?
リンゴ
それこそジョークだ!
ジョージ
馬鹿げてる!
ジョン
マネキン人形となんかやれるわけないだろ!
見損なったよ、ブライアン!
頭、大丈夫か?
ショックでやられたのかい?
ジョージ
俺は、解散してもいいと思うよ・・
リンゴ
俺もだ・・
ブライアン
まあ、そう言わずに・・
ジョージ
馬鹿げてら!
ブライアン
近いうちに、新たなポールを連れてくるから・・
楽しみにしていてくれ!
ジョン
だったら、ポールの死は伏せておくんだな?
ブライアン
そうだ・・
ジョン
そんなことより、俺は早くポールを弔ってやりたい・・
ブライアン
明日、極秘に、この4人で・・
ジョン
何度でも言うが、俺はマネキン人形なんかとはできないぜ!
ジョージ
そうだ!
俺はポールを弔ったら、インドに行くよ・・
インドでゆっくり余生を過ごす・・
ブライアン
ジョージ、君はまだ若い。22だろ?
リンゴ
長い余生になるな・・
ブライアン
まあ、後のことはゆっくり考えよう!
まずは、明日、ポールを弔う。
ジョン
じゃあ、これで帰るけど・・
俺は、マネキンとはできないぜ!
リンゴ
やっぱり、これは夢か?
ジョージ
(リンゴの頬をつねる)
ジョン
俺もつねってくれよ!
ジョージ
(ジョンの頬をつねる)
ジョン
痛いな・・
ということは、やっぱり夢だ!
翌日、4人でポールを埋葬する。
それから数日して、4人はまたブライアン宅に集まった。
ジョン
今日は、そっくりさんのお披露目か?
まさか、ホントにマネキンじゃないよな?
ジョージ
ふざけてる・・
もう解散だ・・
リンゴ
俺は、ドラマーより、俳優になるよ・・
ジョン
俺もだ・・
ジョージ
早くマネキン持ってこいよ・・
見たらすぐに帰って、インドに旅立つから・・
ジョン
俺もだ・・
俺は、ポルトガルにでも行ってくるよ・・
ブライアン
じゃあ、お待ちかね、最高級マネキンをお連れしてくるよ・・
(部屋を出る)
ジョン
・・・
ジョージ
あ~あ・・
リンゴ
(首を捻る)
ブライアン
(ドアを開け)
ミスター ニュー ポール!
ようこそ!
ニューポール
やあ、やあ、やあ!
僕が、新しいポールだよ!
みんなよろしくね!
古いポールのご冥福をお祈りします。
ジョン
(腕組みをしたまま、目が点に・・)
ジョージ
(椅子ごと後退りする)
リンゴ
(人差し指を立てて揺らす)
ブライアン
これからは、この4人でビートルズだ!
私は、今まで通り、影から君たちを支えるよ!
ニューポール
(3人を見回しながら、微笑む)
ジョン
ブライアン! これは一体どういうことだ!
俺たちは、この手でポールを埋葬したじゃないか!
ジョージ
こいつは化け物だ・・
リンゴ
(首を横に振り続ける)
ブライアン
まあ、君たち、落ち着いて!
君たちには黙っていて悪かったけれど、僕は少し前からミスター ニューポール、ミスター ビリー シアーズというんだけど・・
ジョン
そっくりさん大会で優勝した奴かい?
ブライアン
そうだ。
ジョージ
でも、気味悪ぃな・・
ポールを埋葬したばかりなんだが・・
リンゴ
よくできたマネキンだ・・
ジョン
こいつと一緒にやれっていうのか?
すぐにバレちまうぜ!
ポールちゃんはな、ああ見えても、バリバリの凄腕だったんだぞ!
マネキンに何ができるっていうんだい?
バカらしい!
ジョージ
その通りだ!
そっくりさんに何ができる?
リンゴ
(頷きながら、)
それにしてもよくできてる・・
どうやって作ったんだ・・
ブライアン
ミスター シアーズ、いや、ニュー ポールは・・
そっくりなだけじゃないんだ!
ジョージ
うまくできるっていうのか?
ジョン
(首を横に振りながら、)
できるわけがない・・
リンゴ
だからって、俺はベースできないよ・・
ジョージ
じゃあ、お前、やって見せろよ!
ニューポール
(微笑みながら、)
あんまり大したもんじゃないんだけどさ・・
リンゴ
声までよくできてる・・
ニューポール
リンゴ! 悪いが、僕は作り物なんかじゃないよ!生身の身体だよ!
ブライアン
(ニューポールにベースを渡す)
ニューポール
(微笑みながらベースを弾く)
リンゴ
やっぱり夢か・・
悪い夢だ・・
ジョン
なかなか上手いが・・
ジョージ
薄気味悪ぃ・・
何で、そっくりさんがそんなにできるんだよ?
ベースは、俺より上手い・・
リンゴ
ポールは復活したようだ・・
墓から出てきたのかい・・
ニューポール
悪いが、僕は墓から出てきたんじゃないよ。
ジョージ
じゃあどっから出てきたんだ?
魔界から出てきたのか?
ニューポール
僕は、○○州の出身だよ。ちゃんと家だってあるよ。
ジョン
俺は目眩がする・・
リンゴ
君の顔は、マスクなんじゃないのか・・
ジョン
こいつとやれっていうのか?
だが、ベースが弾けるだけじゃな・・
ニューポール
心配してくれてどうもありがとう。
だが、僕は、曲作りも少しできるんだよ。
ジョージ
こいつ何者だ?
魔界の回し者か?
ジョン
じゃあ、君の曲をやってみたまえ!
ニューポール
では・・
(ペニーレインをやる)
リンゴ
(天を仰ぐ)
ジョージ
これは、ホントに君が作ったのか?
ニューポール
そうだよ。
ジョン
(目を瞑り、腕組みをして考え込む)
ブライアン
これで解っただろう?
ビートルズは大丈夫だ!
ポールが亡くなったことは絶対に口にしてはいけない!
解ったかい?
ジョン
ブライアン!
お前、いつからこいつのこと知ってた?
ブライアン
あぁ、ちょうど1年ほど前かな・・
ジョージ
どうして知った?
ブライアン
ある人がね・・
知らせてくれたんだよ・・
ポールにもしものことがあったら ってね・・
ジョン
もしも って、ポールが死ぬってことか?
なぜポールが死ぬって解ってたんだい?
しかも、1年も前に!
ジョージ
まさか、ポールを殺ったんじゃないよな?
ブライアン
ま さ か ・ ・
ジョン
何で俺たちに黙ってた?
ブライアン
まさか、ホントにポールが亡くなるなんて思わなかったんだよ・・
ジョージ
やっぱり悪魔の仕業だ・・
ジョン
俺たちゃ、悪魔と仕事しなきゃならないのか?
ブライアン
(少し顎を震わせながら、)
ミスターシアーズはね・・
り、立派な方だよ・・
あ、悪魔なんて、
し、失礼なことを・・
それに、契約の問題もあるだろ?
解散はできないよ・・
その後、ブライアンは精神的に追い詰められた。
自分は、何か悪いことをしているのではないか?
3人のビートルが、ポールの死を悲しみ、ビリー シアーズの登場を怪しんでいる姿を目の当たりにするにつけ、ともすれば、ポールの死を口走りそうになることもたびたびであった。
ブライアンの死は、ポールの死から1年にも満たないうちにやってきた。
彼の死は、事故死とされているが、自殺ではないかとも言われている。
だが、真相は、口封じであった可能性もあり得る。
(以上の話は、当たり前ですが、幽体離脱して見聞きしたものではなく、想像によるものです。)