神谷の亡骸は抵抗する術を忘れ、床へ衝突する。

大高はそれを認めた後、
「だから言っただろ。コイツと同じ末路を辿りたくなくば、今後余計な真似は控えることだ。わかったな」

梓が両手で口を押さえていると、場違いな着信音がバイブレータと共に室内に響いた。
梓のものだったらしく、彼女はスカートのポケットから携帯を取り出す。

まるで死人のような顔で画面を眺める梓に、茂央は
「誰からのメールだった?」
梓は呼吸を整えてから、「お母さん」と幼児のような口調で答えた。
「お母さん、あたしのこと心配して……。
ねえ、何でこんな目に合わなくちゃならないの? 犯人は何がしたいの? それぐらい教えなさいよ!! 画面越しに先生を盾に命令するようなことしかしないの? 卑怯者! あたし達と同じ土俵に立つ度胸も無い癖に偉そうにすんなァ!」

それは、最初から全員に突きつけられていた謎だった。
解けない難問を前に、足掻くことしか出来ぬ道化に成り下がった梓に対し、全員が抱く感情は統一されていた。

「本当に馬鹿馬鹿しいよ……。何だってこんなことに……」

始めとはガラリと変わり果てた茂央の低い声が火種となり、室内を絶望が包んだ。

が、それも束の間の話だったのは、茂央の次の一言が証明した。

「なあ……。――――――梓」