しかし、幾つもの疑問点の行く先には、濃く、深い霧がかかっている状態だった。
「根拠はちゃんとある。それを証明するには、俺が口で言うより実際にやった方が早いだろう」
言ったきり、大高は席を立ち、保管室へ消えた。
――「何をするんだ?」
「離れろよ茂央」
言われるがまま、茂央は一歩退く。
様子を窺っていると、大高が床にライフルの銃口を向ける。
そこで何をするか察しがついた茂央が止めに入るが、一足遅く、銃弾は床を貫いた。
「危ないな」
大高が眉間にシワを作る。
「……あれ?」
茂央が顎に指をやる。銃弾が貫いた一点を見つめていると、大高が何が言いたいのかが見えてきた気がして、次は大高に焦点を向ける。
「気付いた顔だな」
「ああ。さっきと発砲音が違う」
「そう。さっき内田があいつを撃った時は、(ダァンッ!)っていう、よく映画である感じの後に響くような音。でも今のは、(ドッ)て感じに、乾いた音。言ってしまえば、このライフルからあんな音が出る筈がないんだ」
茂央が口を開くより先に、塚越が問う。
「でも現実には、さっき鳴ってる。あんなデカい発砲音が。どういうことだ?」
「つまり、あの場にはこれとは別に違う銃があったんだ。それを使って内田はあいつを殺した。被害者を装えば、疑われることだってない。
何より、普通の生徒なら持ってる筈のないものを持ってる。これが確たる証拠」
「不自然に思えるのはわかるが、完璧な推論じゃないな。先ず、もう一つ銃を持っていたとして、何故わざわざ音の違うもう一つの方を使う? 自白するようなもんだろ」
茂央が横から口を挟む。
「じゃあ、こうは考えられないか?
――俺達の中に潜入しているスパイは、安田を返すわけにはいかないから、人質を何とかしなければならない。しかし、下手をすれば自白するようなもの。そこで考えついたんだ。
(生徒を脅し、そいつに殺させよう)とね。
自分は複数銃弾が入っている拳銃を所持し、その生徒には一発だけ銃弾が入っている拳銃を手渡す。室内を偽装工作し、あたかも襲われて威嚇射撃でやむなく撃った。その状況を作り出す為の手順を教え、実行させる。『バラしたら殺すよ』とでも言っとけば、後はその生徒は何も出来ないって寸法。
その銃を使わせたのも、その生徒に疑いを着せる為」
茂央の推論はかなりの説得力があったらしく、皆が頷いていた。
「根拠はちゃんとある。それを証明するには、俺が口で言うより実際にやった方が早いだろう」
言ったきり、大高は席を立ち、保管室へ消えた。
――「何をするんだ?」
「離れろよ茂央」
言われるがまま、茂央は一歩退く。
様子を窺っていると、大高が床にライフルの銃口を向ける。
そこで何をするか察しがついた茂央が止めに入るが、一足遅く、銃弾は床を貫いた。
「危ないな」
大高が眉間にシワを作る。
「……あれ?」
茂央が顎に指をやる。銃弾が貫いた一点を見つめていると、大高が何が言いたいのかが見えてきた気がして、次は大高に焦点を向ける。
「気付いた顔だな」
「ああ。さっきと発砲音が違う」
「そう。さっき内田があいつを撃った時は、(ダァンッ!)っていう、よく映画である感じの後に響くような音。でも今のは、(ドッ)て感じに、乾いた音。言ってしまえば、このライフルからあんな音が出る筈がないんだ」
茂央が口を開くより先に、塚越が問う。
「でも現実には、さっき鳴ってる。あんなデカい発砲音が。どういうことだ?」
「つまり、あの場にはこれとは別に違う銃があったんだ。それを使って内田はあいつを殺した。被害者を装えば、疑われることだってない。
何より、普通の生徒なら持ってる筈のないものを持ってる。これが確たる証拠」
「不自然に思えるのはわかるが、完璧な推論じゃないな。先ず、もう一つ銃を持っていたとして、何故わざわざ音の違うもう一つの方を使う? 自白するようなもんだろ」
茂央が横から口を挟む。
「じゃあ、こうは考えられないか?
――俺達の中に潜入しているスパイは、安田を返すわけにはいかないから、人質を何とかしなければならない。しかし、下手をすれば自白するようなもの。そこで考えついたんだ。
(生徒を脅し、そいつに殺させよう)とね。
自分は複数銃弾が入っている拳銃を所持し、その生徒には一発だけ銃弾が入っている拳銃を手渡す。室内を偽装工作し、あたかも襲われて威嚇射撃でやむなく撃った。その状況を作り出す為の手順を教え、実行させる。『バラしたら殺すよ』とでも言っとけば、後はその生徒は何も出来ないって寸法。
その銃を使わせたのも、その生徒に疑いを着せる為」
茂央の推論はかなりの説得力があったらしく、皆が頷いていた。