「ミソ? おいおい、バラさないように進めるんじゃ無いのか?」
塚越が指摘したが、まあ聞けよ、と宥められた。
「それより、この作戦、最低でも2人は必要だ。俺と、あと一人。誰か、やってくれないか」
茂央が言い終え、真っ先に挙手したのは、クラスの学級委員長、長野邦子だった。
「あたし、やるよ。学級委員長だし、こういうのは誰かが進んでやらないと始まらない」
「わかった、じゃあ――」
茂央がブレザーのボタンを外そうとしたが、長野邦子がそれを片手で阻んだ。
「ちょっと、長野さん………?」
茂央が呼びかけるのにも目をくれず、バケツの中に灯油を注ぎ、セーターを脱ぎ捨てる長野邦子。
それを追うかのように、セーターの下に着ていたTシャツやスカートも床に到着する。
白い肌を大いに露出し、下着姿になった長野邦子は機械的な動作でTシャツとスカートをバケツの灯油の中に突っ込んだ。
「長野さん、男の子もいるんだよ? せめて、違う部屋に移るくらいのこと、した方がよくない?」
見かねた梓が苦笑しながら内田に問いかけるが、長野は顔にシワの一つも作らない。
体操座りで語り出した。
「別に裸ならお兄ちゃんにいつも見られてるから大丈夫。お兄ちゃんね、あたしがお風呂入ってるってのに何の躊躇いも無しに風呂のドア開けるんだよ?
いくら妹でも、あたしももう高校生なんだからちょっとは考えろって感じだよね。でも、そんなんばっかだから、慣れちゃった」
言い終えると、灯油を纏った重たいTシャツとスカートを軽く絞り、身につけ始める。
「さ! 作戦決行よ、湯浅君」