私「ふぉお~!!
これ、食べていいんですかっ!?」
安藤さん「どうぞどうぞ?
うふふ、喜んでもらえてよかったわ(笑)
これ、実は係長から軍資金をいただいているの。
遠慮なくいっちゃって!」
私は同じ係の先輩女性の安藤さんに誘われて、
仕事帰りに喫茶店に呼び出された。
着席するとほぼ同時に、
チョコレートパフェが目の前に置かれる。
安藤さん「しんじゅさん、ちょっとお時間もらえる?
私とデートしましょ♪」
と、小一時間前ぐらいに誘われたのだった。
私がパフェに食らいついているのを、
目を細めて楽しそうに見ている。
50代後半の温和な感じの女性で、
私を娘のようにかわいがってくれていたのでした。
私がパフェを平らげると、
少し体を震わせたのを見て、
飲み物を頼むかと聞いてきました。
私はホットの紅茶をオーダーして、
安藤さんに向き合ったのでした。
安藤さん「うふふ。
しんじゅさんって落ち着いて見えるけれど、
やっぱり10代の女の子ね。
パフェを嬉しそうに食べてて、
かわいいなぁって思ったわ(笑)」
私「あはは!嬉しくてつい!」
安藤さん「やっぱりしんじゅさんは甘党なのね?
職場でお菓子を配ると、
嬉しそうに食べてるもの。」
私「えへへ。」
安藤さんはゆっくりと自分の飲み物に口をつけてから話しました。
安藤さん「ねぇ、しんじゅさん、知ってる?
人事制度が見直されたんですって。」
私「?へぇ、そうなんですか。」
安藤さん「そう。
今度からは定期的に人員配置を見直すそうよ?
つまり一つの課に長い年数、
在籍することはできなくなるって。」
私「へぇ。」
安藤さん「部長の激推しの案で、
社長の判断なんですって。
どう思う?」
私「え?そうですね…。
今の社長は2年前に交代されたんですよね?
さすが30代で社長になる方は考え方が新しいと言うか…。
新陳代謝がよくなる感じでいいんじゃないですか?」
安藤さん「それだけだと思う?」
私「え?そうですね…。
長年同じ仕事をする人を失うのは、
ちょっと生き字引的な人がいなくなる不安もありますけれど…。
みんな在籍期間が短くなるなら、
仕事を覚えるのが大変そうかなって思いますね。」
安藤さん「それだけだと思う?」
私「え?そうですね…。
責任感が伴う人が減る心配がありそうですけど…。」
安藤さん「それだけだと思う?」
私「え?…。
えっと、そうだな。
いろんな人がいろんな部署の仕事を覚えれて、
年数を重ねると、
いい上司になりそうな気がします。」
安藤さん「それだけだと思う?」
私「えっと…?
そうですね、なんていうか、
癒着や汚職の温床を排除できるような気がします。」
安藤さん「そう。」
カチャ。
お店の人「お待たせしました。どうぞ。」
私「あ、はい。
ありがとうございます。」
目の前に温かい紅茶のカップが置かれました。