姉「もういい!

 

バカの相手をしなくていい!しんじゅ!」

 

 

 

姉は立ち上がってワナワナと震えていました。

 

 

 

姉「元春!

 

アンタ、アタシのかわいい妹をバカにして、

 

何様のつもり!

 

 

そもそも30才にもなろうって男が、

 

20代前半の女子と簡単に付き合えると思うなっ!

 

 

アタシの妹はアタシの友達に、

 

内田有紀に似て美人だと言われているのよっ!

 

 

ちゃんとしたところにも勤めている!

 

アンタにブサイクやバカ呼ばわりされる筋合いはないし、

 

アンタにしんじゅを責める権利も資格もない!

 

不愉快だっ!

 

二度とこの家に来るなっ!

 

出てけっ!」

 

 

 

元春「え、ちょっと…何?

 

何怒って…?」

 

 

 

姉はカンカンに怒って、

 

いとこの背中を押して、

 

家から追い出しました。

 

 

 

再び台所に戻って、姉と一緒にお茶を飲みました。

 

非常に疲れました。

 

 

温かいお茶を飲んで、

 

少し落ち着いてきました。

 

 

 

姉「あぁあぁ、バカだった…。

 

アタシ、アイツがあんな奴だと思わずに、

 

知らずに友達に勧めちゃったよ…。

 

申し訳ない…。」

 

 

姉は自己嫌悪に陥っているようで、

 

ひじをついて頭をうなだれていました。

 

 

 

私「いや、それは…。

 

アタシもあそこまで、

 

元ちゃんと話したことなかったから、

 

分かんなかったよ…。

 

 

考えようによっては、

 

不幸中の幸いだよ。

 

 

そのお友達は元ちゃんと、

 

直接関わらずに済んだんだから…。」

 

 

 

姉「あぁ…そう、かも…。

 

あとで謝っておこう。

 

難しいわね、人を紹介するのって…。」

 

 

 

私「うん…。」

 

 

 

ずずっとお茶をすすっております。

 

 

 

姉「アンタもさぁ。

 

もうちょっと怒ってもいいんじゃない?

 

ものすごい言われようだったじゃない?」

 

 

 

私「いや、たびたびあるんだよね、

 

あーゆー風に言う人が、

 

定期的に出てくる感じ。

 

『お前はとるにたらない存在なんだ』

 

っていう風に言ってくる輩が、

 

ちょいちょい出没するんだ。

 

どーゆー投影がはたらいているんだろう…。」

 

 

 

姉「アンタ、そんな事言われてるの?

 

アタシは無いわ。」

 

 

 

私「姉さんほど突き抜けた美人にブサイクとは、

 

よう言えないでしょ…。

 

それに、なんか、驚いちゃって…。

 

うまく言葉が出ない感じで、

 

お姉ちゃんはすぐに言葉が出てきてすごいなって思うよ…。」

 

 

 

姉「アタシも途中から圧倒されて、

 

コイツなに言ってんだって思って、

 

頭が働かなくなっちゃったよ…。

 

興奮しすぎかな?」

 

 

 

私「いや、アタシも元ちゃんが、

 

何言ってんのか頭が追い付かなくて…。

 

そうか、そうなんだよな…?」

 

 

 

姉「何が?」

 

 

 

私「昔からちょっと、

 

元ちゃんって変わった子だなとは思ってたけど。

 

ちょっと風変りというか…。

 

子供のころは年齢差があったから、

 

それで感覚が合わないのかな?って思ってたんだけど。

 

 

アタシ、人生の中で元ちゃんと会うのって、

 

10回もないぐらいなんだけど、

 

元ちゃんの中では、

 

私は残念な女の子だと思われてたんだね…。」

 

 

 

姉「何がもさっとした地味子でぶさ子だっ!

 

しんじゅは美人だろうがっ!?

 

それに約束を二回もすっぽかしても、

 

実物を見れば女の心が変わる!?

 

とかほざいていて、ムカつく!

 

それを言っていいのは、

 

世界的スターか、

 

トップ俳優ぐらいだろうがっ!?

 

何様のつもりだっ!?

 

実際は親戚に女紹介してもらわないと、

 

出会いもないもさっとした野郎なのに!」

 

 

 

私「あぁ…なんなんだろう、あの自信は…。

 

そして、私って実はブサイクなのかなって、

 

思ってしまった…。」

 

 

 

姉「そんなワケないでしょっ!

 

アタシの友人たち、

 

しんじゅを見て、

 

こんなかわいい妹がいたら、

 

殺意が沸くって言ってたわ!

 

もし、合コンで現れたら、真っ先に潰すって!」

 

 

 

私「はぁ…女子ってなかなか大変だね!

 

すごいな、戦略的なんだね(笑)」

 

 

 

姉「そんで『妹さん、美人だけど性格良さそう』

 

って言ってたわ!

 

もう、のんきだね、アンタは…。

 

アンタは私が美人で嫌だなとかは思わないの?」

 

 

 

私「そりゃ、お姉ちゃんに比べられて、

 

いやな思いはたくさんしてきたけれど、

 

それはお姉ちゃんのせいじゃないじゃない?

 

 

アタシは身近な身内に美形がいて、

 

毎日キレイなものをいつも見せてもらえて、

 

ラッキー☆と考えちゃうかな?(笑)」

 

 

 

姉「あぁ!もう、やっぱり性格ほがらかだなぁ(笑)」

 

 

 

姉は私の頭をなでなでしてきました。

 

 

 

私「しかし、怖いのは、

 

あんなに分かりやすく説明していたお姉ちゃんの話を

 

元ちゃんはいくらも理解していないってことだな…。」

 

 

 

姉「分かってないわね、アイツは…。」

 

 

 

私「うん、多分1割かよくても2割程度だね…。

 

 

きっと、元ちゃんの中では、

 

『ちょっと失敗したぐらいで、

 

性格のキツイ芙美花に、

 

ギャンギャン言われて怒られた。』、

 

ぐらいにしか思っていないんだろうなぁ…。」

 

 

 

姉「元春は基本、女を下に見ているのよ…。

 

でないと、あーゆーセリフは出てこないわ。

 

面倒なことはすべて女にさせようと考えている。

 

無意識、無自覚でしょうけれど、言葉の端々に感じたわ。

 

あれでは恋人はできないわね。

 

見た目は悪くないけれど…。」

 

 

 

私「男尊女卑か…。

 

染みついちゃっているわね。

 

確かに見た目は悪くないけれど、

 

結婚はムリそうね…。」

 

 

 

姉「かわいそうだけれど、結婚はムリね…。

 

自分のアピールポイントが親が金持ちってぐらいだし。

 

ってか、あそこって、そんなに金持ちだっけ?」

 

 

 

私「いや、ゆとりはある方だと思うけれど、

 

叔父さんは普通のサラリーマンよね?

 

あと2年で退職するっておばさん言ってたし。

 

そしたら二人で海外旅行に行くんだって、

 

楽しそうに言ってたわ?」

 

 

 

姉「そうよね?

 

親が金持ちで自慢できるのは、

 

会社経営者の一族とか、

 

せめて役員だとかじゃない?」

 

 

 

私「確かエンジニアだと言ってたから、

 

普通の社員だと思う。

 

 

それに元ちゃんのあの言い方だと、

 

親がかりの生活ができる前提でお話しているからさ。

 

 

もうすぐ現役を退く親なんだから、

 

毎月の給料が無くなって、

 

年金暮らしが待っているのに。」

 

 

 

姉「親と同居ってありえなくない?

 

減点しかないんだけど?」

 

 

 

私「そうだよねぇ。

 

親と同居前提の、

 

長男ってだけでハンデがあるのに、

 

全然気づいていない。

 

 

それに所帯を持ったら、

 

妻と子を養わないといけないのに、

 

生活費は親がかりを想定している。

 

 

逆にそろそろ親の介護の事も考えなきゃならない世代なのに、

 

元ちゃんもう30才でしょ?

 

ちょっと考えが幼すぎない?」

 

 

 

姉「ん~、多分、何も考えていないと思う…。」

 

 

 

私「ん~、でも女の人を自分より下だと考えているなら、

 

アタシたちの言葉なんて、

 

耳を貸さないわよね?」

 

 

 

姉「そうねぇ。

 

誰が相手でも無駄になるわねぇ。」

 

 

 

私「元ちゃんのあの態度から思うに、

 

きっと悪気はないのよね…。

 

そこが怖いんだけど…。」

 

 

 

姉「そうねぇ、あれ、本気で言ってるわよねぇ。

 

いっそ悪意があって、

 

ずる賢く立ち回ってくれるなら、

 

まだ安心感がある感じ。

 

そんな男、嫌だけど?」

 

 

 

私「まぁ、元ちゃんのいいところは、

 

率直なところよね。

 

 

女性をだますような真似ができないんだから、

 

結婚してみたら、話が違った!

 

っていう女性が出てこない所が救いかもね?」

 

 

 

姉「そうかもね?」

 

 

 

 

 

 

後日、岐阜のおばから、

 

『ウチの息子が失礼をして申し訳なかった』

 

と謝罪をされたのでした。

 

 

 

おしまい。